セミナーの概要

8K TV放送を見据えた4K TV試験放送が本年6月に始まった。ハイブリッドキャストによる双方向マルチスクリーンサービスは昨年に、V-High放送は一昨年に始まり、現在V-Lowマルチメディア放送の検討が進められている。インターネットでは映像のモバイル視聴、ユーザによる映像生成と共有が広まっている。このように音声・画像・マルチメディア情報は、流通量と重要性が爆発的に拡大しており、その効率的な圧縮符号化・配信技術の必要性が高まっている。
JPEG・MPEGをワーキンググループに擁するISO/IEC JTC 1のサブコミッティSC 29は、音声・画像・マルチメディア情報符号化をスコープとし、過去に画像符号化技術JPEG・JPEG2000、映像符号化技術MPEG-2・MPEG-4 AVC・次世代映像符号化技術HEVC、メディア伝送技術MMT、ストリーミング技術MPEG-DASH、音声符号化技術MP3・AAC・ALSなどを標準化し、産業界に多大な貢献を成し遂げた。現在は高圧縮・高ビット深度・3D・スケーラブル拡張や画像・映像探索の標準化を進めている。日本はこれらの活動に、情報処理学会情報規格調査会を中心として大きく貢献しており、本年7月の各ワーキンググループおよびSC 29国際会合の開催国である。
本セミナーでは、実際に標準化に携わっている研究者から、年4回行われている標準化国際会合の最新情報を反映した技術解説をいただく。SC 29がカバーする技術領域を横断的に理解し今後の展望を議論することができる貴重な場としたい。

プログラム

オープニング 13:00-13:05

浅井 光太郎様浅井 光太郎(三菱電機 ISO/IEC JTC 1/SC 29 国際議長)
【略歴】1981年、東京大学工学部電気工学科卒業。同年、三菱電機(株)入社。以来、映像符号化・伝送技術の研究・応用開発、ITU-TやISO/IECの国際標準化活動に従事。1988年からMPEG標準化活動に参加。2006年からISO/IEC JTC 1/SC 29国際議長。同国内専門委員会委員。

セッション1 13:05- SC 29/WG 1標準化動向~JPEGの拡張と新プロジェクト~

SC 29/WG 1では画像符号化方式の国際規格を審議している。1994年に標準化したJPEG圧縮方式がカメラ機器等に採用され世界的に普及する中、デバイス性能の急速な向上を背景に同規格と高い互換性を持つ拡張規格の審議が活発化している。本講演では最新規格であるJPEG XTの標準化動向と技術内容を解説し、最新のプロジェクト動向を紹介する。

石川 孝明様講師:石川 孝明(早稲田大学 ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 1主査、SC 29国内委員会委員、およびSC 29/WG 11/Video小委員会委員)
【略歴】2005年、早稲田大学大学院国際情報通信研究科修士課程修了。2007年、同大学国際情報通信研究センター助手。2010年、同センター招聘研究員、現在に至る。画像符号化の研究と応用開発に従事。ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 1小委員会主査。SC 29/WG 11/Video小委員会委員。SC 29国内委員会委員。

セッション2 13:45- 最新動画像符号化規格HEVCとその拡張動向

最新の動画像符号化規格HEVCは2013年4月に規格書の第一版が発行され、スマートデバイスや4K試験放送等、徐々に対応製品やサービスが市場へ広がりつつある。ISO/IECとITU-T共同のHEVC標準化作業班JCT-VCでは、規格書第一版の発行後、色密度・ビット深度拡張、スケーラブル符号化拡張、スクリーンコンテンツ符号化拡張等の様々なHEVCの拡張規格の策定を進めている。本講演では、これら拡張規格の動向を中心にHEVCについて解説する。

峯澤 彰様講師:峯澤 彰(三菱電機)
【略歴】2008年、東京理科大学大学院理工学部電気工学専攻修了。同年、三菱電機(株)入社。以来、映像符号化・伝送技術の研究開発、国際標準化活動に従事。現在、三菱電機(株)情報技術総合研究所勤務。

セッション3 14:25- HEVC拡張による三次元映像符号化の標準化動向

高臨場な映像体験を実現する三次元映像として、裸眼での立体映像やカメラが設置されていない位置からの映像を提供する自由視点映像が期待されている。国際標準化団体MPEGとITU-Tの合同チームJCT-3Vでは、そのような新しい映像の効率的な伝送・蓄積を実現するために、多視点映像とそれに対するデプスマップで表現された三次元映像に対する符号化方式の国際標準化を進めている。本講演では、HEVCの拡張規格として標準化中の3D-HEVCについて、デプスマップの情報を利用した予測技術、デプスマップ符号化のための予測技術など、三次元映像符号化のための符号化技術を中心に解説する。

