会誌「情報処理」Vol.67 No.2(Feb. 2026)「デジタルプラクティスコーナー」

「DXで推進するドローン利活用」編集にあたって

石井一夫1

1公立諏訪東京理科大学

ドローン航路の進展とDXによる利活用

日本のドローン利活用は,政府が主導する「ドローン航路」の整備と,DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進によって本格化している.

ドローン航路とは,無人ドローンが往来できる空の道であり,経済産業省は2026年度からの航路登録制度開始を目指している☆1.この航路整備は,物流やインフラ点検など,都市部を含むあらゆる場所でのドローン利用を安全かつ効率的にする基盤となる.

DXにおけるドローンは,単なる機材ではなく,空撮や測量で得られるデータを活用し,業務改革を推進する重要なツールである.たとえば建設現場では,ドローン空撮による3Dモデリングや進捗管理が行われ,測量の省人化や作業の効率化を実現している.また,農業分野では,空撮データから農作物の生育状況を分析し,AIによる農薬や肥料の散布を自動化することで生産性を向上させている.さらに,物流航路の開拓も進んでおり,電力会社やJR東日本は送電網上空をドローン航路として活用する計画を進めている.こうしたデータ連携や業務自動化が,DXを加速させている.

ドローンの二面性:平和利用と軍事利用

ドローン技術の発展は,社会貢献をもたらす平和利用と,紛争の在り方を変える軍事利用という二面性を持ち合わせている.

軍事利用の著しい進展

元々軍事目的で開発されたドローンは,偵察,精密攻撃,自爆型攻撃など,戦術の様相を一変させた.操縦者が安全な場所から遠隔操作することで,人員を危険にさらすことなく作戦遂行が可能となり,紛争地域では徘徊型ドローンなども多用されている.日本の自衛隊も,偵察や輸送,災害対応にドローンを導入しており,攻撃型無人機の研究も進んでいる.

平和利用の例と課題

ドローンには,産業,物流,災害対策など幅広い平和利用があるが,いくつかの課題も存在する.

  • 産業利用:建設やインフラ点検におけるDX推進に貢献する一方で,高性能機材や運用にかかるコストが普及の妨げとなっている.
  • 物流・配達:過疎地や離島での配送手段として期待される.特に医薬品配送は,災害時や緊急時に迅速な輸送を可能とし,医療DXの中核を担う技術として注目されている.実証実験では,ドローンによる処方薬や検体の輸送が進み,在宅医療や遠隔医療と連動する新たな医療供給モデルの構築が進む.しかし,高重量の輸送や長時間飛行,山間部での通信・気象条件など課題も残る.
  • 災害対策:迅速な被災状況の把握や,孤立地域への物資輸送に活用され,防災DXを推進している.この分野の技術は,偵察や運搬といった軍事技術の転用や,自衛隊との連携によって発展している側面がある.

ドローン利活用の将来展望

ドローンの利活用は,技術革新と社会インフラ整備によって今後も拡大が見込まれる.

  • 技術革新:有線ドローンによる長時間飛行や大容量データ転送,AIによる自律飛行技術の向上などが進む.
  • 社会インフラ整備:ドローン航路やUTM(無人航空機交通管理システム)の整備が進み,安全で効率的な運航が実現する.
  • DXとの連携強化:医薬品配送をはじめ,ドローンが収集・運搬するデータや物資がクラウド解析・医療システムと連携することで,医療・防災・地域インフラのDX化がさらに加速する.

2030年には国内市場規模が1兆円を超えると予測されており,ドローンは社会の重要な要素として定着するだろう.しかし,軍事利用の進展や,それに伴う倫理的課題への対応も重要なテーマとなる.技術と社会の両面から,ドローンの持続可能な利活用が求められている.

本特集では,DXで推進するドローン利活用について,その現状の一端を把握できるよう,ドローン利活用を実践している5名の方に執筆をお願いした.DX推進によるドローン利活用今後の発展を期待したい.

招待論文

下問勝司氏の論文「ITで実現するドローンの安全性」では,ドローンの利活用が拡大する中での,安全性の確保が重要課題となっている点を取り上げている.従来のプロペラガードや衝突回避,通信冗長化などの安全機構に加え,ITによる高度な安全対策を紹介している.具体的には,コンパニオンコンピューターを用いた障害検知や通信の多重化,拡張バーチャルフェンス,パラシュート制御などにより,事故や遺失を未然に防ぐ仕組みを,実証実験を通じて解説いただいた.

茂庭遼太郎氏の論文「建設・⼟⽊現場におけるドローンと地上レーザー,ハンディレーザーを融合した三次元データ活⽤」は,建設・土木現場における三次元データ活用を取り上げている.ドローンを用いた測量関連の各種技術を融合し,共通座標系と品質指標で整合を確保している.役割分担により遮蔽・精度・コストの課題を補完し,統合点群からDEM(数値標高モデル)やオルソ画像を生成.出来形管理や維持管理に展開している.

Supriyant氏らの論文「A Web-Based Geographical Information System Integrated with a Deep Learning Model for Individual Oil Palm Mapping Using RGB Drone Imagery」は,インドネシアのアブラヤシ農園管理における個体樹木マッピングを効率化するため,RGBドローン画像を用いた深層学習モデル(YOLOv8)とWeb-GIS(地理情報システム)を統合したシステムを開発した例を紹介いただいた.

辰己賢一氏の論文「ドローンを活用した馬鈴薯の塊茎重予測」は,ドローンと機械学習を組み合わせて馬鈴薯の塊茎重を株単位で高精度に予測する手法を提案している.RGBおよびマルチスペクトルカメラで撮影した空撮画像から草高と植生指数(NDVI等)を算出し,一次・二次統計量を特徴量として抽出.BorutaやLASSOなどの特徴量選択により重要変数を抽出し,ランダムフォレストなどで塊茎重・塊茎数・平均塊茎重を予測している.結果,収穫1.5~2カ月前の空撮データから高精度な塊茎重予測が可能であることを示している.

吉井太郎氏の論文「ドローンとAIによる大型プラントにおけるDX推進」では,ドローンやAIを活用した「プラントDX」に焦点を当て,ロボティクス技術による点検・調査の効率化,データ自動解析による保全最適化の現状と課題を論じている.ロボットの高性能化,センサーの進歩,自己位置推定技術の発展が,持続可能な操業を支える鍵となっている.

ドローン利活用を取り巻く環境が急速に変化する中,本特集号において,稼働しているドローンシステムや開発中のシステムに関する貴重かつ最新の知見や事例をご寄稿いただいた執筆者の皆様に心より敬意を表する.本特集号の企画・編集にあたりご支援いただいた学会事務局の皆様,デジタルプラクティス専門委員会主査 斎藤彰宏氏,サブコーディネーターの森村吉貴氏および山崎賢人氏に厚く御礼申し上げる.

(2025年10月30日受付)

脚注

石井一夫(正会員)
kishii@rs.sus.ac.jp

公立諏訪東京理科大学教授.1987年静岡薬科大学卒業.1995年徳島大学大学院医学研究科博士課程修了.博士(医学).専門は,量子コンピューティングを用いた医療,気象,経済分野におけるビッグデータ分析と,ドローン利活用推進.本会シニア会員.博士(医学).

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