情報処理学会60年のあゆみ
第3編―情報技術の発展と展望
xSIG

 

1. xSIGの発足

xSIGcross-disciplinary Workshop on Computing Systems,Infrastructures,and Programminghttp://xsig.hpcc.jp/)は,2017年に立ち上げられた新しい国内会議である.コンピュータの基盤システムに関して,ハードウェア,言語,OSなどシステムソフトウェア,データ工学まで広い範囲をカバーする.主催・共催には,多くの研究会(情報処理学会研究会ARC,HPC,OS,PRO,電子情報通信学会研究専門委員会CPSY,DE,RECONF)が参加している.xSIGという名前には,研究会,Special Interest Group(SIG)の枠を越えた交流を促進する会議にしたい,という気持ちが込められている.

2. 発足の背景

xSIGは,JSPP(1989~2002),SACSIS(2003~2013),ACSI(2015~2016)という,研究会をまたがって基盤システム分野をカバーしてきた国内会議の系譜の上にある.

この間の変化として,アーキテクチャのオープン化,再構成可能デバイス,領域特化型アーキテクチャや言語,非デジタルな種々の計算デバイスなど,ハード–ソフトや,システム–アプリケーションの連携が重要になる数々の潮流があり,研究会の枠を越えた分野間の連携は今後ますます重要になると考えられる.

一方で,基盤システム分野への若い研究者の参入の伸び悩み,国内での査読付き会議への消極的な意見などもあり,近年はつねに試行錯誤が続いていた.

3. 会議の特徴

そこでxSIGは,査読を行うが予稿集は発行しない,という形式を取っている.

また,若手奨励のための多くの賞や,ヤングPCなど,若い研究者や学生にコミュニティに入ってきてもらえるよう工夫している.ヤングPCとは,若い研究者がPCのメンバとして査読や採択プロセスを経験できる制度である.なお,ヤングPCメンバの評点は,論文の数値評価には反映されない.

4. 国内会議の趣旨

国内会議の設計は多くの研究会が共通して抱えている問題意識ではないかと思われる.そもそも国際会議やジャーナルを標準的な着地点として研究する中で,国内会議が果たすべき役割とは何か,進展中の研究に関する率直な議論が目的であれば査読なしの研究会で十分なのではないか,という問題意識である.

xSIGの立ち上げ時には,研究分野間の新たな連携に関する検討会(通称:考える会http://kangaeru.github.io/kangaeru/)を開催し,国内における会議があるべき姿に関して多数の有志による議論を行った.議論の要約は同ページを参照されたい.

努力の甲斐あって,予稿集を発行しない査読付きワークショップの形式ならば,その後の国際会議やジャーナルへの投稿を妨げないとの合意は形成されつつあるように思われる.

しかし,現在も試行錯誤は続いており,答えは得られていない.いくら個々の学会が高い理想を目指して有志が骨を折って国内会議を立ち上げても,学会を担う研究者(特に若手)の負担が増すなか,国内会議が単調増加していくのは望ましくない.まさしくSIGを越えた議論が必要な時期に来ていると思われる.

(田浦健次朗)

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