イベント企画
トップコンファレンス5-2 暗号・秘密計算・プライバシー
9/14 15:30-17:30
第4イベント会場

座長:千田 浩司(群馬大学)

15:30-15:50 講演(1) 【タイトル邦題】 大規模秘匿グラフ分析
荒木 俊則(NEC セキュアシステムプラットフォーム研究所 主任研究員)
【原発表の書誌情報】 Toshinori Araki, Jun Furukawa, Kazuma Ohara, Benny Pinkas, Hanan Rosemarin, Hikaru Tsuchida: Secure Graph Analysis at Scale. CCS 2021: 610-629
【概要】 グラフ分析においてソート処理は重要な役割を果たしている。本研究では秘匿されたデータに適用可能であり、且つ、参加者の不正に対して堅牢なソート処理を提案した。提案手法によれば、100万要素からなるグラフの極大独立集合を数秒間で導出可能である。
【略歴】 2005年よりNECにおいてセキュリティに関する研究開発に従事し、主に秘密分散・秘密計算に関する研究を行ってきた。現在はAIのセキュリティを主たる研究領域としている。

ACM-CCS 2016 Best Paper Awards
15:50-16:10 講演(2) 【タイトル邦題】 ファジー署名の再検討〜生体情報に基づくより安全な認証システムに向けて
勝又 秀一(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 サイバーフィジカルセキュリティ研究センター 高機能暗号研究チーム 主任研究員)
【原発表の書誌情報】 Katsumata, S., Matsuda, T., Nakamura W., Ohara, K., Takahashi, K.: Revisiting Fuzzy Signatures: Towards a More Risk-Free Cryptographic Authentication System based on Biometrics, Proceedings of the 2021 ACM SIGSAC Conference on Computer and Communications (ACM CCS), pp.2046-2065 (2021).
【概要】 ファジー署名は、生体情報を秘密鍵として利用できる電子署名方式で、システムのどこにも秘密鍵を保管不要という特長がある。本研究では、暗号学的な安全性証明に必要な生体情報のエントロピーを求め、その実験的な導出手法を提案する。
【略歴】 2019年、東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻にて博士(情報工学)取得。同年、国立研究開発法人産業技術総合研究所に入所。耐量子計算機暗号やセキュアメッセージングを専門とし、2019年よりオックスフォード大学のスピンアウトPQShieldにも在籍。
16:10-16:30 講演(3) 【タイトル邦題】 段数を削減したSHA-256およびSHA-512に対する量子衝突攻撃
細山田 光倫(日本電信電話株式会社 NTT社会情報研究所 )
【原発表の書誌情報】 Hosoyamada, A., Sasaki, Y. (2021). Quantum Collision Attacks on Reduced SHA-256 and SHA-512. In: Malkin, T., Peikert, C. (eds) Advances in Cryptology – CRYPTO 2021. CRYPTO 2021. Lecture Notes in Computer Science, vol 12825. Springer. https://doi.org/10.1007/978-3-030-84242-0_22
【概要】 SHA-256やSHA-512を含むSHA-2に対する既存の(SHA-2専用の)衝突攻撃は、古典計算機だけが利用可能という設定におけるものであり、既存攻撃が破る段数はそれぞれ高々31段および27段であった。本研究では、量子計算機が利用可能という設定において38段SHA-256および39段SHA-512に対する衝突攻撃が可能となることを示した。
【略歴】 2014年京都大学理学部卒業。
2016年同大学大学院理学研究科修士課程修了。
同年日本電信電話株式会社入社、暗号の研究に従事し現在に至る。
2021年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。
IWSEC 2017 Best Paper Award 、SCIS論文賞(2018年)、Asiacrypt 2020 Best Paper Awardなど各受賞。
16:30-16:50 講演(4) 【タイトル邦題】 グラフの統計解析に向けた局所型差分プライバシー
村上 隆夫(産業技術総合研究所 )
【原発表の書誌情報】 Jacob Imola*, Takao Murakami*, Kamalika Chaudhuri (*: equal contribution): Locally Differentially Private Analysis of Graph Statistics, Proceedings of the 30th USENIX Security Symposium (USENIX Security 2021), pp.983-1000, 2021.
