情報処理学会60年のあゆみ
第3編―情報技術の発展と展望
[MI領域]メディア知能情報領域

 

1. MI領域について

メディア知能情報領域は,その名が示すように,メディアに関連する研究分野である,音声・映像などに対する情報処理技術を研究する分野と,知能情報・言語処理に関する技術を研究する分野を含む.加えて,メディア・知能が実際に利用される環境を踏まえた情報技術の社会応用に関する研究分野,具体的には教育・ゲーム・エンタテインメント・生命科学・人文科学・アクセシビリティなどと情報処理技術との関係を研究する分野を包含する,情報技術と人間社会とのかかわりを広く研究する領域であるといえる.

本領域は,2011年度まで「フロンティア領域」という領域名称であった.情報学の先導的研究分野を広く扱う領域として設立された本領域は,2009年度から始まった領域制度見直しの議論の中,領域活動の活性化のためには,単に新しい研究会が集まったというだけではなく,適切な位置づけを持った研究領域であることが望ましいという声が高まった.当時,フロンティア情報領域の研究会は知能情報学が主体であり,さらにメディアに関する研究会が相前後して参加し始めた時期であったことから,この領域の名称をメディア知能情報領域と変更する次第となった.

名称は変更されたものの,これまで有していた情報学のフロンティアを志向する研究分野の受け入れの機能も引き継いでいる.その証拠として,研究会の「卵」ともいえる研究グループについても受け入れが継続しており,新しい研究の萌芽を支える領域として,この10年間も継続的に活動を行ってきている.

2. 領域の変遷

2009年度,フロンティア領域には11研究会と1つの研究グループが活動していた.その後,教育学習支援情報システム研究会(CLE)が2010年に,会員の力を社会につなげる研究グループ(SSR)が2012年度に,情報処理に関する法的問題研究グループ(LIP)が2015年度に,アクセシビリティ研究会(AAC)が2015年グループ設立を経て2016年度に研究会として,さらにビッグデータ解析のビジネス実務利活用研究グループ(PBD)が2017年にそれぞれ新設され活動を開始した.また,2018年度にはコンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会(CG)が情報環境領域よりメディア知能情報領域へ移動し,現在の14研究会+4研究グループ体制となっている.

3. MI領域の活動

本領域では,領域所属の各研究会がそれぞれの独自性を発揮したシンポジウムやワークショップなどのイベントを広く開催している.それらの中でも,情報教育シンポジウム(SSS)は,コンピュータと教育研究会(CE)および教育学習支援情報システム研究会(CLE)の共催であり,本領域の関連する研究会間で協調した活動の1つとしてあげられる.研究発表会においては,本領域だけでなく,他領域の研究会あるいは他学会とも積極的に共催・連催し,本領域の特色である社会応用的側面の強みを活かして,幅広い研究分野と相互に刺激を与えあう関係となっている.

また,研究グループはその柔軟な形式を活かし,高校教員向けのセミナー(SSR)やソフトウエアジャパンでの企画運営(PBD)などの異なる切り口での活動を実施しており,今後の展開が期待される.

(倉本 到)

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