東京大学ではCOVID-19対応として2020年度当初からほぼ全面的にオンライン講義を実施したが,状況に一定の落ち着きがみられるなか,2020年度秋学期は,履修者数の多くない講義を中心に,教室に入室できる人数を制限し密を避けつつキャンパスで実施する講義と,オンラインでの講義を併用するハイブリッド方式で講義を行うこととなった.また,2020年度の開始から約4か月にわたるオンライン講義の実施を通じて,直接の会話によるコミュニケーションが取れないことへの不満が数多く寄せられる一方,特に大人数講義ではむしろオンライン講義のほうが良いとの意見もある[1].そこで来年度以降COVID-19が収束した場合でも,大人数講義を中心に一定程度オンライン講義を行うハイブリッド方式を残すことも検討されている.
こうしたオンラインと対面講義を同時に実施するハイブリッド方式を実現するための課題の1つが,キャンパス内のネットワーク環境,特に無線接続環境である.大学における学生の講義履修のパターンは多様であり,ハイブリッド方式を採用した場合には,ある時限にキャンパスで対面講義に出席した学生が次の時限にはオンライン講義を受講するといった事態が多く発生することが予想される.そのため大学構内にオンライン講義を受講するためのネットワークや電源環境を用意する必要がある.本学のキャンパスでは多くの教室にWiFiによる無線接続環境が整備されているが,これらは主に教員が講義で使う,ないしは学生が単発的に調べもの等に利用することを想定しており,キャンパスにいる多数の学生が同時にリアルタイムのストリーミング講義を受講するような使い方を想定してはいない.
2020年度秋学期では,感染症対策のため教室定員をかなり減らして運用を行うものの,各教室で複数の学生が同時にオンライン講義を受講することが予測されている.このような状況で,WiFiがどの程度リアルタイムの音声や動画ストリーミングに耐えられるかは,教室の電波状態や端末数,ストリームされるコンテンツなど様々な要因に依存し,自明ではない.教室などの無線LAN環境において,同時に接続した複数端末での帯域測定は浜元ら[2]および福田ら[3]の研究によって報告されている.しかし,これらの報告では帯域測定を行うツールを用いての計測を行っており,実際に遠隔講義に使用するテレビ会議アプリケーションを用いた性能測定や,本番に近い環境でユーザが講義を受けた際に問題のないクオリティで受講できるかといった部分については別途調査が必要と考えられる.
そこで我々は,秋学期から始まるハイブリッド方式の講義の円滑な実施のため,実際にオンライン講義受講のために提供する予定の教室において,多人数での同時オンライン講義受講が可能であるかについて,いくつかの講義シナリオを設定し,ネットワークの状況や音声・画像の品質について確認する評価実験を行った.本稿では,この実験の内容と結果,そして得られた知見について報告する.
本評価実験では,2020年度秋学期以降,対面講義を受講するためにキャンパスに登校した学生が対面講義以外のオンライン講義を受講するための教室で,80台のノートPCを用意して実際にオンライン講義を受講し,様々なシナリオに基づいて計測を行った.なおオンライン講義の配信には,Zoomを用いた.本章ではこの実験環境および計測方法について述べる.
実験は学生に対してオンライン講義受講用に開放する教室の1つを利用して実施した(図1).当該教室には机および座席が教卓に向かって左右に5席ずつ,前後に8列ずつ配置されており,通常定員160名のところ,感染症対策のための定員として80名を設定している.学生が相互に一定の距離を置いて着席できるように着席場所は市松模様に設定されている.本実験では,学生の着席場所にPC・タブレット等を配置し,Zoomによるオンライン講義受講を行った.教室は前後2か所にドアがついており,実験者の感染症対策のため,窓およびドアは開放した状態で実験を行った.実験を行った建物は教室棟であり,他の教室についても同様に無線基地局が設置されているが,実験期間中にわたって同建物内の他の教室に使用者がいない状態にしていた.
