祝辞

笹瀬 巌(電子情報通信学会 2020年度会長)

情報処理学会創立60周年、誠におめでとうございます。電子情報通信学会を代表致しまして、祝辞を申し上げます。

貴学会は、コンピュータとコミュニケーションを中心とした情報処理に関する学術および技術の振興をはかることにより、学術、文化ならびに産業の発展に寄与することを目的として1960年に設立されて以来、情報処理分野において、革新的技術を創出するとともに、コンピュータとコミュニケーションによる豊かな社会の実現に貢献されてこられました。長きにわたり、我が国の情報処理技術の発展をけん引されてこられたことに対して、心から敬意を表します。私自身も、情報処理学会の会員でもありますので、この節目の機会を迎えることができたことを、当事者としてもとても喜んでおります。

1956年(私が生まれた年)にわが国最初の電子計算機FUJICとETL Mark IIIが完成し、その数年後に貴学会が設立され、日本の歴史的コンピュータの研究開発に携わった方々が、貴学会での論文発表やディスカッションを通じて、多くの優れた独創的な成果をあげられてきたことは、誠に感慨深いです。私は、学生時代の1980年代前半、メインフレームの大型計算機を用いて過ごしましたが、その後、コンピュータシステムのオープン化とダウンサイジングが進み、また、インターネットによって代表されるコンピュータネットワークや携帯電話が普及し、音声処理や画像処理などの情報処理技術も著しく進化しました。1990年以降、情報技術と情報産業界の様相が一変したことを振り返ってみると、情報処理技術・電子情報通信技術の発展とそれらの社会生活への貢献・インパクトの大きさに驚かされます。

貴学会と本学会との関係は、お互いに関連する学問・技術分野が多岐にわたることもあり、長年にわたって様々なレベルでの協力・協調関係を築いてまいりました。情報科学技術フォーラム(FIT)は、貴学会と本学会の情報・システムソサイエティとの合同大会として、タイムリーな情報発信、議論・討論の活性化、他領域研究者との交流等を実現する場として、2001から毎年開催されております。また、両学会共催による国際会議・研究発表会・シンポジウムも多数開催されています。このように、貴学会とともに、関連分野の発展・進歩のために歩み続けてこられたことは、本学会にとって貴重な財産であります。特に、IoT(Internet of Things)、人工知能(AI)技術、ビッグデータ解析など、情報処理技術を駆使した「超スマート社会」を早期に実現するためには、貴学会との連携強化は、極めて重要であります。また、人材育成に関しても、教育訓練講座の拡充、プログラミング教育、本分野の起業や事業化支援だけでなく、将来を担う若い世代たちに、情報処理・電子情報通信分野の魅力を伝えていくことも、重要な使命と考えております。これまで築き上げてきた両学会の協力関係を今後も大切に、より強固にして、社会・学術の発展に貢献できればと願っております。

最後になりましたが、貴学会が、これからも世界をリードし、学術や文化の発展にますます貢献されることを祈念致しまして、私の祝辞と致します。

 

電子情報通信学会 2020年度会長

笹瀬 巌

笹瀬 巌
略歴

一般社団法人電子情報通信学会 会長 笹瀬 巌(ささせ いわお)
(慶應義塾大学 理工学部 情報工学科 教授)
1979年3月 慶應義塾大学工学部電気工学科卒業
1981年3月 慶應義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了
1984年3月 慶應義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻博士修了
                 工学博士取得
1984年4月 カナダ オタワ大学工学部電気工学科ポストドクトラルフェロー
1985年5月 カナダ オタワ大学工学部電気工学科講師
1986年4月 慶應義塾大学理工学部電気工学科助手
1988年4月 慶應義塾大学理工学部電気工学科専任講師
1992年4月 慶應義塾大学理工学部電気工学科助教授
1999年4月 慶應義塾大学理工学部情報工学科教授(現在に至る)

 

電子情報通信学会次期会長、創立100周年記念事業実行委員会委員長、副会長、通信ソサイエティ会長、ネットワークシステム研究専門委員会委員長、通信方式研究専門委員会委員長、IEEE Tokyo Section Chair、IEEE ComSoc Board of Governors (Member at-Large)、Japan Chapter Chair、Asia Pacific Regional Director、Satellite and Space Technical Committee Chairなどを歴任。電子情報通信学会フェロー、IEEE Senior Member。

 

衛星通信、ディジタル変復調方式、移動体通信、ワイヤレス通信、通信ネットワーク、非対称ディジタル加入者線通信方式(ADSL)、光通信理論、情報理論、ネットワークセキュリティ、赤外線室内通信、アドホックセンサネットワーク、光分割多元接続(CDMA)、波長分割多重アクセス(WDMA)、非同期転送網(ATM)スイッチ、レーダなど、情報通信工学の広範囲な研究テーマに対して学生と楽しく研究に励んでおり、これまでに、学術誌論文296編、国際会議論文445編などの研究成果を発表。第1回本会通信ソサイエティマガジン賞「難関国際会議への論文投稿を通じた若手の育成-持続可能な研究コミュニティの確立-(No. 40, 2017年3月掲載)」、直接研究指導した博士修了者は45名、修士は180名以上(留学生も8名が博士号取得)。(博士取得者のうち、25名は大学教員(教授20名)、20名は企業や官庁で活躍、ベンチャー社長も輩出)研究内容・発表論文の詳細は、http://www.sasase.ics.keio.ac.jp 参照。


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