山田 俊哉 NTTアイティ(株) |
[背景]Webサービスにおけるユーザビリティの重要性
[問題]ユーザーテストのコストを低減させ,ユーザビリティ評価試験を容易に
[貢献]Webサービスにおけるユーザビリティの向上に寄与
Webサイト閲覧をはじめとして,日常生活の様々な場面で,Webブラウザ上に表示されるコンテンツを閲覧する機会が増えている.このようなWebアプリケーションの社会的,経済的な重要性が高まるなか,そのユーザビリティ(使いやすさ)の評価分析方法が注目されている.ユーザビリティの問題点を指摘する一般的な方法として,ユーザテスト形式でのユーザビリティ評価試験がある.それは,被験者にWeb操作をしてもらいながら,そのWebページの印象や満足度に関する発話や評価を,様々なメディアに記録し,分析する方法である.しかし,現在はユーザビリティの分析を分析担当者や評価担当者が主観的に行うことも多く,分析の客観性を確保することが難しい問題点や,発話記録や映像記録は再生に時間がかかるため分析者の負担が大きいという問題点がある.
一方,企業では様々な場面での分析効率化を目指して,問題点を数値的・客観的に判断できる指標で表す「見える化」の取り組みを行っている.しかし,Webユーザビリティ評価の分野では,HeatMAPなど,視線が集まる頻度やマウスでクリックした箇所等の頻度に関して分析を行った研究事例はあるが,視線の動きやマウスの動きを量的に統計解析した研究は少ない.一方で,このような量的な分析はユーザビリティテストの評価者の負担軽減やテスト実施コストの軽減につながると考えられるため.評価の効率化の観点からも応用性が高いと考えられる.
そこで本研究では,これにより,ユーザビリティ評価試験においてコストの増加の原因となる問題点に対するアプローチを試みた.具体的にはユーザビリティ評価試験において,被験者の視線の動きや瞳孔径,マウスカーソルの動きを量的に記録・可視化表示を行うツールから得られる情報を機械学習の手法を実践的に適用することによる,分析の自動化やコストの低減につながる技術を提案した.
論文では,Webユーザビリティの評価試験の場面において,以下の3つの問題点に対しそれぞれアプローチした.
- (被験者数) × (Webページ数)の評価値行列に欠損値を多く含む問題
- ユーザビリティ評価に対して詳細な分析を行うべきWebページが膨大になる問題
- ユーザビリティの問題箇所の発見抽出のための,被験者と評価者の負担が大きい問題
本研究は,Web閲覧行動に関する数値的データの分析に基づいたユーザビリティ評価環境の研究開発を先導して,情報通信,ヒューマンインターフェース,統計数理の各分野を横断的に研究することにより,Webサービスにおけるユーザビリティの向上に寄与するものであると考える.
(2012年9月18日受付)