会誌「情報処理」Vol.64 No.11(Nov. 2023)「デジタルプラクティスコーナー」

「企業における情報技術活用のプラクティス」座談会

司会:長坂健治(情報処理学会)
参加者:奥野のぶ・真壁千賀子(IBM Community Japan),粟村義親・酒井伊智郎(BIPROGY研究会),谷津宏和・根井和美(アシストソリューション研究会),玉山英樹・櫻井慶子(日立ITユーザ会),木下泰三・斎藤彰宏(情報処理学会)

本特集号に掲載した論文をご推薦いただいた提携団体を運営する皆さまと,研究活動と論文活動について,これからの活動の場を広げていくことについて語っていただきました.

IBM Community Japan

奥野のぶ
奥野のぶ
日本IBMに入社以来,営業として多くのお客様を担当.サーバ事業部,流通事業部,ビジネス開発などの営業部長を経て2016年よりお客様プログラムで関東地区,東北地区のユーザ会を運営.現在,広報&ブランド推進 コミュニティー・プログラム部長. 2020年に設立したIBM Community Japanのコミュニティーマネージャーをつとめる.
真壁千賀子
真壁千賀子
日本IBMに入社以来,主に流通サービスのお客様を担当する現場のSEとして多くのプロジェクトに参画.出産を機に,事業部の人材育成部門に異動し,社員のスキル管理,研修企画などの業務に携わる.その後,お客様プログラムで北関東地区,神奈川地区,長野地区,新潟地区のユーザ研究会を運営.2020年IBM Community Japan設立後は,各種セミナーやプログラムの企画・運営,論文の推進などを担当.

BIPROGY研究会

粟村義親
粟村義親(BIPROGY研究会 論文審査委員長)
2018年よりユニシス研究会(現BIPROGY研究会)論文審査委員長,中央幹事,関東支部幹事.2010年(株)ニチレイロジグループ本社 情報企画部に移籍.現在,業務統括部に所属.
酒井伊智郎
酒井伊智郎(BIPROGY研究会 事務局長)
旧日本ユニバック(現BIPROGY(株))入社,長年金融営業部門に在籍し地域金融機関(地方銀行,信用金庫)を担当.2017年新潟支店長,2022年BIPROGY研究会事務局長に就任.

アシストソリューション研究会

谷津宏和
谷津宏和((株)アシスト ビジネスソリューション本部統括部長 兼 開発技術本部統括部長)
西日本支社にてOracle技術者の後,DWH構築や情報活用系の構築支援に従事.その後,情報活用を通じた課題解決の提案を行う業務を担当.西日本支社の技術統括部長を経て2020年から東京へ異動し現職に就任.2013年から「ソリューション研究会会」西日本事務局長,2022年から東日本事務局長.
根井和美
根井和美((株)アシスト 経営企画本部 広報・人事課)
アシストを一度退社後,1997年再入社.社長室や広報部の業務を企画運営しながら,ソリューション研究会の事務局を1997年より運営.

日立ITユーザ会

玉山英樹
玉山英樹
1991年山一證券(株)入社後,岐阜支店,自由が丘支店とリテール営業を7年間従事した後,1998年から(株)日立製作所関西支社にて,パートナーに対するパソコンやサーバ,ソフトウェア製品の拡販に従事.2005年からは企画部に異動し,日立ITユーザ会事務局として,情報関連のお客様に対する情報提供や,お客様同士のリレーション強化に努め,現在に至る.
櫻井慶子
櫻井慶子
日立製作所入社 コンピュータ事業部に配属以来.日立ITユーザ会業務を担当.業務移管により,2019年より(株)日立ドキュメントソリューションズに転属し,同業務を引き続き担当..

情報処理学会

 木下泰三
木下泰三(正会員)(情報処理学会 事務局長)
1981年日立製作所中央研究所に入社以来,ネットワークとデジタルメディアの研究に従事,中央研究所企画室長,本社新事業推進本部部長,本社ワイヤレスインフォベンチャーカンパニー長&CEOを経て,IoTクラウド事業主管.退職後2017年より本会事務局長.
 斎藤彰宏
斎藤彰宏(正会員)(情報処理学会 会誌編集委員会デジタルプラクティス専門委員会主査/日本アイ・ビー・エム(株)シニア・コンサルタント)
1995年日本アイ・ビー・エム情報システム入社.長野オリンピックプロジェクトへの参加を経て,ITアーキテクト・コンサルタントとして企業・官公庁のシステム設計に従事.本会会誌編集委員(2018年〜2022年),会誌編集委員会デジタルプラクティス専門委員会主査(2022年〜),技術応用運営委員会委員(2022年〜).
長坂健治
長坂健治(正会員)(情報処理学会 デジタルプラクティス編集委員/キンドリルジャパン(株))
日本IBM入社後,情報システム部に所属し,主に分散系のインフラの設計・構築・運用に従事.その後ITアーキテクトとして,お客様のシステム設計・構築・運用に従事.2021年分社に伴いキンドリルジャパンに移籍.2021年より本会デジタルプラクティス編集委員.

座談会の趣旨

長坂:本日司会を務めさせていただく情報処理学会 デジタルプラクティス編集委員の長坂です.特集号に掲載予定の論文をご推薦いただいている連携団体の皆さまと座談会を企画させていただきました.皆さま,ご参加ありがとうございます.  

これまでは提携団体から推薦論文はご推薦いただいたタイミングで掲載させていただいておりましたが,今回は10月に発行予定の56号にまとめて掲載します.  

