清水市代女流王将vs.あから2010速報

 平成22年10月11日の対局では、あから2010は無事終局まで指し続け、86手で清水女流王将が投了、あからの勝ちとなりました。新聞社やTV局など多数のメディアの注目を集め、立ち見がでるほどの解説会場も大いに盛り上がりました。インターネットでも多くの方々がこの対局を観戦して下さり、対戦結果は日本国内のみならず世界中に報道され、情報処理学会による情報処理技術の進歩の一端を示すことができ、50周年記念イベントとしての対局を成功裏に終えることができました。
 一回限りの勝負事ではどのような結果もあり得たところですが、今回の対局では情報処理学会の期待通りのあから2010の棋力を棋譜に残すことができたと自負しております。また、この対局を通じてプロ棋士の将棋に対する姿勢など、多くの新しい発見や感動を得られたことも大きな収穫でした。
 今回の成功は、35有余年に及ぶコンピュータ将棋開発の積み重ねとともに、広くゲーム情報学、機械学習、並列分散処理技術といった情報処理学会が長年培ってきた技術力を基礎にして得られたものです。
 コンピュータ将棋はプロ棋士の棋譜や思考といった先人の叡智に学び、ここまで進化を遂げることができました。これからも、単なる人間と冷徹な機械の戦いの場としてではなく、お互いの能力を尊重し高め合うための道標として、驕ることなくさらに研鑽を積んで参りたいと存じます。情報処理学会は、今後も様々な分野で研究開発を進め、人類に貢献していきたいと考えております。
 最後になりますが、今回の挑戦を受けていただいた日本将棋連盟、素晴らしい熱戦で応じて下さった清水市代女流王将、そして会場と計算機を提供して下さった東京大学大学院情報理工学系研究科に改めて感謝いたします。

使用機器(2010年10月15日追記)

ハードウエア部
−東京大学情報理工学系研究科クラスタ:
 -Intel Xeon 2.80GHz, 2 cores 106台
 -Intel Xeon 2.40GHz, 2 cores 60台
             小計 166台 332 cores

−科学研究費補助金「特定領域研究」情報爆発時代に向けた新しいIT基盤技術の研究, InTriggerクラスタ:
 -Intel X5560 2.80GHz, 8 cores 10台
 -AMD Opteron 2380 2.4GHz, 8 cores 2台
 -Intel E5410 2.33GHz, 8 cores 9台
             小計 21台 168 cores

−東京大学、GPS所有クラスタ:
 - Intel X5570 2.93GHz, 8 cores 1台
 - Intel X5470 3.33GHz, 8 cores 1台
 - Intel X5365 3.00GHz, 8 cores 1台
 - AMD Opteron 2376 2.3GHz, 8 cores 4台
 - AMD Opteron 280 2.4GHz, 4 cores 1台
 - Intel Core2 Quad Q6700 2.66GHz, 4 cores 1台
             小計 9台 64 cores

−電気通信大学、Bonanza所有クラスタ:
 - Intel X5680x2, 12 cores 4台
 - Intel W3680, 6 cores 1台
 - Intel Core i7 980X, 6 cores 1台
 - Intel W3440, 4 cores 1台
             小計 7台 64 cores

−YSS所有マシン:
- Intel i980X 3.3GHz, 6cores 1台

−バックアップマシン:4プログラムそれぞれについて1台ずつ
 -CPU: Xeon W3680 3.33GHz 6cores
 -Memory: 24GB (DDR3 UMB ECC 4GBx6)
             小計 4台 24 cores
--
合計
208台, 658 cores

注: 一部、ハードウェアトラブルにより利用しなかったものがあります
注: コア数については物理コア数で統一しました

対戦前の挨拶



 清水女流王将は、女流棋士として男性プロ棋士相手にも数々の戦績を残され、名実ともに女流トップの方であるとともに、淑やかさの中に意志の強さを秘めた素晴らしい方であるとお見受け致しました。
 しかし、今回の対局では日本将棋連盟の代表として戦われることでありますので、我が情報処理学会は、対戦にあたり容赦せず、コンピュータ将棋協会の叡智を集めたソフトウェアと、その実力を十分発揮できるハードウェアからなる「あから2010」を用意し、全力を挙げて戦います。
 結果は申すまでもなく、日本将棋連盟の名代としての清水女流王将を、抜く手も見せず一刀両断とするでありましょう。

平成22年10月11日
一般社団法人情報処理学会会長 白鳥 則郎




 太古の昔から日本人は自然界のあらゆる事物に人格を見出す民族であり続けています。日本人は機械に対しても寛容であり、機械に人格を感じることさえ普通のことです。このことは、かなたの小惑星から戻って来た人工惑星に強い愛着を持つことからもよく理解できます。私は、このイベントは決して人間対機械という構図で捉えるべきではなく、今日というこの日は、機械が機械として人間の世界で認められた画期的な日として、歴史に刻まれると思っています。これから、長年に亘って、将棋の世界は、人間が人間として、機械が機械として、入り乱れて戦うという次のステージに入るのではないでしょうか。そのような歴史的な日に立ち会うことができて大変幸せです。人間である清水女流王将にも、機械であるあから2010にも、真剣勝負を期待しております。

平成22年10月11日
東京大学大学院情報理工学系研究科長 萩谷 昌己


対戦の様子



大盤解説場の様子



終了後の記者会見


懇親会