会誌「情報処理」Vol.63 No.5(May 2022)「デジタルプラクティスコーナー」

超スマート社会における高齢者のIT活用を促進する“人に寄り添うテクノロジー”の展望

行木陽子1  陳 建和2  倉島菜つ美3

1中央大学  2キンドリルジャパン(株)  3日本アイ・ビー・エム(株) 

超スマート社会においては,だれもが新しい機能やサービスを容易に利用し,高度なIT技術の恩恵を受けることができると期待される.加えて,世界でも前例のない超高齢化社会を迎えつつある日本では,高齢者によるIT活用が超スマート社会実現の鍵となる.しかし,コロナ禍において,対面でのコミュニケーションが大きく制約を受ける中,高齢者のネット社会における情報格差が顕著となっている.

筆者らは,昨今のITを活用した各種情報へのアクセスやコミュニケーションの手段が,高齢者にとっては複雑で難解なことがこの課題の根本にあると考えた.たとえば,今や若年層にとってはもはや一般常識に近い「ネット/インターネット」「アプリ/アプリケーション」といったIT活用の大前提となる概念そのものが理解できないことや,タッチ・ディスプレイによる操作に不慣れで扱いづらいことなども要因と考えられる.したがって,短期的な解決策は,触れて慣れることである.慣れによって,高齢者もある程度はITを活用したコミュニケーションがとれるようになり,そのメリットを実感できることでIT活用へのモチベーションがあがる,という好循環を得られる.この点について,筆者らによる実地検証の結果を踏まえて考察する.

高齢者がIT活用に慣れるためには,家族などの身近な存在あるいは,地域コミュニティなどの継続的な支援が欠かせない.このため,「とにかく慣れること」は必ずしもすべての高齢者にとって最善の解決策になるとは限らない.そこで期待されるのが,人間中心のIT技術である.具体的には,アンビエント・コンピューティングやカーム・テクノロジーと呼ばれる技術が浸透することで,高齢者がストレスなくIT技術を活用し,必要な情報にアクセスしたり,コミュニケーションをとったりすることができるようになる.こうしたIT技術を活用した実証実験はすでに始まっており,それらの結果も踏まえ,その有効性について検証し,今後の展望について考察する.

本稿は,世界で最も高齢化率が高く,超高齢化社会の只中にある日本にとって国際的競争力を維持する上で非常に重要なテーマであると同時に,世界に先駆けて超スマート社会における新たなプラットフォームやビジネス・モデルを模索する企業や団体にとって有用な内容であると考えている.

1.超スマート社会における高齢者の情報格差

超スマート社会においては,だれもが新しい機能やサービスを容易に利用し,高度なIT技術の恩恵を受けることができると期待される.一方で,日本は世界でも前例のない高齢化社会を迎えている.情報通信技術の発展によって,デジタルデバイスの活用が進み,家にいながら買い物ができたり,デバイス越しに対面で会話を楽しんだり,会議や打合せを行ったりすることが可能になった.しかし,高齢者によるデジタルデバイスの利用は限定的でその機能を十分に使いこなしているとは言い難い.こうしたことから,超スマート社会の実現には,超高齢化社会を見据えた高齢者の情報格差の是正が急務である.

本稿では,高齢者がデジタルデバイスを活用する上での阻害要因を「メンタルモデル」「入力操作」「モチベーション」の観点で洗い出し,実地検証を通してその解決策を検討した.その結果,阻害要因となる上記3点は,操作・環境への「慣れ」によって改善できることが見えてきた.家族やコミュニティの支援があれば,段階的に操作へ慣れるようサポートすることで,高齢者によるデジタルデバイスの活用を促進できる.しかし,継続的に支援し続けるのは難しい場合もあり,またそうした支援を受けられない高齢者の存在を考えると別の解決策が必要となる.そこで期待されるのが「人に寄り添う」テクノロジーの存在である.より多くの人が「超スマート社会」の恩恵を享受できる豊かな社会を実現するために,人間の思考や行動を邪魔せず,「慣れ」なくても意識せずに操作できるアンビエント・コンピューティングの活用や新たなテクノロジーの可能性についても検討していていく.

2.高齢者によるIT活用上の課題と解決の方向性

2.1 超スマート社会と超高齢化社会

「超スマート社会」とは,「実世界のモノにソフトウェアが組み込まれて高機能化(スマート化)し,それらが連携協調することによって社会システムの自動化・高効率化を実現し,また新しい機能やサービスの実現を容易にする仕組みが実現された社会」である[1].超スマート社会においては,だれもが新しい機能やサービスを容易に利用し,高度なIT技術の恩恵を受けることができると期待される.

一方で,令和2(2020)年版高齢社会白書によると,令和元(2019)年の高齢者(65歳以上)が総人口に占める割合は28.4%であり,総人口が減少する中で65歳以上の人口が増加し,令和18(2036)年には33.3%となり,約3人に1人が65歳以上になると推計されている[2](図1).このようにすでに始まっている超高齢化社会は今後ますます進むと見られており,超スマート社会は同時に超高齢化社会でもあるだろう.

