会誌「情報処理」Vol.66 No.2(Feb. 2025)「デジタルプラクティスコーナー」

企業における生成AI活用の課題と可能性
─オートノマスエンタープライズに向けて─

向野孔己1

1パナソニック コネクト(株)

 2022年11月のChatGPTリリース以降,生成AIを企業活動に活用し生産性向上などにつなげたいという企業は増加しており実際に導入に踏み切った企業も多い.一方で,導入はしたものの期待したほど活用できていないという企業も少なくない.そこで筆者が自社で生成AI導入・推進を行った経験を元に,導入のポイントと課題を解説する.また,効果測定の考え方と自社での効果実績データも共有する.さらに,生成AIがこれから企業に与える可能性についても考察したい.本稿が企業の生成AI活用推進の一助になれば幸いである.なお,生成AIはテキスト生成AIのほか,画像生成AIや動画生成AIなど多岐にわたるが本稿では大規模言語モデル(LLM)を用いたテキスト生成AIを取り上げる.

1.生成AIが企業に与えるインパクトと現状

1.1 生成AIが企業に与えるインパクト

従来より企業は需要予測分析や生産設備の異常検知などにAIを活用してきた.それにもかかわらずChatGPTをはじめとした大規模言語モデルによる生成AIが世界中で大きな関心を集めているのは,これまで活用してきたAIは特定の業務に特化した機械学習モデルを用いたものであり,活用目的ごとに学習データを整備し設計,開発が必要であるのに対し,生成AIは言語を理解し生成することから特定の業務に限定されることなく,どのような業務でも活用できるという汎用性の高さにある.

また,従来のAIチャットボットなどが企業ごとに学習データを用意しないと利用できなかったのに対して,すでにインターネットを中心としたデータで学習済みであることからすぐに活用できるという点も導入ハードルをさげる要因となっている.さらにAPI経由で社内システムに容易に組み込むことができる点や不適切な回答を返さないよう強化学習がされていることも企業から見たChatGPTの大きな特徴である(図1).

図1 企業から見たChatGPTの大きな特徴
図1 企業から見たChatGPTの大きな特徴

生成AIが企業に与えるインパクトは「これまでのホワイトカラーの仕事のほぼすべてに影響が出る可能性が高い」という東京大学松尾豊教授の言葉[1]に表されており,広範囲で企業活動を大きく変革する可能性がある.

1.2 生成AIの影響を受ける職種・業務

ChatGPTのGPTはGenerative Pre-Trained Transformerの略であるがその汎用性の高さを表す,「GPTs are GPTs(General-Purpose Technologies)」というタイトルの論文[2]がOpenAI社とペンシルバニア大学共同で発表された.

この論文によると全職種の8割が生成AIによって影響を受け,そのうちの2割は業務の半分がAIで代替可能とされている.影響を受けやすい職業としては通訳・翻訳業,税理士,会計士,エンジニアなど知識や経験,高いスキルが求められる職種が挙げられている.一方で影響を受けにくい職業としては農業や料理人,大工などが挙げられており,いわゆるホワイトカラーと呼ばれる職種は生成AIの影響を受けやすい傾向にあると言える.また経験のない社員の生産性向上により有効であることが確認されたとの記述もあり,生成AIによって教育コストの削減,新入社員の戦力化までのスピード向上につなげられる可能性も高い.

1.3 企業における生成AI活用の現状

JIPDECとITRが2024年3月に発表した「企業IT利活用動向調査2024」[3]によると生成AIを利用している日本企業は35.0%,導入中が34.5%となり合わせると約70%の企業が導入済みもしくは導入見込みとなる.

ChatGPT登場以降,短い期間でこれだけの企業が導入済みもしくは導入見込みであることから日本企業が生成AIに大きな期待を寄せていることが伺える.この背景には少子高齢化社会による労働力不足という企業が直面している課題に対する解決策のひとつとして生成AIを活用したいという企業の意思がある.一方で,導入したものの活用が進まないであったり,どのような業務に活用すればよいのか悩んでいるという企業も少なくない.そこでここからは筆者が実際に自社に生成AIサービスを導入した経験や直面した課題,今後の展望を共有していく.

