A Study on Structural and Semantic Analysis for Presentation Content Management

(邦訳:プレゼンテーションコンテンツ管理のための構造・意味分析に関する研究)
 
王 元元
京都産業大学コンピュータ理工学部 研究員

[背景]MOOCにおける大量のプレゼンテーションコンテンツの利用
[問題]大量のプレゼンテーションコンテンツの検索・生成・閲覧支援が不十分
[貢献]コンテンツの構造・意味分析技術を生かしたe-ラーニング支援システムの開発


 近年,発表スライドと講義・講演を撮影した映像などの異種メディアを組み合わせたマルチメディアコンテンツがインターネット上に大量に公開され,e-ラーニングなどの教育に多く利用されている現状である.たとえば,CourseraやiTunes Uでは,教育に関する動画が多数公開されている.また,VideoLectures.NETでは,講義や会議の発表はスライドとともに録画されたプレゼンテーションコンテンツも蓄積されている.

 本研究では,e-ラーニングを支援するために,プレゼンテーションコンテンツの主な3つの問題点に対するアプローチを提案し,その応用について検討している.具体的には,1. 従来のスライド検索では,スライド間に存在する関連情報は閲覧者が容易に把握できないという問題に対して,プレゼンテーションコンテンツの特性に応じたスライド間の意味的関係自動判定方式を提案している.2. 従来のスライド自動生成方式では,発表者の好みに合うスタイルのスライドが生成できないという問題に対して,スライドの表現スタイルの抽出方式を提案している.3. プレゼンテーションコンテンツの概要を閲覧者が容易に把握することは困難であるという問題に対して,プレゼンテーション文脈の提示方式を提案している.

 本研究に取り組んだ3つの課題については,以下で述べる.

【スライド間の意味的関係を用いたコンテンツの検索支援】
1)シーン間に存在する意味的な関係を用いて複数のコンテンツ間の関連シーンを統合することにより,それらのコンテンツを要約する手法を提案している.また,この要約方式を用いたシーン統合視聴システムを開発した.
2)スライド間における単語間の意味関係とスライドのインデント構造との組合せから意味的な関係を抽出する手法を提案している.また,この手法に基づく内容が詳細に書かれているスライドの意味的ランキング方式,検索されたスライドの理解を支援するスニペット生成方式を実現した.

【スライドの表現スタイルに基づくコンテンツの生成支援】
スライドのインデント構造に基づく既存のスライドの表現スタイルの抽出手法を提案している.また,この手法に基づき,発表者の好みに合う既存のスタイルを利用するスライドのアウトライン生成方式を実現した.

【プレゼンテーション文脈を用いたコンテンツの概観把握支援】
1)スライドのインデント構造を用いてプレゼンテーションにおける文脈にかかわる単語の抽出手法を提案している.また,この手法に基づき,プレゼンテーション文脈をクイックブラウズできるようなインタフェースを開発した.
2)プレゼンテーションコンテンツから,コンテンツの全体像を表す構造にトピックと画像をレイアウトし,Zooming User Interface (ZUI)を用いてナビゲーション機能を付与した対話的ポスターを生成する方式を開発した.

 以上のように,本研究は,人間とコンテンツのインタラクションにおけるコンテンツを検索,生成する方式の提案を行い,新しい教育形態であるe-ラーニングにおいてプレゼンテーションコンテンツを利活用できる情報環境の構築への可能性を示したものである.
 


 (2014年5月30日受付)
取得年月日:2014年3月
学位種別:博士(環境人間学)
大学:兵庫県立大学



推薦文
:(データベースシステム研究会)


本研究はプレゼンテーションコンテンツを対象とし,ユーザのコンテンツ理解の観点から,大量のプレゼンテーションコンテンツの自動組織化と利活用を促進するための技術について論じている.e-ラーニング支援技術やコンテンツの構造・意味分析は先駆的な研究分野であり,今後ますます重要になるものと期待される.


著者からの一言


博士号の取得に得た経験と達成感は,私にとっては大きな財産でもあったが,指導教官のご指導や研究室の皆様の支援を賜わって,初めてできるものだと思います.無論,博士号取得自体は,一人前の研究者になるには程遠いと認識しているが,今日までコツコツと努めたことはそのゴールに近づくものであると確信しています.今後もプロの研究者を目指してやっていこうという志をもっています.