デジタルプラクティス Vol.10 No.1(Jan. 2019)

社会福祉法人内の介護マニュアル統一を通した知識発現の改良

西村 悟史1  毛利 陽子2  山中 泉2  中村 美佳2  高山 薫2  西村 拓一1

1産業技術総合研究所  2社会福祉法人伸こう福祉会 

高齢化の進展に伴い,介護現場の従業員の負担は増大している.負担軽減のためには従業員間で業務にかかわる知識の共有が有効であり,その実現方法の1つとしてマニュアル構築が挙げられる.しかし,組織内で共有できるようにマニュアルを構築することは難しい.本稿では,社会福祉法人における介護業務のマニュアルを統一的に構築するという実践を通して,これまでに提案されている方法である知識発現の改良を目標とする.知識発現は,従業員主体で知識を構造的に構築する方法であるが,本実践のように法人内のマニュアルを統一するような大規模な実践を行っていない.本稿では,知識発現を実践的に行う際の課題を明らかにし,その解決方法を確立した.この方法を用いて構築したマニュアルが法人によって認証される過程を通じて,本方法と構築したマニュアルの有効性を評価した.

1.はじめに

1.1 背景と目標

高齢化の進展に伴い,日本の医療・介護コストは世界に先駆けて増大している[1].同時に,介護施設の従業員の供給は需要に対して不足することが見込まれており[2],1人あたりの負担増大が懸念される.

従業員の負担軽減のために,介護業務プロセスが記述されたマニュアルが役に立つことが期待できる.たとえば,医療現場では診療ガイドラインと呼ばれる文書が構築されており,診療上の意思決定への有効性が期待されている[3].看護分野においても,新人看護師育成のためにマニュアル整備の有効性が示唆されている[4].このような有効性は,マニュアルという媒体を通して,ベテラン等の知識を多く持つ従業員から新入職員等の相対的に少ない知識を持つ従業員へ知識の継承や共有がなされることに貢献することであると考えられる.

そのため,社会福祉法人伸こう福祉会(以下,伸こう福祉会と呼ぶ)では,マニュアルを構築し,従業員間での知識の継承と共有を志向した活動を進めてきた.しかし,マニュアルが構築されるだけで,改訂されず使われなくなり,再び新しいマニュアルが構築されるという現状がある.さらに,マニュアルは現場ごとに構築され,法人内で知識を統一することができていない.

本研究の目標は法人全体のマニュアルを統一する方法論を確立することである.その方法として,現場ごとに異なる知識を,従業員が中心的役割を担って構築可能な方法である知識発現[5]を用いる.ここでは,一法人を現場と見なし,法人全体のマニュアルを統一するためにこの方法を用いる.この方法を用いて構築されたマニュアルを構造化マニュアルと呼ぶ.

本稿では,目標達成までの過程をまとめ,マニュアル構築方法の改良と効果の検証について示す.これまでの西村らの報告する知識発現[5]では,2種類の介護業務プロセスに関して従業員主体でマニュアル構築できることを示した.しかし,新入職員にとって重要度の高い介護業務11種類をカバーするような大規模な実践は実施していなかった.そのため,本実践を通して,実規模で知識発現を実施する上での課題を明らかにし,以下の2点を改良する.

  • 表示形式の改良
  • 方法論の精緻化

改良した方法論の検証は,伸こう福祉会の法人内の業務をよく理解する従業員らによるマニュアルの構築実践を通して行う.構築したマニュアルが法人全体のマニュアルとして認証される過程を通じて,本方法論の有用性を明らかにする.

1.2 本実践対象の社会福祉法人の現状

伸こう福祉会は,2016年4月時点で32の介護サービス拠点と10の保育サービス拠点を持つ社会福祉法人である.介護サービスにかかわる従業員は約750人である.従業員間で介護業務に関する知識を共有することは,法人の提供サービス品質の担保と,業務の円滑な進行のために,重要な取り組みである.

そのためにマニュアルが構築されていたが,法人全体で共有されていなかった.その理由として,施設ごとに構築されたり,改訂されなかったりしていて,すべてのマニュアルを把握することが難しいことが挙げられる.今回の実践にあたり,マニュアルの現状を調べたところ,101のマニュアルが構築されていることが明らかとなった.その内,管理マニュアルは44,介護マニュアルは57であった.ここでの管理マニュアルとは,施設や人事,財務管理用のマニュアルである.一方,介護マニュアルとは,入浴,排せつ介助等の直接的な介護業務から,車での送迎や電話対応等の間接的な介護業務までを含めた内容を記載したマニュアルを指す.介護マニュアルに限定しても,それらは互いに内容的な重複が見られ,初級介護者にとって重要度の高い介護業務に該当するマニュアルは18であった.

傾向として,特別養護老人ホーム,グループホーム,通所介護などの提供サービスごとに専用のマニュアルを,そのサービスを提供している施設ごとで構築していることが見られた.これは,同じ介護業務でも提供サービスごとに部分的に変更して実施する必要があるためだと考えられる.また,同じ提供サービスであっても,異なる施設で同様のマニュアルが構築されることが指摘された.