背景としまして,ユーザ会のような技術コミュニティの論文活動をまとめてご紹介することで技術コミュニティ活動に注目を集めたいということと,情報処理学会もアカデミアだけではなく企業など情報処理を実践している団体と協業しているということをアピールしていきたいという狙いがあります. 

この座談会を通じて,各団体の論文活動の目的や意義,活動内容などご紹介いただき,情報交換を通じてより良くしていくということができればいいと思っております.また,情報処理学会としても各提携団体との活動を良くしていくヒントとか,気づきなどが得られればと考えております.  

ITの世界は進歩も早く,複雑化もしていますので,個々の技術者だけで頑張ってもなかなか難しい状況も多々あると思いますので,技術コミュニティのような形で人と人のネットワークをつなげていくというようなことは重要と考えております.情報処理学会としては論文活動が中心になりますが,こういった場での皆様とのいろいろな情報交換によって,盛り上げていければなというふうに思っております.

木下:情報処理学会事務局長の木下でございます.よろしくお願いします.  

本会は基本的にアカデミアの大学系の人たちは減っていないのですが,企業離れが若干していまして,年間でいきますと数百人ずつ企業系の会員が減っているという状況があります.企業へのサービス,企業への価値提供,ここに焦点を絞って,いろいろな活動をやらせていただいております.CITPというITの資格制度だとか,このデジタルプラクティス論文とか,それからITフォーラムという企業系の集まりの一種,研究会的な集まりや,それ以外にも,連続セミナー,特に企業の方々に聞いていただけるようなセミナーとか,いろいろな意味で賛助会員様を含めてサービスを強化しているところでございます.  

その中で,このデジタルプラクティスというのは,企業の人も書きやすい論文,また企業のこういうユーザ会,ファミリー会の人たちと共同で発信していけるような,そういった論文の試みということで,ほかの学会にはないジャンルの論文でして,学会にとってとても良い施策と考えています.いろいろな意味で,企業同士が,いつもならあまり話ができない間柄かもしれないのですが,このITの分野のテーマで、情報処理学会を仲介にして,大いに深く語りあっていただくということで,今日は第1回目でございますが,進めていただけたら助かります.

自己紹介と参加団体のご紹介

長坂: それでは座談会を進めていきたいと思います.まず最初に,各団体のご紹介をお願いいたします.まず日立ITユーザ会さまから,ご紹介いただいてもよろしいでしょうか.

日立ITユーザ会

玉山:日立ITユーザ会事務局の玉山と申します.どうぞよろしくお願いします.  

日立ITユーザ会は,人材育成,情報共有,異業種交流,この3本の目的に向かって,お客さま主導で会を運営している団体です.

日立ITユーザ会

1964年の発足当時はHITACというホストコンピュータをご使用のユーザさまの集まりで,HITACユーザ研究会という名称でスタートしました.現在は日立ITユーザ会と名称を改めまして,昨今のコロナ禍で会員が減りましたが,約950会員のお客さまが全国にいらっしゃいます.業種としては,産業流通が多くて,次に金融という業種の構成になっています.  

会長は現在,日本製鉄(株)の方に,副会長は日本ペイントコーポレートソリューションズ(株)の方と(株)中電シーティーアイの方にお願いしています.支部は全国に北海道から九州まで9支部,それから2分科会,2委員会で組織されています.  

主な活動としましては,全国活動として春の大会,それから秋のシンポジウムが大きなイベントになっております.著名人の講演などもありますが,主に論文の発表会として,論文を聴講いただくということを目的に開催しています.その他,分科会や,海外視察などがありますが,やはり一番は論文活動です.各会員さまの情報システムの改善事例などをまとめていただいて,論文委員会で審査をします.あとで櫻井からもあると思いますが,昨年度は応募が42編ということで,論文委員さんは全編を読むので大変なのでご苦労をかけていると感じています.そのほか,人材育成にも力を入れています.会員さまの若手育成に貢献しようという目的もユーザ会で目指しているところです.会の紹介としては以上になります.

IBM Community Japan

奥野:日本IBMの広報&ブランド推進に所属し,コミュニティー・プログラムの部長をつとめております,奥野です.今日参加の真壁はナレッジモール論文,マナブプログラムのリーダを担当しています.

真壁:皆さま,初めまして,IBM Community Japan,真壁と申します.どうぞよろしくお願いいたします.私も楽しみしております.

奥野:簡単にIBM Community Japanの紹介をさせていただきます.元々は約60年の歴史を持つIBMユーザ研究会がありました2019年に解散し,2020年の7月のコロナ禍の中でIBM Community Japanを設立しました.  

IBM Community Japan

IBMユーザ研究会とIBM Community Japanの大きな違いは,1つ目は運営の母体が,ユーザ研究会はお客様,IBM Community Japanは日本IBMということです.2つ目が年会費で,IBM Community Japanは会費無料という形にさせていただいております.3つ目が,ユーザ研究会は企業単位でのご登録だったのですが,IBM Community Japanは個人で登録いただけます.4つ目は,ユーザ研究会はその名の通りIBMのユーザさんであることが条件でしたが,IBM Community Japanでは,社会人の方であればどなたでも入っていただけるようになりました.この4つが大きな違いとなっております.  

