イベント企画
医療・健康のためのコンピュータビジョン/パターン認識(CV/PR)技術
9月4日(水) 13:10-15:10
第1イベント会場(創立50周年記念館 金光ホール)
【セッション概要】 近年、高齢化に伴う労働者人口の減少が社会問題となっており、2030年には、日本人口の約1/3が高齢者となると予想されています。特に、医療やヘルスケア分野の人材不足が深刻化しており、医療を受けられない医療難民の出現や、医療費の増大による健康保険制度の崩壊といった、いわゆる2030年問題が懸念されています。そのような中、医療・ヘルスケア関係者の負担軽減に向けて、医用画像・生体信号といった様々なデータを診断データと結びつけることで、病気の自動検出や診断支援を行うなど、医療分野へのCV/PR技術の応用が進みつつあります。また、日常生活においても、スマートフォンやスマートウォッチ等の身近なデバイスにより、心拍・血圧といった生体信号を24時間計測することや、睡眠状態の音響信号や寝返りの加速度信号・角速度信号を計測すること等が可能となり、より良い健康管理に生かす取り組みも見られます。
本企画では、医療・健康のためのCV/PR技術をテーマとして、細胞画像・医用画像・ヒトの全身画像といった様々なスケールの画像、生体信号・慣性センサによる信号、また各種診療データといった多種多様なデータを用いたコンピュータビジョン・パターン認識・画像処理に関する基礎研究から、実用化に向けたセンサ開発やシステム開発まで、幅広い研究発表が行われます。また、議論を活性化する試みとして、口頭発表に加えて、ポスター発表を実施しております。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。
13:10-14:10 講演(1) 多元計算解剖学による医用画像理解と診断・治療支援 ~筋骨格を中心として~
佐藤 嘉伸(奈良先端科学技術大学院大学 情報科学領域 教授)
【概要】 機能や病理を統合したマルチスケール計算解剖モデルの構築を目指す「科研費・新学術領域・多元計算解剖学」を概観し、その筋骨格解剖モデルへの応用について述べる。特に、 (1) 深層学習に基づく、医用画像からの筋骨格領域のセグメンテーション、(2) 患者固有の筋骨格バイオメカニクス解析に必要な解剖情報である筋付着部、筋線維走行、立位解析など、筋骨格機能解剖のモデル化、および、(3) 患者データベースから構築される手術統計モデルに基づく人工股関節手術の自動計画立案、について詳述する。最後に、人工知能(深層学習)の発展も含めて多元計算解剖学の将来展望について述べる。
【略歴】 1982年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業。1988年同・大学院博士課程修了(工学博士)。1988年NTTヒューマンインタフェース研究所。1992年大阪大学医学部・助手。その間、1996-1997年、Harvard Medical School, Research Fellow。1999年大阪大学大学院医学系研究科・准教授。2014年奈良先端科学技術大学院大学生体医用画像研究室・教授。医用画像解析、手術支援システム、計算解剖学などの研究に従事。Medical Image Analysis (IF 5.36), International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery (IF 1.96) の Journal Editorial Board Member。
14:10-15:10 講演(2) 脳波の信号処理と機械学習:ブレイン・マシン・インタフェースと医療脳波への応用
田中 聡久(東京農工大学 工学研究院先端電気電子部門 教授)
【概要】 脳活動を計測する手段は様々存在するが、脳波ほど期待と実体がかけ離れているものは無いだろう。本講演では、脳波(特に頭皮脳波)計測と信号処理の実際について述べ、機械学習が果たしている役割について解説する。具体例としては、まずブレイン・マシン・インタフェース(BMI)の基礎と応用例を紹介する。非侵襲BMIは単なる情報入力のインタフェースではなく、医療応用が期待されている分野である。さらに、てんかん脳波の診断支援技術についても、JST CRESTのプロジェクトを紹介しながら解説をする。
【略歴】 1997年東工大工学部電気・電子工学科卒、2002年同大学博士後期課程修了、博士(工学)。日本学術振興会特別研究員、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員を経て、2004年より東京農工大学。現在、同大大学院工学研究院教授。2011年、ハワイ大学マノア校訪問研究員。専門は生体信号の処理、機械学習、神経認知科学、生体信号情報学。2017年よりJST CRESTのAI領域研究代表者。電子情報通信学会会員、Society for Neuroscience 会員、IEEE Senior Member、アジア太平洋信号情報処理協会(APSIPA)理事。