本研究では,法人内で知識共有を可能にするために,これらのマニュアルを統一的に構築する.この事例を通して,法人全体のマニュアルを統一する方法論を確立することを目指す.

1.3 本稿の構成

以下に,本稿の構成を示す.まず2章にて,既存の現場主体でマニュアルを構造的に記述する方法である知識発現について,そこで用いる知識モデルおよび手順を概説する.次に3章にて,知識発現の実践における課題について述べる.表示形式と方法論の2点から課題を挙げる.続く4章にて,その課題解決について述べる.介護現場と共同で表示形式の改良と方法論の精緻化を行った.5章では,改良した知識発現を実際に適用した実践について述べる.実践概要を精緻化した方法論にしたがって説明し,結果として得られた構造化マニュアルについて概要を説明する.6章では,構造化マニュアルの有効性と他分野への展開可能性について考察する.7章で本稿をまとめる.

2.既存方法

2.1 知識発現の概要

西村らは,プロセス知識共有のために,図1に示す知識発現と呼ぶ方法を提案し,介護現場での検証を行っている[5].ここでのプロセスとは,介護業務のための従業員の行為や使用する道具の機能を総称した概念である.この方法は,プロセス知識の共通部分(以下,基本構造化マニュアルと呼ぶ)を基盤として,現場固有のプロセス知識(以下,固有構造化マニュアルと呼ぶ)を従業員が主体的に記述することに特徴がある.具体的には,2人以上の従業員が集まり,基本構造化マニュアルを参照し話し合いながら,自分たちの持つ現場固有の知識を追加したり,必要ない知識を削除したりする.このイベントをワークショップと呼ぶ.現場の従業員が主体的に知識を記述する方法は,従来のインタビューを主体とした知識獲得[6]や,大量のデータからの知識発見[7]とは異なる概念であるため,“知識発現”と呼んでいる.

図1 知識発現の概要

2.2 知識発現で用いる知識モデル

知識モデルとしてのCHARM (Convincing Human Action Rationalized Model)[8]は,目的指向でプロセス知識を構造化するという特徴を備える.ここでの構造化とは,知識を構成する要素間の関係性を説明することである.構造化の結果として大きな目的を達成するために,その目的が詳細な行為に分解されるという階層性を持つ構造化知識が得られる.大きな目的レベル(移乗する,入浴介助する等)では提供サービスによらず共通性がある.ここで,複数の行為によって目的が達成される原理を概念化したものを達成方式,ここでは単に「方式」と呼ぶ.方式の導入により,何を達成するか(目的)とどのように達成するか(方式)を分離して捉え,同一目的を達成するための代替方式を考えやすくなる.

目的指向でプロセス知識を構造的に記述することの利点として,目的レベルでの共通性を利用し,施設や提供サービスごとの相違を吸収することが期待できる.この特徴を援用し,法人内の知識を統一することを目指す.また,Ikujiro Nonakaが指摘するように,知識共有が行われる環境(コンテクスト)に応じて情報の意味は異なる[20].本モデルにより,目的をコンテクストとして捉えることにより,施設や提供サービス等の環境の違いを吸収する効果も期待できる.

図2に,構造化した知識(以降,構造化マニュアルと呼ぶ)の例を示す.角のとれた四角形が1つの行為(図2「図形の意味」中の「やること」に相当)を表しており,上に書かれた行為を目的と読み替えて,その目的を達成するための方式(図2「図形の意味」中の「やり方」に相当)を小さい正方形で表現する.この例では,「褥瘡☆1を予防する」ことを最上位の目的として,「血行改善方式」が存在することを表現している.「血行改善方式」においては,「血行を良くする」ことによって,「褥瘡を予防する」という目的を達成できる.さらに,「血行を良くする」行為を目的と読み替え,「体位変換方式」,「圧力分散方式」の2種類の方式によって達成可能であることが表現されている.また,行為ノードの右肩に配置される長方形ノードによって,行為主体(図2「図形の意味」中の「実行する人」に相当)を表現する.たとえば,「離床方式」において実施される「日中離床して過ごす」行為は,主体が利用者であることが表されている.また,行為ノードと「阻害要因」と書かれた正方形ノードで結ばれる長方形でリスク(図2「図形の意味」中の「起こってほしくないこと」に相当)を示しており,「体位を変える」行為の際には,「持ち上げて落とすリスク」が存在することが表されている.

図2 構造化マニュアルの一部(褥瘡を予防する)

2.3 知識発現の手順

文献[5]から既存の知識発現の手順を抽出したものを示す.まず,基本構造化マニュアルの構造化を行う.この詳細方法に関する記述はない.事例として,褥瘡予防のプロセス知識の記述について述べられているが,そこでは,教科書を知識源とし,前述のCHARMに従ったモデル化を行うことのみが記載されている.

次に,固有構造化マニュアルの構築を行う.これは,以下に示す2つのSTEPから構成される.

  • STEP1 サービス現場の従業員が基本構造化マニュアルに事例を追加する.
  • STEP2 事例付きのプロセス知識を構造化する.