この中で,マナブ,ツクル,ツナガルの3つの柱で活動しております.マナブというのは,いわゆるセミナー系のみんなで学んでいただくプログラムです.ツクルというのが,論文活動や研究活動,みんなでいろいろ作り上げたりなど,何かをつくるプログラムです.そして,それらをみんなで共有し合うのが,左下にありますツナガルのプログラムになっています.IBM Community Japanはこのマナブ,ツクル,ツナガルの3つの柱で活動しています.

アシストソリューション研究会

谷津:アシストの谷津と申します.今回は,私,谷津と根井が参加しています.私は10年近く事務局長をしており,根井は会の発足当時から事務局をしております.よろしくお願いします.

根井:今日はこのような場をセッティングいただきましてありがとうございます.直接お話が聞けるということで非常に楽しみにしています.この会が発足したのは,1996年で,2年後の1998年から私は携わっています.よろしくお願いします. 

谷津:私からソ研の説明をさせていただきます.ちなみにアシストソリューション研究会だとちょっと長いので「ソ研」と略します.アシストは,社名の通り,「アシストし合う,場をつくる」をコンセプトに,この会を企画運営しています.最初,特定製品活用の研究会から始まったのですが,数年経って製品が外れまして,IT全般についてお客様同士で意見交換・研究をする場になりました.  

BIPROGY研究会

ソ研はデジタル人材の育成を目的に,ITテーマの深掘りに加えて,異業種交流とか,人材形成,相互支援の場を提供することで,ITだけではなく人として成長してもらいたいという思いを念頭に置いています.主な活動は分科会活動になります.設定したテーマを1年間かけて研究して発表してもらいます.加えて情報交流会というイベント企画,それから「つながる活動」としてコミュニティサイトも運営しています.  

ほかの研究会様との違いとしまして,アシストの場合は,毎年,新たにテーマを設定して,そのテーマに賛同するお客様に参加いただき研究するという形をとっています.そのため,あらかじめ会社ごとに法人会員登録をしていただくのではなく,その都度メンバ登録していただく形をとっています.また会費や協賛金もいただかず,すべて無料でやっています.  

運営体制としては,幹事(弊社のお客様の中から有識者の方に手弁当で参加いただいています)のご指導を仰ぎながら,東京,名古屋,大阪の3地区に事務局を置き,各地区の分科会活動を支える形をとっています.  

幹事は会長のコニカミノルタ様,副会長のコクヨ様と日東工業様を含め,16社のお客様の役職者や有識者にお願いしています.  

大体,東京地区で4つから8つ,中日本と西日本でそれぞれ3つから4つの分科会が発足し,毎年,100名前後のメンバが活動しています.

BIPROGY研究会

酒井:BIPROGY研究会で事務局長を務めております酒井伊智郎と申します.本日はどうぞよろしくお願い申し上げます.  

はじめにBIPROGY研究会のご紹介を簡単にさせていただきたいと思います.この研究会は1953年に設立,70年の歴史を積み重ねてまいりました.会員さま自ら運営していただき,ビジネスで培われた固有のノウハウや,情報資産などを業界,企業の枠組みを超えて,会員同士が共有し合うことを目的に運営をいたしております.  

アシストソリューション研究会

現在は全国でおよそ520を超えるお客さまに会員としてご参加いただき,東京に本部を置き,全国10支部で活動を行っております.そして,この研究会の柱でございます研究活動,それから今日のテーマでもございます論文活動といったところを軸に1年を通して活動を行っております.また,全国イベントとして,毎年6月に全国カンファレンスという形でセッションや年次総会,それから秋には全国フォーラムを支部持ち回りで企画開催し,全国の会員さまにお集まりいただきまして大会を開催させていただいております.また,コロナ禍でしばらく実施できておりませんでしたが,海外スタディツアーも毎年企画しておりまして,会員さまからご好評をいただいております.  

私どもの研究会は異業種交流を通して人材育成,自己研鑽の場としてご活用いただくことを目指し活動しております.そしてBIPROGYグループは各種情報のご提供とご支援をさせていただき,会員さまとのリレーションを深め,より一層ご満足いただけるよう取り組んでおります.  

このあとご紹介させていただきます論文審査委員長の粟村様は,事務局のメンバではなく,会員さまの中からご就任いただきこの論文活動を運営いただいております.

 粟村:皆さま,初めまして,粟村義親と申します.論文審査委員長をしております.皆さまのさまざまなソリューション,サービスを利用させていただいている一会員という立場でもございます.本日のテーマの中に論文のパートがございましたので参加させていただきました.本日は,それぞれの活動の共通点や,今後目指したいところなどの気づきをお互いに持ち合い,有意義な場を作ってまいりたいと思います.よろしくお願いいたします.

情報処理学会デジタルプラクティスとの協業活動と特集号の狙い

斎藤:情報処理学会,デジタルプラクティス専門委員会の主査として企業さま,団体さまとの協業を担当しております斎藤彰宏です.よろしくお願いいたします.  

デジタルプラクティスは,情報処理,情報技術の実務家のための論文誌というコンセプトで2010年に創刊されました.創刊から10周年を迎えた2019年から新しい試みとして,企業や団体が主催するユーザ会さま,コミュニティさまとの提携を開始しております.これは企業などの現場でアクティブに活動されている実務技術者は,学会活動に直接参加するケースより,ユーザ会など技術コミュニティで活動するケースのほうがずっと多く,また近年での情報技術の発展では,そのような技術コミュニティが担う部分というのがより大きくなっていると判断したためです.  

おかげさまで,この取り組みは非常に好評をいただいております. 

