情報処理学会60年のあゆみ
第1編―学会60年のあゆみ
第2章 学会活動10年間のあゆみ

本章では,創立50周年を迎えた2010年度以降現在(2020年3月末時点)に至る10年間の情報処理学会(以下,本会と記す)の運営や事業活動の成果を示す.

2.4 調査研究活動

2.4.1 調査研究運営委員会

情報処理学会における学術活動の中核を担うといっても過言ではない研究会活動を管理監督するのが調査研究運営委員会である.この10年間は表2.4.1に示す責任者によって運営されてきた.この調査研究運営委員会の傘下にコンピュータサイエンス領域,情報環境領域,メディア知能情報領域の3つの領域が設けられ,各研究会はそのいずれかに属している.また,ある特定分野の研究開発を短期間集中的に行うなど,新しい研究分野となりうる萌芽的研究など,より自由で機動性に富んだ研究活動を促進することを目的として,研究グループも設けられている.研究グループも研究会同様に,原則としていずれかの領域に属することになるが,2018年より,研究会の揺籃期にある研究グループや領域横断型あるいは特定の領域に属するのが困難と思われる研究グループについては,研究グループ側の希望により調査研究運営委員会が直接管理するという区分を選択することも可能となった.この制度自体は2005年度にも導入されたものであるが,2010年度の領域制の見直しにともない実質的に廃止されていた.しかし,従来の領域に捉われない新しい研究グループの立ち上げなどを容易にするために改めて導入されたものである.

表2.4.1 調査研究運営委員会(歴代委員長・領域委員長)

これ以外の活動として,2011年度に領域の見直しを行い,2012年度からはフロンティア領域の名称をメディア知能情報領域と変更して現在に至っている.2012年には研究会活動のグローバル化を重点的に推進するため,調査研究担当理事が国際担当を担務することになった.これにともない,研究会活動のグローバル化を目指したさまざまな検討が行われた.また,2011年度に日本学術会議が取りまとめ公開された「理学・工学分野における科学・夢ロードマップ」の情報学分野の策定に協力し,さらに2013年度には日本学術会議の2014年度版「情報学分野の科学・夢ロードマップ2014」を策定し,提出した.これは関連学会の案と統合され,「理学・工学分野における科学・夢ロードマップ2014」として2014年9月に公開された.

以下では,研究会が行ってきた活動について少し詳しく述べる.

2.4.2 研究会

最新の研究成果を発表し専門家が議論を行う場を提供することは研究会の中心的活動であることはいうまでもない.進歩が激しい情報技術分野では,研究会は新設,統合,解散を絶えず続けてきた,2019年度の研究会構成を表2.4.2に示す.また現在活動中の研究会の運営状況の推移の詳細については本会のWebページ(https://www.ipsj.or.jp/kenkyukai/manual/sigsetsuritsu.pdf)を参照いただけば,活動の流れが一覧できる.従来から,研究会は小回りが利くだけに,新しい運営方法を取り入れるのが早いという特徴があったが,それ以上に情報処理分野の技術の遷移が早くなってきたこともあり,その対応として研究グループという仕組みを有効活用することが検討された.その結果として,調査研究運営委員会直属で研究グループを設置するという区分が導入された.なお,この研究グループは研究会に移行することは必須ではないが,移行する場合にはいずれかの領域に属する必要がある.この制度にのっとり,2019年度にオープンサイエンスと研究データマネジメント(RDM)研究グループが新設された.

表2.4.2 研究会の構成

2.4.3 シンポジウム等

研究会は研究発表会以外にも,研究成果の発表討論の機会を提供するシンポジウムを活発に開催してきた.その開催状況は表2.4.3に示すとおりである.これらの行事は研究会の財源としての役割も果たしている.また,研究会は国際会議の主催も行ってきた.開催状況は資料2.4.1の国際会議に含めて掲載する.

表2.4.3 シンポジウム

2.4.4 表彰

研究活動に対する賞のなかで調査研究運営委員会が受賞者を選定するものとして,山下記念研究賞が設けられている.これは1987年に研究賞として創設され,研究会およびシンポジウムでの発表論文のなかから特に優秀な論文の発表者に授与される賞である.1994年からは,資金を寄贈いただいた初代会長山下英男の名を冠して山下記念研究賞と改称され現在に至っている.

また,コンピュータサイエンス領域では,優秀な研究・技術開発,人材育成,および研究会・研究会運営に貢献したなど,特に顕著な功績のあったものにコンピュータサイエンス領域功績賞を,各研究会・シンポジウムで特に優秀な発表を行った若手会員,もしくは,それと同等以上の実績をあげた若手会員にコンピュータサイエンス領域奨励賞を贈呈している.また,それ以外にも,研究発表会・シンポジウム・国際会議での発表等や,トランザクションに掲載された論文に対して,各研究会が独自で授与している賞が多数存在する.これらの賞の受賞者は人数が多く,大変残念であるが,山下記念研究賞の氏名のみを資料2.4.2として示す.表彰対象の詳細は本会のWebサイトの下記のページをご覧いただきたい.https://www.ipsj.or.jp/award/sho_index.html

[参考文献]

1)村山優子:IFIP―情報処理国際連合―近況報告,情報処理,Vol.56, No.3, pp.288–295(2015).
2)斎藤俊則:会議レポート IFIP WCCE2017から得られたもの―そしてWCEE2021 in Hiroshimaに向けて,情報処理,Vol.58, No.11, pp.1040–1041(2017).
3)旭 寛治:特別寄稿 CITP制度のIFIP IP3認定について,平成29年度CITPフォーラム/JUASアドバンスド研究会活動報告書,pp.1–4(2018).
4)村山優子:IFIP―情報処理国際連合―近況報告,情報処理,Vol.60, No.3, pp.255–263(2019).
5)岡部寿男,湊 真一:2019年 IPSJ/IEEE-CS Young Computer Researcher Award紹介,情報処理,Vol.60, No.10, pp.1002–1004(2019).
6)岡部寿男:2019年 IPSJ/ACM Award for Early Career Contributions to Global Research紹介,情報処理,Vol.60, No.10, pp.1005–1006(2019).
7)中村素典:国際会議SAINTの運営―SAINT2011の開催に向けて,情報処理,Vol.52, No.2, pp.225–230(2011).

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