STEP1では,複数の従業員を集め,ワークショップ形式で実施した事例が挙げられている.ワークショップは,1回あたり1時間で行い,参加人数は,2人から5人であった.ワークショップの中では,CHARMの読み方説明,基本構造化マニュアルの整合性確認,基本構造化マニュアルに事例の追加が行われた.また,この事例では,2つの介護施設で実施したため,グループ間の相違点の議論,それぞれの知識を統合した知識からのプロセス知識の抽出も行われた.

STEP2では,追加された事例を行為,方式,事例,リスクに分類し,該当する図形で書く.以上の手順を繰り返すことで,固有構造化マニュアルを構築する.

3.知識発現の実践における課題

2.3節に示す方法に則って,知識発現を予備的に実施したところ,以下に示す課題が明らかとなった.

3.1 表示形式の読みやすさに関する課題

知識発現のためのワークショップを実施するにあたり,次に示すように表示形式に関して10種類の読みやすさに関する課題が従業員より挙げられた.大きく分けて次の3種類に分類できる.

  • 構築時には不要な情報がある

具体的には,「方式名と詳細な行為列が同様の文字列で表される」や,「同じ主体が多く表される」,「あたり前のことが表される」ことが煩雑であることが分かった.

  • 行為ノードを中心に情報がまとまっていない

具体的には,「方式下の行為列の関係性が目に見えない」や,「条件が方式下に行為と並んで表されている」,「主体が行為の右上に表されている」,「リスクが方式と一緒に並んで表される」ことがある.ここで表される構成要素は,すべて行為に関する内容であるが,行為との関係性が表記方法に慣れていないものには分かりにくいということであった.

  • 木の大きさに比例して紙が大きくなってしまう

これは,木構造として介護プロセス知識を表すという制約から,リーフが増えるほどに横長の紙面が必要となることが原因である.これは今回利用した知識モデルであるCHARMに付随する課題として,以前から指摘されており,タブレット端末上に情報システムを実装することで解決策が提案されている[9].しかし,介護現場では配布のしやすさ等の面から紙面が好まれる傾向にある.そのため,紙面上で大きな木構造を取り扱うための工夫が求められた.また,凡例がないために初めて読む人にとっては分かりにくいことも指摘された.

3.2 方法論に関する課題

大規模にマニュアル構築を行うための構築始めから終わりまでの方法論が十分ではなかった.そこで,基本構造化マニュアルの構築から構築された固有構造化マニュアルが法人統一のマニュアルとして利用可能であるかの確認までの手順が整理される必要がある.さらに,体制作りの点で,以下の3点も明確にする必要がある.

  • 構築範囲の規定

法人全体の知識を統一するという目標は曖昧であり,範囲を明確化する必要があった.文献[5]では,構築範囲を2種類の介護業務に絞っていたが,今回の実践では法人全体の指針となるようなマニュアルが求められている.この構築範囲を明確に規定する方法が必要となる.

  • 構築体制の明確化

マニュアル構築のための体制を明確にする必要があった.法人全体のマニュアル構築可能な従業員の性質が何であるか,構築期間が長期間になった場合に常に一定数の参加者を確保するための体制とはどのようなものであるかを決定する必要がある.

  • スケジュールの作成

構築時に行うワークショップについても,期間全体の中で,いつ頃に何をすると効率的に構築を進められるのかが明らかではなかった.西村らは,1つの業務プロセス知識の合意に至るために,1回あたり1時間のワークショップを3回行っており,全体を終えるために約1カ月を要した[5].これを法人全体のマニュアル構築に拡張する場合には工夫が必要となる.

4.課題解決

4.1 表示形式の改良

3章で述べた課題に対して,図3, 4に示すように,それぞれ改良を行った.

図3 行為ノードを中心にした情報提示への変換
図4 部分木に分割した表示形式への変換
  • 構築時に不要な情報を減らすこと

① 方式のノードから線への変更

介護分野では,目的達成の方法に明示的に名前がついているものが少ないため,方式名を明示せず,線を引くのみで,詳細な行為列が目的となる行為を達成することを表現するように変更した.これにより,従来は方式名とその下に書かれた行為名で文字列が重複することがあったが,重複分を削減することができた.(図3①参照)

② 最も頻度の高い主体の非表示

介護分野の例で述べると,介護業務を実施する行為主体の多くは介護士である.すべての行為に対して介護士が行うことを明示する場合,表示すべき文字数が増えるため,もっとも頻度の高い行為主体は,記載していなくても記載されているものとして扱うこととした(図3②参照).

③ 常識である行為の非表示

図3の③に示すように,「福祉用具が姿勢を変える」のような,介護士にとっては常識であるような行為/機能が記載されていた.これは,目的となる全体行為の状態変化と部分行為列の状態変化を一致させるために,論理的には必要な行為/機能であるが,人が見るという利用用途には不要であるため,表示しないように変更した(図3③参照).

  • 行為ノードを中心に情報を提示すること.

④ 行為間の関係の明示

方式下の行為列はすべてを実行することで,方式上の全体行為を目的として達成するという関係がある.従来の形式ではその関係が明示されていなかったものを,線を引くことで明示するように変更した(図5④参照).