高齢化の推移と将来推計
図1 高齢化の推移と将来推計[2]

MMD研究所によると,コロナ禍の影響もあり,高齢者によるスマートフォン利用は急速に拡大しつつある[3](図2)が,実態としてその利用はオンラインショッピングや音声通話,散歩などの利用に限定されている[4](図3).SNSやブログなどのコミュニケーション,ニュース購読,音楽・動画視聴,インターネット上の情報検索,オンラインゲームなど幅広くスマートフォンを活用している若い世代に比べると,その機能を十分に活用できているとは言い難い.筆者らの身近にいる高齢者層を例にとってみても,スマートフォンなどのデジタルデバイスを十分に活用しているという人は稀で,多くは限定的な利用にとどまっている.

高齢者におけるスマートフォン普及状況(MMD研究所調べ)
図2 高齢者におけるスマートフォン普及状況(MMD研究所調べ)[3]
高齢者におけるスマホ利用動向(MMD研究所調べ)
図3 高齢者におけるスマホ利用動向(MMD研究所調べ)[4]

デジタル庁によると,最も利用されているSNSであるLINEは20代では93.1%,70代では56.7%の利用率と年代別の差が顕著である[5].このことからも,ITへの適応力の高い若い世代は,コロナ禍で対面でのコミュニケーションが制限を受ける中でも,IT技術を基盤としたコミュニケーション手段へとシフトすることで,コロナ前に近い活動や情報へのアクセスを維持できていると見られ,結果として世代間の情報格差が拡大している.

スマートフォンに代表されるデジタルデバイスは,人が情報にアクセスするための一番身近なタッチポイントであり,超スマート社会において新しい機能やサービスの入り口になることは容易に想定できる.しかしながら超スマート社会において人口の多くを占める高齢者にとっては,必ずしも身近で手頃なタッチポイントと言えず,結果として高齢者が超スマート社会における利便性を十分に享受できない可能性が高い.したがって,筆者らは,高齢者のIT活用とそれによる情報格差の解消は,超スマート社会の実現にあたり最優先で取り組むべき課題の1つであると考える.

ではなぜ高齢者にはデジタルデバイスによる情報活用が十分に浸透しないのだろうか.

2.2 高齢者によるIT活用の阻害要因

(1)メンタルモデルが確立できないことによる不安

メンタルモデルとは,認知科学における1980年代以降のキーワードの1つであり[6],人の心の中にある「ああなったらこうなる」といった「行動のイメージ」である.人々の行動は,その人の持つメンタルモデルに大きく影響を受ける.たとえば,掃除機に対し「ゴミを吸い込み溜めることで部屋をきれいにできるもの」というメンタルモデルが描かれているので,部屋に埃が溜まっていることに気づくと,掃除機をかけよう,という思考に至るのである.

それでは,スマートフォンを始めとするデジタルデバイスを使う場合に描かれるメンタルモデルはどのようなものだろうか.ここで問題となるのがその複雑性である.ユーザは,目の前のデバイスによる入出力だけでなく,その中で動くアプリケーション,あるいはその先にあるインターネットやWebサイトといった概念も含めたメンタルモデルを描く必要がある.荻田らは,中高年のパソコン操作の困難さが何に由来するのかをアンケート調査結果に基づき分析し,認知心理学的な側面から,このメンタルモデルが描けないことによる不安が原因の1つではないかと考察している(図4).

スマートフォン利用にあたってユーザが描くべきメンタルモデルの一例
図4 スマートフォン利用にあたってユーザが描くべきメンタルモデルの一例

すなわち,高齢者がデジタルデバイスをタッチポイントとして利用することが困難である原因の1つとして,デバイス,アプリケーション,そしてインターネットといった概念を含むメンタルモデルを描くことが難しい点が挙げられる.加えて,メンタルモデルが描けないことによる恐怖心や不安感も,利用を阻害する方向に作用していると考えられる.逆に言えば,高齢者であっても,適切なメンタルモデルを描ければ,利用促進につながることが期待できる.

(2)不慣れな入力操作による扱いづらさ

メンタルモデルが描けたとして,次に課題となるのが入力の難易度が高いことである.

スマートフォンの活用にあって必要不可欠なフリックやスワイプといったタッチ・ディスプレイによる入力操作は習得に時間がかかる.初めてスマートフォンを使おうとする高齢者はこの入力操作にはまったく不慣れであり,その扱いづらさ,習得の難しさが高齢者によるスマートフォン利用が進まない原因の1つとなっている.荻田らは,パソコン操作の課題としてキーボード操作およびマウス操作の困難さを挙げている[7]が,これと同じことがスマートフォンの入力操作でも起きていると考えられる.高齢者にとって物理的なボタンのないタッチ・ディスプレイの操作はこれまでまったく経験のない操作のため,キーボード操作やマウス操作の未経験者がそのスキルを習得する場合よりさらに,そのスキルの習得に時間がかかることが容易に想定できる.

