(邦訳:携帯電話ベースコンテキストアウェア交通状態推定)
Tran Minh Quang(トラン・ミン・クウアン) 国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 特任研究員 |
[背景]携帯電話コンテクストを用いた定量的交通状況推定
[問題]少ない情報量で高精度の交通状況を推定
[貢献]適応的フィードバック型交通状況推定モデル
本研究では携帯電話から取得できるコンテクストを用い,交通状況を推定するための3階層からなるフレームワークを提案している(図1).第1層にある携帯電話は,リアルタイムに交通情報データを収集し,そのデータをシステムサーバにいつ送信するかを決定する.第2層にあるシステムサーバは交通状況を推定し,その結果をユーザの携帯電話およびインターネット上の情報サーバに提供する.推定された交通状況は,さらなる活用のために第3層のデータベースに更新結果として蓄積されていく.
提案システムの目的は,携帯電話から取得したデータを用いて定量的な交通状況を正確に提供することである.ここでの問題は,携帯電話によって取得されたデータは交通状況の推定に不十分であるという点と,必ずしもすべての携帯電話が交通情報データをシステムサーバに送信するとは限らないことである.本研究は,ある道路区間内の車の速度とその道路区間を占める車の密度を推定回路内で再利用する適応的フィードバック回路により,交通情報を提供する携帯電話の数が少ない場合,または,その数が不確定な場合でも高精度な推定が可能な新しいモデルを提案している.
[ 交通状況定量化モデル ]
信頼性の高い交通状況推定システムは,交通渋滞を定性的に推定できるだけでなく,十分な粒度で定量的にそれを提供できなければならない.本研究で提案する交通状況定量化モデルは,ある道路区間内の車の速度とその道路区間を占める車の密度を別々に推定し,その後,それらの値を適切なモデルに統合する.最終的に,交通状況は-1(最良)と+1(最悪)の間の値をとるGoodness値で定量化される.これによって,利用者(ドライバー)は,交通状況の良し悪しを把握することが可能になる.
[ 適応的フィードバック型速度-密度推定モデル ]
提案システムは,収集されるデータが多いほど高精度の交通状況推定が可能であり,その収集データ量は,対象道路区間を走行している全自動車数のうち,システムサーバにデータを送る自動車数の割合(penetration rate)に依存する.常に十分なpenetration rateを保証し,かつ,それを正確に推定するのは困難であるが,本研究における適応的フィードバック型速度-密度推定モデルでは,penetration rateが低い,あるいは,不確定であっても,高精度な交通状況推定を可能にする.
評価実験を通して,提案した交通状況定量化モデルが,利用者(ドライバー)が交通状況の良し悪しを理解するのに十分粒度の高い交通状況情報を提供できることを明らかにした.さらに,適用的フィードバック型速度-密度推定モデルが,22%程度のpenetration rateであっても,70%の推定精度を保証できることを明らかにした.Penetration rateが25%以上になった場合,提案手法による推定精度は常に90%以上となる.これは本研究において要求される推定精度を十分に満たしている.
[問題]少ない情報量で高精度の交通状況を推定
[貢献]適応的フィードバック型交通状況推定モデル
本研究では携帯電話から取得できるコンテクストを用い,交通状況を推定するための3階層からなるフレームワークを提案している(図1).第1層にある携帯電話は,リアルタイムに交通情報データを収集し,そのデータをシステムサーバにいつ送信するかを決定する.第2層にあるシステムサーバは交通状況を推定し,その結果をユーザの携帯電話およびインターネット上の情報サーバに提供する.推定された交通状況は,さらなる活用のために第3層のデータベースに更新結果として蓄積されていく.
提案システムの目的は,携帯電話から取得したデータを用いて定量的な交通状況を正確に提供することである.ここでの問題は,携帯電話によって取得されたデータは交通状況の推定に不十分であるという点と,必ずしもすべての携帯電話が交通情報データをシステムサーバに送信するとは限らないことである.本研究は,ある道路区間内の車の速度とその道路区間を占める車の密度を推定回路内で再利用する適応的フィードバック回路により,交通情報を提供する携帯電話の数が少ない場合,または,その数が不確定な場合でも高精度な推定が可能な新しいモデルを提案している.
[ 交通状況定量化モデル ]
信頼性の高い交通状況推定システムは,交通渋滞を定性的に推定できるだけでなく,十分な粒度で定量的にそれを提供できなければならない.本研究で提案する交通状況定量化モデルは,ある道路区間内の車の速度とその道路区間を占める車の密度を別々に推定し,その後,それらの値を適切なモデルに統合する.最終的に,交通状況は-1(最良)と+1(最悪)の間の値をとるGoodness値で定量化される.これによって,利用者(ドライバー)は,交通状況の良し悪しを把握することが可能になる.
[ 適応的フィードバック型速度-密度推定モデル ]
提案システムは,収集されるデータが多いほど高精度の交通状況推定が可能であり,その収集データ量は,対象道路区間を走行している全自動車数のうち,システムサーバにデータを送る自動車数の割合(penetration rate)に依存する.常に十分なpenetration rateを保証し,かつ,それを正確に推定するのは困難であるが,本研究における適応的フィードバック型速度-密度推定モデルでは,penetration rateが低い,あるいは,不確定であっても,高精度な交通状況推定を可能にする.
評価実験を通して,提案した交通状況定量化モデルが,利用者(ドライバー)が交通状況の良し悪しを理解するのに十分粒度の高い交通状況情報を提供できることを明らかにした.さらに,適用的フィードバック型速度-密度推定モデルが,22%程度のpenetration rateであっても,70%の推定精度を保証できることを明らかにした.Penetration rateが25%以上になった場合,提案手法による推定精度は常に90%以上となる.これは本研究において要求される推定精度を十分に満たしている.

図1 MC-TESの3階層アーキテクチャ
(2013年6月24日受付)