⑤ 条件の表示位置の変更

従来の形式では,行為を達成するための方式の適用条件を方式下に行為と同様に表現していた.これを行為とは異なる意味を表現するものとして表示するように変更した(図3⑤参照).

⑥ 主体の表示位置の変更

従来の形式では,行為主体を行為の右上に表示していたが,「誰が何をする」という自然な読み方に沿って,左上に表示することとした(図3⑥参照).

⑦ リスクの表示位置の変更

従来の形式では,行為に関連するリスクを行為の下に,方式のような形式で表示していたが,行為に関連したリスクであることが明示的になるように行為の右下に表示するように変更した(図3⑦参照).

⑧ 事例の表示位置の変更

従来の形式では,行為に関連づく事例を吹き出しを用いて表示していたが,それを行為の右下の四角で表示するようにした(図3⑧参照).

  • 紙が大きくならないようにすること.

⑨ 部分木への分割

従来は,一枚の紙に木全体を表示しなければ,ノード間の関係を一覧することが困難であった.図4に示した程度の大きさの構造化マニュアルであれば大きな問題は生じないが,行為ノード数が200を超えるような構造化マニュアルでは数メートルのロール紙に印刷しなければならなかった.これを,部分木ごとに分割することで,印刷時の取り扱いが容易になった(図4⑨参照).

  • その他

⑩ 凡例の明示

凡例を明示することで,初めて読む従業員や,読み方を思い出すために要する時間の削減を試みた(図4⑩参照).

図5 排せつ介助の構造化マニュアル(一部)

4.2 方法論の精緻化

構造化マニュアルの構築を1つのプロジェクトと見なし,それに必要な手順に沿って方法論を精緻化する.

  • 基本構造化マニュアルの構築

まず,構築対象とする内容を教科書等の文書から該当個所を選定する.次に,該当個所から行為を抽出する.行為は,CHARM[8]に従い,対象物の状態変化と捉える.そして,行為をノードとして記載する.その際に,行為とは認定されないが付随する情報であるリスクや名詞の具体例,動詞の詳細といった情報を行為ノードに付随するノードとして記載する.記載された行為ノード間に順序関係を付与する.次に,記載された行為ノードを目的ごとに再構成する.ここでは,再構成する際に,順序関係が崩れないようにする.また,行為を実行する根拠を明示的にするために,教科書に記載されていないが,目的が明らかな場合は追記する.

  • 構築範囲の規定

構築範囲を規定するために,構造化マニュアルの利用用途を逆算する.たとえば,利用用途が新入職員教育であるならば,その組織における新入職員が持っているだろう基礎的な知識は省き,組織の理念として重視する点(たとえば,コンテクストとしての目的)を明確にしてマニュアルに記述する.このように利用用途から,どのような種類のマニュアルが必要であるか,1つのマニュアルが含むべき情報が何かを規定する.

  • 構築体制の明確化

構造化マニュアルを構築するためには,対象となる業務に関する知識を十分に備えていることが求められる.また,基本構造化マニュアルをもとに複数人で議論しながら固有構造化マニュアルを構築するため,一回あたりの知識発現ワークショップ参加人数は2人以上が必要となる.また,いくつかのワークショップデザインの研究[10, 11]でも言及されるように,議論を促進するためのファシリテータや時間管理のためのタイムキーパがいることが望ましい.

大規模なマニュアルを構築する場合には,構築期間が長くなることが想定される.そのため,知識を有する参加者が常に一定以上参加可能な体制を構築する必要がある.

  • スケジュールの作成

大規模にマニュアルを構築するためには,期間内での効率的な実施が必要である.そのために,プロジェクトのスケジュールを作成する.利用用途から逆算した構築範囲をもとに,プロジェクト全体として必要な時間を計算する.1つのマニュアルを構築するために必要な時間として,文献[5]を参考に,3時間とする.

次に,プロジェクト全体の大まかなスケジュールを作成する.前期,中期,後期と分け,前期においてワークショップ内容の試行錯誤,マニュアル構築優先度の決定,固有マニュアルの構築を行う.中期において,引き続き固有マニュアルを構築し,一度構築したマニュアルの確認と修正を行う.後期に,これまでに構築したマニュアルの確認を行う.

  • 追加・削除個所の選定

文献[5]の方法に則って,基本構造化マニュアルをもとにしたワークショップを実施する.構築する固有構造化マニュアルの利用目的に応じて,記載内容や参加すべき従業員の属性は異なる.そのため,利用目的については,別途明確にする必要がある.

明確にされた目的を想定しながら,どの行為が当該法人にとって重要であるか重要ではないかを議論する.その際に,重要でないとされた行為の詳細については削除個所として目印を付ける.追加すべき行為を選定する際には,具体的に実施した事例を想起しながら行う.その際に,利用目的に合致する程度に事例を一般化して記載する.

  • 知識モデルに沿った整形

選定された追加・削除個所を基本構造化マニュアルに反映する.特に,追加を行った場合には,追加された内容を構造化マニュアルの構成要素(行為やリスク等)に分類し,該当する図形を用いて記述する.その際に,基本構造化マニュアルにすでにある要素との関係を考慮する.それが明確でない場合は,追加・削除個所の選定に戻り,追加内容を再度議論する.

