抄録
IF-005
Tensor Balancing on Statistical Manifold
杉山麿人(NII)・中原裕之(理研)・津田宏治(東大/理研/物材研)
テンソルをバランス化する.これは,N階テンソルにN-1階テンソルをN個掛けることで,すべてのファイバーに対して総和が1になるように正規化する操作である.2階テンソルである行列のバランス化は,行列同士を比べる際の前処理や,Wasserstein距離を効率的に近似するために用いられており,その一般化となっている.本研究では,ニュートン法を用いた2次収束する効率的なアルゴリズムを提案し,数値実験によって,既存手法より1,000倍から100,000倍程度高速にバランス化が達成できることを示す.このアルゴリズムの正当性を理論的に示すために,テンソルを統計多様体上の確率分布としてモデル化し,バランス化を部分多様体への射影として実現する.すると,ニュートン法で用いるヤコビ行列,すなわち多様体上での勾配が,メビウス反転公式と呼ばれる数え上げ理論での基礎定理を使って解析的に求まる.提案したモデルは,テンソルのバランス化に限らず,重み付きDAGやボルツマンマシンなど,様々な統計的機械学習のモデルを含んでいる.