イベント企画
画像・映像のプライバシー・イノベーション検討WGからの報告
~プライバシー問題で炎上せずに研究を進めるための処方箋~
9月12日(火) 13:00-15:00
第1イベント会場(2号館213号講義室)
【セッション概要】 人が映る画像・映像を用いた研究を行う際には、個人情報保護法とプライバシーの問題を考慮する必要があるが、大学等の公的機関は法律的には例外とされている。大学等で関連した研究を実施する際には、倫理委員会での審議が必要とされているが、この問題の専門家がいるとは限らず議論に時間がかかる。そこで、PRMU専門委員会では画像・映像のプライバシー・イノベーション検討WG(IPI-WG)を立ち上げ、大学等がこのようなデータを扱う場合のデータ取得、手順やデータ管理のガイドライン策定を目指している。本企画では、IPI-WGで検討しているガイドラインの中間報告を行い、大学での実施例をパネル討論で紹介、議論し、聴衆にも参加頂いて幅広く意見を求める。
司会:大西 正輝(産業技術総合研究所 人工知能研究センター 主任研究員)
【略歴】 1997年大阪府立大学工学部情報工学科卒業。2002年同大大学院博士後期課程修了。同年理化学研究所バイオ・ミメティックコントロール研究センター研究員を経て,2006年産業技術総合研究所情報技術研究部門研究員,現在人工知能研究センター主任研究員。カメラを用いた人の検出とその応用に関する研究に従事。博士(工学)。筑波大学システム情報系准教授(連携大学院)。北陸先端科学技術大学院大学客員准教授。
13:00-13:25 講演(1) 個人情報・プライバシーを含むカメラ映像の利活用に係る諸問題
坂本 静生(日本電気株式会社 第二官公ソリューション事業部 主席技術主幹)
【概要】 防犯カメラを中心とした関連の憲法・法律・条令や判例を紹介するとともに、防犯目的以外でカメラ映像を利活用する際のプライバシーに関わる課題と、主にマーケティング応用を考慮した解決へ向けた取り組みを述べさせていただきます。また大学研究機関がカメラ利活用に関する研究開発を進める上で、炎上のリスクに配慮した進め方について提案いたします。
【略歴】 早稲田大学大学院基幹理工学研究科修了。工学博士。画像処理・画像計測・画像認識・パターン認識、特にバイオメトリクス技術の研究開発及び事業化活動に従事。他にISO/IEC JTC1/SC17/WG4・WG11主査、ISO/IEC 7816-11国際エディタなど、国内外の標準化・委員会多数。
13:25-13:50 講演(2) 画像・映像とプライバシーに関する法規制の現在
小林 正啓(花水木法律事務所 弁護士)
【概要】 本年5月に改正個人情報保護法が施行され、顔や歩容等の特徴量情報も個人情報に該当しうることが明記された。但し、個人情報保護法の細則にあたる政令・通達やガイドラインにおいては、グレーゾーンも多い。本講演では、個人情報保護法制の現状について報告するとともに、画像を用いる研究機関が遵守するべきルールについて、検討を行う。
【略歴】 1992年弁護士登録 JST戦略的創造研究推進事業領域アドバイザー、JST START技術シーズ選抜育成PTアドバイザー 政府ロボット革命イニシアチブSWGコアメンバー、経産省・総務省IoT推進コンソーシアム カメラ画像利活用SWG NEDOロボット性能評価委員会オブザーバー 総務省情報通信政策研究所AIネットワーク社会推進会議「開発原則分科会」構成員 個人情報保護委員会カメラ画像の利活用の在り方に関する検討会委員 情報ネットワーク法学会。
13:50-14:15 講演(3) IPI-WGの中間報告およびコミュニティガイドラインのひな型の提案
美濃 導彦(京都大学 学術情報メディアセンター 教授)
【概要】 画像を利用したサービスを提供する産業界においては、経済産業省と総務省のIoT推進コンソーシアムにおけるガイドライン1、産業競争力会議でのガイドライン2等が提案、公表されている。これに対して、学術研究を推進するためのガイドラインは研究者コミュニティで議論しなければならない。公共空間で撮影された画像を利用した研究を進めるにあたっては、大学の倫理委員会の審査が必要であるが、研究者コミュニティとしてのガイドラインを制定しておけば、これをもとに議論ができる。この分野の研究を委縮させないために、明確なガイドラインと実施手順のひな型をPRMU研究会のもとに設置したIPI-WGで議論してきた。本講演では、これまでの議論の経過を振り返るとともに、ガイドラインの方向性と議論しているひな形の中間的な報告を行う。