高齢者にとってタッチ・ディスプレイ操作が難しいのは,操作の習得に時間がかかることに加えて,加齢により触感や圧感といった感覚機能の低下によりフィードバックを感じにくいことや,運動機能の低下により細かな操作がしづらくなっていることも要因と考えられる.永井らは,タッチパネル使用時の手指操作と接触力の実験を行い,高齢者と若年者の間に差異があることを明らかにしている[8].

スマートフォンの入力方法には音声入力という方法もある.音声入力はタッチ・ディスプレイ操作と比べて習得の難易度は下がるものの,すべての入力操作を音声入力で実施できるわけではなく,音声入力ができるようにするための操作はやはりタッチ・ディスプレイ操作となる.このため,スマートフォン活用にあたってタッチ・ディスプレイ操作の習得は必須となる.

こうしたことから,高齢者がスマートフォンを活用するにあたっては,タッチ・ディスプレイ操作の習得を容易にするような支援や,適切なフィードバックなどにより操作感を向上するなど,あまり細かな操作をしなくてもすむような工夫が必要となる.

(3)目的・モチベーションの欠如

ここまで述べてきたように,高齢者がスマートフォンに代表されるデジタル・デバイスを自由に使いこなすには,メンタルモデルを確立した上で,タッチによる入力操作を習得する必要がある.そのために重要なのが,目的とモチベーションである.

遠隔地にいる友人や孫とのコミュニケーションなど,スマートフォンを利用したい目的が明確な場合,その目的を中心としたメンタルモデルを描きやすい.またその目的のために継続して利用し続けることで,入力操作の習得も進みやすい.さらに利用に慣れることで新たな利用目的を見出し,活用が進むといった好循環が期待できる.

反対に明確な目的がない場合は,面倒な入力操作を習得するためのモチベーションが欠如しているため,利用は進みにくいだろう.第4章で紹介する事例のように,入力操作の複雑性から「できない」という思い込みを持つ高齢者も多い.こうした心理的障壁は慣れることである程度払拭できるが,そのためには継続して利用するための目的・モチベーションが必要となる.そのために有効なのは,高齢者に寄り添って目的を提示し,モチベーションを維持することのできる家族や友人,地域コミュニティやサポート・スタッフなどが身近にいることである.第4章で紹介するように,身近なサポートが得られる場合,操作習得までモチベーションを維持することができ,結果としてスマートフォン利活用の幅が広がりやすい.

2.3 考えられる解決策の方向性

高齢者が超スマート社会においてスマートフォンに代表されるデジタルデバイスを通じてITを活用するにあたっての阻害要因は,大きく以下の3点と考えられる.

  • (1)メンタルモデルが描けないことによる不安
  • (2)不慣れな入力操作による使いづらさ
  • (3)目的・モチベーションの欠如

したがって,高齢者がITを活用するためには,高齢者に寄り添って目的・モチベーションを維持しつつメンタルモデルの構築と入力操作の習得を継続的にサポートすることが欠かせない.身近にそうしたサポートができる人がいない高齢者の場合でも,たとえば地域コミュニティによるサポートなどにより目的・モチベーションを維持することができれば,入力操作の習得から利活用へとつなげられるだろう.

しかし,すべての高齢者にこうしたサポートを提供することは容易なことではない.超高齢化社会が加速し,人口における高齢者の占める割合が増えればなおさらである.そこで期待されるのが,IT技術の進歩によってこの課題が解決されることである.

最初の課題であるメンタルモデルが描けないことによる不安は,現在のデジタルデバイスがその利用の前提として,『目の前のデバイスの中で動くアプリがインターネットを介してサービスへ接続されている』ということを理解していることを求めている点に起因している.たとえばスマートフォンで買い物をするにも,自分の利用しているアプリあるいはインターネットサイトがどの事業者の提供したものか,支払い方法にはどのような選択肢があるのかなどを理解して操作することが求められる.そのため,インターネットやアプリのしくみがよく理解できていないと利用が難しい.

ではここで,身近に家族などスマートフォンを使いこなしている信頼できるサポーターがいると仮定しよう.スマートフォンで買い物をしたいユーザは,希望する品物と想定する価格帯を相手に伝え,信頼できるサポーターにスマートフォン上での操作を任せることができる.この場合,ユーザは希望を伝えるだけでよく,面倒なメンタルモデルの構築も2つ目の課題であった入力操作の習得も必要ないし,それらを習得するためのモチベーションの維持ももちろん必要ない.

この身近な信頼できるサポーターの役割をITが担うことができれば,高齢者はいつでも希望を伝えるだけでよいことになる.そうなれば,高齢者によるIT活用は飛躍的に進むだろう.実はこれこそがアンビエント・コンピューティングというコンセプトの根底にある考えである.超スマート社会の実現にあたっては,アンビエント・コンピューティングをはじめとした人に寄り添うテクノロジーの発展と活用が必要不可欠である.

3.人に寄り添うテクノロジーとは

第3章では,第2章で提起された課題を解決し,高齢者によるIT活用を支援すると期待されるテクノロジーのコンセプトと最近の動向について解説する.

これらのテクノロジーは,超スマート社会の実現において大きな役割を果たすだけでなく,高齢者のIT活用の促進にも大きく寄与すると考えられる.

