イベント企画
ソーシャルビッグデータの処理と応用
9月5日(木) 13:10-15:40
第3イベント会場(一般教育棟 A棟 A41)
【セッション概要】 今やビッグデータは様々な場所に存在し、分析活用されて世の中に大きな影響を与えている。本企画では、多岐にわたるビッグデータの応用事例や分析技術開発事例の中から特に、ヒューマンビッグデータから人間の行動原理を模索する研究、月惑星探査プロジェクトにおけるビッグデータの活用方法、効率的なビッグデータ分析のためのデータベース検索コスト評価技術について、講演者ご自身の研究をもとにご紹介頂く。
13:10-13:50 講演(1) ヒューマンビッグデータに潜在する人間の行動原理とその応用
恵木 正史(日立製作所 研究開発グループ 主任研究員)
【概要】 IoT技術の発展により、人の行動を詳細かつ長期に亘って記録することが可能になり、蓄積された膨大なデータを分析することで、今まで知られていなかった人の行動パターンが明らかになりつつある。特に、メールを送る、電話を掛ける等の時間間隔が冪分布に従うことが知られている。これらの特性は人以外の動物においても共通であり、さらに個体の健康状態に依存していることが実験的に確認されている。そこで報告者らは、オフィスワーカーのPC操作行動(キーストローク、マウスクリック)を記録し、そこに潜在する特性を分析している。本講演では、PC操作の時間間隔が1秒から10000秒までのスケールに亘って冪分布に従うともに、冪指数が人の気分状態と相関していることを示す。今後、メンタルヘルスケアなどの応用が期待される。
【略歴】 2000年名古屋大学理学研究科素粒子宇宙物理学専攻博士後期単位取得退学。同年、(株)日立製作所中央研究所入社。金融・気象・医療・公共・エネルギー等、多岐に亘る分野におけるデータ分析技術・機械学習技術の研究開発に従事。その間、2013年~2017年北海道大学情報基盤センター客員研究員。
13:50-14:30 講演(2) 新宇宙世紀の到来とデータ処理技術
山本 幸生(宇宙航空研究開発機構 助教)
【概要】 人類が初めて月に到達して半世紀が過ぎ、当時取得したApolloの月地震データは現在でも唯一の月地震データである。近いようで遠い宇宙であったが、近年ようやく新たな宇宙時代が到来している。国家レベルでは国際宇宙ステーションの後継として深宇宙ゲートウェイが計画され、また民間企業においてはロケット事業やロボティクス事業を始めとした宇宙ベンチャーが活性化し市場の形成が行われている。こうした中、これまで膨大な予算によって行われた数々の月惑星探査プロジェクトのデータが自由に利用な形で公開されており、これらを活用しない手はないだろう。本講演では、月惑星探査で行われているデータ処理技術を紹介するとともに、それらのベースとなるデータ標準についても紹介する。
【略歴】 2002年東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻修了。博士(理学)。惑星探査機搭載機器ソフトウェア開発から地上データ処理・データアーカイブ・公開システムを担当。2002〜2003年 宇宙科学研究所COE研究員。2003年〜2004宇宙航空研究開発機構 宇宙航空プロジェクト研究員。2005〜2007年 宇宙航空研究開発機構 招聘研究員。2007年8月〜現在 宇宙航空研究開発機構 助教。
14:30-15:10 講演(3) データ検索処理の最適化をめざした計測データに基づいた性能モデル構築方法
田中 剛(日立製作所 研究開発グループ デジタルテクノロジーイノベーションセンタ 主任研究員)
【概要】 ビッグデータ分析におけるデータベース検索処理において表のジョイン方式やジョインする順番で大きく性能がことなることが知られている。クエリ処理の最適化のためには処理のコスト計算の精度が求められる。コスト計算では計算方法とデータの分布の両者の精度を高めていく必要がある。これまでデータ分布の高精度化については多くの取組がなされてきたが、計算方法についての議論は多くはなされてこなかった。本講演ではこれまでなされてきた計算方法と、特に報告者らが取り組んできたCPUに搭載されているパフォーマンスモニタを活用した高精度な計算方法について紹介する。さらに、クエリ最適化以外の応用についても紹介する。
【略歴】 1993年東京工業大学工学部電気電子工学科卒業。1995年同理工学研究科情報工学専攻修士課程修了。 同年、(株)日立製作所中央研究所入社。首都大学東京大学院システムデザイン研究科博士後期課程修了。博士(工学)。計算機アーキテクチャ、データベース、計算機システムの性能評価などの研究に従事。 電子情報通信学会会員。