1 www.meti.go.jp/press/2016/01/20170131002/20170131002-1.pdf
2 www.cocn.jp/thema95-L.pdf
【略歴】 京都大学工学部情報工学科卒業。同大大学院博士課程修了。京都大学工学部助手、助教授を経て、京都大学学術情報メディアセンター教授。京都大学学術情報メディアセンター長、京都大学総長室副室長、京都大学副理事、C.I.O、情報環境機構長を歴任。画像処理、人工知能、知的コミュニケーション関係の研究に従事。工学博士。IEEE、ACM、情報処理学会、電子情報通信学会、画像電子学会、日本ロボット学会、日本バーチャルリアリティ学会各会員。
14:15-15:00 パネル討論 コミュニティガイドラインの必要性
【概要】 人が映る画像・映像を用いた研究を行う際には、個人情報保護法とプライバシーの問題を考慮する必要がある。個人情報保護法では、情報管理の方法が規定されているが大学などの公的機関は例外とされている。一方、大学等で関連した研究を実施する際には、倫理委員会での審議が必要とされているが、この問題の専門家がいるとは限らず議論に手間や時間がかかる。そこで、大学・公的機関がこのようなデータを扱う場合のデータ取得、提示手順やデータ管理のガイドライン策定を目指している。本パネル討論では、講演者に具体的な研究事例をご紹介頂き、前段の講演を踏まえつつ、ガイドラインのあるべき内容、形式について議論する。
司会:前田 英作(NTT コミュニケーション科学基礎研究所 所長)
【略歴】 1961年生。1984年東京大学理学部生物学科卒業。1986年同大学院理学系研究科動物学専攻修士課程修了。同年日本電信電話(株)入社。以来、パターン認識、機械学習、自然言語処理、生物情報処理などの研究開発に従事。現在、同社コミュニケーション科学基礎研究所所長。工博。著書に「わかりやすいパターン認識」「コミュニケーションを科学する」「環境知能のすすめ」など。
ディスカッサント:谷口 倫一郎(九州大学 大学院システム情報科学研究院 教授)
【略歴】 1978年九州大学情報工学科卒業。1980年同大学院修士課程修了。九州大学大学院総合理工学研究科助手、助教授を経て1996年より現職。2011~2013年度同研究院長。2014年度より九州大学情報基盤研究開発センター長を併任。コンピュータビジョン、サイバーフィジカルシステム等の研究に従事。情報処理学会、電子情報通信学会フェロー。
ディスカッサント:出口 大輔(名古屋大学 情報連携統括本部情報戦略室 准教授)
【略歴】 2001年名古屋大学工学部卒業、2003年同大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了。2006年同研究科博士後期課程修了。博士(情報科学)。2006年同大学大学院工学研究科研究員、2008年同大大学院情報科学研究科助教、2012年同大情報連携統括本部情報戦略室准教授となり現在に至る。画像処理・パターン認識技術の開発とそのITSおよび医用応用に関する研究に従事。情報処理学会、電子情報通信学会、IEEE各会員。
ディスカッサント:佐藤 洋一(東京大学 生産技術研究所 教授)
【略歴】 1990年東京大学工学部機械工学科卒業。1997年カーネギーメロン大計算機科学部ロボティクス学科博士課程了.Ph.D in Robotics。東京大学生産技術研究所研究機関研究員、講師、助教授を経て、2010年より同大学生産技術研究所教授。コンピュータビジョンに関する研究に従事。2010年度日本学術振興会賞、2009年、2008年及び2006年電子情報通信学会論文賞、2010年情報処理学会50周年記念論文賞、1999年情報処理学会山下記念研究賞、1999年日本VR学会論文賞、ICPR2008 Best Industry Related Award等を受賞。
ディスカッサント:槇原 靖(大阪大学 産業科学研究所 准教授)
【略歴】 2001年大阪大学工学部卒業。2002年同大学大学院工学研究科博士前期課程修了。2005年同研究科博士後期課程修了。博士(工学)。同年同大学産業科学研究所特任助手、2006年同研究所助手、2007年同研究所助教、2014年同研究所准教授となり現在に至る。歩容認証を始めとするコンピュータビジョン・パターン認識に関する研究に従事。情報処理学会、電子情報通信学会、日本ロボット学会、日本機械学会各会員。