(邦訳:都市部における干渉緩和のためのWi-Fiチャネルの品質予測と自律制御に関する研究)
梶田 宗吾 (株)スペースタイムエンジニアリング ソフトウェアエンジニア |
キーワード
電波干渉 | 機械学習 | 通信品質予測 |
[背景]パプリックスペースにおけるWi-Fi需要の高まり
[問題]都市Wi-Fi過密化と無秩序な利用による電波干渉
[貢献]Wi-Fiアクセスポイントのチャネル制御による干渉低減
パブリックスペースにおけるWi-Fiの可用性向上やユーザビリティ強化に向けた動きが世界的に活発となっている.その一方で,人口集中都市の中心部ではWi-Fiアクセスポイント(AP)数は増加の一途を辿っており,過密環境における混沌とした周波数利用状況に拍車をかけている.特に,管理者による制御下にある環境とは異なり,都市環境では無秩序な利用による電波干渉が通信品質に与える影響が無視できず,高効率な電波活用による新規サービス参入の促進やロバストな社会基盤の実現という観点から,自律適応性の高い干渉対策手法が望まれる.そこで,本研究では多数のAPの混在により混雑をきわめる都市部の2.4GHz Wi-Fi環境において,対象とするAPにおける周波数再利用を自律的に効率化させることを目的としたチャネル制御手法を提案する.
この実現のため,第1に,各チャネルで予想される被干渉の程度を簡易に把握する手法を設計した.手法では,対象とするAPにおいてIEEE802.11 MACフレーム観測を導入し,得られる各チャネルでの干渉トラフィックとRSSIならびに隣接チャネルの使用パターンに基づいた,相対的なチャネル品質を予測する関数を構築する.予測関数は事前に代表値を用いた網羅的シミュレーションとその重回帰分析によって構築し,その設計時にはなるべくシミュレーション総数を抑制しながら網羅性を維持する工夫をしている.
第2に,対象とするAPにおけるチャネル選択の精度を向上するため,切替時のトラフィック移動に伴うチャネル状況の変化を捉える仕組みを予測関数に導入した.これにより,トラフィック飽和に基づく分類機と飽和時にどれほど厳しい状態にあるのかを定量化する重回帰式によって構成される予測関数は,対象APが各チャネルを実際に利用したときの通信性能の,全チャネルにわたる傾向を捉えることが可能であることを明らかにした.
第3に,提案した手法をより現実的な都市環境において評価するため,大阪市におけるトラフィック実測結果と大阪Wi-Fi電波マップを利用した都市シナリオを構築した.都市シナリオではOpenStreetMapにより提供されている建造物の情報も活用し,実際に稼働するAPのチャネルや位置,トラフィックを再現している.構築したシナリオにおいても,対象APが手法により選ばれたチャネルを利用することで,最良の通信品質に到達可能であることを確認した.
以上により,自律的なチャネル制御へ向けた,パッシブで簡易なフレーム観測によるチャネル選択支援が可能になる.これにより,各AP単位での干渉の少ないチャネル選択により,相互的な干渉影響の低減に貢献する.
[貢献]Wi-Fiアクセスポイントのチャネル制御による干渉低減
パブリックスペースにおけるWi-Fiの可用性向上やユーザビリティ強化に向けた動きが世界的に活発となっている.その一方で,人口集中都市の中心部ではWi-Fiアクセスポイント(AP)数は増加の一途を辿っており,過密環境における混沌とした周波数利用状況に拍車をかけている.特に,管理者による制御下にある環境とは異なり,都市環境では無秩序な利用による電波干渉が通信品質に与える影響が無視できず,高効率な電波活用による新規サービス参入の促進やロバストな社会基盤の実現という観点から,自律適応性の高い干渉対策手法が望まれる.そこで,本研究では多数のAPの混在により混雑をきわめる都市部の2.4GHz Wi-Fi環境において,対象とするAPにおける周波数再利用を自律的に効率化させることを目的としたチャネル制御手法を提案する.
この実現のため,第1に,各チャネルで予想される被干渉の程度を簡易に把握する手法を設計した.手法では,対象とするAPにおいてIEEE802.11 MACフレーム観測を導入し,得られる各チャネルでの干渉トラフィックとRSSIならびに隣接チャネルの使用パターンに基づいた,相対的なチャネル品質を予測する関数を構築する.予測関数は事前に代表値を用いた網羅的シミュレーションとその重回帰分析によって構築し,その設計時にはなるべくシミュレーション総数を抑制しながら網羅性を維持する工夫をしている.
第2に,対象とするAPにおけるチャネル選択の精度を向上するため,切替時のトラフィック移動に伴うチャネル状況の変化を捉える仕組みを予測関数に導入した.これにより,トラフィック飽和に基づく分類機と飽和時にどれほど厳しい状態にあるのかを定量化する重回帰式によって構成される予測関数は,対象APが各チャネルを実際に利用したときの通信性能の,全チャネルにわたる傾向を捉えることが可能であることを明らかにした.
第3に,提案した手法をより現実的な都市環境において評価するため,大阪市におけるトラフィック実測結果と大阪Wi-Fi電波マップを利用した都市シナリオを構築した.都市シナリオではOpenStreetMapにより提供されている建造物の情報も活用し,実際に稼働するAPのチャネルや位置,トラフィックを再現している.構築したシナリオにおいても,対象APが手法により選ばれたチャネルを利用することで,最良の通信品質に到達可能であることを確認した.
以上により,自律的なチャネル制御へ向けた,パッシブで簡易なフレーム観測によるチャネル選択支援が可能になる.これにより,各AP単位での干渉の少ないチャネル選択により,相互的な干渉影響の低減に貢献する.
(2019年5月31日受付)