【概要】 本研究では,ユーザのプライバシーを強固に保護しつつ,ソーシャルグラフの統計解析を行う技術を提案する.具体的には,局所型差分プライバシーを満たしつつ,グラフの中の三角形(triangles)の数や,あるnodeとそれに隣接するk個のnodeからなる星(k-stars)の数などの部分グラフ数を求めるアルゴリズムを提案する.提案アルゴリズムの有効性を理論的・実験的に示す.
【略歴】 東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.博士(情報理工学).日立製作所 研究員,産業技術総合研究所 研究員を経て,2018年より産業技術総合研究所 主任研究員.2020年カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員.IEEE TrustCom 2015 Best Paper Award,2019年度船井学術賞などを受賞.専門分野はプライバシー保護,機械学習の安全性.
16:50-17:10 講演(5) 【タイトル邦題】 Virtual Secure Platform: TFHE上での5段パイプラインプロセッサの実行
松岡 航太郎(京都大学 大学院情報学研究科通信情報システム専攻佐藤研究室 修士)
【原発表の書誌情報】 Matsuoka, K., Banno, R., Matsumoto, N., Sato, T., & Bian, S. (2021). Virtual Secure Platform: A Five-Stage Pipeline Processor over TFHE. 30th USENIX Security Symposium (USENIX Security 21), 4007–4024.
【概要】 Virtual Secure Platform(VSP) は複数命令を有する汎用プロセッサを準同型暗号上で実装した最初のプラットフォームである。VSPは、クラウドコンピューティングのような計算オフロード環境において、データとデータが評価される関数の両方を攻撃者から保護する。VSPにおいて我々はプロセッサのゲート数を削減するためのカスタムISA、そのISAを用いたパイプライン機構を有するプロセッサ、C言語をカスタムISAにコンパイルできるツールチェイン、論理回路を暗号上で実行するための評価エンジン、およびCMUX Memoryと呼んでいる暗号上の高速なROMとRAMの実現法を設計・提案した。実験では、プロセッサのパイプライン機構とCMUX Memoryが性能向上に寄与すること、および先行研究であるFURISCに比べ約1600倍の高速化を達成したことを確認した。VSPの実装はOSSとして提供されている。
【略歴】 2021年 京都大学工学部電気電子工学科卒。2019年度IPA未踏プロジェクト スーパークリエータ。NHK学生ロボコン2019優勝、モンゴルで開催された世界大会に出場。2020年~2022年、IPA主催のセキュリティキャンプにてL2トラック講師。
17:10-17:30 講演(6) 【タイトル邦題】 プライベートなエンベディングベクトルと敵対的な再重み付けによるデータ合成
Seng Pei Liew(LINE株式会社 )
【原発表の書誌情報】 Liew, Seng Pei, Tsubasa Takahashi, and Michihiko Ueno. "PEARL: Data Synthesis via Private Embeddings and Adversarial Reconstruction Learning." International Conference on Learning Representations. 2022.
【概要】 本論文では、「Differential Privacy(差分プライバシー)」を保証しながら生成モデルを学習するフレームワーク「PEARL(Private Embeddings and Adversarial Reconstruction Learning)」について提案しています。
本フレームワークでは、機密データの特徴を抽出したエンベディングベクトルを厳密なプライバシー保証のもとに構築し、元のデータを再利用することなく深層生成モデルの学習を可能にするものである。
そのため、従来の差分プライバシーを保証する深層学習(DP-SGD等)とは異なり、余分なプライバシーコストやモデル制約が発生しない。
本論文では、特性関数によるエンベディングベクトルと敵対的な再重み付けによる目的関数を導入することで、本フレームワークを実現しました。
理論的に性能が保証されており、複数のデータセットに対する実証評価では、妥当なプライバシーレベルにおいて他の手法より性能が優れていることが示されました。
【略歴】 2017年東京大学理学系研究科物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。2018年日本電気株式会社中央研究所入社。2020年8月LINE株式会社入社。シニアリサーチャー。元マリーキュリーフェロー。元日本学術振興会特別研究員(DC1)。