本年からは,企業における情報技術活用のプラクティス特集号として,まとめて掲載し,企画を強化させていただきます.論文活動に取り組まれているユーザ会,コミュニティの運営にかかわれている皆さまにお集まりいただきまして,皆さまの団体の論文活動についてお聞かせいただき,共通の課題などを一緒にディスカッションさせていただければと考えております.どうぞよろしくお願いいたします.

各団体における論文への取り組み

長坂:本題のほうに入っていきたいと思います.まず,情報処理学会の学会誌,論文誌の特集号でのお願いというところで,やはり論文にフォーカスを当ててお話をいろいろお聞かせいただければと思います.  

各団体様いろいろな形で論文活動に取り組んでおられますが,どのように論文活動に取り組んでいるのか,論文というアウトプットを出していくということに対する期待や目的,逆に論文というのはハードルが高い部分があると思いますので,その推進にあたっての苦労とか工夫ですとか,そういったところをお話いただければと思います.

日立ITユーザ会の論文活動

櫻井:当会の論文活動では,会員各社のIT利活用への取り組みを論文としてまとめていただいて応募いただき,応募いただいた論文を論文集として当会内に広く公開して,会員各社において参考にして活用していただくことを目的としています.執筆においては取り組みの成果をまとめる機会にしていただくとともに,論文執筆を通じた人材育成の取り組みとしても活用いただいています.応募論文は,会員会社から選出した15名の論文委員で組織する論文委員会により審査していただき,大会論文趣旨に則った優れた論文を日立IT論文賞として選出しております.  

入賞者には毎年春の全国大会で表彰して,副賞を贈呈します.また,大会やシンポジウム,各支部のセミナー等において優秀な論文の発表の機会の場をつくっております.  

春の全国大会で募集を開始して,秋に原稿を集めて,冬に審査をして,次の春に表彰するというのが1年のめぐりです.「一般論文」「小論文」「若手チャレンジ論文」の3区分を設けており,情報システム利用に関するあらゆる分野を対象とし,先進性,独創性のあるものや他ユーザ会員へも参考となり適用性がある取り組みを書いていただいています.  

ボリュームは一般論文が10~15ページ,小論文は7~8ページで内容をまとめていただいています.かつては,一般論文と小論文と趣旨は同じでボリュームだけを変えていたのですが,小論文については,まだ結果が出ていなくても進行中の新たな取り組みをよりスピーディに提言として発表いただけるように区分趣旨を見直しました.  

「若手チャレンジ論文」区分は10年ほど前に新設しました.人材育成の一環として役立てていただきたいといった趣旨で,ボリュームは小論文と同じ7~8ページですが,単独執筆であることや1会員2編までといった条件があります.この区分では,若手が業務の中で取り組んだ創意工夫や,問題解決へのチャレンジ,それらを通じた学びをテーマとして,どのように取り組み,その取り組みが自身の成長やプロジェクト・業務などにどのような効果・成果をもたらしたか,それをまとめていただくのですが,自身の学びを執筆して成長につなげてもらう目的のものですので,自分を主語に,自分の立ち位置,役割が明確に記述された論文を評価します.  

応募いただいた論文に関しては,先ほど申しました15名の論文委員さまに全編読んでいただき,独創度,有効度,表現度,こちらの3つの審査基準で審査をしていただいています.

長坂:毎年,何編ぐらいの論文が応募されるのでしょうか?

櫻井:45編前後で,ここ10年ほどの応募編数をみていると65編が最高の編数だったのですが,ここ2年42編で落ち着いています.

長坂:ありがとうございます.40編とは結構な数ですね.15名の審査員で全部審査するとなると大変ですね.

櫻井:論文委員の皆さまは審査が大変です.65編のときは,本当に大変だったと思います(笑).が,応募数はまだまだ増やしたいという思いでおります.

長坂:若手チャレンジ論文は面白い取り組みだと思います.

櫻井:そうですね,「若手チャレンジ論文」区分がやっと定着してきました.若手区分で応募した方が次は小論文を書いて,さらには一般論文に挑戦するとか,そうなったら嬉しいですね.

斎藤:若手というのは,定義というのはあるものでしょうか.

櫻井:はい.応募時に30歳未満であり,入社してから3~5年を目安としています.

IBM Community Japanの論文活動

奥野:ナレッジモール論文ですが,未来をつくるテクノロジーで豊かな社会を実現するというのが私どもの理念ですが,この理念に賛同された方にITにかかわるテーマを,事例型論文または提言型論文として提出していただく形になっています.3月から8月までに応募いただき,9月末までに提出していただいています.11月にナレッジモール研究と同じ場で成果発表会をして,その会期中に表彰する形になります.入賞者による論文発表会は翌年4月に開催します.  

IBM Community Japanの論文活動

成果発表会はどんなものかというのをご紹介させていただくと,2022年11月から2023年1月まで,この「GO UNiTE 2022」という成果発表会をメタバース空間で開催しました.去年は33の論文を応募いただき,研究は51のワーキンググループがありました.成果発表会場には,研究のテーマ別に柱があり,論文も柱があり,ここに行っていただくと閲覧できるという発表会の場を設けました.表彰式はこの正面のこのスクリーンに映し出され,入賞者が表彰されました.  

ナレッジモール論文の生い立ちですが,IBMユーザ研究会のときにはIBMユーザ論文というのがございまして,一方で,IBM社内には,社員向けのIBMプロフェッショナル論文というものがありました.これら2つが一緒になってナレッジモール論文になっています.そのためメンバ部門とIBM部門という2部門設けています.  