3.1 アンビエント・コンピューティング

アンビエント・コンピューティングのアンビエント(ambient)という言葉は,「周囲の・環境の」という意味を持っている.これまでは,情報にアクセスしたりアプリケーションを利用したりするためには,デジタルデバイスやパソコンを操作する必要があった.アンビエント・コンピューティングでは,特定のハードウェアを使うことが想定されておらず,周辺に存在するさまざまなデバイスが,ユーザのやりたいことを先回りして認識し,自動的に実現していく.音声インタフェース,音声認識,IoT,クラウドコンピューティング,ウエアラブル,拡張現実(AR),AIなど,さまざまなテクノロジーを有機的な組み合わせて,現実世界で何が起こっているのかを把握し,利用者が何をしたいかを予測し,状況の変化に対応して,適切な対応を促す[9].

さらに,アンビエント・インテリジェンス(環境知能)は,環境に潜む知能,あるいは,知能が埋め込まれた環境のことを指し,生活や仕事をする空間で,収集した情報をもとにユーザに的確な情報を適切なタイミングで提示する.ロボットによる物理的な支援なども想定しており,人間の本来の活動を邪魔せず支援する次世代の情報社会を表すキーワードとして,欧州で広く使われるようになった.

多くの人が1台のコンピュータにアクセスし活用する時代から,1人1台のコンピュータを使う時代が訪れ,現在は1人が多くのデバイスを活用する時代となった.しかしながらそのユーザインタフェースは,テクノロジー主体の考え方が残っており,一般的に使いやすいものになるまでには至ってない.

アンビエント・コンピューティングは,人間を主体として捉え,ユーザがデバイスについて何も知らなくても使うことができる環境の実現を目指しており,高齢者の情報格差の大きな要因となっているデジタルデバイスの操作に関する課題を根底から覆す考え方と言える.

3.2 カーム・テクノロジー

カーム・テクノロジーとは,ユーザの思考や行動の邪魔をしないように配慮して設計されたテクノロジーのことを指す.ユビキタス・コンピューティングを提唱したマーク・ウェイザー氏とジョン・シーリー・ブラウン氏が1990年代に提唱した概念で,アンバー・ケース氏が『カーム・テクノロジー(Calm Technology)〜生活に溶け込む情報技術のデザイン〜』でカーム・テクノロジーの設計指針を提示している[10].

カーム・テクノロジーは,電気のスイッチのように生活に溶け込み日常の一部となり,人が無意識に活用できる環境を提供することを目指している.デバイスの数が人間の数をはるかに上回り,さまざまなIT機器が身の回りに存在する現代において,便利になるように設計された機能が逆に人の思考を中断させたり,妨げになったりすることがよくある.カーム・テクノロジーは,このような現代のIT環境を再考し,「使いづらさ」あるいは「使いやすさ」さえも特別に意識させることなく,便利に,人々の暮らしにあたり前のように深く溶け込むこという考え方に立っている.

人間の価値観や暮らしの在り方にかかわる重要なテクノロジーの概念である.

3.3 アンビエント・コンピューティングの実現

高齢者を含め誰もが気軽にITを活用するためには,慣れ親しんだ環境と行動パターンにフィットしたアンビエントで,かつ利用者の邪魔をしないカームな存在であることが求められる.人に寄り添うアンビエント・コンピューティングが実現された社会では,ITは人々を取り巻く環境(=ambient)の中に溶け込み,人々の状況を察知し,明示的に求められなくても必要な情報を必要なときに提供したり,快適な環境,安心安全な環境を保持したりする.それを支えるのがカームテクノロジー,邪魔をしない技術である.そのような社会においては,ITは人にその存在を意識させることなく存在し,必要なときに慣れ親しんだシグナルで次の行動を促し,さらに場合によっては新しい気付きを共創することさえもありえる.たとえば,センサデバイスによる状態通知とウェアラブルデバイスによる体調管理を組みわせることで,安心安全の居住環境を実現する.ユーザからの働きかけは不要なため,高齢者でも難なくITを活用することができる.

それでは高齢者が利用しやすいアンビエント・コンピューティングとは,具体的にどのようなものだろうか.一口に高齢者といっても健康状態やITリテラシー,身近な支援者の有無によってニーズは異なり,必要とするテクノロジーも異なる.したがってアンビエント・コンピューティングの実現にあたっては,ユーザそれぞれの状態やニーズに合わせて適切なテクノロジーを適用する必要があるだろう.表1は同居家族の有無および健康状態別に想定されるニーズとテクノロジーを整理した一例である.

表1 対象別のテクノロジー適用シーン
対象別のテクノロジー適用シーン

このような超スマート社会では,アンビエント・コンピューティングにより,誰もがメンタルモデルや操作性に悩まされることなく,ITの恩恵を享受できるだろう.さらに,高齢者は単に安心安全に暮らせるというだけではなく,アンビエントなITの支援によってそれぞれの能力を活かして社会に貢献することも可能となる.すなわち,単なるコミュニケーションのためのツールや情報収集の手段としてのIT活用にとどまらず,自己啓発や自己実現のための手段として世代を問わずITが広く活用される社会,それこそが超スマート社会のあるべき姿と考える.

