(邦訳:近接光源を対象とした照明環境の推定に関する研究)
青砥 隆仁 奈良先端科学技術大学院大学 博士研究員 |
[背景]簡便かつ正確な照明環境情報取得の需要
[問題]近接光源の位置および放射輝度分布の推定
[貢献]少数の観測からの照明環境の推定
光源環境の推定は,写実的な画像を生成するフォトリアリスティックレンダリングや観測された画像から物体の形状や反射特性を推定するインバースレンダリングなど,さまざまな技術において必要とされる技術である.光源環境を推定するために,光源がシーンから十分遠方に存在するという無限遠点光源を仮定して光源環境の推定が行われてきた.しかし,光源が十分に遠方にない近接光源を対象とした場合,光源の大きさや照明に付随するレンズやリフレクターなどにより生じる光源の非等方な放射輝度分布の影響や,物体上の位置と光源との位置関係により変化する距離と入射方向の変化を考慮する必要が生じ,単純なモデルを用いて光源環境を正確に表現することができない.
この問題に対し,本研究では光源環境を4次元の光線空間としてモデル化し,(1)光源の位置の推定,(2)光源の放射輝度分布を推定,それぞれに特化した手法により光源環境に関する情報を容易にかつ少数の観測画像のみから推定可能な枠組みを提案した.
(1)光源の位置の推定
光源位置を推定するために,参照物体を用いた光源位置の計測が一般的になされており,より広い環境に存在する光源位置をより精確に推定する手法が求められる.従来,三角測量に基づく手法は,光源位置の推定精度が高いことが知られていた.しかし,三角測量を行うために鏡面反射光を利用するという性質上,金属などの鏡面の材質でできた参照物体が用いられてきた.しかし鏡面物体は,光が反射する方向が一方向に限定されるという性質上,「より広い環境」「より精確」どちらかの要求しか満たすことができない.そこで本研究では,従来使われてこなかった透明な材質,中空の形状の参照物体を用いた.本研究は,この中空透明球体の持つ特殊な幾何学的な性質を利用することで,上記2つの性質を満たすことを達成している.
(2)光源の放射輝度分布の推定
光源の放射輝度分布を獲得するための手法として,光源をさまざまな位置・方向から直接観測する手法が古くから行われてきた.この計測にかかる時間を削減するために,少数の観測画像とCGレンダリング技術を用い光源の放射輝度分布を推定する陰影解析に基づく手法が提案されてきた.従来の陰影解析に基づく手法は,参照物体の形状の工夫や,観測系に特殊な光学系を挿入など観測される情報の質を変化させる研究がなされてきた.これに対し,本研究では,光線の放射輝度に関する事前知識を導入する方法を提案している.観測される明るさと光線強度の関係から導かれる光線強度の上界および下界を制約条件として導入することで,参照物体が平面という単純なものであったとしても,光源の放射強度を安定かつ高精度に放射輝度分布の推定を達成した.本研究で用いた光線強度に対する上界・下界の制約は,従来の参照物体の形状を推定する手法にも簡単に導入することが可能であるため,既存の手法の精度を容易に上げることが可能である.
この問題に対し,本研究では光源環境を4次元の光線空間としてモデル化し,(1)光源の位置の推定,(2)光源の放射輝度分布を推定,それぞれに特化した手法により光源環境に関する情報を容易にかつ少数の観測画像のみから推定可能な枠組みを提案した.
(1)光源の位置の推定
光源位置を推定するために,参照物体を用いた光源位置の計測が一般的になされており,より広い環境に存在する光源位置をより精確に推定する手法が求められる.従来,三角測量に基づく手法は,光源位置の推定精度が高いことが知られていた.しかし,三角測量を行うために鏡面反射光を利用するという性質上,金属などの鏡面の材質でできた参照物体が用いられてきた.しかし鏡面物体は,光が反射する方向が一方向に限定されるという性質上,「より広い環境」「より精確」どちらかの要求しか満たすことができない.そこで本研究では,従来使われてこなかった透明な材質,中空の形状の参照物体を用いた.本研究は,この中空透明球体の持つ特殊な幾何学的な性質を利用することで,上記2つの性質を満たすことを達成している.
(2)光源の放射輝度分布の推定
光源の放射輝度分布を獲得するための手法として,光源をさまざまな位置・方向から直接観測する手法が古くから行われてきた.この計測にかかる時間を削減するために,少数の観測画像とCGレンダリング技術を用い光源の放射輝度分布を推定する陰影解析に基づく手法が提案されてきた.従来の陰影解析に基づく手法は,参照物体の形状の工夫や,観測系に特殊な光学系を挿入など観測される情報の質を変化させる研究がなされてきた.これに対し,本研究では,光線の放射輝度に関する事前知識を導入する方法を提案している.観測される明るさと光線強度の関係から導かれる光線強度の上界および下界を制約条件として導入することで,参照物体が平面という単純なものであったとしても,光源の放射強度を安定かつ高精度に放射輝度分布の推定を達成した.本研究で用いた光線強度に対する上界・下界の制約は,従来の参照物体の形状を推定する手法にも簡単に導入することが可能であるため,既存の手法の精度を容易に上げることが可能である.
(2016年6月13日受付)