中村 美惠子 明治大学先端数理科学インスティテュート(MIMS)研究員/東京芸術大学 教育研究助手 |
[背景]情報整理ツールと情報創出ツールの違い
[問題]知的創造支援する認知ツールのインタラクションデザイン
[貢献]認知ツール設計における指針を提案
本研究では,人間の知的創造活動を支援するためのコンピュータと人とのインタラクションについて検討している.人間の知的創造活動の基本は,種々の情報の中から関連を見いだし,またそれらを組み合わせることによって新たな情報や知見を創出することであると言える.知的創造活動の第一歩として,人間は情報を自らの中に取り込む必要がある.情報を効果的に取り込むため,また,取りこんだ情報相互の関連や組み合わせを考えることから新たな気づきを誘発するためのインタラクションデザインの検討が必要である.
現状では,知的創造活動を行うために,個人が使用しているツールは,コンテンツを美しく整形し人に見せるためにデザインされたものが多い.それらは,情報を取捨選択したり,そこに至るまでの個人の思考の履歴を消去するものであると言える.しかし,知的創造活動とは,種々の情報をそのコンテキストまで含めたかたちで表現し,概観すること,それによって,情報の背後にある関係に気づいたり,情報同士の組み合わせによってその先に続く情報を推測することである.情報相互の関係や構造などを試行錯誤的に考えるためには,情報をそぎ落としたり,思考の過程を消去してしまうことは望ましくない.
本研究で目指す認知ツールは,個人の「思考の道具」となるものであり,コンテンツの作成者も享受者も自分自身であるという立場に立つ.コンテンツを作成することが最終目標ではなく,作成されるコンテンツ自体も個人の思考を支援する一要素となる.コンテンツ作成過程において,情報を取り込み,人間の思考を深めることのできるインタラクションデザインを追求する.
その検討のために,人間の認知プロセス(知覚・認知・理解・記憶)に関する認知科学的・心理学的アプローチから導出された知見を調査するとともに,これまでに提案されてきた知的創造活動支援ツールの目的やその支援範囲を明らかにしている.また,認知ツール自体の目的とそれにより必要とされる機能の再確認も重要であると考える.例えば,認知ツールとしてのメモ帳は書き留めるという行為によってただ情報を記録として残すためだけではなく,書き留める行為による記憶促進,書き留められた内容を視覚からフィードバックすることによる情報整理や記憶促進などの目的にフォーカスすべきである.また後から見直したときに,その内容を思い出しやすくなっているなどの効果も促進されなければならない.本研究で取り上げる認知ツールについては,その認知ツールが,人間のどのような知的活動の支援を期待され,また支援すべきなのかに立ち戻って考えている.
これらの検討のもと,システムの構築と評価実験を行い,知的創造活動の初期段階の情報取り込みと発想や気づきを促す支援のための認知ツール設計の原則をボトムアップ的に構築している.
[問題]知的創造支援する認知ツールのインタラクションデザイン
[貢献]認知ツール設計における指針を提案
本研究では,人間の知的創造活動を支援するためのコンピュータと人とのインタラクションについて検討している.人間の知的創造活動の基本は,種々の情報の中から関連を見いだし,またそれらを組み合わせることによって新たな情報や知見を創出することであると言える.知的創造活動の第一歩として,人間は情報を自らの中に取り込む必要がある.情報を効果的に取り込むため,また,取りこんだ情報相互の関連や組み合わせを考えることから新たな気づきを誘発するためのインタラクションデザインの検討が必要である.
現状では,知的創造活動を行うために,個人が使用しているツールは,コンテンツを美しく整形し人に見せるためにデザインされたものが多い.それらは,情報を取捨選択したり,そこに至るまでの個人の思考の履歴を消去するものであると言える.しかし,知的創造活動とは,種々の情報をそのコンテキストまで含めたかたちで表現し,概観すること,それによって,情報の背後にある関係に気づいたり,情報同士の組み合わせによってその先に続く情報を推測することである.情報相互の関係や構造などを試行錯誤的に考えるためには,情報をそぎ落としたり,思考の過程を消去してしまうことは望ましくない.
本研究で目指す認知ツールは,個人の「思考の道具」となるものであり,コンテンツの作成者も享受者も自分自身であるという立場に立つ.コンテンツを作成することが最終目標ではなく,作成されるコンテンツ自体も個人の思考を支援する一要素となる.コンテンツ作成過程において,情報を取り込み,人間の思考を深めることのできるインタラクションデザインを追求する.
その検討のために,人間の認知プロセス(知覚・認知・理解・記憶)に関する認知科学的・心理学的アプローチから導出された知見を調査するとともに,これまでに提案されてきた知的創造活動支援ツールの目的やその支援範囲を明らかにしている.また,認知ツール自体の目的とそれにより必要とされる機能の再確認も重要であると考える.例えば,認知ツールとしてのメモ帳は書き留めるという行為によってただ情報を記録として残すためだけではなく,書き留める行為による記憶促進,書き留められた内容を視覚からフィードバックすることによる情報整理や記憶促進などの目的にフォーカスすべきである.また後から見直したときに,その内容を思い出しやすくなっているなどの効果も促進されなければならない.本研究で取り上げる認知ツールについては,その認知ツールが,人間のどのような知的活動の支援を期待され,また支援すべきなのかに立ち戻って考えている.
これらの検討のもと,システムの構築と評価実験を行い,知的創造活動の初期段階の情報取り込みと発想や気づきを促す支援のための認知ツール設計の原則をボトムアップ的に構築している.

(2013年6月13日受付)