情報処理学会第84回全国大会 会期:2022年3月3日~3日 会場:愛媛大学 城北キャンパス

情報入試ー共通テストと個別試験

日時:3/5 9:30-12:00

会場:第1イベント会場

【セッション概要】高校での教科「情報」は,2022年度から,単一の必履修科目「情報Ⅰ」と,さらに深く学ぶための選択科目「情報Ⅱ」の二階建てとして実施される.これを受けて,2025年度からは共通テストで「情報Ⅰ」が単一枠で実施される見通しとなった.
この状況を受けて,共通テストの実施を前提に,大学入学選抜での教科「情報」の取り扱いについて議論する.大学個別に実施する入学試験での「情報」試験ー全学/学部別/学科別,AO選抜での「情報」の取り入れなどの先行例の紹介や,の高校の現場からの高大接続の観点から報告・要望の紹介を行う.そして,学会活動の視点から情報入試について議論を行う.

司会

稲葉 利江子(津田塾大学 学芸学部情報科学科 准教授)

稲葉 利江子

【略歴】津田塾大学学芸学部情報科学科准教授.博士(理学).異文化コミュニケーション,高等教育におけるICT利活用データの分析に関する研究に従事.情報処理学会では,情報入試委員会,セミナー推進委員会などの委員として活動.

09:30-09:35 式辞 開会挨拶

筧 捷彦(東京通信大学 情報マネジメント学部 教授)

筧 捷彦

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【略歴】1968年東京大学工学部卒,立教大学などを経て,1986年から早稲田大学理工学部(現,基幹理工学部)教授,2016年に同校名誉教授.情報処理技術の標準化と情報教育推進に注力.ICPC 国際大学対抗プログラミングコンテスト,日本情報オリンピック,パソコン甲子園,U-22プログラミングコンテストの運営/審査に参与.情報オリンピック日本委員会・情報科学国際交流財団の理事長を兼任.現在,本会の情報入試委員長.

09:35-09:55 講演(1) 新学習指導要領に対応した令和7年度大学入学共通テストにおける「情報Ⅰ」について

前田 幸宣(文部科学省 高等教育局大学振興課大学入試室 室長)

前田 幸宣

【講演概要】令和4年度に高等学校に入学する生徒から平成30年3月に告示した新学習指導要領が適用されることに伴い,令和6年度に実施される令和7年度大学入学共通テストについては,新学習指導要領に沿った出題教科・科目とする必要があるため,その内容について国公私立大学及び高等学校関係団体の代表者等を構成員とする大学入学者選抜協議会において協議した結果,新たに必履修科目となった「情報Ⅰ」を新たに出題することとした「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱の予告」を令和3年7月に各大学等に通知するとともに,「情報Ⅰ」の試験時間を60分とすることや,現行の教育課程における選択必履修科目「社会と情報」「情報の科学」に対応する経過措置を講じることを同年9月に各大学等に通知した.
これらを踏まえ,各大学においては令和4年度中に令和6年度に実施する入試の出題教科・科目を公表する必要があることから,その検討の一助となるよう,「情報Ⅰ」の出題に関するこれまでの経緯や背景,その他講演時点までに決まった内容について報告することとする.
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【略歴】2001年文部科学省入省.徳島県教育委員会学校政策課長,文部科学省生涯学習政策局政策課課長補佐,ユネスコ日本政府代表部一等書記官,文部科学省振興局振興企画課学術企画室長を経て
2019年12月より文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室長.

09:55-10:15 講演(2) 情報入試 - 個別入試の導入とその後の推移-

本田 理恵(高知大学 理工学部門 教授)

本田 理恵

【講演概要】高知大学理工学部情報科学科では,2010年度から推薦I,2011年度から前期試験を含むその他の各種入試において教科「情報」での試験を導入し,現在,国立大学で唯一の実施校となっている.本講演では,当学科における個別試験導入のきっかけと開始時の工夫,ならびにその後の10年間の推移について紹介する.導入の直接的なきっかけは,改組による一括入試の影響で情報科学を選択する学生が激減したことであった.導入時の入試問題の策定にあたっては当時の教科,「情報A,B,C」のどれでも受験できるよう配慮し,進学担当者への事前の情報提供も行なった.この結果,導入後は入学後に情報科学を選択する学生数を回復させることができた.その後,2017年に再び改組で情報科学科が再発足した後も,引き続き選択肢としての「情報」入試を実施し続けている.なお,2013年の高校の教科改定については,教科の選択等における高校の動向の見極めが難しい側面があったが,詳細については講演時に報告する.今後,共通テストにおける教科「情報」の開始をきっかけとして個別入試でも教科「情報」を検討される大学の皆様の参考になれば幸いである.

【略歴】1993年高知大学理学部助手として着任.2006年に高知大学理学部助教授,2007年に高知大学理学部准教授に就任し,2017年より現職(高知大学理工学部門教授,情報科学科担当).博士(理学).

10:15-10:35 講演(3) 情報入試 - AO入試での例

安田 豊(京都産業大学)

安田 豊

【講演概要】京都産業大学では 2016 年から「情報入試」を AO 入試の一形態として実施している.本パートでは 7 回めとなったこの形式による個別試験の運用経験を報告する.
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【略歴】1988年京都産業大学理学部計算機科学科卒業,京都産業大学計算機センター,1995〜2002年神戸大学経済経営研究所講師などを経て,現在京都産業大学情報理工学部准教授.SDN,分散処理とその応用に興味をもつ.情報処理学会,ACM会員.