2.生成AI導入と活用実績

2.1 生成AI導入の目的

企業が生成AI導入するにあたって,まず考えないといけないのは「なぜ生成AIを導入するのか」という目的である.当社は(1)業務生産性向上,(2)社員の生成AI活用スキル向上,(3)シャドーAI利用リスク軽減の3つを目的として設定した(図2).

図2 生成AI導入の目的
図2 生成AI導入の目的
2.1.1 業務生産性向上

従来より企業は業務生産性向上に取り組んできているが,スコープが定型業務に限定される傾向にあった.

定型業務の生産性向上は業務のプロセス標準化,システム化,アウトソーシングの3つのステップで実施されることが多いが,定型化が難しい資料や提案書の作成といった非定型業務はスコープ外になっていた.

しかし,生成AIは文章を理解し生成できることから非定型業務における生産性の向上に活用できる(図3).

図3 生産性向上のスコープ
図3 生産性向上のスコープ

戦略策定,提案資料作成などの非定型業務は要件が毎回異なるが基本的には(1)情報収集,(2)情報整理,(3)ドラフト作成,(4)推敲し最終成果物を仕上げるという4つのステップになる.

生成AIによってプロセスの1から3をサポートしてもらうことで非定型業務の生産性向上につなげることが可能になる(図4).

図4 生成AIによる非定型業務における生産性向上のイメージ
図4 生成AIによる非定型業務における生産性向上のイメージ

また通常,資料等の作成には締め切りが設定されるが従来は1から3のステップで時間をとられ一番肝心な4つ目の仕上げの部分に十分な時間を割くことができないケースもあった.生成AIによって3までの工数を削減できて仕上げに時間を集中できるようになれば,工数の削減以外に成果物の質の向上にも寄与すると考えている.

2.1.2 社員の生成AI活用スキル向上

生成AIに指示を与えるテキストはプロンプトと呼ばれるが,プロンプトの書き方次第で回答の質が変わってくる.そのため生成AIを最大限に活用するためには社員のプロンプトエンジニアリング・スキルの向上が求められる.

検索エンジンとは違い,生成AIでは自然言語で指示を与える必要があり,人に依頼するのと同様に「どういった役割を期待しているか」「条件はなにか」「どういったアウトプットを期待しているか」を伝える技術(プロンプトエンジニアリング)を社員に学んでもらう必要がある(図5).

図5 社員のAI活用スキル向上
図5 社員のAI活用スキル向上
2.1.3 シャドーAI利用リスク軽減

シャドーAIとは会社が提供しているAIサービス以外のパブリックAIサービスを社員が個人で業務利用することである.生成AIが連日メディアで取り上げられる中,AIを業務に活用したいと思う社員は当然でてくる.

しかし,パブリックAIサービスの利用規定はさまざまであり業務データを入力すると情報漏洩などのリスクが増加する.

そうしたリスクを軽減するために安全な環境に業務利用可能な社内AIサービスを提供することで生産性向上とリスク管理を両立させる必要がある(図6).

図6 シャドーAI利用リスクへの対応
図6 シャドーAI利用リスクへの対応

2.2 生成AI導入の方法

生成AIを企業が導入する場合,大きく(1)SaaS利用と(2)カスタム開発の2つの方法がある.

SaaS利用の利点は導入スピードが速いことや,開発・保守チームが不要であることなどが挙げられる.

カスタム開発の利点は自社の要件にあった機能を追加できることや,言語モデルを自由に選択できるなどのカスタマイズ性の高さが挙げられる.またカスタム開発の場合,OpenAI社,Google社などのAIサービスを利用することになるが基本的にはトークンベースの従量課金であることから,たとえば1万人の社員に提供したとしても3,000人しか使わなければ,その分だけの請求になるのに対して,ユーザー単位で課金されるSaaSの場合,1万人登録したら3,000人しか使わなくても1万人分の課金が発生するためコスト的にはカスタム開発のほうが優位になるケースがある.

企業はそれぞれの目的,環境に応じてどちらかを選択することになる.当社は最初から全社展開を前提に進めていたことと後述のとおり利用促進には社員が使いやすいUX/UIが必要という観点からカスタム開発での導入を選択した.