無線基地局はAruba社製AP-515を使用しており,同社製の無線LANコントローラ7240XMによって制御されている.コントローラと基地局は暗号化トンネルにより接続され,基地局によって送信・受信されるトラフィックはすべてこのトンネルを通り無線LANコントローラを経由して外部と通信を行う.
AP-515無線基地局はカタログスペック上は2.4 GHzおよび5 GHzの無線それぞれに256台,合計で512台の無線クライアントが接続可能となっている.推奨最大接続数はメーカが提供している情報はないが,販売代理店が提供している情報*1では150台が推奨最大接続数となっており,今回の実験で接続する80台に対して基地局の処理性能上は十分なキャパシティを持っていると考えられる.
無線基地局の設定を表1に示す.また2台の無線基地局は,図1に示すように,教卓よりの天井裏に1台,廊下の天井裏に1台が設置されている.それぞれの無線基地局はGigabit EthernetによりPoE対応のスイッチに収容されており,そこから無線LANコントローラまでのネットワーク接続は1 Gbps以上のリンクで構成されている.
クライアント端末としては表2の機材を使用した.学生は自分で持ち込んだ機材によりオンライン講義を受講する.学生が持ち込む端末は多様であり,Chromebookのような廉価な端末から,Mac Bookのような十分な性能を持つ端末まで幅広い.それぞれの端末が単独でzoomによるオンライン会議を視聴できるとしても,それらの端末が一部屋に同時に混在した状況では,zoom講義を十分な品質で視聴できるかは不明である.そこで本実験に使用する機材はその無線インタフェースのスペックや,処理性能も含めて複数種類のクライアントを用意し,それらの混在による影響を検証した.教室における各クライアントの配置は図2のとおりである(図内の数字は表2のNo.に対応する).
本実験のシナリオは表3のとおりである.各シナリオは,下記のパラメータを念頭に,講義中に発生しうる組み合わせをピックアップして設定を行った.
シナリオ1から5は基地局から出すWiFiを802.11acと802.11nの二種類,シナリオ6から9では802.11nのみとした.またシナリオ2では,ストリームされる講義の動画にYouTubeの動画を用いた.これは,一般的な講義では静止画の連続であるスライドショーがメインであり,映像に圧縮が効き所要帯域が小さいことに対して,圧縮が効きづらいコンテンツを用いた場合の影響を確認するためである.またシナリオ10では,WiFiは802.11acと11nの両方ながら,基地局を1台のみとすることで,1台の基地局に接続端末が偏る場合の検証を行った.
本実験では,特定のSSIDに対してクライアント端末を全台無線LANにより接続し,シナリオに従って全クライアント端末でZoomの講義を同時に受講した.配信する講義については,本学が前期において実際にオンライン配信を行ったものの録画を利用し,その動画再生画面を画面および音声共有することで配信した.録画は2種類を用意し,シナリオ1,2,3,6,7,9,10においてはそのうちの1つの動画を,シナリオ4,5,8においては2つの動画をそれぞれ異なるZoomのセッションで配信を行った.シナリオ3,5,7,8においては半数の端末で講義を受信すると同時にYouTube動画の再生を行ったが,これは無線ネットワークへの負荷が増加した際の様子を確認するために実施したものであり,後述するオンライン講義のスコアリングについてはYouTube動画を再生していない端末でのスコアを用いた.シナリオ9で利用したモバイルWiFiは,大学で学生に対して下宿などでのオンライン受講用に配布しているソフトバンク社のPocket WiFi 801ZTである.対応している無線規格は802.11b/g/n(2.4 GHz)であり,本シナリオでは部屋内の無線基地局のチャネルをモバイルWiFiで提供しているチャネルと同じチャネルに固定することで干渉の影響を検証した.モバイルWiFiへはZoomへの接続に使用したクライアントとは別に1台だけ接続し,シナリオ中に当該機器でYoutube動画をモバイルWiFi経由で受信した.