3.4 適用技術の展望

センサ技術は,環境の測定から人間の動きの測定へと飛躍的に進化してきた.その立役者であり,最も顕著な活用事例がスマートフォンである.人間の視覚,聴覚および力覚と触覚を代替するスマートフォンのニーズによってより高度な機能を持ったセンサが開発され,年間十数億台規模[11]で出荷されるスマートフォンに搭載されるために大量生産されることとなった.そして大量生産によりコストダウンが進んだ高機能センサは,スマートフォン以外のさまざまな目的にも転用が進んでいる.昨今,発達と普及が著しいXRの分野はその代表格だろう.XRで利用されるウェアラブル・デバイスには,周囲の状況やユーザの動きを検知するためのさまざまなセンサ類が活用されている.

XR技術は,超スマート社会における社会システムの自動化・高効率化や,新しい機能やサービスの実現にあたって,幅広い役割を果たすだけでなく,高齢者にとっても非常に有用なツールとなるだろう.XR技術を活用すれば,高齢化に伴う身体機能の差異や衰えをある程度意識せずに活動することが可能となるからである.コロナ禍で旅行が著しく制限された際に多くの人々がバーチャル・ツアーあるいはオンライン・ツアーのサービスを利用したことは記憶に新しい.令和3(2021)年版観光白書でも新たな旅の在り方の一例としてオンライン・ツアーの増加を挙げている[12].昨今のVR技術の進歩により,さらに臨場感のある体験が可能となってきている.センサ技術やバッテリー技術の進歩によってXR技術を体験するためのウェアラブル・デバイスの軽量化が進むことで体への負担は軽減し,より長時間の利用が可能となれば,その利用はますます加速するだろう.そして工夫次第で高齢者にも受け入れやすいものとなる.

たとえば,通常の眼鏡や老眼鏡と一体化したARグラスやVRグラスが実現したとすればどうだろう.遠方に住む家族や友人からの連絡を眼鏡一体型VRグラスで受け,仮想空間で会って話すことができるとしたら,電話をかけたり受けたりはアンビエント・コンピューティングが自然に対応してくれるとしたら,高齢者もそのような仮想空間でのコミュニケーション・サービスというITの恩恵を無理なく享受できるのではないだろうか.

あるいは,アンビエント・コンピューティングを支える適用技術の1つであるハプティクスを活用することで,仮想空間での体験に,より実体験に近い臨場感を与えられるかもしれない.ここにエッジAIの技術も加わることで,仮想空間に配置した画像を分析し,タイムリーに最適なフィードバックを提供できれば,仮想空間での体験をさらに現実に近づけることが可能となる.

遠隔地にいる人と距離に関係なくいつでも繋がり,実際に会うのと遜色のないやりとりを仮想空間でできるようになれば,高齢者が持つさまざまな経験や知見を社会に還元するなど,高齢者の社会活動を活性化することも可能となる.社会に貢献できることがモチベーションとなり,そうした技術の活用はますます進むだろう.このような技術は,高齢者だけでなく,身体に障害を抱える人にとっても非常に有用である.

4.高齢者によるIT活用促進の実地検証

筆者らが身近な高齢者と接する機会で得た実体験を元に高齢者によるIT活用の阻害要因について検証した.それぞれの事例について,第2章で述べた(1)メンタルモデルが描けないことによる不安,(2)不慣れな入力操作による使いづらさ,(3)目的・モチベーションの欠如,のうちのどの要因に相当するかを示している.

ケース1
ケース1
被験者属性:

年齢:84歳
 性別:女性
 同居家族:なし
 目的:スマートフォンによる非対面コミュニケーション
 課題:メンタルモデル,入力操作

原因:

これまでフィーチャーフォンやパソコンの利用経験はメール程度しかなく,インターネットやアプリといった概念が理解できていなかった(図5).そのためスマートフォンに表示される数々のアイコンの意味や,アプリの起動・終了といった操作の意味が理解できず,不安感が先立つこととなった.またタッチ操作の経験が皆無だったため,一つひとつの操作に慣れるのに著しく時間を要した.

対策:

まずは電話機能に注力し,シンプルなメンタルモデルの構築を目指した.単純な架電,受電からはじめ,次に着信履歴から折り返し電話する方法を練習した.時間をかけ繰り返すことで操作に慣れ,抵抗感をなくすように配慮した結果,1カ月程度で電話をかけたり履歴から折り返したりできるようになった.次にアプリの概念の理解とタッチ操作への慣れを目的にシンプルなカードゲームを導入した.最初のうちはミスタッチも多かったが2,3カ月で徐々に慣れ,スムーズに操作できるようになった.