2.3 利用促進策─使いやすいUI/UXの提供

当社は生成AIの利用促進策として,社員にとって使いやすいUI/UXの提供に重きを置いた.通常,新規の社内サービスは利用促進のために(1)社員にサービスの存在を知ってもらうこと(Awareness獲得)と(2)使い方を理解してもらうこと,(3)継続的に利用してもらうことの3つのステップを踏むことになる.当社は1つ目のAwareness獲得については,社内ポータルでの告知といった通常の社内サービスと同様の広報活動を行ったが,連日メディアで生成AI(ChatGPT)が取り上げられている状況の中,当社はサービス開始が2023年2月と日本企業としては早かったこともあり大手メディアで記事として掲載されたことが有利に働き,サービス開始当初から多くのアクセスを獲得することができた.2つ目の使い方の理解については,通常はマニュアル整備や社内説明会などを実施するケースが多いが,当社は基本的にはどちらも実施せずにアクセスすれば使い方が分かるUI/UXの提供にリソースを費やした.

具体的にはまず,生成AIを業務に活用するイメージがつかない社員は少なくないと考え,職種に関係なく利用できる15のサンプルプロンプトを用意した(図7).

図7 15のサンプルプロンプト
図7 15のサンプルプロンプト

このUIによって社員はひとつサンプルプロンプトを選ぶだけでプロンプトの書き方と生成AIがどのように動作するかを理解できるため,研修などを受講しなくても多くの社員がすぐに利用できるようになった.そのほかにも,アシスタントタイプの選択や,プロンプトの英語翻訳機能,回答の文字数を設定できる機能なども追加している.3つ目の継続的な利用については,データ解析に基づいた継続的な改善を行った.たとえば,ログから多くの社員が翻訳に活用しており,毎回プロンプトの最初に「以下の文章を英語に翻訳してください」と入力していることが分かった場合には,アシスタントタイプに「日英翻訳アシスタント」を追加し,日本語を入力すれば英語に,英語を入力すれば日本語になるような機能を実装した.そのほかにも長いプロンプトを入力することを手間と考えている社員がいた場合,音声入力を追加するなど,継続的な改善を行っている.

2.3 効果測定の考え方と活用実績

2.3.1 効果測定についての考え方

当社では効果測定は(1)利用回数,(2)社員評価,(3)削減時間の大きく3つの指標で行っている.この中でも特に重視している指標が利用回数である.生成AIサービスは勤怠管理システムなどとは違い利用が義務付けられる性質のシステムではない.それにもかかわらず利用回数が増加しているということは社員が活用した結果,業務に有効であるから自発的に継続利用していることを示す.逆に利用回数が減ったということは,業務に役立たないという判断を社員が行ったことになる.社員評価は,どのようなタイプの質問,依頼に対してどれくらいのレベルで生成AIが回答しているかを確認するために利用している.時間削減効果については,生成AIサービスによって,どれくらいの生産性向上につながっているかを確認することを目的としている.ここからは筆者の自社データを基に活用実績を見ていく(図8).

図8 生成AI活用の効果実績
図8 生成AI活用の効果実績
2.3.2 利用回数

2023年6月から2024年5月末までの年間利用回数は約140万回であり,労働日あたりの平均利用回数は約5,500回であった.当社は従業員数やその他の情報システムの利用状況などから1日の利用回数は1,000回と想定していたが,その5倍以上の活用がされている.また直近3カ月間の利用回数は前年同時期と比較して41%増加しており業務での活用が広まっていることが分かる.

2.3.3 AIの回答に対する社員評価

当社では生成AIサービスの回答を社員に5段階で評価してもらっているが,平均評価は4.0と非常に高くなっている.また,2024年7月現在,GPT-3.5 turbo,GPT-4,GPT-4oの3モデルを提供しているが,それぞれの評価は3.9,4.1,4.3となっており,モデルの進化によって回答精度が上がっていることが確認できている.

使用用途と評価を分析してみるとプログラミングと翻訳業務は,それぞれ4.3点,4.2点(5点満点)と高い評価を得ている(図9).

