会誌「情報処理」Vol.67 No.11(Nov. 2026)「デジタルプラクティスコーナー」
経済同友会 山口代表幹事 × 情報処理学会 萩谷会長 特別対談
2026年7月24日,経済同友会本部において,経済同友会 代表幹事の山口明夫氏と,本会会長の萩谷昌己氏による対談が行われました.本対談では,「AI時代における産学連携と人材育成」をテーマに,両者の強い危機感と未来へのビジョンに基づいた熱く前向きな議論が交わされました.
山口明夫(やまぐち あきお)
和歌山県出身.1987年に日本アイ・ビー・エム(株)に入社.エンジニアとしてキャリアをスタートさせ,システム開発やコンサルティング領域などで幅広い業界の企業変革を主導.2019年5月に日本アイ・ビー・エム(株)代表取締役社長に就任し,AIや量子コンピューティングなどの最先端テクノロジーを活用したデジタル変革を牽引している.経済同友会においては,2021年に企業経営委員会の委員長,2022年4月に副代表幹事を歴任し,2026年1月に経済同友会代表幹事に就任.2026年8⽉⽇本アイ・ビー・エム(株)代表取締役会⻑ならびにIBMコーポレーション 事業開発担当エグゼクティブに就任.
AI時代の産学連携を,次のステージへ
対談の主要な論点
- 人材育成のパラダイムシフト:2030年を見据えた小中高における情報教育から,大学での高度人材育成,そして社会人のリスキリングまでを一体的に捉え,産業界が真に求める人材像といかに接続していくか.
- 「チームジャパン」による産学連携の再設計:諸外国が短期間で巨額の投資を迅速に行う中,日本国内の大学・研究機関・企業に分散する知見や資金の現状を打破し,研究から事業化までを強力に結びつける枠組みの必要性.
- 本会への新たな期待:ブラックボックス化する先進的なAI技術が社会インフラへ実装されるリスクを見据え,単なる工学的な実装にとどまらない「科学的な裏付け」を提供すること.2万人規模の専門家集団として,社会を守る法規制やガバナンスの在り方について産業界と連携し,積極的かつ大胆な政策提言を行うこと.
対談を通じて浮き彫りになったのは,AI時代の日本に必要なものは,単一の優れた技術だけではないということです.教育,研究,事業化,資金,そして政策をつなぎ,迅速に社会実装まで一気に進める「総合力」こそが不可欠です.また,産学が連携してこの総合力を発揮するためには,お互いの壁を越えた率直な議論と,それを実行に移す経営的・学術的な覚悟が問われています.
特に,日本の産官学に広がる人材を有している本会には,1980年代にはそうであったように,日本における情報処理の未来ビジョンを描き,現状の課題を克服してビジョンに向かうための具体的な施策を継続的に提言することが求められています.
今回の対談は,本会が専門家集団としての発信力を高め,産業界との協業をさらに深めることで,日本のデジタル社会と産業競争力を力強く支える役割を改めて考える重要な機会となりました.
左から山口明夫氏,萩谷昌己氏
対談開催日時:2026年7月24日
文責:斎藤彰宏(本会技術応用理事/デジタルプラクティス専門委員会 幹事)