連続セミナー2010 クラウドコンピューティングを自在に操る

「クラウドコンピューティング技術の肝(要素技術)」
コーディネータ : 近山 隆 (東京大学)

  • 開催日時 : 2010年10月19日(火) 9:30 〜 17:00
  • 会場 : 東京電機大学 神田キャンパス7号館1F 丹羽ホール

クラウドコンピューティングシステムは、さまざまな要素技術を組合せ作り上げるものです。第4回ではそうした要素技術の中でも特に重要な技術について、お話しいただきます。こうした技術要素を知ることは、クラウドコンピューティングを利用する上で不可欠とまではいえませんが、その深い理解はアプリケーションのクラウドコンピューティングプラットフォームへの適合性の判断や、より効率的なシステムの利用に資するところが大きいものと考えます。

コーディネータ : 近山 隆 (東京大学 大学院工学系研究科電気系工学専攻 教授)
【略歴】1977年東京大学工学部計数工学科卒。1982年同工学系研究科情報工学専門課程博士課程修了、工学博士。同年(株)富士通に入社し、(財)新世代コンピュータ技術開発機構に出向、第五世代コンピュータプロジェクトの研究開発に従事。1995年東京大学工学系研究科助教授、1996年同教授。以降学内の異動を経て2008年より現職。プログラミング言語、並列分散処理、機械学習などに興味をもつ。

プログラム

Session.1 9:30 〜 11:00
「CAP定理とその周辺、分散処理における「不可能」について」
田浦 健次朗(東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授)

【講演概要】 CAP定理とは、Eric Brewerによって提唱された命題で、分散システムにおいて一貫性(Consistency)、可用性(Availability)、ネットワーク分割に対する耐性(Partition Tolerance)を同時に、厳密に達成するのは無理である事をうたったものである。後にGilbertとLynchによって定式化・証明されている。大雑把に言えば、「本システムはデータの一貫性を補償し、スケーラブルで、耐故障性があります」という宣伝を見たらそれはウソまたは誇大広告である、ということである。そして、分散システムを構成するにあたって何を必須項目として、何は犠牲にするのかという事に関する一つの設計指針を与える。本講演でこの定理の意味するところを解説するとともにその味わい方・教訓について述べる。

【略歴】
東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻准教授。理学博士。1969年生。1997年東京大学大学院理学博士(情報科学専攻)。1996年より東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻助手。1999年7月-2000年6月 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員。2001年より東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻講師。2002年より現職。プログラム言語、 並列・分散処理、システムソフトウェアに興味を持つ。ACM、IEEE、USENIX、情報処理学会など会員。
Session.2 11:10 〜 12:40
「クラウド上のNoSQLデータベースの実際」
中田 秀基((独)産業技術総合研究所 情報技術研究部門)

【講演概要】 クラウド上のデータベースとしては、従来のリレーショナルデータベースに比べてスケールアウト性に優れるNoSQLデータベースが適していると言われる。しかし、一般に、NoSQLデータベースの機能は、リレーショナルデータベースに遠く及ばず、アプリケーションプログラマの負担は増加する。本講演では、PaaS型のクラウドであるGoogle App Engine のNoSQLデータベース、データストアを例に取り、プログラマへのインパクトについて議論する。

【略歴】
1995年 東京大学工学系研究科 情報工学専攻博士課程修了、博士(工学)。同年 工業技術院電子技術総合研究所入所。2001年 独立行政法人産業技術総合研究所に改組、主任研究員。並列,分散、グリッド、クラウド等の研究に従事。
お昼休憩 12:40 〜 13:40
Session.3 13:40 〜 15:10
「高信頼クラスタシステムの構築」
笠野 英松((有)ネットワークメンター 代表取締役)

【講演概要】 高信頼クラスタシステムの構築に必要な要件を、システムハードウェア、ソフトウェアリソース、通信回線、データリンクインタフェース、IPデータグラム、サーバアプリケーション、データストレージ、などに階層化して、負荷分散、同期、監視、フェールオーバ、回避、復旧、などのHA/高信頼化対策を探る。

【略歴】
静岡大学理学部数学科卒。NEC、NCR、HP等にて基本ソフト/OS/通信ネットワークの研究開発に従事。電信電話技術委員会、日本フレームリレーフォーラム、日本情報処理開発協会などの委員を歴任。専門は、通信ネットワークおよびOS。
Session.4 15:30 〜 17:00
「仮想マシンを駆使するクラウドコンピューティング基盤」
加藤 和彦(筑波大学 大学院システム情報工学研究科 教授)

【講演概要】 今日に至るまでの仮想マシン研究開発の流れと代表的な技術を概観した後、クラウドコンピューティングにおいて仮想マシン技術を利用する必要性・意義を分かりやすく解説する。クラウド基盤システムにおいて、仮想マシンを活用する各種技法を説明すると共に、実際のクラウド基盤システムにおける具体的な活用事例を紹介する。

【略歴】
1962年生まれ。東京大学理学部情報科学科助手、筑波大学電子・情報工学系講師、助教授を経て、2004年より筑波大学大学院システム情報工学研究科教授。OS、分散システム、仮想計算環境、セキュリティ、クラウドコンピューティングの研究に従事。1990年情報処理学会研究賞、2005年同論文賞、2004年日本ソフトウェア科学会論文賞、各受賞。