考察:

時間はかかったが,段階的なアプローチにより,メンタルモデルの課題を部分的に解決できた.また,継続した練習ができたおかげで架電などの簡単な操作はなんとか習得できた.これには指導できる人間が身近にいたことも大きい.少しずつできることを広げ,歩数計アプリの利用や簡単なカードゲームも楽しむようになり,スマートフォン上で複数のアプリが利用できるというメンタルモデルを構築できた.カードゲームのおかげで半年ほどかけてスワイプやフリックといった動作にも慣れてきた.残念ながら,テキストの入力操作の習得にはいまだ至っていない.また,インターネットを含むメンタルモデルが十分描けていないため,インターネットの理解を必要としない限定的な利用にとどまっている.

適切なメンタルモデルが構築できない場合のイメージ
図5 適切なメンタルモデルが構築できない場合のイメージ
ケース2
ケース2
被験者属性:

年齢:85歳
 性別:女性
 同居家族:あり
 目的:スマートフォンによる非対面コミュニケーション
 課題:入力操作

原因:

メッセージの本文入力中に,件名をタップしてしまい,意図せずにカーソルの位置が本文から件名に移動し,本文への入力ができなくなってしまった.キーボード入力の経験がないためフリック入力に対する抵抗感は低く比較的早く馴染んだ.しかしながら,タップという行為でカーソルの位置が変化するという概念の理解が難しく,カーソルのある位置から文字入力を行うという認識が不足しているため,思わぬところを触って混乱し文字入力を継続できなくなった(図6).

対策:

カーソルの位置を示す「|」の表示の意味を説明し,「|」のある所に入力できることを説明.それ以降,スムーズに操作できるようになった.

考察:

文字入力への抵抗は低く,フリック入力に対しても「慣れ」により親和性が深まる.スマート端末への漠然とした不安があり,触ってはいけないエリアへの恐怖心がうかがえる.コミュニケーションによる恐怖心の排除ならびに操作支援により,スマートフォンの基本的な動きをきちんと把握できれば,利用促進につながる.

入力画面のカーソル位置イメージ
図6 入力画面のカーソル位置イメージ
ケース3
ケース3
被験者属性

年齢:87歳
 性別:女性
 同居家族:なし
 目的:スマートフォンの利用開始
 課題:モチベーション

原因:

70代でスマートデバイスにチャレンジしようとした際に,「今からでは無理」という家族の否定的な反応からやる気を無くし,スマートデバイスを利用したいという気持ちを失ってしまった.

対策:

本来,本人が関心を示したときに寄り添い・励まし・支援し継続して利用促進の手助けを行うことが必要である.特に居住を共にしていない場合,帰省時などの対面での会話の内容がその後の高齢者の行動に大きく影響する.やる気を見せた高齢者にそのタイミングを逃さず継続した励ましを行うことが重要だったが,それができなかったため今も利用していない.

考察:

コロナ禍において,地方で暮らす高齢者家族とのスマートデバイスを利用したコミュニケーションはますます需要が高まっている.早い段階からスマートデバイスに慣れ継続して利用することで超高齢になってからの利用継続の可能性が高まる.これには本人が関心を示したときに,丁寧に対応し支援することが重要である.近くに支援者がいれば横で付き添って教えられるが,遠隔地の家族による支援には限界がある.前述のカーム・テクノロジーの活用による自律的な利用促進が実現できれば問題の解決に一歩近づくのではないだろうか.

ケース4
ケース4
被験者属性:

年齢:81歳
 性別:女性
 同居家族:なし
 目的:遠隔地からの見守り
 課題:モチベーション

原因:

遠隔地に暮らす家族は1人暮らしの高齢者を心配していたが,高齢者自身は慣れ親しんできた環境と固定電話やフィーチャーホンで十分との認識からモチベーションがなく,新たなデバイスの導入には消極的だった.

対策:

1人暮らしの高齢者の安否と体調を確認する手段がないことを心配した遠隔地の家族に説得され,家族に自分の元気な様子を見てもらえるようにホームセキュリティー会社の見守りサービス(居間にカメラを設置)の利用を開始した(図7).遠隔地の家族は,スマートフォンのアプリからその様子を見ることができるため,安心につながっている.

考察:

心配してくる家族に安心感を与えられるサービスなら使ってもよいとの考えからカメラの設置には同意した.遠隔地の家族に元気な様子を見せることで家族へ安心感を与えられることが分かり,モチベーションに繋がった.次の一歩として,遠隔地にいる家族との双方向コミュニケーション手段の確立を模索しているが,メンタルモデルと入力操作の課題により解決に至っていない.

ホームセキュリティーサービスの画像イメージ
図7 ホームセキュリティーサービスの画像イメージ
ケース5
ケース5
被験者属性:

年齢:84歳
 性別:男性
 同居家族:あり
 目的:スマートフォンによる非対面コミュニケーションおよび自己実現
 課題:特になし(メンタルモデルの構築およびモチベーションの成功事例)

原因:

特になし

対策:

特になし

考察:

パソコンを利用したインターネット上でのサイト閲覧や情報検索などの経験が十分にあったため,スマートフォン利用にあたってのメンタルモデルの構築がスムーズに実施でき,メンタルモデルが利用の阻害要因とならなかった.また仕事柄,若者と触れ合う機会が多くあることから,メッセージアプリの利用だけでなく,SNSや情報検索,地図検索など,スマートフォン活用のモチベーションとなった.