  • 固有構造化マニュアルの内容確認

最後に,これまでの手順を通して,得られた構造化マニュアルの内容を確認する.その際には,利用目的に沿った内容となっているかを基準とする.追加・削除個所の選定から固有構造化マニュアルの内容確認までの手続きを繰り返し行うことで,固有構造化マニュアルを構築する.

5.実践

5.1 概要

4章で精緻化した方法論にしたがって今回の実践を記述する.

  • 基本構造化マニュアルの構築

今回の事例では,2種類の教科書[12, 13]から基本構造化マニュアルを構築した.手順は,4章で述べた通りである.以上の作業を介護員経験者の監督のもと実施した.結果として,表1左列に示すような基本構造化マニュアルを得た.なお,感染症対策,与薬,事故発生防止,個人情報保護については,法人固有の作業手順が多く含まれるため,教科書から基本構造化マニュアルを構築せずに固有構造化マニュアルを構築した.

表1 構造化マニュアルの統計情報
  • 構築範囲の規定

今回の事例における,法人の目標はマニュアルを統一することであった.そして,そのマニュアルの活用方法の1つとして,新入職員に対する教育での利用が挙げられた.新入職員へ教育する時点で,伝えられる内容が統一されていれば,介護士らが成長した際にも同様の考え方の下で介護実施が期待できるからである.そこで,新入職員が学習用途で用いる際に参照する可能性が高い業務を今回の構築範囲と規定した.

新入職員が参照する可能性の高い業務の選定には,伸こう福祉会で作られている介護業務確認シートを用いた.介護業務確認シートは介護員のスキルチェックに用いられている.表2に介護業務確認シートのうち,初級者向けのリストを示す.本事例では,この中から新入職員が学習用途で参照する可能性の高い介護業務として,11種類を選定した.選定した介護業務は,入浴介助,食事介助,口腔ケア,服薬☆2,排泄介助,移動介助,移乗介助,体位変換,感染症対策・衛生管理,事故発生防止,個人情報と守秘義務である(表2右列参照).これらは1.2節に示す通り,法人の持つマニュアルとしては18個と重複して構築されていた.

表2 介護業務確認シートの項目リスト
  • 構築体制の明確化

今回の事例では,伸こう福祉会ですでに組織されていた現場力向上委員会(以降,頭文字をとりGKIと呼ぶ)のメンバからマニュアル構築チームを組織した.GKIは,法人内の業務効率化や従業員のモチベーション向上に資する活動を行っている.マニュアル構築チームのメンバは9名で,法人の特徴をよく理解する経歴の従業員が集められた.また,ファシリテータおよびタイムキーパの役割は,法人外の第三者かつ知識発現の方法論を熟知している,本稿の第一著者および第六著者が主に担当した.ただし,ワークショップの回数を重ねるごとに参加者の中で,ファシリテータの役割を担うものが現れることが確認できた.

  • スケジュールの作成

構築すべきマニュアルは11であり,1つ構築するために必要な時間を3時間とすると,33時間必要となる.そのため,期間内に効率的に実施するために,1回あたり5時間程度のワークショップを2週間ごとに実施することとした.プロジェクト開始日は2016年12月5日だったため,終了日の2017年3月31日までの間に,8回のワークショップを開催した.1回あたりの参加者はそれぞれ5〜8名であった.プロジェクト期間中の大まかな実施内容は4.2節で述べた通りである.

  • 追加・削除個所の選定

事前に定めた利用目的に沿って,法人に新しく入職する職員に対する教育に利用するために過不足のないことを念頭において,基本構造化マニュアルに対する追加・削除個所を選定した.追加する場合は,追加する内容を議論した.

  • 知識モデルに沿った整形

4章で述べた手順に沿って,構造化マニュアルの整形を行った.文献[5]では,付箋を用いて事例の追加,変更を議論していたが,今回の事例では口頭で述べられた事例に対して,それがどの要素に当てはまるのかを明確化し,図式化する作業を並行して実施した.

  • 固有構造化マニュアルの内容確認

構築された固有構造化マニュアルの内容を確認する際には,追加・削除個所の選定および知識モデルに沿った整形とは別の日程のワークショップにて行った.これにより,構築時とは異なる視点からの振り返りの効果が期待できる.

5.2 結果

得られた固有構造化マニュアルの統計情報を表1の右に示す.構造化マニュアルは行為ノードとその達成関係を取り出すと木構造とみなせる.その高さは最小4,最大9であった.行為ノード数は,最小20,最大226であり,11種類を合計すると1,026であった.また,マニュアルは確認シートに書かれた内容を復習する際に使われることが想定されるため,相互に参照関係が存在することが望ましい.本実践では,177の参照関係が得られた.