10:35-10:55 講演(4) 情報入試 - 高校現場から

稲垣 俊介(東京都立神代高等学校)

稲垣 俊介

【講演概要】東京都高等学校情報教育研究会の専門員会として「情報Ⅰ大学入試検討委員会」を本年度より立ち上げ,オンラインで集まり意見交換をしている.
これまでも情報科の入試は限られた大学で実施されてきた.しかし,2025年度から共通テストにおいて「情報Ⅰ」が出題されるため,これまでとは違い,高校では大きな規模で情報の入試対策に取り組まなければならない.情報科の教員の多くは,入試対策の経験が少ない者が多いと思われる.そのために本委員会では,入試問題を分析し,さらにそれをどう授業で教えていくのか,その検討を行うことで,その経験の少なさを補うことを目的としている.さらに,情報科の教員は1校一人の体制となっている場合が多く,相談することも情報を共有することも難しい.だからこそ本委員会で情報科の入試対策の軸をつくることができればと考え活動している.
本講演はこれまでの集まりでどのようなことを話し合ってきたのか,そして今後目指す方向性について述べる.
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【略歴】東京都立神代高等学校情報科主任教諭.また,大学においても情報科教育に関わる講座の講師を勤める.学校現場で15年以上にわたって,情報教育を実践するとともに,教員や保護者向けの講演をしている.学術誌への論文掲載,学会発表,一般誌や新聞等への掲載や寄稿も多数行っている.
主な著書としては,高等学校の教科書「新・情報の科学」(日本文教出版),「スマホ世代の子どものための主体的・対話的で深い学びにむかう 情報モラルの授業」(日本標準),「スマホ世代の子どものための主体的・対話的で深い学びにむかう 情報モラルの授業」(日本標準)等がある.

10:55-11:05 休憩

10:55-11:55 講演 鼎談 - 学会活動の視点から情報入試を語る

萩谷 昌己(東京大学 情報理工学系研究科 教授)

萩谷 昌己

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【略歴】1982年4月 京都大学数理解析研究所助手.1988年10月 京都大学数理解析研究所助教授.1992年4月 東京大学理学部助教授.1993年4月 東京大学大学院理学系研究科助教授.1995年11月 東京大学大学院理学系研究科教授.2001年4月~ 東京大学大学院情報理工学系研究科教授.2010年4月~2013年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科研究科長.2011年10月~2017年9月 日本学術会議会員.2021年4月~東京大学Beyond AI研究推進機構機構長.

10:55-11:55 講演 鼎談 - 学会活動の視点から情報入試を語る

野田 五十樹(北海道大学大学院情報科学研究院教授,株式会社未来シェア取締役)

野田 五十樹

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【略歴】1992年,京都大学大学院工学研究科修了後,電子技術総合研究所,現在の産業技術総合研究所に入所,研究官・主任研究員・研究チーム長・総括研究主幹として,人工知能・マルチエージェント技術の研究に従事.2021年より北海道大学教授.博士(工学).1994年よりロボカップの創立メンバーとして,シミュレーションリーグの立ち上げを行う.2014~17年にロボカップ国際委員会プレジデント.2000年より防災情報システムの国家プロジェクトに参画し,防災情報システム,災害シミュレーション,避難シミュレーションに取り組み,現在も各種社会シミュレーションの研究を展開している.2002年よりオンデマンド型公共交通のシミュレーションを開始,その研究の成果を元に2012年より実証実験を開始し,その社会実装を目指して,2016年,未来シェア設立.2020年より人工知能学会会長.
研究分野はマルチエージェント社会シミュレーション,機械学習,減災情報システム.

10:55-11:55 講演 鼎談 - 学会活動の視点から情報入試を語る

田口 亮(東京都市大学 情報工学部情報科学科 大学院総合理工学研究科長)

田口 亮

【講演概要】これまで「社会と情報」「情報の科学」のいずれか1科目を選択必修として高校の情報教育が展開されてきた.「社会と情報」にはプログラミングを含まない内容であり,8割の高校生がプログラムに触れずにきたと言う.2022年4月から高校の情報教育は「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」の2科目へ再編される.「情報Ⅰ」は必修となり,その内容にはプログラミングを含むことになる.2025年1月からは大学共通テストの新教科に「情報」の導入も決定している.このような情報教育,情報入試の変革に対して現場の高校はどのように受け止め,どのような体制,準備を行ってきているか,現場の高校の先生方へのヒアリングに基づき報告を行う.

【略歴】1989年3月・慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了(工学博士).同年4月武蔵工業大学(現名称:東京都市大学)工学部助手.2001年4月・教授.2015年4月-2021年3月・東京都市大学知識工学部/情報工学部・学部長.2021年4月から大学院総合理工学研究科長.電子情報通信学会において,英文論文誌(A)編集幹事,スマートインフォメディアシステム研究専門委員会委員長,基礎・境界ソサイエティ会長(理事)を歴任.
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11:55-12:00 式辞 閉会挨拶

中山 泰一(電気通信大学大学院情報理工学研究科 教授)

中山 泰一

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【略歴】1988年東京大学工学部計数工学科卒業.1993年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了.博士(工学).同年より電気通信大学において,計算機システム,並列分散処理,情報教育の研究に従事.情報処理学会において,論文誌ジャーナル編集委員会編集長,初等中等教育委員会副委員長などを務める.2020年度より教育担当理事.2014年度学会活動貢献賞,2016年度山下記念研究賞,2017年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞受賞.日本学術会議特任連携会員.