イベント企画
農業とICT
9月3日(火) 13:10-15:10
サテライト会場(後楽園 鶴鳴館)
【セッション概要】 人工知能(AI)や画像認識技術を活用して生産物の品質を向上させるスマート農業への注目が高まっている。本イベントでは、農業分野における情報通信技術(ICT)の導入に関して、講演を行う。
13:10-14:10 講演(1) 施設園芸栽培でのICT利用技術と環境制御
安場 健一郎(岡山大学 大学院環境生命科学研究科 准教授)
【概要】 施設による栽培は農業の中でも特殊な栽培方法である。施設園芸では屋外で植物を栽培する場合に比べて、栽培環境をコントロールしやすく効率的な生産が可能である。この10年ほどの間に施設園芸が大きく変化してきた。一つには生産現場で使用可能なセンサが安価で高性能になったことである。CO2センサは施設園芸生産で利用価値が高いセンサであるが、この10年で一般的になった。もう一つの大きな変化は、ICT利用が進んだことである。従来型の施設園芸は、環境制御もサーモスタットを利用した温度管理が実施される程度で、実際に気温が何度であったかなどを把握することは一般的でなかった。しかし近年は、環境モニタリングをクラウドサービスを利用して行うことも珍しくはなくなった。そこでICT時代の施設園芸の現状と課題について紹介したい。
【略歴】 1996年京都大学大学院農学研究科博士後期課程中退。農学博士。1996年農林水産省野菜・茶業試験場研究員。2013年岡山大学環境生命科学研究科准教授。主に施設野菜の栽培研究や、農業へのICT利用に関する研究に取り組む。ユビキタス環境制御システム研究会顧問。
14:10-14:40 講演(2) アスパラガス栽培における画像認識システムの実証
堀本 正人(岡山県農林水産総合センター 普及連携部 普及推進課 副参事)
【概要】  農業分野においては、これまで生産者の長年の経験や勘に頼るところが大きく、その熟練したノウハウ等を新規就農者や農業参入する企業等が修得することが、農業の持続的発展を進めていく上で大きな課題となっている。
 岡山県中北部を中心に産地化が進むアスパラガスは、親茎を健全に保つことが安定生産に不可欠であるが、親茎が早く黄化する場合、翌年の春芽の収穫を早めに打ち切り立茎する必要がある。この打ち切り時期は農家の経験と勘に頼っていることから、親茎の画像分析により、健全葉割合を数値化する仕組みを開発し、生産者が的確に立茎適期を判断することができるようにし、安定生産に繋げる。現在、調査中の本研究の進捗状況について、情報提供を行う。
【略歴】 1999年岡山県入庁。2019年3月まで農業普及指導員として野菜生産技術指導等を行う。特に2008年~2010年には岡山市浦安地区において、施設なす栽培における天敵の試験導入、2014年には県北部の鏡野町において、アスパラガスの全雄系品種の有望性実証に取り組む。2019年4月から現職。
14:40-15:10 講演(3) ヤンマーが目指す食料生産における「A SUSTAINABLE FUTURE」
小西 充洋(ヤンマー株式会社 バイオイノベーションセンター倉敷ラボ 所長)
【概要】 ヤンマーは現在、「A SUSTAINABLE FUTURE -テクノロジーで、新しい豊かさを-」をブランドステートメントとし、企業活動を行っています。テクノロジー開発の中心を担う中央研究所において、食料生産の分野では、「食の恵みを安心して享受できる社会」を目指して、下記3つの技術領域を中心に、研究開発を行っています。I. Energy:最大・最適なエネルギーを、最小の環境負荷で。II. Robotics:最大の作業高価を、最少のマンパワーで。III. Cultivation:最高に美味しく安全な食料を、最少のエネルギーで。当日は、農業とICTに関連の深い、ロボトラ(露地農業)やスマートグリーンハウス(施設園芸)、そして、酒造り(6次産業化)といった、最近の取り組みを紹介させていただきます。
【略歴】 2008年に博士号(農学)取得。同年ヤンマー株式会社へ入社、水産増養殖の研究所であるマリンファーム(大分県国東市)へ配属、微細藻の生産管理や二枚貝養殖の研究開発を行った。2011年より本社で、施設園芸、土づくり等、機械開発以外の技術・サービス開発に従事。2015年、生物関連情報の集約と、新規事業開発の加速を目的に「バイオイノベーションセンター (BIC)」を新設し、2016年に研究開発拠点「BIC倉敷ラボ」を建設した。それらの設立・建設当初より、所長として運営と研究開発に携わる。