図9 利用ケース分類と社員評価
図9 利用ケース分類と社員評価
2.3.4 削減時間

生成AIサービス利用によって削減された時間は年間で18.6万時間であった.算出方法は1回あたりの利用で削減できた時間を利用回数で掛けている.削減時間は,社員から生成AIサービス利用の際に任意で回答を集めた.その結果平均で約20分削減されていることが分かった.また,利用回数を分析すると1つの課題解決のために約2.5回のプロンプトを送信していることが分かったため140万回の2.5分の1となる558,655回を掛けて算出した.削減時間が短いものは単純な質問や簡易な翻訳などで,長い時間を削減できたと回答があったものは戦略策定や商品企画の基礎情報に関するものであった.

3.生成AIの課題と戦略

3.1 業務活用における課題

前述のとおり生成AIの利点は事前学習済みであり各企業がデータを準備して学習させることなく業務活用できる点にあるが,事前学習データは公開データであり個別企業の社内データは当然含まれていない.したがって社内情報に関する質問には対応できないという課題がある.

またハルシネーションも頻繁に課題として挙げられる.ハルシネーションとは事実と異なる回答をもっともらしく返答することで,事実確認が困難であることが課題となっている.

3.2 生成AI活用戦略:汎用型から自社特化,個人特化へ

こうした課題を克服し,さらなる業務活用を推進するために各社が取り組んでいるのが自社固有の情報に基づいて回答を行う自社特化型AIである.自社特化型AIを実現する手法は大きくRAG(Retrieval-Augmented Generation)とファインチューニングがあるが,主流はRAGとなっている.

RAGとは企業が用意したデータベースもしくは検索インデックスから必要な情報を抽出し,生成AIに受け渡すことで事前学習に含まれていない企業固有の質問に回答できるという手法である(図10).RAGの場合,情報ソースも特定できるため,2つ目の課題であるハルシネーションについても,事実の検証が比較的容易になる.

図10 RAGの仕組み
図10 RAGの仕組み

当社も生成AI活用戦略を立て,自社特化AI導入に取り組んでおり,2024年4月1日から品質管理特化型AIや人事研修特化AIの提供を開始している.今後カスタマーサポートやITサポートで特化型AIを順次導入することを計画している(図11).

図11 AI活用戦略
図11 AI活用戦略

また,RAGはワードやパワーポイント,PDFなどの非構造化データを対象にしているケースが多いが,今後業務システムやデータウェアハウスに蓄積された構造化データも対象する企業が増えてくると想定される.

ERP(Enterprise Resources Planning)やSFA(Sales Force Automation)といったシステムに蓄積されたデータもRAGの対象になれば,これまでBIツールなどを利用して取得してきた売上や在庫,パイプラインなどの情報も生成AIに自然言語で質問することができるようになり,BIツールの知識がない社員でもデータをより簡単に扱うことができるようになる.

当社では非構造化データと構造化データをあわせて管理し生成AIと連携させることができるようにする「パナソニック コネクトコーパス」の構築を推進している(図12).

図12 パナソニックコネクト コーパス構想
図12 パナソニックコネクト コーパス構想

この「パナソニック コネクトコーパス」によって広く自社データに基づく回答を得られるようになるが,権限の問題がでてくる.社内データは役割や職位などで権限管理が行われており,生成AIを通じてアクセスできるデータも同様に管理される必要がある.したがって,より深い業務データを対象にする段階になれば社員の役割や職位によって回答が変わる個人特化AIが必要になってくる.

3.3 業界特化AI

こうした企業特化AI以外にも各業界ごとに特化した業界特化AIに対するニーズもあり,法律や金融などの業界で事例もでてきている.法律では契約分析,デューデリジェンス,訴訟,規制コンプライアンスなどで活用できるHarvey AI[4]が有名である.Harvey AIはLatham & WatkinsやSIDLEYなどの大手法律事務所に加え,DeepMindやMicrosoft,Meta,OpenAIなどビッグテック企業も参画しており法律業務を大きく変革する可能性がある.日本においても弁護士ドットコムがアンダーソン・毛利・友常法律事務所と協業し法務支援サービスを提供するなどの動きがある[5].