使用した講義の録画は,本学の前期講義において一般的に行われた,講師のパワーポイントによるスライド画像を画面共有し,講師がマイクで講義を行うタイプものである.2を除くシナリオで利用した動画は送信ビットレートの平均は400 kbpsであり,4,5,8で利用したもう1つの講義動画の送信ビットレートは平均で470 kbpsである.シナリオ2で利用した高画質の動画は送信ビットレートの平均は3000 kbpsであり,配信は測定を行った教室とは異なるキャンパス内の場所から行った.配信側のPCはGigabit Ethernetによる有線LANによって大学ネットワークに接続した.
Zoomによる講義視聴中に,下記の情報について取得した.
無線LANコントローラの統計情報
無線LANコントローラにおいて,それぞれの端末について接続チャネル,信号強度,無線プロトコル,無線LANのMCS,フレーム再送レートなどの情報を2分間隔で取得した.
Zoomサーバによる計測値
各端末へ送信した映像・音声のビットレート,パケットジッタ,遅延,ロス率についてはZoomのサーバ側で記録されており,その計測値を取得した.
実験協力者によるスコアリング
Zoomによるオンライン講義について,本学の学生8名からなる実験協力者により,それぞれ特定の端末でオンライン講義を視聴し,講義の品質について映像と音声それぞれ別に5段階評価でスコア付けを行った.
実験期間中,無線LANコントローラから取得した各クライアントが接続していたWiFiチャンネル番号の最頻値と,各クライアントからのWiFi信号強度(RSSI)の中央値を,各端末の設置場所にプロットしたヒートマップをそれぞれ図3と図4に示す.図の上側が教卓側となる.無線基地局は図1で示すように,基地局Aが教卓に向かって中央より左寄り,やや前寄りの天井裏に,基地局Bが教卓に向かって右の教室外の廊下に設置されている.
図1にあるように,基地局Aが2.4 GHz/5 GHzでそれぞれ6ch/52ch,基地局Bが11ch/100chで接続を提供しており,基地局はできうる限り5 GHzの接続を端末側に推奨する設定になっている.図3において,6ch/52chで接続している端末は基地局Aに,100chに接続している端末は基地局Bに接続している.
図5は各端末の無線リンクの接続速度の全実験期間中を通じての最頻値である.端末・基地局ともに802.11acおよび802.11nに対応しているが,少なくない端末が5 GHz帯の最低転送レートである6 Mbpsで接続されている.
図4から分かるように,RSSIは基地局Aに近い場所ほど信号強度が強いが,図5を見る限り,WiFiの転送レート(MCS)については,基地局からの距離およびRSSIとの強い関連性はみられない.
本データは無線LANコントローラからSNMP経由で取得したものであるが,一部端末で,接続チャネル番号は取得できるものの,クライアントのS/N比およびWiFi接続速度が取得できず欠損しているものが存在している.(図4の図5空欄になっている部分)こちらについては無線LANコントローラの動作上の問題であると思われるが,現状では詳しい原因は不明である.
図6にシナリオ別の無線リンクにおいて,基地局がフレーム再送を実施した各端末ごとの割合の分布を示す.シナリオ1~5と10では基地局を802.11acおよび802.11n対応にして,シナリオ6~9では基地局を802.11nのみ対応にして各端末の接続を行った.シナリオ10のみ,全端末を基地局A 1台に接続して配信を行った.
全般的に,802.11ac接続を有効にしたシナリオより,802.11n接続のみを有効にしたシナリオのほうが基地局からのフレーム再送は減少している.詳細な原因は不明であるが,MIMOおよびwave-formingにより,無線信号を空間に多重して送ることにより再送が増加している可能性がある.また,シナリオ10についてはその他の802.11ac接続より低いフレーム再送レートになっているが,これは各端末に送信を行う基地局が1台になることにより,結果としてフレームの衝突を誘発させる他基地局からの近接・ないし同一チャネルでのフレームが送信されないことが原因であると推測される.
