伊藤 隆朗 ソフトイーサ(株) |
[背景]情報可視化の需要の増加
[問題]情報可視化の導入に要する実装の手間の多さ
[貢献]プロトタイプ制作と実システムへの実装の両方を支援する開発環境
[問題]情報可視化の導入に要する実装の手間の多さ
[貢献]プロトタイプ制作と実システムへの実装の両方を支援する開発環境
情報可視化とは,人間のデータ理解を支援するために,CGを活用して抽象的なデータを視覚的に表現することである.現在,情報可視化はさまざまな分野で利用されている.また,近年のデータ量の増加から,情報可視化を自らのシステムに利用したいという需要は高く,今後も発展が期待される分野だと考えられる.
システムにおいて情報可視化を有効活用するためには,そのシステムのデータや利用目的に応じた視覚的な表現方法,すなわち,情報可視化手法を設計することが重要である.情報可視化手法は,手法の選択肢が広い上に,適切な手法の範囲が狭い.さらに,設計した手法が妥当か否かの検証には,その可視化手法のための可視化処理の実装が必要となる.そのため,設計者には可視化処理の実装が繰り返し求められる.その対策として,開発現場では,実装が容易な環境下でプロトタイプを制作し,手法の妥当性が確認できた後に,実システムに再実装することがよく行われる.しかし,そのような実装の手間の多さは情報可視化の利用を妨げる一因と考えられる.本研究では,情報可視化の利用促進のため,その妨げとなる実装の手間を軽減することを目的に,プロトタイプ制作と実システムへの実装の両方を支援する開発環境を構築した.
プロトタイプの制作作業の本質は,可視化手法をプログラムとして記述することにある.手法の記述に対して,これまでにビジュアルインタフェースを用いる利点が示されてきた.本研究では,その利点を継承しつつ,さらに,従来形式のUIがデータの流れを開発者に提示していないという点に着目し,情報可視化手法の記述のためのデータフロービジュアル言語と,その言語を用いたUIを開発した.データフロービジュアル言語には,多様な情報可視化手法を簡潔に記述できるように,データを視覚的な値へと変換する変換方法と視覚的な値をもとに図形を描くマークを構築部品として用意した.開発したUIが,使いやすさを向上させたことを,被験者実験を通して確認した.また,可視化手法の記述例を通して,多様な可視化手法を簡潔に記述可能なことを示した.
システムへの実装では,従来,プロトタイプ環境で実装した処理を,実システムで用いられているプログラミング言語や描画API等に合わせて再実装する手間が発生することがあった.その手間を軽減するために,さまざまな環境を考慮した埋め込み可能な実行環境を設計した.組み込み用スクリプト言語による実行環境を設計し,その実行環境を埋め込む際の手間を少なくするようなインタフェース関数を設計した.そして,構築した開発環境に,その組み込み用スクリプト言語のソースコードを出力する機能を加え,さまざまな実システムの開発において,構築した開発環境を利用可能にした.
構築した開発環境の実システム開発への利用可能性を検証するために,実際の情報可視化に関する研究に利用した.その研究は,時間軸を用いた量的データの可視化手法を提案し,さまざまなバリエーションの手法を実験ツールに実装して,読み取りに関する比較調査を行うものであった.構築した開発環境を利用し,実験ツールの作成を支援できることを確かめた.さらに,その研究の結果,時間軸を用いることで,量的データを提示するための視覚的属性の種類を増やせることが分かった.
システムにおいて情報可視化を有効活用するためには,そのシステムのデータや利用目的に応じた視覚的な表現方法,すなわち,情報可視化手法を設計することが重要である.情報可視化手法は,手法の選択肢が広い上に,適切な手法の範囲が狭い.さらに,設計した手法が妥当か否かの検証には,その可視化手法のための可視化処理の実装が必要となる.そのため,設計者には可視化処理の実装が繰り返し求められる.その対策として,開発現場では,実装が容易な環境下でプロトタイプを制作し,手法の妥当性が確認できた後に,実システムに再実装することがよく行われる.しかし,そのような実装の手間の多さは情報可視化の利用を妨げる一因と考えられる.本研究では,情報可視化の利用促進のため,その妨げとなる実装の手間を軽減することを目的に,プロトタイプ制作と実システムへの実装の両方を支援する開発環境を構築した.
プロトタイプの制作作業の本質は,可視化手法をプログラムとして記述することにある.手法の記述に対して,これまでにビジュアルインタフェースを用いる利点が示されてきた.本研究では,その利点を継承しつつ,さらに,従来形式のUIがデータの流れを開発者に提示していないという点に着目し,情報可視化手法の記述のためのデータフロービジュアル言語と,その言語を用いたUIを開発した.データフロービジュアル言語には,多様な情報可視化手法を簡潔に記述できるように,データを視覚的な値へと変換する変換方法と視覚的な値をもとに図形を描くマークを構築部品として用意した.開発したUIが,使いやすさを向上させたことを,被験者実験を通して確認した.また,可視化手法の記述例を通して,多様な可視化手法を簡潔に記述可能なことを示した.
システムへの実装では,従来,プロトタイプ環境で実装した処理を,実システムで用いられているプログラミング言語や描画API等に合わせて再実装する手間が発生することがあった.その手間を軽減するために,さまざまな環境を考慮した埋め込み可能な実行環境を設計した.組み込み用スクリプト言語による実行環境を設計し,その実行環境を埋め込む際の手間を少なくするようなインタフェース関数を設計した.そして,構築した開発環境に,その組み込み用スクリプト言語のソースコードを出力する機能を加え,さまざまな実システムの開発において,構築した開発環境を利用可能にした.
構築した開発環境の実システム開発への利用可能性を検証するために,実際の情報可視化に関する研究に利用した.その研究は,時間軸を用いた量的データの可視化手法を提案し,さまざまなバリエーションの手法を実験ツールに実装して,読み取りに関する比較調査を行うものであった.構築した開発環境を利用し,実験ツールの作成を支援できることを確かめた.さらに,その研究の結果,時間軸を用いることで,量的データを提示するための視覚的属性の種類を増やせることが分かった.
(2016年5月31日受付)