志水 信哉様講師:志水 信哉(NTT ISO/IEC JTC 1/SC 29国内委員会委員およびSC 29/WG 11/Video小委員会委員)
【略歴】2002年、京都大学工学部情報学研究科卒業。2004年、同大学大学院情報学研究科修士課程修了。同年、日本電信電話(株)NTTサイバースペース研究所入社。現在、NTTメディアインテリジェンス研究所研究主任。自由視点映像やライトフィールドなど三次元映像処理に関する研究開発に従事。2007年よりISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11(MPEG)国際標準化活動に参加。ISO/IEC JTC 1/SC 29国内委員会委員およびSC 29/WG 11/Video小委員会委員。博士(工学)。

休憩 15:05-

セッション4 15:15- MPEG Audio規格の最新動向

MPEGでは、現行のHD映像を超える4Kや8KのUltra-HD(UHD)に対応するオーディオコーデックとして、MPEG-H 3D Audioの標準化を進めている。3D Audioは、上方に配置されたスピーカを含め多数のスピーカを使用し、空間上のあらゆる方向からの音の再生を可能にすることで、これまでにない臨場感(広がり感や包まれ感)を実現している。また、オブジェクトオーディオ音源や球状マイクロホンアレー入力に対応することで、スピーカの位置や数を規定しない再生を実現している。本セミナーでは、3D Audio標準化の背景と狙い、またユースケースを紹介し、それを踏まえて3D Audioの全体構成及び新しく導入された技術について解説する。

知念 徹様講師:知念 徹(ソニー ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11/Audio小委員会幹事)
【略歴】1991年、都立大電気工学専攻修士課程修了。同年新日本製鉄㈱入社。以来、音声音響符号化技術に関する研究開発に従事。2003年、ソニー入社。近年は音声音響統合符号化システムの研究開発とMPEG-D USAC標準化活動、及び3次元音響符号化システムの研究開発とMPEG-H 3D Audio標準化活動に従事。ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11/Audio小委員会 幹事(2012年11月~)。ARIB音声符号化方式作業班 委員(2007年7月~)。

セッション5 15:55- 次世代ストリーミング規格MPEG-DASHの動向

HTTPプロトコルによるアダプティブストリーミング技術の国際規格であるMPEG-DASHは、ネットワーク帯域の変動に応じた最適なビットレートでの動画再生を実現するストリーミング技術である。スマートフォンをはじめとするネットワーク端末の増大と動画配信サービスの拡大がその背景にある。本講演では、その技術背景、標準化動向、技術概要、関連技術動向について説明する。

平林 光浩様講師:平林 光浩(ソニー ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11/Systems小委員会幹事)
【略歴】1986年より家電メーカで映像、音声LSI開発に従事した後、1991年ソニー(株)入社。業務用機器設計、メモリースティック開発などを経て、2000年より、メディアフォーマット開発に従事。MPEG Systems (MP4 File Format/MPEG-DASH)の標準化、MPEG国内システム小委員会幹事。2010年、IEC/TC100の国際標準化貢献によりIEC1907賞受賞。2014年 ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11の国際標準化貢献により国際規格開発賞受賞。ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11/Systems小委員会幹事。

セッション6 16:35- マルチメディア伝送規格MMTの最新動向

コンテンツ利用端末や伝送路の多様化を受け、MPEGでは新たなマルチメディア伝送規格であるMPEG Media Transport (MMT)を標準化した。MMTは新たな標準規格MPEG-Hのシステム技術であり、日本の4K/8Kスーパーハイビジョン放送で用いられる等、今後の実用化が期待されている。MMTを用いることで、MPEG-2 TSなどの従来の伝送規格では困難であった、複数の伝送路で伝送する映像や音声などを組み合わせてコンテンツを構成することが容易に実現可能となる。本講演では、MMTの特徴や今後の拡張を述べるとともに、応用事例を含めた最新動向を述べる。

青木 秀一様講師:青木 秀一(NHK ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11/Systems小委員会エキスパート)
【略歴】2003年、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。2013年、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。2003年にNHK入局。以来、放送技術研究所にて、IP技術を用いる放送システムの研究開発、ITU-R、MPEGでの国際標準化に従事。現在、スーパーハイビジョン放送システムの研究開発と国内外の標準化を進めている。博士(情報理工学)。ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11/Systems小委員会エキスパート。

挨拶 17:15-17:20

浅井 光太郎(三菱電機 ISO/IEC JTC 1/SC 29 国際議長)

交流会 17:20-18:30

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