一例として,図5に排泄介助の構造化マニュアルの一部を示す.最上位の目的は,ルートノードが示すように,「利用者が排泄する」ことである.そのために必要な行為の概要がこの図では示されている.具体的には,「必要な物品を準備する」「利用者が排泄する」「後片付けをする」「記録する」である.これらの行為列は矢印で結ばれているように,順番に行うことを示している.「利用者が排泄する」「後片付けをする」「記録する」行為ノードの枠が太くなっているのは,その下に部分木が存在することを示しており,右肩の番号は部分木が表示されているページ数を示している.これによって,大きな木構造を一度に表示せずに構造化マニュアルを読むことが可能となっている.各行為の右下の四角形で表現された「確認」から始まるテキストノードは,前述の介護業務確認シートの項目に対応している.これを参照することで,構造化マニュアルと介護業務確認シートの両方を相互に参照することが可能となる.

結果として構築された構造化マニュアルはGKIメンバによって認証された.これにより,法人全体のマニュアルを統一的に構築できた.

6.考察

6.1 構造化マニュアルの有効性

6.1.1 新しい表示形式の有効性

5章で述べた構造化マニュアルの実践を通して,法人全体のマニュアルを統一的に構築できたという結果から,本稿で述べた表示形式と方法論の改良結果は有効であることが確認できた.加えて,次に示すアンケート調査を通して,その有効性の定量評価も実施した.

6.1.1.1 法人内のアンケート調査

まず,構造化マニュアルの表示形式の有効性についてGKIメンバに対してアンケート調査(以下,法人内調査と呼ぶ)を行った.表3にアンケートの質問項目を示す.3章で論じたように,表示形式の課題は大別すると,以下の3点であった.

表3 表示形式の比較についての質問項目
  • 課題1:構築時に不要な情報がある
  • 課題2:行為ノードを中心に情報がまとまっていない
  • 課題3:木の大きさに比例して紙が大きくなってしまう

課題1に対しては,方式をなくしたことによる効果を問うことで,有効性を確認した.これはアンケートの問1から3に対応する.課題2に対しては,全体的に行為ノードを中心に情報をまとめるように表示形式を変更したことで解決されているかを確認した.これはアンケートの問4,5に対応する.課題3に対しては,A4サイズに収まる範囲で部分木に区切ったことで解決されているかを確認した.これはアンケートの問6,7に対応する.

アンケートはGKIのメンバ4名に対して,改良後の表示形式と従来の表示形式を参照しながら実施した.どちらも褥瘡予防に関するプロセスを記述したものである.

結果を表4に示す.問1,2,3の結果から,介護現場では,ある目的を達成するための方式という概念が未発達であることが示唆される.現場の従業員による知識記述を促進するという視点から,新しい表示形式の方が有効であると考える.一方で,方式に名称を考えることが出来れば,それを用いることが説明に貢献できることも明らかとなった.問4,5の結果から,改良の結果,条件やリスクなどの行為に関連する情報が行為を表現するノードの近くに表示されることは,知識記述と説明の両面から有効であることが示唆された.問6,7の結果から,A4サイズに収まるように部分木毎に分割して表示することは,説明時には欠点も存在するが,知識記述の際には有効であることが示唆された.

表4 表示形式の比較についてのアンケート結果(法人内)

以上により,本改良を実施したGKIメンバにとって,構造化マニュアルの新しい表示形式は従業員が主体的に知識を記述する際に,従来の表示形式と比べて有効であることが示唆された.

6.1.1.2 他施設へのアンケート調査

他法人に対しても構造化マニュアルの表示形式について同様のアンケート調査を実施した.アンケート項目は,意味的には同じだが,初めて構造化マニュアルを見る人に対して質問の意図が伝わりやすいように図を含めて表記上の変更を行った(図6参照).なお,図6中の図1は改良後の表示形式,図2は従来の表示形式を示している.

図6 表示形式の比較についてのアンケート用紙

3法人37名と介護業務経験者2名の合計39名に対して調査し,有効回答数は38であった.結果を表5に示す.改良後をよいと評価した回答数と,それを有効回答数で割って求めた有効回答数における割合を示す.

表5 表示形式の比較についてのアンケート結果(他法人)

結果は,大方において法人内調査と同様であった.また,法人内調査に対して改良後をよいと評価した割合が少ないが,これは実際のマニュアル構築経験に依存していると考えられる.

一方で,問5,7は法人内調査と異なる傾向が見られた.問5の結果は,法人内調査と異なり,改良前の表示形式に対して高評価の回答が多かった.これは,説明時にどちらの表示形式が有効かを問う質問である.記述時にどちらの表示形式が有効かを問うた問4では,改良後の表示形式の方が有効であるという回答が多い.今回の表示形式の改良は主にマニュアル記述時の利便性を高めるための改良であるため,目標は達していると言える.一方で,説明に用いる際の表示形式については改良の余地があることが示唆された.問7の結果については,法人内調査よりも改良後の方が高く評価された.伸こう福祉会では,構造化マニュアル全体を一覧して説明することが用途として想定されていたようだが,一般には見たい部分に焦点を当てられるような部分木に分割した表示が好まれる傾向があることが示唆された.

6.1.2 固有構造化マニュアルの有効性

次に,構築した固有構造化マニュアルの有効性について,新入職員研修への利用可能性の観点からGKIメンバに対してヒアリングを行った.

