イベント企画
ITと法、交渉ごと
9月19日(水) 9:30-12:00
第3イベント会場(D棟D25講義室)
【セッション概要】 ITが社会基盤になっている現在の高度情報化社会においては、システムの規範としてのITと、社会生活の規範としての法律に関する知識が重要になっています。本セッションでは、ITと法、交渉ごとに関する話題として、ITと個人情報保護法制、交渉や紛争解決をオンラインで行う動き、震災後の法律相談と紛争解決、リーガルサービスのアンバンドル化、知財関連の取扱など、多岐にわたる観点から解説を加えます。
9:30-10:00 講演(1) 情報通信技術と個人情報保護
福地 正明(川副・大神・福地法律事務所 弁護士)
【概要】 情報通信技術の発展に伴い、ICカードの利用やウェブページの閲覧を通じて事業者が個人情報を収集することが一般化して久しい。この間、国の個人情報に関するスタンスも大きく変化しており、2015年に行われた個人情報保護法の大改正においては、匿名加工情報に関する規定が新設されるなど、個人の権利利益の保護にとどまらず、「個人情報の適正かつ効果的な活用」を通じた「新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現」が法の目的に追加されるに至っている。このような政財界の動きの一方で、情報という目に見えないものを第三者が取得して利用するということに対して疑問や違和感を覚える個人も多いと考えられ、個人情報の取扱い方法や説明を誤ると、いわゆる「炎上」を招くことがある。本講演では、個人情報保護法上の基本概念を簡単に整理した上、個人情報取扱事業者がIT技術を利用して個人情報を利活用する際にどのような点に留意すべきかを事例を交えて紹介したい。
【略歴】 静岡県出身。1993年3月に東京大学法学部を卒業し、同年4月司法修習生に採用。1995年4月に検事任官し、8年間勤務した上で2003年に退官。同年4月に福岡県弁護士会で弁護士登録し、川副・大神法律事務所に入所。2008年に同事務所パートナーとなり、事務所名を川副・大神・福地法律事務所に変更。その後現在に至る。
10:00-10:30 講演(2) IT化と法化の交錯-エンパワメントされる個人をめぐって
入江 秀晃(九州大学 大学院法学研究院 准教授)
【概要】 ITと法の技術的方向性に関して、市民個人をエンパワーする側面での検討を行う。つまり人間の諸活動が情報技術によって置き換えられたり法によって制約を受けたりという、人間疎外や抑圧というマイナス面に着目するのではなく、むしろITと法によって個人の能力が拡張される側面を改めて注目することで、IT化と法化という進行中の現象についての一つの見方を提案し、聴衆を議論に誘う。具体的には、(1)交渉、紛争解決をオンラインで行う動き、(2)震災後の法律相談と紛争解決、(3)リーガルサービスのアンバンドル化といった話題に触れる予定である。
【略歴】 1969年大阪市生まれ。2011年3月東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。2011年4月より九州大学大学院法学研究院准教授。(財)日本ADR協会・ADR調査企画委員。仲裁ADR法学会理事。法社会学会理事。単著として『現代調停論』(東京大学出版会・2013年)がある。主な調停トレーニング講師経験として、日本仲裁人協会などの研修団体、弁護士会・司法書士会・社会保険労務士会・土地家屋調査士会・行政書士会などの法律専門職諸団体がある。
10:30-11:00 講演(3) IT化と1億総クリエイター化:知的財産権制度についての近い未来の話
吉岡(小林) 徹(東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任助教)
【概要】 情報技術は人々が創作活動とその成果の発信を行うことの障壁をこの40年の間、下げ続けてきた。1990年の段階ですでに「1億総クリエーター化」が指摘されてきたが、著作権制度を始めとする知的財産権制度は、必ずしもこのような事態を想定していないこともまた論じられてきた。それから20年以上が経ち、かつては人手で行わざるを得なかった、権利侵害が自動で行えるようになった。これは、侵害があっても発見できないというメカニズムに支えられてきた、権利の事実上のバランス調整を転換させることになる。また、従来工場でしか実施できなかった工業製品の製造が、モジュール化の進展と3Dプリンターを始めとする小ロット生産技術の発展により、個人の手でできるようになってきた。工業製品に係る権利の規律は別途行われてきたが、これが変化せざるを得ない状況にある。本講演では、このような変化の中で知的財産権制度のあり方を議論する。
【略歴】 1982年生まれ。2005年大阪大学法学部卒業、2007年大阪大学大学院法学系研究科修了、2015年東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻修了。博士(工学)。知的財産法を学んだ後、民間の政策調査機関で主に中央省庁及び独立行政法人から委託を受け知的財産政策及び科学技術政策に関する調査事業を担当。技術経営研究に転じ、2015年10月より一橋大学イノベーション研究センター特任講師、同11月より東京大学公共政策大学院特任講師(非常勤、兼務)、2016年10月より現職。知的財産マネジメント及び知的財産政策に関する実証研究、比較法研究を行う。
11:00-12:00 パネル討論 IT技術者に法律の知識はどれだけ必要か?