表彰は,メンバ部門,IBM部門,それぞれ,提言型と事例型で表彰することにしています.審査項目は公開されていまして,事例型が貢献度,独自性,実証性,表現力となっており,提言型が先進性,有効性,実現性,実証性,表現力となっています.審査の方法は明らかにしていませんが,最終審査員の名前は公開しております.IBM部門の審査員は100%,IBM社員が審査しています.

ナレッジモール論文の応募のメリットですが,まず1つがWebサイトへの公開です.コミュニティのメンバであれば,どなたでも過去の論文を閲覧いただくことができ,また成果発表イベントの「GO UNiTE 2023」で発表して公開しますということです.  

あと審査員の人たちからの丁寧な審査コメントのフィードバックです.これも非常にありがたかったとおっしゃっていただく方がいらっしゃって,このフィードバックを受けて,すぐに論文を書き直してみましたという方もいて,非常に皆さんから喜ばれています.

さらに「GO UNiTE for Champions」としてIBMのお客様エグゼクティブ向け宿泊研修施設の天城ホームステッドの1泊2日の宿泊研修にご招待することにしています.実は去年の入賞者の皆さんのこの天城の宿泊研修は今週の金,土で開催する予定になっておりまして,今,その準備で,てんやわんやな感じです(笑).  

あとはデジタルプラクティス賞ですね,情報処理学会のデジタルプラクティス賞ということで,こちらに採録されるということがメリットです.ほかにも,IBMの技術情報誌「ProVision」の特集号に掲載するということで,4月に掲載されています.  

あともう1つのメリットが,ナレッジモールの論文の発表会やセミナーでスピーカとしてご登壇いただく機会があるということを書かせていただいています.

玉山:先ほどのコミュニティのメンバが共創しながら論文を創り上げていくというお話があったかと思うのですが,そのように分科会活動をやって論文に仕立てるという論文と,コミュニティの一個人さまなのか会社さまなのか,テーマをご自身でつくって,ご提出されるパターンなのか,両方あるのでしょうか.

奥野:はい.両方あります.先ほどご紹介したのは論文のほうなのですが,ほかにも研究というのがありまして,6人から10人ぐらいで編成されたメンバで2月から9月まで研究するという,プロジェクトです.今年は43のワーキンググループが研究していて,その人たちも成果をナレッジモール論文のほうに出していただくことができます.ですので,論文の執筆者は個人だったりとか,ナレッジモール研究で仲間と研究してきた人たちだったりします.

玉山:分かりました.窓口が2つというか,種類が2つあるということですね.

奥野:そうですね,論文は1種類なのですが,書かれる方の属性として,ナレッジモール研究のアウトプットとして書かれる人と,個人とか仲間2~3人で書かれる人,2種類いらっしゃるということですね.

玉山:それは,会社を挙げて書くけれど1人で書いたみたいな感じになって,提出されるとか.

奥野:個人で書かれる方も,研究活動で書かれる方も,共同執筆者は1論文あたり4名までということになっていて,研究活動抜きで書かれる人も,共同執筆者4名フルフルで提出される方というのも多くいらっしゃいます.

玉山:それとは別にIBMの社員さまとの論文があるということですね.

奥野:そうですね,それも合わせて,ナレッジモール論文という言い方にしています.

玉山:もっと論文を増やしたいのだと思いますが,増やすにあたって,これから気を付けていきたいことや,これから打つ策とか,何かあれば教えてください.

奥野:はい.やはり2021年の提出は50編以上あったのですが,2022年の提出が33編ということで,結構減ってしまっている.もっと言うと,IBMユーザ研究会のときには100編以上提出があったのですが,やはりIBMユーザ研究会が解散してしまったということで認知度が落ちたというのと,あと賞金がなくなったので(笑),なかなかモチベーションがなくなったというのがあると思います.それで,何とかして持ち上げたいなと思っていまして,先ほどお話ししたメリットというのをかなり押し出してお話しするようにしています.

玉山:ありがとうございます.

アシストソリューション研究会の論文活動

谷津:アシストのソリューション研究会は論文を募集する形ではなくて,あくまでも分科会の研究成果として成果報告書をまとめてもらっています.毎年,たとえばマイクロサービスや言語のような技術的なものから,これからのデジタル人材とは?のような人材育成など,さまざまなテーマを設定して,東京,名古屋,大阪でそれぞれメンバを募集しています.  

11月にテーマを設定して募集を始め,2月に分科会を発足します.各テーマに6人から15人ぐらい手が挙がれば,そのテーマの分科会を発足するという形です.そこから1年かけて研究活動をしてもらいます.その年の12月に論文を提出,翌年2月初旬にプレゼンになります.ソ研では報告書の提出と発表,これを必ずセットで実施してもらっています.報告書および発表のそれぞれを東名阪各地区で審査して各地区の代表を決めます.それを再度審査して全国一位を最終的に決めるという2段階方式をとっています.  

各地区の代表になった分科会には,全国大会にご招待します.来年は福岡でやりますが,全国大会への出場を目標に各地区頑張って研究を進めている状況です.

報告書は40ページ前後というページ制限があります.ただ,論文ではなくて,あくまで研究成果の提示ということで成果報告書という呼び方をしています.情報処理学会の学会誌に掲載していただくときには,論文に書き換えてもらっているのが現状です.  

