情報処理学会60年のあゆみ
第2編―情報技術標準化活動のあゆみ
第1章 標準化活動60年の軌跡

 

1.1 創立から50周年までの概略史

1.1.1 JTC 1の設立

本節の内容は「情報処理学会50年のあゆみ」第2編において,第2章標準化活動の発足と変遷(棟上昭男,石崎俊),および第4章規格活動の概要と特記すべき活動を参考に,要約・加筆したものである.

本会における情報技術分野の標準化活動は,1960年の学会設立直後から始まった.ISO(International Organization for Standardization)は1960年にコンピュータと情報処理分野のための専門組織(Technical Committee)TC 97を設置し,その次の年にはIEC(International Electrotechnical Commission)が同じタイトルのTC 53を設置した.この分野の国際標準化活動に対応するため,当時の工業技術院の委託を受ける形で学会内に国内対策委員会(1963年に規格委員会に改称)を設置した.以来,我が国の情報技術分野の国際標準化活動は,本会の活動の一環として継続されている.

その後,IEC TC 53は1963年にISO TC 97に吸収され,TC 97に1本化されていたが,1980年代に入るとIECも再び独自に乗り出す動きが出てきた.重複の無駄を避けるため,1987年にはISOとIEC双方の傘下に合同技術委員会ISO/IEC JTC 1(Joint Technical Committee One)Information Technologyが設置された.当時規格委員会の副委員長の高橋茂が国際的に主導的役割を果たした1人であり,学会はこれに先んじること1986年に規格委員会を現在の情報規格調査会へと改組拡充し,通商産業省(現経済産業省)所管の日本工業標準調査会(JISC,現日本産業標準調査会)の委任を受ける形で国内のJTC 1対応活動を行うこととなった.第1回のJTC 1総会は,1987年11月に東京で開催された.

1.1.2 国内対応

ISO/IECに対して我が国を代表する加盟団体はJISCであるが,以前から実務はそれぞれの分野で種々の団体に委託され,これらの団体がそれぞれ国内委員会を設けて,国際的な動きに対応してきた.本会設立当時の常務理事であった和田弘(当時電気試験所電子部長)が,主務官庁の通商産業省工業技術院と交渉の結果,ISO/TC 97とIEC/TC 53への対応は本会に委託されることになり,学会は1961年8月の理事会でその受け入れを決定した.これが情報処理学会における標準化の始まりであり,以降ISO/IEC JTC 1の対応を務めている.

1986年には,電気学会電気規格調査会を参考にし,規格委員会を情報規格調査会へと改組した.

情報規格調査会の委員は,次の6委員種別で組織するものとした.

1号委員:情報処理学会会長,副会長および財務担当理事

2号委員:情報処理学会正会員のなかから選定した35名以内

3号委員:専門委員会委員長およびこれに準ずる他団体所属情報技術標準化関連委員会の委員長

4号委員:情報技術標準化関連機関からの推薦

5号委員:一定口数以上の規格賛助会費を納入するものからの推薦

6号委員:一定口数に満たない規格賛助会費を納入するもののなかから選定した規格賛助員からの推薦

ただし,2012年には,賛助員企業の費用負担と権利のバランスを見直した結果,6号委員を廃止した.

また,情報規格調査会の下に,情報規格調査会の運営面について担当する規格役員会とJTC 1に対応し技術面を審議する技術委員会を設けた.さらに,技術委員会の下には次の3種の専門委員会を構成した.

第1種専門委員会:

ISOおよびIECの情報技術標準化活動を対象とし,原則としてSCに対応して設置するもの.

第2種専門委員会:

国際的には対応するものはないが,標準化が望ましい分野について,国際的な提案を準備するために設置するもの.

第3種専門委員会:

国際規格のJIS化の原案作成のために設置するもの.

第1種専門委員会には,JTC 1のSCに1対1で対応する専門委員会を設け,またSCにWG(Working Group)があり,別途対応が必要な場合には,専門委員会の下に小委員会を設けるという構成をとった.

なお,情報規格調査会の運営を円滑に推進するために運営委員会を設置していたが,情報規格調査会の活動の主体である専門委員会委員長と,大口賛助員とから規格役員が意見をうかがう場とすることを,2012年の規格総会で明確化した.

1.1.3 JTC 1と情報規格調査会の2009年までの活動

JTC 1は発足時点で17のSCから構成され,発足当時から現在まで残っているSCはSC 2,SC 6,SC 7,SC 17,SC 22,SC 23,SC 24の7つであるが,その後新設されたSC 25はSC 13とIEC/SC 83を統合したものであり,SC 27はSC 20を母体にしているため発足当時のSCが9つ残っているというのが実態を表している.その後2009年の時点で,上記9つのSCに加えてSC 28,SC 29,SC 31,SC 32,SC 34,SC 35,SC 36,SC 37,SC 38が2009年までに新設された.

これらの中で,日本にとって国策上および産業上重要なテーマとしてSC 2(文字コード),SC 23(ディジタル記録媒体),SC 29(メディア符号化),SC 34(文書の処理と記述の言語),SC 28(オフィス機器)の幹事国を日本が引き受けた.SC 34の議長国は韓国だが,そのほかの4つのSCは日本が議長国を務めている.

2008年11月には日本の奈良でJTC 1総会を開催し,18カ国,115名の参加があった.ここでは,JTC 1議長の交代があり,Scott Jameson氏から次期JTC 1議長にKaren Higginbottom氏が指名された.

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