これまで,伸こう福祉会では,本部による集中的な教育の場と各施設による実際的な教育の2種類が並列に実施されてきた.前者は,本部の教育担当者や外部講師が座学を中心に教育を行う.後者は,各施設の先輩介護士がプリセプターとしてOn the Job Training (以降,OJTと呼ぶ)が基本となっている.

しかし,OJTにおいて新入職員に対する説明内容は現場のプリセプターに任せられていた.そのため,現場ごとに教育内容が統一されていたかどうかは分からない.また,本部の教育担当者による教育内容と現場のOJTの関係についても,新入職員教育担当者は把握していないという現状があった.

そこで,今回構築した構造化マニュアルを新入職員教育で活用することで,統一された教育内容を伝えることが容易になる効果が期待される.今回の試みでは,GKIメンバから新入職員教育担当者に対して教育内容を伝える際に構造化マニュアルを用いた.当該GKIメンバに対してヒアリングをすることで,この効果について検証した.ヒアリングは,3名のGKIメンバに対して実施した.

昨年度以前からの変化として,現場で業務を進めるために必要な内容を教えるため,新入職員教育担当者の教える内容や教え方についての変化はない.一方で,前述の介護業務確認シートを参考にできているかできていないかを教えるようになった.そのため,教えたか教えていないかで揉めることは減った.その後,構造化マニュアルを配布し,新入職員教育担当者および新入職員が任意に参照可能な環境を構築した.しかし,新入職員教育担当者は日常的に見ているわけではなかった.一方で,新入職員は新入職員教育担当者から教えられたことに対して,すぐには理解できない傾向があることもヒアリング結果から得られた.そのような場合に,新入職員が教えを受けた後に振り返りとして構造化マニュアルが有用であることがヒアリングの中で示唆された.また,新入職員と新入職員教育担当者の間で教えたか否かでもめる場合があるのは,新入職員が腑に落ちていないためではないかという意見も得られた.構造化マニュアルによって新入職員にとって教えられた内容が腑に落ちることが期待できるとの意見も得られた.

以上のヒアリング結果からも,今回構築した法人全体のマニュアルが新入職員教育に対して貢献することが,GKIメンバから期待されていることが示された.

6.2 他分野への展開可能性

当該手法の他分野への展開可能性について述べる.知識発現と呼ぶ現場の従業員が主体となって知識を構造的に記述する方法と,CHARMと呼ぶ知識を構造化するためのモデルの展開がそれぞれ考えられる.表6にこれまでの適用事例を挙げる.

表6 これまでの適用事例

まず,知識モデルについて改良前の状態で,介護[5],大学教育[14],自動運転[16],看護[8, 9],医療[18]分野での適用事例がある.改良後には,今回の事例の他に地域活性化支援[15]において適用事例がある.次に,方法論について改良前の状態で,介護[5],大学教育[14],地域活性化支援[15],ギター演奏[17]において適用実績がある.改良後は,今回の事例が初めての適用であった.これらの適用事例から,介護以外の分野に対して,目的指向の知識モデルを用いた知識発現が展開可能であることがいえる.

次に,知識モデルの表示形式について考察する.知識モデルの適用分野と利用シーンに分けて整理する.適用分野には,(A)目的達成のための方式に名称を付けることが容易な分野と,(B)難しい分野がある.知識モデルの利用シーンとしては,(1)記述シーン,(2)ベテランから初学者への説明シーン,(3)計算機利用シーンの3種類に分けられる.(3)計算機利用シーンは本稿では報告対象外とし,前者2つの利用シーンに対して,どのような知識モデルを用いることがよいかを概観する.表7に概要を示す.表示形式の各改良点に対して,改良後がよい場合は○を,どちらでもよい場合は「どちらでもよい」を,改良前がよい場合は×を記載することとした.

表7 適用分野,利用シーンとそれに適する表現形式についての考察

(A)の分野では,同じ目的達成のために方式を再利用できる[19]という点で,方式に名称を付けることが望ましい.(A1)では,記述量を減らすことに貢献することから,他の改良点は適用することが望ましい.さらに,アンケート結果から分かるように,部分木へ分割する方が,記述個所の特定がしやすく記述を促進するものと考えられる.(A2)では,行為全体の内の説明範囲を説明するために,一枚で全体を表示するような一覧性が求められることがアンケート結果から示唆された.これは改良前と改良後の両方の表示形式を切り替えられることが望ましいと考えられる.

(B1)では,介護分野のように,方式の名称を考えるコストが高いため,名称を付けない方がよいと考えられる.加えて,記述量を減らすことに貢献することから,他の改良点も適用することが望ましい.(B2)は,(A2)と同様である.アンケート結果で得られたように,方式に名称を付けにくい介護分野の場合にも,名称があることが望まれた.これは,説明時に名称を付けることも記述時と同様に難しさがあるためと考えられる.これをどのように補うかは今後の課題とする.