審査の基準としては,研究の深掘り,合理性,説得性,独自性,貢献度,有効度,表現力を中心に審査します.さまざまな会社の方が集まって正味8カ月ぐらいの研究ですので,ともすれば総花的になりがちですが,その中で独自性が高く実業務にも有効であるものが,高得点を取るというのが最近の傾向です.  

報告書の位置付けは先ほど申しましたように,研究成果の一環ですので,あくまで活動成果を説明できるよう文章に起こすことがメインになります.その中で活動内容だけではなく,自分たちの主張をしっかり伝えることを重視して報告書の執筆活動をしてもらっています.

櫻井:分科会の研究会活動の主査やファシリテートするような方というのはどういう方になるのですか.

谷津:実はアシスト側ではまったくファシリテートしておらずに,発足会のときに参加者の中からリーダとサブリーダを決めてもらって自主運営してもらっているのが現状です.年に3回進捗報告会という形でアドバイス会を開き,幹事からアドバイスをもらう場を作ったり,研究会活動そのものを支援するためのワークショップを開催しています.ワークショップは研究活動をプロジェクトに見立てて「プロジェクトマネジメント」と「ファシリテーション」,「報告書の書き方」,「プレゼンテーション」をソ研参加者向けにやっています.

玉山:昨年度の実績では,何編ぐらいあったのでしょうか.

根井:分科会の数,イコール,その報告書が出てくる数になります.多いときで15~20編ぐらい,最近は10編ぐらいです.50編というユーザ会もあり驚いています.10編でも,全部,審査員の方にすべて読んで採点していただいていているのですが,50編とは驚きました(笑).

玉山:ありがとうございます.皆さまのお話を聞いていると,研究会というのがしっかりと確立されていて,見習いたいと思っています.

BIPROGY研究会の論文活動

粟村:BIPROGY研究会の研究活動と論文の執筆と,この2点に少し絞りお伝えしたいと思っています.

主なスケジュールとして,研究活動が先にスタートします.5月に発足をしまして,サマースクールを経て,1月末までに活動報告書をおまとめいただき,3月に研究の成果を共有するというゴール感で進めております.  

一方,論文の活動は,7月から募集をはじめ,提出の締切が11月末,そして1月末に最終審査を行っております.多くの方々は,このスタート以前に取り組みをされている内容を,このタイミングで提出するか推し量っていただいています.

審査委員は,2023度は13名で運営しております.BIPROGYグループの方々からサポートをいただきながら,一次査読,二次査読と査読を重ねていって,最終審査という運びです.研究活動の報告,そして優秀論文の発表,これらを合わせて,来年3月に発表会・表彰式を予定しております.すべてユーザ主体で進めているとは言いながら,BIPROGYグループの方々に伴走していただくと言いますか,応援していただきながら走っているという状況でございます.  

実際,やはり論文って敷居が高いですねという声を聴くことがあります.多くの執筆者にとって取り組むときの第一ハードルとなっています.研究会では論文執筆にある知見と成果の価値について,広く知っていただくために継続的にパワーをかけております.実際に初めて書く方,団体で携わった仕事をまとめ上げる方々にフォーカスして,その執筆のきっかけづくりにさまざまな機会を用意して取り組んでいただいています.論文の提出数もさることながら,質も向上してまいりたいという思いは私ども研究会の中の共通認識です.そのための支援をBIPROGYグループの方々のバックアップで進めているという状況でございます.

谷津:BIPROGYの方が伴走しているという話がありましたが,具体的にどういうことをされているのでしょうか.

粟村:たとえば,研究活動で申しますと,大体1テーマ5~6人ぐらいのユニットで,リーダ,サブリーダを決めながら,喧々諤々,車座になって取り組むというふうな状況でございます.そこにBIPROGYの方が研究活動のアドバイザーという形で,技術的なアドバイスを少し裏方的にご支援いただいているというイメージです.

谷津:どの研究グループにも,BIPROGYさまの技術の方が入られるという形なのですね.

粟村:はいそうです.

酒井:BIPROGYグループは研究活動に対しまして,BIPROGYグループのエンジニアからサポート委員を選任して運営のご支援をさせていただいております.また,各研究グループにアドバイザという形でアサインさせていただき,直接グループの研究活動へのご支援もさせていただいております.サポート委員長には,私どものCTO(Chief Technology Officer)が務めさせていただいておりまして,当社グループのエンジニアの底上げも含めまして研究活動,そして論文活動のレベルアップを目指しているということでございます.

谷津:弊社の場合,社員も研究会に参加しますが,アドバイザではなく,一メンバとして一緒に研究するという立場で参加しています.アドバイザ的な人がいたほうがいいのではないかと思っていたので確認しました.ありがとうございます.

IBM Community Japanの研究会活動について

奥野:IBM Community Japanにも研究活動があって,ご紹介させてもらってもいいですか.もしかしたら参考にしていただけるかなと思い,クイックにお話をさせていただきます.  

ナレッジモール研究は2月にキックオフをして9月末までに成果物を出していただいて,10月に審査をしています.成果物で必ず出していただくものが1つあって,それは研究の内容を説明した20分の動画です.そのほかは何を出してもらっても結構で,プレゼンテーションの資料が自分たちの成果物ですという人もいれば,論文を書き上げる人もいれば,アプリケーションをつくる人もいる.それはもうワーキンググループの人たちに任せています.  

今年は34のテーマで43のワーキンググループができていて,300名以上の方々が2月から活動をしています.ワーキンググループには必ず1人ずつIBMアドバイザをつけるようにしています.これも全部,ボランティア活動なのですが,こういうお役割でやってもらえないかということをいろんな各方面に頼んで,出ていただいています.