図7,図8はシナリオ別のZoomの画面共有の映像トラフィックおよび音声トラフィックのビットレートである.画面共有のビットレートについては,講師側の端末で再生している高画質のYouTube映像を画面共有したシナリオ2が全体的にビットレートが高くなっている.そのうえで,3 Mbps前後の高いビットレートで受信している端末と,500 kbps程度で受信している端末が混在しており,元の映像トラフィックのビットレートが高い場合には同じ教室で同じZoomのオンライン講義を受講していた場合でも,クライアント端末によってかなり映像品質にばらつきが発生することが見てとれる.図9にシナリオ2における端末種別ごとの映像ビットレートを示す.Mac BookとiPadを除く端末では,高いビットレートを受信している端末,および低いビットレートを受信している端末の両方が存在し,端末の種別ごとに受信ビットレートの高低差はみられなかった.Mac BookとiPadでは全台が低いビットレートで受信していたが,無線インタフェースの仕様上の性能はクライアント群では高いほうであり,クライアントソフトウェアの挙動に依存すると考えられる.
音声トラフィックについては,映像ほどの顕著な差は端末間で現れなかった.
図10,図11にシナリオごとの映像・音声のジッタ分布を示す.シナリオ別では,シナリオ9においてモバイルWiFiを用いて別にトラフィックを流した場合に,映像・音声どちらのジッタも全体的に悪化していることが分かる.
Zoomの画面共有のトラフィックについて,図12,図13に802.11acで接続を行った際のアプリケーションレイヤでのパケットロス率のそれぞれ最大値と平均値を,図14,15に802.11nで接続した際のパケットロス率の最大値と平均値を累積分布関数で示す.802.11ac接続の場合,パケットロスの最大値はすべての端末が同一のZoom講義に接続する場合(シナリオ1,2,3,10)に比べて,複数のZoom講義に接続する場合(シナリオ4,5)のほうがパケットロス率が低い傾向がみられた.これは,ストリーミングにおいて映像の転送は圧縮がかかるため,スライドの切り替え時など大きく画像が変化する場合に転送量が増えるが,学生が異なる講義を受ける場合はその転送量のピークが分散するためであると考えられる.また,80台の端末すべてを1つの基地局に接続したシナリオ10では顕著にパケットロスが増加していることが確認できた.パケットロスの平均値で見た場合,シナリオ10のパケットロス率がやや高い傾向はあるものの,それ以外のシナリオ間で顕著な差はみられなかった.
802.11n接続の場合は,同時にモバイルWiFiで動画ストリーミングを行ったシナリオ9において顕著なパケットロス率の最大値の悪化がみられた(図14).また,シナリオ9はパケットロス率の平均値も同様に悪化しており(図15),講義中でのモバイルWiFiの利用が学内の無線インフラに顕著な影響を及ぼすことが確認できた.
図16に各実験協力者ごとの各シナリオの映像・音声のスコアを示す.シナリオ別に見た場合,シナリオ2で講師側でYouTubeの高画質動画を再生し,それを画面共有で送信した場合に一部の実験協力者が映像へのスコアを低く採点している傾向がみられる.これは,3.2節で示したように,実験協力者の端末によって映像のビットレートが大きく異なるためこのような違いが発生していると考えられる.
また,多くの実験協力者がシナリオ9においてモバイルWiFiで別にトラフィックを流した場合に顕著に音声・映像のスコアを低くつけていることが分かる.
実験協力者別に見た場合,8番目の実験協力者が他の実験協力者に比べて平均的に低いスコアをつけている.これは当該実験協力者が視聴していた端末について,実験を通じて計測されたZoomや無線LANの統計情報が他の端末に比べて著しく悪い数値が出ていたという事象があり,その個体の影響によるものと考えられる.