適用分野(A)と(B)を分ける境界線は明確ではなく,連続性のあるものである.目的達成方式は,何故その手順で目的を達成可能であるかの原理原則を概念化したものである.そのため,学問分野として成熟していない場合には,その原理原則が明確ではないことが考えられる.その意味では,医療や自動運転のような学問として成熟し,目的達成の原理原則を説明可能な分野では,方式に名称を付けることが容易であり,介護や地域活性化支援のような新しい分野では,方式に名称を付けることが難しいといえる.

最後に,方法論の改良について考察する.本稿で提案する方法論は,既存の方法論の拡張と精緻化である.これには,介護分野に特有の手順は含まれていないため,分野に依存せず適用可能であると考える.

7.まとめ

本稿では,社会福祉法人内の業務マニュアルの統一を通して既存の方法論である知識発現の実践における課題とその解決方法を明らかにした.結果として,現場で実践する際に有用な表示形式の改良と,大規模なマニュアル構築のための方法論の精緻化が実現できた.それを用いて,法人内の介護業務に関する知識の内,特にマニュアル構築が必要なものとして11種類の構造化マニュアルが,現場の従業員が主体となって構築された.この結果をもって,改良された方法論の有効性が示された.マニュアルの改訂については,法人全体の構造化マニュアルを構築する過程において,初期の版から最終版の構築に至るまでに継続的な改訂がなされた.一方で,マニュアルの利用を通して,実際の現場に合うように改訂することの可能性については今後の課題として残った.表示形式についてはアンケートを通して有効性が示唆された.構築された構造化マニュアルの有用性についても,現場の従業員に対するヒアリングを通して新入職員教育に対しての貢献が期待されることが明らかとなった.

謝辞 本研究の一部は,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務,およびJSPS科研費16K16160の助成を受けたものです.

参考文献
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  • 2)厚生労働省:2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について, https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12004000-Shakaiengokyoku-Shakai-Fukushikibanka/270624houdou.pdf_2.pdf, (accessed on 2017/12/31)(2015)
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  • 19)Nishimura, S., Kitamura, Y., Sasajima, M., and Mizoguchi, R. : Systematic Description of Nursing Actions based on Goal Realization Model, the 15th European Conference on Knowledge Management, pp.730-739 (2014).
  • 20)Nonaka, I. : A Dynamic Theory of Organizational Knowledge Creation, Organization Science, Vol.5, No.1, pp.14-37 (1994).
  • 21)日本褥瘡学会, 褥瘡について, http://www.jspu.org/jpn/patient/about.html (2018.06.25 accessed).
脚注
  • ☆1 褥瘡とは、寝たきりなどによって,体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで,皮膚の一部が赤い色味をおびたり,ただれたり,傷ができてしまうこと[21].
  • ☆2 口腔投与とは限らないため,マニュアルではタイトルを「与薬」とした.
西村 悟史(非会員)satoshi.nishimura@aist.go.jp

2015年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).産業技術総合研究所特別研究員を経て,2015年より同人工知能研究センター研究員.介護,教育等,業務プロセス知識の構造化と活用の研究開発に従事.2011, 2017年度人工知能学会全国大会優秀発表賞,2012, 2016年度人工知能学会研究会優秀賞受賞.人工知能学会,教育システム情報学会,日本看護科学学会,医療情報学会,サービス学会,機械学会,各会員.

毛利 陽子(非会員)

1981年北海道立衛生学院保健師課卒業,朝日新聞健康管理室,HOYA健康管理室を経て独立.日経BP社契約保健師など,働く人たちの作業環境,作業管理,健康管理の仕事に従事.2011年より(社福)伸こう福祉会にて,事業監査,教育を通して,働きやすい環境づくり,介護・保育の質の向上に努めてきた.現在は有限会社ビーイングサポート・マナにて中小企業で働く人の支援.NPOまな市民後見セーフティーネットにて,高齢者の生活支援を行っている.

山中 泉(非会員)

社会福祉法人伸こう福祉会所属.現在,クロスハート栄・横浜(特養)ケアマネージャー.介護支援専門員・介護福祉士.

中村 美佳(非会員)

社会福祉法人伸こう福祉会所属.現在,クロスハート田谷・栄(グループホーム)施設長.介護支援専門員・介護福祉士.

高山 薫(非会員)

社会福祉法人伸こう福祉会所属.現在,クロスハート湘南台二番館(特定施設)施設長.介護福祉士・保育士.

西村 拓一(正会員)takuichi.nishimura@aist.go.jp

1992年東京大学工学系大学院修士(計測工学)課程修了.同年,NKK(株)入社.X線,音響・振動制御関係の研究開発に従事.1995年RWCPに出向,1998年NKK(株)復帰.2001年産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センターに所属,2005年同情報技術研究部門実世界指向インタラクショングループ長,2009年NEC出向,2011年産業技術総合研究所サービス工学研究センターサービスプロセスモデリング研究チーム長.2015年同人工知能研究センターサービスインテリジェンス研究チーム長,現在に至る.博士(工学).サービス現場として,介護・看護,健康増進,教育サービスにおけるコミュニティ支援,身体動作計測分析などに興味を持つ.人工知能学会,サービス学会各会員.

投稿受付:2018年1月15日
採録決定:2018年8月20日
編集担当:西 直樹(国立研究開発法人理化学研究所)

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