斎藤:研究会のIBMアドバイザというのは,その研究テーマのスペシャリストとか,そういった立場の方なのでしょうか.

奥野:いろいろですね.量子コンピュータとか,クラウドAI,メインフレームなどは,その道の専門性を持った人が多いのですが,ほかのテーマのIBMアドバイザは,技術者ではない方もいます.IBMアドバイザは,技術的な支援,技術的な質問に100%答えられなくていいですということにしています.IBMアドバイザの一番大きな役割として,それぞれのチームのリーダを支えてねということをお願いしています.もし自分の専門性が合致している場合は技術的なアドバイスはしてほしいのですが,チームビルディングとか,リーダが変な方向に行かないようにとか,優しく,温かく見守って,チームが上手くいくようにしてねというのが1つの大きな役割ですね.

IBM Community Japanに変わって,個人がどなたでもメンバになっていただけると申し上げました.ナレッジモール研究のメンバには,たとえばお医者さんや,大学の先生などもいらっしゃいます.コミュニティになったことで,参加メンバにバラエティが増えたのも嬉しいところです.

玉山:このワーキンググループに参加するための,その参加メンバのレベル感とかはあるのですか.

奥野:たとえば,量子について申し上げると去年はA,B,Cと3チームありました.去年はお申し込みの際に参加者に知識レベルを確認し,あえてレベルを交ぜました.いろんな人たちが一緒になるようにしたんですね.一方,今年は上級者と初学者という形にレベルでチームを分けています.このように,テーマや年によってレベルでの分け方を変えています.

玉山:知識が浅い人たちだけでチームができてしまうということもあるのでしょうか.

奥野:はい,あります.それを逆手に取って,「初学者たちが,このテーマをどのように勉強すべきか」とかという観点を研究にしたりしていますね.

玉山:なるほど,なるほど,逆手に取って.

今後の活動と情報処理学会との協業への期待

長坂:最後のテーマです.今後の各団体の活動についてです.今後の活動がこう変わっていくのではないか,こう変わっていきたいみたいなところがあれば,ご紹介いただきたいと考えております.また,情報処理学会と協業にどういったところを期待しているのか,こうしてほしいですとかご要望も含め,ご意見があればいただきたいと思います.

玉山:今後ということですけど,日立ITユーザ会は,コロナ禍によってだいぶ活動も制約されてきて会員数も減少しました.会員数の増加,それから論文を執筆するという会員さまの増加をねらっていきたいなと思います.  

日立の幹部のほうも非常にユーザ会のことを心配しておりまして,もっと会員さまのためになる中身を考えよとご指導もいただいております.先週6月8日の第60回記念大会のことですが,大会やシンポジウムはお客様と営業が集ってちょっと飲み会的な要素が強い集まりだったのですが,そこにアドバイザ的な,弊社では有識者と呼びましたけど,生成AIやクラウドですとか,専門家を15名ほど会場内に散らばせて,お客様と経営課題とかITの課題についてお話ができるような機会,今後の提案のきっかけになるようなちょっとしたお話し合いの場というのを設定してみました.  

アンケートは,今,取っている状態なので,どういうお客様の反応があるかはちょっと分かりませんけれども,本当の価値をお客様とともに追求していくようなユーザ会になればいいなというふうに考えております.  

あと情報処理学会との提携,連携についてですが,当会の優秀論文をご紹介いただくことはその会員さまにとってもPRになりますし、今後も連携させていただきたいと思っています.

櫻井:お客様と日立という一方で,お客様同士のビジネスマッチングというのもやはり望まれているので,お客様同士が交流できるような,何か工夫をしていきたいなと思っているところです.

奥野:IBM Community Japanからの情報処理学会への期待ですが,IBM Community Japanは,なかなか外へPRするということが難しい状況でございますので,ぜひさまざまなコラボ企画を今まで以上に充実させていただいて,外向けに発信する起爆剤にさせていただけたらなと思っています.論文の執筆の効果に立ち戻って,日頃の業務を通じて得た知識の深掘り,自身の業務について客観的に振り返っていただく機会,論文を通じての気付きなどを得ていただく,これらの3つが得られる機会を提供したいと思っています.ほかの人の論文を読んだり,自身の論文をほかの人に査読して助言をもらったり,数値化することの重要性とか.自分自身を取り巻く仲間の人たちの仕事についても,改めてよく知るきっかけになると思います.ぜひ情報処理学会にもご協力いただいて,IBM Community Japanを知らしめたいなというふうに思っています.

あと,IBM Community Japanの今後のお話になりますけれども,このIBM Community Japanは2020年の7月という,コロナの真っただ中に悩みながら思い切って発足させました.そういうこともあって,100%オンラインのコミュニティという形でやって参りました.ここにきて,少し対面イベントを増やそうと思っています.プログラムの内容によって,オンラインだけなのか,対面もやるのか,100%対面にするのか,いろいろ使い分けをして,工夫して開催していきたいなというふうに思っています.

谷津:アシストソリューション研究会も情報処理学会とこれからもぜひコラボさせていただきたいと考えています.ソ研のアピールにもなりますし,参加者の動機付けとして強いものがありますので,さらに関係を強化できたらと思っています.  

今後の活動ということでは,集まって研究するので恒久的と言いますか,分科会活動終了後も参加者同士の関係性が続くような場,そういった設計をもっともっとしていきたいと考えています.  