図17,図18は平均0,分散1に標準化した各実験協力者の映像・音声のスコアと,Zoomの画面共有および音声のジッタの関係についてプロットしたものである.映像・音声ともにジッタが200 msを上回った場合には,実験協力者の相対的なスコアのほとんどが平均以下になっていることが分かる.ジッタが低い場合でも必ずしも高いスコアが付けられてはいないことから,ジッタのみが映像・音声の支配的なパラメータではないが,講義の映像・音声品質を担保するうえでの重要な指標のうちの1つであるといえる.
本実験では,感染症対策のため教室の定員を半分とした状態で,学生の持つ様々な種類の端末を想定し6種類のPC・タブレットで同時にオンライン講義を視聴できるかの確認を行った.まず下記に本実験から得られた知見をまとめる.
本実験の目的は実際の教室において,多人数での同時オンライン講義の受講が可能であるかを確認することである.そしてその結果は,本来定員160名の教室で80人が視聴した場合,様々なパラメータはあるものの総じて可能であると言えるものでだった.ここでは,本実験から得られた知見をもとに,それ以外の教室でのオンライン講義の視聴について考察する.
今回我々が実験を行った部屋は,定員160名と比較的大きな部屋であり,実際の大学の教室はこれよりも小さな部屋が多い.実際に東京大学駒場1キャンパスの教室の約半分が定員50名以下である.こうした部屋で同時にオンライン講義の受講が可能かどうかについては,本実験結果から可能であると推察される.シナリオ10ではAP 1つに80台の端末が接続し,パケットロスの増加はみられたものの視聴に問題はなかった.50名規模までの教室においては一部屋に1台はAPが設置されている場合が多く,そうした部屋でも問題なくオンライン講義の視聴は可能であろう.一方部屋の定員が少ないなどの理由でAPが設置されていない教室の場合は,廊下にAPがあれば視聴は可能であると推察される.図3にあるように,本実験でも一部の端末が教室の外,廊下の天井裏に設置されたAPに接続しているが,それによる問題は報告されていない.しかしAPの設置されていない複数の教室が一箇所に集中している場合,廊下等に設置されたAPに端末の接続接続が集中する.そういった配置のAPについては,APの機種やスペックによるももの,本実験が示した80台を1つの目安として,接続端末数が過剰にならないか注意して配置等を設計する必要がある.
次に定員が160名よりも多い大教室では,設備機材やコストの関係で十分な数のAPが設置されていない場合がある.たとえば本学において,実験を実施した教室は定員160名にAPが2台(1台は廊下)であるが,定員が2倍以上のある教室に設置されているAPは3台である.そういった場合でも,感染症対策によって教室の利用人数が制限され人口密度が一定以上にならない現在の状況では,オンライン講義視聴については問題無い可能性がある.先ほど述べたAPが3台設置されている教室は定常時は定員335名だが,感染症対策で利用できる席を減らした結果,利用できる人数は184名までとしている.これは,本実験のAP 3台でオンライン視聴が可能であると推定できる人数である.このように大教室においては感染症対策による人口密度の低下がAPの設置台数と収容能力に余裕を生み出している場合がある.
一方教室の規模やAPの数とは別にオンライン講義の品質に大きな影響を与えるものとしてモバイルWiFiルータがある.シナリオ9の結果から,この悪影響は顕著であると言え,今回想定したように複数の学生に対して教室でオンライン講義を受講させる場合,講義時間内における学生・教員の持ち込みモバイルWiFiルータの使用は強く制限する必要があると考えられる.
最後に,今回の実験では,実験協力者自身によって各端末のWiFi接続設定およびZoomの接続操作を行ってもらったが,設定が分からない,うまくWiFiおよびZoomに接続ができない,などの問い合わせが多く発生し,実験開始までにかなりの時間を要した.この点は,環境や規模によらず,実際の講義においてもこのような学生・講師に対するWiFiやZoomの技術的な対応にはかなりの人手を要することが予測できたのも本実験の実施を通じて得られた重要な知見であった.
