イベント企画
インターネットは心理学研究にFITするか?
9月14日(木) 9:30-12:00
第2イベント会場(2号館221号講義室)
【セッション概要】 従来の心理学では、データ取得のために室内での実験や講義室等での質問紙調査などが主に用いられてきた。一方で、近年の情報通信技術の発展によりクラウドソーシングを利用したオンライン上での心理データの収集が可能になってきた。時代はまさにインターネットによる心理学研究の黎明期である。本シンポジウムでは、オンラインでの心理学研究の基礎的な運用方法を押さえつつ、その強みと弱みを浮き彫りにし、さらに洗練された研究方法として発展させるための鍵を探る。ここでは最新のブラウザ実験技術や調査参加者の制御といったオンライン実験・調査に特有な問題に関する話題提供を行う。本シンポジウムに参加した皆さんが、帰ってすぐにでもオンラインで心理学研究を始めたくなることを約束する。
9:30-9:40 オープニング
司会:佐々木 恭志郎(早稲田大学 理工学術院 日本学術振興会特別研究員)
【略歴】 2016年3月に九州大学大学院人間環境学府博士後期課程修了。博士(心理学)。2014年4月から2016年3月まで日本学術振興会特別研究員DC1、2016年4月から2017年3月まで日本学術振興会特別研究員PD、2017年4月より日本学術振興会特別研究員SPD。現在に至る。主に感情に関する研究に従事してきたが、近年ではモノの所有感の形成メカニズムの解明を目指して研究を進めている。
司会:山田 祐樹(九州大学 基幹教育院 准教授)
【略歴】 2008年3月に九州大学大学院人間環境学府博士後期課程修了。博士(心理学)。2006年4月から2008年3月まで日本学術振興会特別研究員DC1、2008年4月から2012年3月まで日本学術振興会特別研究員PD、2012年4月から2013年9月まで山口大学時間学研究所助教、2013年10月より九州大学基幹教育院准教授。現在に至る。ヒトを含む動物のあらゆる認知メカニズムの解明を目指し、基礎・応用・動物実験などの多様な手法を用いて研究を行っている。
9:40-10:20 講演(1) オンラインで調べる認知と行動:インタフェース研究の観点から
鳴海 拓志(東京大学 大学院情報理工学系研究科 講師)
【概要】 クラウドソーシング等を活用して幅広い属性をもつ人々を対象に検証を行うという方法論は、多様な人が使うインタフェースを研究するための重要なアプローチになりつつある。それだけでなく、構築したインタフェースをサービスやアプリとして一般にも利用可能にし、多くの人が実利用するなかで得られる利用ログを解析することは、長期におけるインタフェースの効用や人々の行動変容の要因を解析する上で大いに役に立つ。こうした新しい方法論を使ったインタフェース研究について、「誰でも神プレイできるシューティングゲーム」、「消費行動を予測するアプリ消費予報」、「タスクの進捗を予測するアプリWillDo」等の、講演者らによる研究の実例を紹介し、その可能性や限界を議論する。
【略歴】 2011年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。2011年、同大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻助教、2016年より講師。博士(工学)。バーチャルリアリティや拡張現実感の技術と認知科学・心理学の知見を融合し、クロスモーダルインタフェース、人間拡張技術等の研究に取り組む。日本VR学会論文賞、文化庁メディア芸術祭優秀賞など、受賞多数。
10:20-11:00 講演(2) オンラインでの知覚実験の刺激制御法
細川 研知(NTT コミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 リサーチアソシエイト)
【概要】 視覚や聴覚など知覚の心理物理学的測定には刺激の厳密な統制が必要になるため、これらの実験は多くの場合暗室や防音室の中で行われ、必要に応じて特殊な機材やプログラムを用いる。知覚実験をオンラインで行う場合、環境や機材を整えることは難しく、セキュリティ上の観点からプログラムの配布にも制限がある。本講演では、筆者の開発したツールを題材として現在標準化されている技術で可能なオンライン知覚実験の範囲について概説する。また、最近の知覚のオンライン実験の動向を紹介し、オンライン化による知覚心理学の発展の方向性について論じるほか、知覚実験に伴う倫理的問題、プライバシーの問題についても議論する。
【略歴】 2015年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。2015年よりNTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチアソシエイト。博士(心理学)。視知覚研究を基盤として、ツール類の開発を通じて研究対象を拡大に取り組む。
11:00-11:40 講演(3) オンラインサーベイにおける参加者の努力の最小限化(Satisficing)に関する実験社会心理学研究
三浦 麻子(関西学院大学 文学部 教授)
【概要】 オンラインサーベイは、幅広い属性をもつ人々を研究対象にできることや、面接や紙ベースのサーベイでは困難な実施上の工夫(画像や音声刺激の活用や設問提示順序のランダマイズ等)を施しやすいことなど、大きなメリットがある。しかし一方で、協力者の低関与とそれによる(研究者にとって)「望ましくない」回答行動である努力の最小限化(Satisficing; 調査協力者が調査に際して応分の注意資源を割かない行動)が少なからず生じることも指摘されている。本講演では、オンラインサーベイにおいて努力の最小限化がどの程度生じ、それが本来得たいデータにどのような影響を及ぼすのかを実証的に検討した講演者らによる研究を紹介し、この問題に研究者がどう対応すべきかを論じる。
【略歴】 1995年大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程中退、1996年大阪大学助手、2004年神戸学院大学助教授を経て、現在関西学院大学文学部総合心理科学科教授。コミュニケーションが新しい「何か」を生み出すメカニズムを解明する心理学研究に従事。博士(人間科学)。
11:40-12:00 パネル討論
【概要】 講演内容を踏まえてインターネットによる心理学実験の可能性について議論する。
司会:佐々木 恭志郎(早稲田大学 理工学術院 日本学術振興会特別研究員)
【略歴】 2016年3月に九州大学大学院人間環境学府博士後期課程修了。博士(心理学)。2014年4月から2016年3月まで日本学術振興会特別研究員DC1、2016年4月から2017年3月まで日本学術振興会特別研究員PD、2017年4月より日本学術振興会特別研究員SPD。現在に至る。主に感情に関する研究に従事してきたが、近年ではモノの所有感の形成メカニズムの解明を目指して研究を進めている。
パネリスト:鳴海 拓志(東京大学 大学院情報理工学系研究科 講師)
【略歴】 2011年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。2011年、同大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻助教、2016年より講師。博士(工学)。バーチャルリアリティや拡張現実感の技術と認知科学・心理学の知見を融合し、クロスモーダルインタフェース、人間拡張技術等の研究に取り組む。日本VR学会論文賞、文化庁メディア芸術祭優秀賞など、受賞多数。
パネリスト:細川 研知(NTT コミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 リサーチアソシエイト)
【略歴】 2015年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。2015年よりNTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチアソシエイト。博士(心理学)。視知覚研究を基盤として、ツール類の開発を通じて研究対象を拡大に取り組む。
パネリスト:三浦 麻子(関西学院大学 文学部 教授)
【略歴】 1995年大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程中退、1996年大阪大学助手、2004年神戸学院大学助教授を経て、現在関西学院大学文学部総合心理科学科教授。コミュニケーションが新しい「何か」を生み出すメカニズムを解明する心理学研究に従事。博士(人間科学)。