せっかくなので,2点皆様にお聞きしたいことがあります.  

1つが,コロナでずっとオンラインでやっていたのですが,今年になって対面が増えています.オンラインはどこからでも参加できるメリットと,研究活動や交流はどうしても浅くなりがちなデメリットがあると思います.そこら辺をどういうふうにすり合わせていくのがいいのか,オンラインとリアルというのをどう見ていくべきなのかというのが今模索しているところですので,もし何かアドバイスがあればいただければと思います.  

もう1点は,参加者のレベル感の話です.レベル感を合わせて参加すると,最初から研究活動に入れるので深い研究ができるのは分かっているのですが,ソ研では基本的にはレベル感を合わせていません.そのため最初にレベル感や研究への期待値を合わせたり,レベル感の違いを前提に研究を進める難しさが出てきます.そういったことも成長や多様な交流につながると考えてレベル感を合わさずに参加者を募集してきましたが,最近はレベル感を合わせてほしいという要望が多くなっています.レベル感を合わすことで研究自体を優先すべきか,研究も大事だがすり合わせも含めて成長の機会と捉えてその苦労も含めやってもらうのかというところで,もしお考えがあったらお聞かせいただければなと思います.

長坂:研究会活動をされているBIPROGY研究会さまはいかがでしょうか.

酒井:私どもも同じことで,非常に悩んでおりまして,昨今,研究活動にご参加いただける会員のお客様も若年化していて,結果として,その研究成果の質に大きく影響が出ているのではないかという課題を提起されております.そこを解決していくには,今のアシストさんのお悩みになられておられるところと同じところをまさに悩んでいるところでございます.今年はおかげさまで全国から130名のお客様に参加していただき21グループで研究活動をスタートしております.今年の状況を踏まえて,次年度,どのような体制で,この研究活動を推進すれば良いかということをお客様の役員の皆様方と協議して,検討していきたいと,今,正直,考えているところでございます.

長坂:IBM Community Japanさまからはアドバイザをつけたりなどの進め方お話がありました.日立ITユーザ会さまは何かそういった観点でございますか.

玉山:1つ目のご質問のリモートとリアルの棲み分けですが,私個人的な意見にはなるのですが,やはりリモートができてがらりと変わってきたと思います.皆さまその価値はご承知だとは思いますが,リモートはやはり時間と空間を超えられるので,地方の方でどうしても情報に飢えていらっしゃる方については非常に便利なツールとして存在し続けると思います.なので,ゼロにはしたくないなと,私自身は思っていまして,お客様のご意見も聞きながら,リアルとリモートの組合せをつくっていければなというふうに考えています.

谷津:ありがとうございます.そうですよね,正解はないと思うので,試行錯誤かなと思いながら,今,聞いていました.ありがとうございます.

長坂:最後に,BIPROGY研究会さま,よろしくお願いします.

酒井:本日はどうもいろいろありがとうございました.最後のご質問の点につきましては,私どもコロナ禍でやはり皆様方同様に,これまで行ってきた活動には大きく影響してまいりました.しかしながら会員企業数という意味では,大きく減少することなく,会員さまを維持することができてきております.その背景には,新しい手段であるオンライン等を上手く活用したことによって,的確な,適切な,その情報の提供をタイムリーに行うことができて,そこに一目置いていただいたということあるのかなというふうに考えております.  

大きな目的に掲げている異業種交流の中で,今後,オープンイノベーションというキーワードで新しい取り組みをBIPROGYグループが主導権を握って,従来の研究会,ユーザ会活動だけに囚われずに,やはり魅力のあるものにしていこうということで,今,私どものマーケティング部門と連携をとりながら企画を進めているところでございます.研究会の良き伝統を継承して,さらに価値を付加して,研究会活動のクオリティを高めていきたいと考えております.

粟村:今日の皆さまのお話を伺って,研究会,研究活動,とりわけ分科会,それぞれの活動,やはりたくさんの気付きがございました.研究会の価値は何かという点を考えていく中で,本日お集まりの4つの団体,学会をはじめまして,複数の団体が相互に,その枠を超えて,スキルアップと交流を図れるという貴重な機会を作っていただくことができました.  

いわゆる団体の中に閉じた会員価値だけではなく,お互いの枠組みを少し超えて,相互に交流し合うというところが大事な点です.今後,論文と研究活動を中心にこのような場を今後少しずつ広げられればと思っております.情報処理学会の皆さまと,しっかりリアルでつながるような場面も可能かと思いました.

一方でBIPROGY研究会の中で感じたのが,オンラインとデジタル化はかなり進んだように思いますが,かえってアナログ的な動きでリアルに相まみえるというのが逆に光ってきた感覚です.皆さま,いかがでしょうか.そういう意味では,団体の固有名詞を少し外して,ほぼ同じ共通目的,あるいは論文でも,研究でも,同じテーマでフォーカスして共有する新しい融合コミュニティのような,何かそういう場づくりが,本日をきっかけにまた検討ができると非常に嬉しく思います.期待と希望までお話ししましたが,ぜひご一緒に検討させていただければと思います.

斎藤:本日は本当にありがとうございました.ご要望いただきました論文とか,研究会活動の発表に関するコラボレーションはぜひ強化していきたいと考えておりますし,また今回のような枠を超えた活動,運営の情報交換なども,ぜひご提案していきたいと思っております.どうぞ引き続き,よろしくお願いいたします.

 

座談会開催日時:2023年6月13日

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