本実験では,教室における多人数での同時オンライン講義受講について,複数の講義シナリオを想定し,実機を用いることでオンライン講義受講の検証を行った.本実験により,モバイルWiFiルータの使用を禁ずるなどいくつかの条件を整えれば,本学が想定する無線接続を用いた大教室における同時オンライン講義の受講は十分に可能であることが分かった.
2020年度秋学期よりハイブリッド方式での講義が開始したが,さらに継続して実運用環境での測定を行うことにより,オンライン講義品質確保のための監視と,実際に発生する問題への対処を行っていく予定である.
謝辞 本実験を実施するにあたり,総合文化研究科教養教育高度化機構の初年次教育部門,アクティブラーニング部門,FLYプログラムには接続端末の貸与など多大な協力をしていただきました.この場を借りてお礼をいたします.また,本学オンライン講義検討会においては本実験に対するたくさんのご助言等をいただきました.心より感謝いたします.
2009年慶応義塾大学政策・メディア研究科後期博士課程修了.2010年博士(政策・メディア).2009年より東京大学総合文化研究科特任助教に就任.2016年同研究科助教,2019年同研究科准教授.ドメインネームシステムおよびインターネット・無線LANの運用技術に関する研究・開発に従事.
東京大学 大学院総合文化研究科 教授.Ph.D.(Psychology).東京大学卒業後,米国ブランダイス大学大学院でPh.D.を取得.ボストン大学およびハーバード大学医学部付属マサチューセッツ総合病院リサーチフェロー,慶應義塾大学特任准教授,東京大学准教授を経て現職.専門は認知神経科学,知覚心理学.
2000年東京大学理学系研究科博士課程中退,同研究科附属地殻化学実験施設助手,2001年博士(理学)取得.2015年東京大学総合文化研究科准教授,2022年同教授を経て,2022年4月より現職.2020年に東京大学総合文化研究科の研究科長・学部長補佐として,コロナ禍におけるハイブリッド授業環境の整備に携わる.専門は地球化学,環境化学,質量分析学.
2008年より東京大学情報システム本部にて,情報システム戦略に基づいた全学的な情報サービス提供を担当.全学的なWiFi環境としてUTokyo WiFiの導入整備・運用を行う.現在は大学活動のICTによる高度化をuteleconプロジェクトで推進中.
東京大学 情報基盤センター ネットワーク研究部門助教.博士(情報理工学).2017年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.オペレーティングシステムのネットワークサブシステム,SDN/NFV,ネットワークアーキテクチャの研究に従事.
1997年大阪大学工学部情報システム工学科卒業.1999年同大学大学院工学研究科博士前期課程修了.2000年同研究科博士後期課程中退後,同大学サイバーメディアセンター助手.2007年東京大学情報基盤センター講師,2010年同准教授となり,現在に至る.拡張現実感,ヒューマンインタフェース,グループウェアなどに関する研究に従事.博士(情報科学).
1980東京大学工学部卒業.1985東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.工学博士.東京大学工学部助手,講師,准教授を経て1999東京大学大学院工学系研究科教授.情報通信ネットワーク,並列・分散コンピューティングの研究に従事.2020~IFIP日本代表.電子情報通信学会,人工知能学会,ソフトウェア科学会,電気設備学会,IEEE,ACM会員.
1991年慶應大学理工学部電気工学専攻博士課程修了.1991~1997年東京工科大学情報工学科助手/講師/助教授.1997~2002年技術研究組合新情報処理開発機構.2002年4月独立行政法人産業技術総合研究所,2015年4月より東京大学情報基盤センターネットワーク研究部門教授.工学系研究科電気系工学専攻兼担.産業技術総合研究所特定フェロー.
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