イベント企画
革新的コンピューティング
~技術レイヤー横断の研究開発による新たな基盤技術の創出~
9月19日(水) 15:30-17:30
第2イベント会場(C棟C31講義室)
【セッション概要】 ムーアの法則の終わりと共に、今までとは違ったアーキテクチャ、ソフトウェアを用いたコンピューティングの必要性が高まって来た。これに対応するため、今年度から、CREST、さきがけ、NEDOにより相次いで新しいコンピューティングに関するプロジェクトがスタートする。本イベントでは、CRESTプロジェクトの総括の坂井先生から、これから行うプロジェクトの目的に関して紹介していただく。また、対象分野の研究者から新しいコンピューティングの試みを紹介いただく。
15:30-16:00 講演(1) CREST「Society5.0を支える革新的コンピューティング技術の創出」の概要
坂井 修一(東京大学 情報理工学系研究科電子情報学専攻 教授)
【概要】 私たちの社会は、情報技術があらゆるところに浸透した超スマート社会(Society5.0)に変貌を遂げようとしています。超スマート社会の情報インフラは、巨大なクラウド群と無数のエッジから成ると考えられます。多くの場合、エッジにはセンサやアクチュエータがあり、これらを制御する超小型高性能コンピュータとネットワークインタフェースが備えられています。クラウドは、物理的に分散された多数のサーバとなりますが、論理的にはさまざまなサービスの総体として抽象化されることになると考えます。
 このためエッジ、クラウドのいずれにおいても、大量かつ多様なデータを扱うことになるため従来の情報処理技術の高度化などに加えて、人工知能(深層学習など)、量子計算、光計算などがキーテクノロジーとなります。現実の諸問題に一定の時間内で回答するリアルタイム技術も、多様化する社会のニーズに答えるべく高度化する必要があります。その上で、これらを統合し、システムとして高効率・省エネルギーで機能させるための新しい回路技術、アーキテクチャ技術、ソフトウェア技術が必要となります。
 本研究領域は、こうした近未来の超スマート社会を念頭に、従来技術の単純な延長では得られない新しいコンピューティング技術を研究開発することを目標とします。具体的には、以下の研究開発に取り組みます。
(1) 情報処理を質的に大転換させる新たなコンピューティング技術の創出
(2)アルゴリズム、アーキテクチャ等の技術レイヤーを連携・協調させた高効率コンピューティング技術の研究開発
 これらの研究開発により、高度な情報処理を活用したスマートロボット、スマート工場、自動運転、IoT、セキュリティ強化などによる超スマート社会(Society5.0)の実現に貢献します。
 本研究領域は、文部科学省の選定した戦略目標「Society5.0を支える革新的コンピューティング技術の創出」のもとに、平成30年度に発足しました。(以上CRESTホームページより)
【略歴】 1981年東大卒。東大大学院博士課程修了、1986年工学博士。電総研(現産総研)、MIT、筑波大学などを経て、現在、東大情報理工学系研究科教授。専門は情報システムとその応用、特に計算機アーキテクチャ、並列処理、スケジューリング、省電力情報処理、ディペンダブル情報処理。著書『論理回路入門』、『コンピュータアーキテクチャ』、『実践コンピュータアーキテクチャ』、『知っておきたい情報社会の安全知識』、『ITが守る、ITを守る ―天災・人災と情報技術―』等。情報処理学会フェロー。電子情報通信学会フェロー。IEEE、人工知能学会、ACM各会員。日本学術会議連携会員。
16:00-16:30 講演(2) NEDO「革新的AIエッジコンピューティング技術の開発」の位置づけと狙い
本村 真人(北海道大学 大学院情報科学研究科 教授)
【概要】 いわゆるAI技術の急速な進展により、それを支える基盤技術としてのHW技術・アーキテクチャ技術にも大きな注目が集まっている。米中をはじめとする諸外国でこの分野の大型プロジェクトが始まっている中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が今年度立ち上げる「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」の枠組みの中で進める「革新的AIエッジコンピューティング技術の開発」事業について、その位置づけと狙いを述べる。
【略歴】 1987年京都大学理学部修士、1996年同博士(工学)。1987年よりNECにてリコンフィギュラブルハードウェア、オンチップマルチプロセッサ等の研究開発と事業化に従事。1992年MIT客員研究員。2011年より北海道大学教授。リコンフィギュラブルアーキテクチャ/人工知能向けハードウェアアーキテクチャの研究などに従事。1992年IEEE JSSC Best Paper Award、1999年IPSJ年間最優秀論文、2011年IEICE業績賞を各受賞。
16:30-17:00 講演(3) NEDO「AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業」が目指すもの
中村 宏(東京大学 大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻 教授)
【概要】 2018年度より、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、AIチップ・次世代コンピューティングに関する研究開発事業を開始する。(参考:http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100944.html
この中の1つの事業である「AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業」の狙いと目指すものについて述べる。
【略歴】 1990年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了。工学博士。2010年より東京大学大学院情報理工学系研究科教授。2014年より2018年まで東京大学情報基盤センター長、2018年より東京大学総長特任補佐を兼務。ハイパフォーマンスコンピューティング、高性能・低消費電力VLSIシステムの研究に従事。情報処理学会より論文賞(1993年度、2012年度)、山下記念研究賞(1994年度)、坂井記念特別賞(2001年度)各受賞。情報処理学会フェロー。電子情報通信学会シニア会員、IEEE、ACM senior member。
17:00-17:30 講演(4) 準備中
杉林 直彦(NEC システムプラットフォーム研究所 技術主幹)
【概要】 我々は原子スイッチ素子及び原子スイッチ素子を活用したプログラマブルLSIの技術開発を進めてきた。これらの成果、実証状況について述べる。
【略歴】 1986年大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了。同年、日本電気株式会社に入社。以降、DRAMの製品開発、DRAM/MRAM/不揮発論理集積回路の研究開発に従事。現在、原子スイッチ素子、その活用回路、その設計ツール等の研究開発に従事。また、コーポレート事業開発本部にてそれらの事業化にも従事。