金融ではブルームバーグが豊富な金融データを元にブルームバーグGPTを開発し,同社の金融情報システム「ブルームバーグターミナル」に導入する方針とされている.また,JPモルガン・チェースは投資の助言を行うインデックスGPTの開発に取り組んでいる[6].

法律,金融以外にも業界ごとの情報,データを提供している企業は多く,そうした情報を生成AIと連携させて新しいビジネスに繋げる動きは加速していくと思われる.

4.エージェント型AIの可能性とガバナンス

4.1 オラクルからジーニ,ソブリン,そしてオートノマスエンタープライズへ

生成AIの今後の活用として注目されているのがエージェント型AIである.AIアライメントの第一人者であるニック・ボストロム博士はAIを「オラクル」「ジーニー」「ソブリン」の3つのタイプに分類している.オラクルが聞かれたことを答えるだけのAIなのに対して,「ジーニー」「ソブリン」はタスクを実行できるエージェント型AIになる[7](図13).

図13 オートノマスエンタープライズへ
図13 オートノマスエンタープライズへ

エージェント型AIとは,入力されたプロンプトに対して回答を生成するだけでなく,プロンプトから求められていることを推論し,他システムと連携し実行ができるタイプのAIである.

たとえば,タスクを実行するジーニー型AIに「大阪に7月22日から23日出張したい」と入力した場合,出張申請,交通機関や宿泊先の手配をしてくれる(図14).

図14 ジーニー型AI
図14 ジーニー型AI

さらにソブリン型AIは目的を達成するまで,計画,実行,評価,改善を継続的に繰り返す.たとえば,「商品Aに対するWebからの問い合わせを100件獲得せよ」と指示するとターゲットとなる顧客にあったメッセージや画像を生成しSNSなどを利用して問い合わせを獲得し,設定された目標である100件を獲得するまで継続的にPDCAを繰り返す(図15).

図15 ソブリン型AI
図15 ソブリン型AI

ソブリン型AIの導入段階までいけば,一定程度までの判断と実行はAIで可能となりAIによるオートノマスエンタープライズという新しい企業形態を実現できる可能性がある.

4.2 エージェント型AIのガバナンス

エージェント型AIによる業務効率化の可能性は大きいが,一方でAIに判断と実行を任せることにはリスクも伴う.さきほどの例で言えば,問い合わせを集めるために過激なメッセージや画像を用いるリスクがある.また,エージェント型は外部システムとの連携も行うためセキュリティリスクも生じる.したがってエージェント型AI導入にあたっては,完全に権限を委譲するのではなく重大な判断が必要な業務の実行前に人間による判断というプロセスを導入したり,外部連携システムの安全性の確保などを行う必要がある.エージェント型AIの技術開発は今後,活発になることが予想されるが同時にガバナンスの整備も求められることになる.

5.生成AIが企業にもたらす可能性

産業革命が身体的な労働に変革をもたらしたように,生成AIは知的労働に大きな変革をもたらす可能性があると期待されており,それが産業革命以来のビジネスにおける大変革とも評されるゆえんである.

すでに生成AIの活用によって生産性の向上を実現している企業もあるが,今後,技術とルール策定の進展によりエージェント型AIの導入に至れば,生産現場のようなオートメーション化がオフィスでも実現されることになる.日本企業は少子高齢化に伴う人材課題を抱えており,いずれ生成AIを活用するという大きな方向性は不可避だと思われる.

そうであれば,筆者はできるだけ早く生成AIを導入,活用し成功と失敗を積み重ねるべきと考える.本稿が,生成AIをこれから活用しようとしている企業もしくはすでに導入しているが活用が進まない企業の参考となれば幸いである.

参考文献
向野孔己

向野孔己

日本アイ・ビー・エム(株)で20年にわたりデジタルマーケティング,アジャイル組織変革などデジタル領域で業務変革を推進.現在は,パナソニック コネクト(株)で主に生成AIを活用した業務変革をリードしている.

投稿受付:2024年7月31日
採録決定:2024年9月26日
編集担当:山口大輔(NTTソフトウェアイノベーションセンタ)

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