5.高齢者によるIT活用促進のポイント

第4章では,これまで述べてきた高齢者がITを活用する上での課題と,その解決策としてのテクノロジーの方向性および実地検証の結果を踏まえ,高齢者によるIT活用促進のポイントについて述べる.

5.1 人に寄り添うテクノロジーによる解決

ここで,アンビエント・テクノロジーに代表される人に寄り添うテクノロジーにより,高齢者の情報格差が解消された超スマート社会の実現イメージとは具体的にどのようなものとなるかを考えてみたい.

現在のスマートスピーカーは,自然な話し言葉で話しかけることで,ユーザの要望や要求を理解し,必要な情報を提供したり,簡単な手続きを代行したりすることができる.これがもっと発展すると,環境に溶け込んだテクノロジーが,意図して話しかけなくてもユーザの要望を汲み取り,必要な情報を提供するだけでなく,ユーザの要望を予測し,先回りして支援するなど多くの可能性を秘めている.そのようなサービスであれば,テクノロジーに不慣れな高齢者にとっても使いやすいだろう.

では,高齢者が馴染みやすいテクノロジーとはどのようなものであろうか.質問をすると答えてくれるAIスピーカーは対話型のインタフェースとしてとても馴染みやく有効である.しかしながら無機質なスピーカーからの音声で,何もない空間から急に情報が提供されることには抵抗感を覚える高齢者は多いかもしれない.そこで考えられるのが擬人化された物と音声との融合による,人に寄り添うロボットの存在である.ロボットには単なるテクノロジーの仲介者,支援者としての役割だけでなく,高齢者に寄り添うセラピー・ロボットとしての役割も期待できる.昨今このロボット・セラピーの分野の研究は盛んに行われており,今後の発展が大いに期待できる.

高齢者に寄り添うセラピー・ロボットは,人やペットと接するのに近いシンプルなメンタルモデルで問題なく,また会話によって利用可能なため,第2章で提起したメンタルモデルと入力操作の課題を解決するIT活用の一形態として期待できる.

5.2 コミュニティ活動におけるIT活用の重要性

実地検証の結果が示すように,高齢者の「慣れ」によるIT活用の促進は一定の効果を生むことが期待できる.そして高齢者がITを活用することに慣れるためには,家族や親しい友人,地域コミュニティなどの継続的な働きかけや支援が必要不可欠である.しかしながら,遠隔地に住む子が親に対して常に働きかけ,支援をし続けることは困難であり,地域のコミュニティによる支援に頼らざるを得ない.

現在の地域コミュニティや福祉施設におけるIT活用の実態を見てみると,事務処理などの活用では一定の成果を上げているものの現場での活用はまだまだ進んでいないというのが現状であり,ITを活用した格差のないサービスを提供していくには少し時間がかかりそうである[13][14].地域コミュニティ活動の現場で積極的にITを活用することで無理のない継続支援の実現可能性が高まる.地域のコミュニティ活動そのものをデジタル化することで,特定地域のコミュニティの活動への支援者を全国レベルで募り負担を軽減しながら継続してくことも可能である.一方,カーム・テクノロジーのビジョンである「最高のインタフェースとは,人とテクノロジーをつなぐものではなく,人と人をつなぐもの」[10]という考え方は,人を介さずに同様な効果を上げる可能性を示唆しており,今後の地域コミュニティ活動に大きく影響してくると考えられる.

5.3 バーチャル空間におけるコミュニティ活動の促進

前述のとおり,高齢者がITを活用し,超スマート社会における新サービスの恩恵を享受するためには周囲のサポートが欠かせない.その主たる担い手として期待されるのが地域コミュニティである.そしてその地域コミュニティ活動そのものも,IT活用を促進,デジタル化することでサポート範囲を拡大することが可能となる.

地域コミュニティ活動がデジタル化し,仮想空間へと拡大すれば,高齢者の地域コミュニティへのかかわり方も大きく変わってくる.バーチャルなコミュニティでは,ITの支援を受けることで身体能力の衰えによる制約を感じにくいという利点がある.そのため身体的制約を抱える高齢者がサポートを提供する側に回ることが容易に可能となる.たとえば,身体の衰えにより外出がままならないといった場合,これまでは介護などのサポートを受ける側であった.しかし,バーチャルなコミュニティであればそのような高齢者もその知見を活かしたサポートの提供者となることができる.たとえば,最近獲得したIT活用のスキルで,まだ活用できていない同年代をサポートすることができるだけでなく,子育て経験者として若い母親を支援したり,現役時代に培った専門領域の知見や経験談を語ったり,さまざまな産業におけるノウハウの伝授,若手技術者の育成など,多くの活躍の場が考えられる.サポートの提供側として自身の能力を活かすことは,高齢者の生きがいともなるだろう.小石らの研究から,高齢者が社会参加することで自己の健康や生活を自覚し,新しい経験を獲得学習することにより,精神的安定や自己実現という成長につながることが示されている[15].

