Intelligent Middleware for Healthy Motion Gaming

(邦訳:UKI: 健康的なモーションゲーミングのためのインテリジェントミドルウェア)
 
Paliyawan Pujana
立命館大学 総合科学技術研究機構 専門研究員

 キーワード
モーションゲーム  健康促進ゲーム 動き分割

[背景]モーションゲームを普及させる余地がある

[問題]費用対効果が低い開発と不適切な運動による悪影響
[貢献]既存ゲームの健康的なモーションゲーミング化


 モーションゲーミングはゲームコントロールに体の動きを必要とするゲームプレイの一種である.運動や身体活動を促進するための有効な手段としていくつかの既存研究で実証されている.それにもかかわらず,その潜在能力を制限するいくつかの要因がある.以下にその3つの要因と解決策を説明する.

 まず,モーションゲームは一般的に特定のデバイスでプレイするために開発されているものである(例として,Microsoftで開発されたKinect).開発者の観点からは,優れたモーションゲームを構築するに当たってキーボードゲームよりも人件費と時間がかかるにもかかわらず,出来上がったゲームが一部の対応デバイスでしかプレイできないため,あまり利益が出ないと見込まれている.そのため,市場で入手可能なモーションゲームは少ない.この解決策として,本研究では既存のあらゆるキーボードゲーム(アプリ)をジェスチャ操作に適応させることができるユニバーサルミドルウェア(UKI)☆1 を開発した.UKIはプレイヤの動きを検出すると,それをマウスクリックまたはキーボードのイベントに変換し,当該アプリへの入力として送信する.UKIにより,対象アプリのソースコードを変更することなくジェスチャの相互インタラクションを統合したシステムが構築可能となる.

 次に,UKIを使うことでユーザがゲームプレイに使用される新しい動作を定義することができるが,動きを検出するためのルールを定義することが困難であるという課題があった.そこで自動検出ためのモジュールを構築することにした.その際に動き検出において重要な前段階である動き分割の既存のアプローチを改善する必要性が出てきた.既存手法は不正確であるが高速か,正確であるが遅いかのいずれかに分類できる.両者の弱点を克服しながらそれぞれの潜在的な利点を最大限に引き出すために,ハイブリッド型の手法を開発し,その有用性を確認した.

 最後に,モーションゲームから引き起こされる怪我のリスクが従来の研究で見落とされていることを発見した.それを受けてゲームプレイ中にプレイヤの健康指標を監視および促進する2つのインテリジェントなメカニズムを提案した. 第一のメカニズムはプレイヤの行動を認識し,プレイヤに元気に動かすように促す対戦格闘ゲームAIで,もう1つはゲームプレイ中にどのような動作をするべきかをプレイヤに勧めるインテリジェントアシスタント(IA)と呼ばれるUKIのモジュールである. ユーザ評価実験を実施した結果,AIとIAがいずれも健康指標を大幅に改善することを示した.

☆1 https://sites.google.com/site/icelabuki/ 

 

 (2019年5月11日受付)
 
取得年月日:2018年9月
学位種別:博士(工学)
大学:立命館大学



推薦文
:(ゲーム情報学研究会)


本論文は,健康的なモーションゲーミングを実現するためのミドルウェア,その前処理に必要な動きセグメンテーション法および応用時の健康指標を監視し促進する2つの知的メカニズムに関する内容である.同ミドルウェアはいくつかの健康促進ゲームおよび国外研究グループの防災避難訓練システムに使用されている点が評価できる. 


研究生活


研究生活は私の人生で最も実りある時間のひとつです.私が知りたかった疑問点に答えるための学びの機会とその仮説を検証する機会をもたらしました.毎日が楽しみでいっぱいでした.それは克服すべき新たな挑戦を常に提供してくれる遊び場のようでした.極端なことをいうと,好奇心を刺激するものが豊富にあるファンタジーの世界のようです.私は知識の海で宝物を発見し,私の想像を超えた神秘的な世界での冒険からの経験を積むのを楽しんだ.教授や同僚から,私が学んだ分野に関する貴重な知識だけでなく,視野を広げられるような人生の教訓から多くのことを学びました.本研究を支援してくれたすべての方々,とりわけ,国費奨学金という形で,学費を免除してくれた立命館大学および生活費を支給してくれた文部科学省に感謝したいと思います.私は日本で学位を取得したことに誇りに思います.