【概要】 パネルディスカッションに先んじて、個人情報保護や裁判に至らないまでの交渉ごと、あるいは知財関連の取扱いなどについて、実務家(弁護士)、法学系教員、工学系(経営科学)教員といったそれぞれの立場から、解説を加えてもらいます。それらの講演を踏まえて、ITのエンジニアが法律の知識をどれだけ備えておくべきか、システムの実装としてのITに関する知識に加え、社会実装としての法律に関する知識をどれだけ学ぶべきなのか、あるいは、それぞれの知識をどのような場面で活用すべきなのか、どのような問題に対応できるようにしておくべきなのかなどについて、パネルディスカッションを行います。
モデレータ:飯尾 淳(中央大学 文学部 社会情報学専攻 教授)
【略歴】 1970年岐阜県生まれ。1994年、東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了。同年(株)三菱総合研究所入社。2009年から東京農工大学国際センターの客員准教授を兼務。三菱総合研究所情報技術研究センター主席研究員を経て、2013年、中央大学文学部社会情報学専攻、准教授、兼、理工学研究所、社会科学研究所、研究員。2014年より、現職。人とシステムのインタラクションに関する研究に従事。
パネリスト:福地 正明(川副・大神・福地法律事務所 弁護士)
【略歴】 静岡県出身。1993年3月に東京大学法学部を卒業し、同年4月司法修習生に採用。1995年4月に検事任官し、8年間勤務した上で2003年に退官。同年4月に福岡県弁護士会で弁護士登録し、川副・大神法律事務所に入所。2008年に同事務所パートナーとなり、事務所名を川副・大神・福地法律事務所に変更。その後現在に至る。
パネリスト:入江 秀晃(九州大学 大学院法学研究院 准教授)
【略歴】 1969年大阪市生まれ。2011年3月東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。2011年4月より九州大学大学院法学研究院准教授。(財)日本ADR協会・ADR調査企画委員。仲裁ADR法学会理事。法社会学会理事。単著として『現代調停論』(東京大学出版会・2013年)がある。主な調停トレーニング講師経験として、日本仲裁人協会などの研修団体、弁護士会・司法書士会・社会保険労務士会・土地家屋調査士会・行政書士会などの法律専門職諸団体がある。
パネリスト:吉岡(小林) 徹(東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任助教)
【略歴】 1982年生まれ。2005年大阪大学法学部卒業、2007年大阪大学大学院法学系研究科修了、2015年東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻修了。博士(工学)。知的財産法を学んだ後、民間の政策調査機関で主に中央省庁及び独立行政法人から委託を受け知的財産政策及び科学技術政策に関する調査事業を担当。技術経営研究に転じ、2015年10月より一橋大学イノベーション研究センター特任講師、同11月より東京大学公共政策大学院特任講師(非常勤、兼務)、2016年10月より現職。知的財産マネジメント及び知的財産政策に関する実証研究、比較法研究を行う。