バーチャル空間で提供された知見やノウハウは,デジタル・コンテンツ化しやすいという特性を持つため,より多くの人がその内容に触れることができ,より大きな影響力を持つ.これらの知見がコミュニティを通じて拡散され,フィードバックされることによりサービス提供者である高齢者にモチベーションを与え,よりよいサービスへと通じるエコシステムが形成されることが期待できる.

このようなバーチャル・コミュニティが発展すれば,コミュニティへ参加することがモチベーションとなって高齢者のIT活用はますます加速するだろう.

6.考察 人に寄り添うテクノロジーが実現する世界

ここまで,高齢者によるIT活用の阻害要因が,(1)メンタルモデルが描けないことによる不安,(2)不慣れな入力操作による扱いづらさ,(3)目的・モチベーションの欠如の3点にあること,アンビエント・コンピューティングに代表される人に寄り添う技術の発展によってこれらの阻害要因が解消される方向性について述べてきた.また,高齢者のIT活用を支えるコミュニティがバーチャル化することで,高齢者はITを活用できるようになるだけでなく,自身の経験を活かしたサポートの提供者にもなれることを示した.

このような社会の実現は,高齢者が無理なくITを活用できることが大前提である.それにはこれまで述べてきたように,人に寄り添うテクノロジーをベースとした,シンプルなメンタルモデルと自然なユーザ・インタフェースにより,ITを活用しやすい環境をつくることが欠かせない.加えて,高齢者にIT活用のモチベーションを感じてもらうことが重要である.社会活動に参加し貢献できることは,高齢者にIT活用を促す上での1つの大きなモチベーションとなる.そのためには,ITによって生活の質が向上することや社会活動への参画の可能性が広がることを理解してもらうと同時に,高齢者が円滑にIT活用を開始するための支援が必要となる.その実現には,身近な家族や友人の継続的な支援,地域コミュニティによる成功体験の共有とともに,人に寄り添うテクノロジーの存在が重要である.

地域社会がテクノロジーを活用しつつ高齢者を含む社会全体を支えるようなプラットフォームを形成し,高齢者を自然にコミュニティへ誘導できるような社会が実現できれば,それは超高齢化社会における超スマート社会1つの姿になるだろう.

超スマート社会とは,だれもが新しい機能やサービスを容易に利用し,高度なIT技術の恩恵を受けることができる社会というだけでなく,身体的な制約をIT技術で補うことで,だれもが自身の経験や知見を活かしたサービス提供者となって,社会に貢献し,社会を支える喜びを感じることのできる社会である.人に寄り添うテクノロジーによって高齢者のIT活用が進めば,少子化による人手不足となった産業界への解決策ともなり得る.

超スマート社会では介護の在り方も変わってくるだろう.身体的な制約により思うような行動ができず介護を必要とする高齢者も,ITの支援によりさまざまな動作や意思の伝達が円滑になる.AIや介護ロボットなどの導入により,看護・介護側のワークロードは大きく軽減されるだろう[16].また,バーチャルなコミュニティを介することで,高齢者や要介護者は,介護を受ける側でありながら,同時に社会活動への参加が可能となり,介護支援サービスや,経験・知見を活かした新たなサービス・コンテンツの提供者となることができる.このようにして提供されたサービス・コンテンツから,新たな市場が創出される可能性も大いにある.

このような超スマート社会が実現すれば,日本は世界に先駆けて超高齢化社会におけるIT活用支援サービス産業の先駆者となり,そのノウハウを世界に輸出し,世界の超高齢化社会に資するサービス・ビジネスの牽引国となり得る.

参考文献
行木陽子
行木陽子(正会員)nyoko003p@g.chuo-u.ac.jp

日本アイ・ビー・エム(株) 技術理事として最新のテクノロジーを活用した働き方改革ソリューションを牽引後,中央大学 特任教授に就任.BPL(問題解決型学習)を取り入れたビジネス・プロジェクト講座,全学向けのAI/データサイエンス講座を担当し,大学教育における産業界との連携強化に努める.工学アカデミー/日本女性技術者フォーラム会員.

陳 建和
陳 建和(非会員)Kenwa.Chin@kyndryl.com

1993年,日本IBMに入社.日本を含むアジア圏における金融,製造,通信のお客様を中心にネットワークおよびITインフラの企画,アーキテクチャー設計,構築全般に従事した.2021年9月よりキンドリルジャパンの技術理事兼ネットワーク&エッジ事業担当に着任し,お客様の産業現場におけるデジタル変革を支えるインフラの構想とソリューション実装をリードしている.

倉島菜つ美
倉島菜つ美(非会員)natsumik@jp.ibm.com

日本アイ・ビー・エム入社以来一貫してお客様プロジェクトを担当.金融,流通,航空,自動車業界などさまざまな業界の大規模プロジェクトにおいて,アーキテクトとして活躍,現在はIBMコンサルティング事業本部インタラクティブ・エクスペリエンス事業部CTOとして技術者チームを統括.IBMアカデミー会員,IBM社内女性技術者コミュニティCOSMOSリーダー.

受付日:2021年11月26日
採録日:2022年1月31日
編集担当:長坂健治(キンドリルジャパン(株))

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