クレデンシャルとは,ある主体(個人や組織)について,何者であるか,どのような属性・資格・権限を有しているか,あるいは何を達成したかを第三者に示すための証明情報の総称である.身分証明書や運転免許証,各種資格・所属証明などが代表例であり,教育分野では学習歴,修了証,学位等が含まれる.クレデンシャルは発行主体の信頼性と内容の正当性,提示・検証可能性を前提として成立する.近年は,電子的に発行・管理・検証するデジタルクレデンシャルの活用が,行政,産業,教育など多様な領域で広がっている.
Verifiable Credential(VC)という用語は,文脈により2つの意味で用いられる場合がある.1つは,W3Cにおいて標準化されたVerifiable Credentials Data Modelを指す用法であり,検証可能なクレデンシャルを記述するための具体的なデータモデルを意味する.現在,教育分野を含む多くの議論では,W3Cによって策定されたVerifiable Credential Data Modelが参照されている.もう1つは,発行者(Issuer),保持者(Holder),検証者(Verifier)からなるIHVモデルを前提に,クレデンシャルの真正性を暗号技術により検証可能とする枠組みや設計思想を指す用法である.後者は特定のデータ形式や実装に限定されるものではなく,検証可能性という原理を共有する広い概念として用いられている.
DID(Decentralized Identifier)は,主体を分散的に識別するための識別子仕様であり,W3Cにより基本仕様が定義されている.VCと組み合わせることで,発行者や保持者を特定の中央管理者に依存せずに識別できる.一方,DIDメソッドや信頼モデルについては,複数の団体やコミュニティによる提案が併存しており,実装や運用の選択によって相互運用性や長期検証性に差が生じ得る.DIDは単一の完成された制度ではなく,利用目的やガバナンスに応じた設計判断を前提とする基盤技術として位置付けられる.
Open Badgesは,学習成果を提示し共有するためのデータ構造(スキーマ)を定めた仕様であり,現在は1EdTech Consortiumによって標準化・維持されている.主にスキルやマイクロクレデンシャルなどの比較的小規模な学習成果を対象として発展し,産業界や生涯学習分野で広く利用が拡大している.Open Badges v3ではW3C Verifiable Credential(VC)を参照した設計が導入され,暗号技術を用いた検証可能性を持つ表現が可能となっている.
CLR(Comprehensive Learning Record)は,1EdTech Consortiumが策定する学習成果記述のためのデータ構造(スキーマ)であり,学習者の多様な学習成果を包括的かつ構造的に表現することを目的としている.Open Badgesやマイクロクレデンシャルを要素として取り込み,それらを階層的に関連付けることで,学位等のマクロクレデンシャルとの関係性を記述できる点に特徴がある.CLRは,個別の学習成果を単独で示すのではなく,学習歴全体を俯瞰的に把握するための枠組みとして設計されており,学位や資格の正当性そのものを保証する仕組みではない.高等教育の質保証や認証制度と組み合わせて用いられることを前提とした記述モデルである.
ブロックチェーン技術により唯一性が保証されるデジタルトークン.発行・移転の記録がブロックチェーン上に公開され永続的に残り,改ざん耐性が高い.
これに対しVCは分散型識別子(DID)を用いてブロックチェーンなしでも検証可能であり,ユーザーが保有・管理し,選択的に情報開示できるという違いがある.
ウォレットは,学習者が自身のクレデンシャルの携帯性と活用可能性を高め,保持・管理し,必要に応じて提示するためのアプリケーションである.デジタルクレデンシャル分野では,ISO/IEC 18013-5によるモバイル運転免許証(mDL)などを契機として,個人が証明書を安全に管理する仕組みの整備が進められてきた.教育分野においても,学習成果や資格を学習者自身が管理・活用できる環境として,ウォレットへの注目が高まっている.一方で,VCやOpen Badges v3など,異なる形式で表現されたクレデンシャルが拡大しており,それら多様なクレデンシャルをウォレットでどのように扱うかについては,標準や実装の在り方が定まっておらず,現在も設計や試行が進められている.
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