FIT2019 実行委員長・プログラム委員長 ご挨拶

FIT2019 実行委員長

 中野 美由紀

 津田塾大学


FIT2019 プログラム委員長

 柏野 邦夫

 日本電信電話(株)/東京大学大学院 情報理工学系研究科

 情報科学技術フォーラム(FIT)は、 電子情報通信学会の情報・システムソサイエティ(ISS)およびヒューマンコミュニケーショングループ(HCG)と情報処理学会とが協力して開催する年に1度の大規模な研究集会です。両学会の大会の流れを汲みながらも、発足当初から「従来の大会の形式にとらわれずに、新しい発表形式を導入し、タイムリーな情報発信、議論・討論の活性化、他領域研究者との交流等の実現」を掲げて歩みを続けてきました。近年、機械学習や高速大容量通信などの急速な進歩を背景に、情報科学技術への社会的期待は高まる一方であり、また解決すべき課題も広範にわたり、多様化かつ複雑化しています。そのような中にあって、それぞれの専門分野だけに閉じることなく広い分野の研究者が集まって互いの視野を広げ、既存の枠にとらわれずに自由な思考を交換し、多くの若手研究者の夢を育む場として、FIT はますます大きな役割を果たしていくべきでしょう。

 このような認識の下に、22名のメンバーからなるFIT2019プログラム委員会では、上記のようなFITの役割を際立たせつつ意義ある催しとするために、両学会の研究会担当委員71名(プログラム委員会委員との重複を含む)とともに様々な検討を加えました。検討の軸として重視したのは参加者にとっての魅力と価値の向上であり、具体的には、
 ① 情報科学技術の最新動向が一度にわかる
 ② 視野が広がり新しい気づきが得られる
 ③ 学生や若手の研究者が夢と勇気を得られる
の3つのキーコンセプトです。

 このようなコンセプトの中から生まれた試みの1つがトップコンファレンスセッションの新設です。これは、各分野でのトップレベルの国際会議・学術雑誌に最近数年以内に採録された論文の著者に、その内容を紹介して頂く特別なセッションです。3日間の会期を通して37件の発表が専用の会場で行われる予定となっています。参加者にとって、各分野の優れた研究の動向を手早く把握するとともに、著者らとの質疑応答や情報交換もできる貴重な機会となることを期待しています。

 そのほかのイベント企画においても、若手にフォーカスする企画、将来に目を向けた企画、情報科学技術と社会の接点を見据えた企画などを特に充実させました。たとえば、プログラム委員会が主導する企画には、独創的な研究を推進する若手研究者が登壇する「若手研究者が描く未来予想図」、近年そのハード・ソフトの両面で話題に上ることの多い量子コンピュータ分野の第一人者が将来像を語る「量子コンピューティング技術基盤の創出に向けて」、自然言語処理の第一人者と医師を含む実践の場の先駆者が集う「医療と自然言語処理のこれから」などがあります。また、両学会の研究会や委員会からも、時機をとらえた多数の企画が提案されました。例えば「音波通信技術とその応用」「グラフアルゴリズムの新潮流」「ゲーミフィケーションが拓くサイバーワールドの可能性」「農業とICT」「OSSハッキングのための法律相談」「ソーシャルビッグデータの処理と応用」「情報セキュリティのやり方:実践編」などです。おそらく、聞いてみたいと思われる企画が多いのではないかと思います。

 昨年試行した両学会研究会との連携企画は今年も継続されることとなり、ISSの「パターン認識・メディア理解」(PRMU)と「医用画像」(MI)、および情報処理学会の「コンピュータビジョンとイメージメディア」(CVIM)の3研究会の共催研究会がFITのプログラムに組み込まれています。これらの研究会は、通常は(年間登録者などを除き)参加費有料ですが、FITの参加者は上記研究会にも無料で参加できます。また研究会の参加者は参加費の概ね差額分でFITにも参加できます。研究会としては、普段より広い分野の参加者との交流のきっかけになるといったメリットも期待できるかと思います。

 会期の2日目には平井卓也IT担当大臣による特別講演が予定されている他、恒例の船井業績賞記念講演として、産業技術総合研究所の後藤真孝氏による「音楽情報が切り拓く音楽体験の未来:コンテンツの自動解析が価値を生む」が行われます。

 FIT2019では、上記の他に529件もの研究発表が行われる予定です。会場となる岡山大学の現地実行委員13名も全力で準備にあたってきました。FIT2019が、発表者を含む全ての参加者の皆様にとって楽しく有意義なものとなるよう願いつつ、実行委員およびプログラム委員一同、皆様のご来場を心よりお待ちしております。