情報処理学会ホームに戻る
最終更新日:2007年7月3日

第2回「ビジネスと生活を結ぶセキュリティ」

 

開催日時: 平成19年7月12日(木) 9:30-16:50
開催会場: 東京電機大学神田キャンパス7号館1F 丹羽ホール(東京都千代田区神田錦町2-2)

■セミナー概要
携帯電話や情報家電の高機能化,車や道路,駅構内,地下街,住宅のIT化に伴い,様々なIT機器,システム,サービスの発展が期待されている.情報セキュリティはこれらのIT生活空間の不安要因を軽減し,ビジネスの発展を促進する上で不可欠である.また,ホームセキュリティ,学校や街の防犯システムのように,セキュリティ自体を目的とするビジネスも急成長している.さらに,在宅勤務が常態化し,Web2.0という言葉に象徴される無数の個人生活を基盤とするビジネスが進展する一方,個人情報等の管理・内部統制が強く求められている.ビジネスと生活の間で,情報の自由な行き来と統制を両立する上でも情報セキュリティ技術は中心的な役割を占める.本セミナーでは,ホームセキュリティと情報セキュリティの関わり,IT生活空間の不安要因を軽減する組み込みシステムセキュリティ,自由と統制の両立に関わるクライアントセキュリティ,生活者を対象とした大規模ITサービスとして期待されている通信放送連携に関わるセキュリティをテーマとして,各分野の第一人者に講演いただく.

コーディネータ:吉浦 裕(電気通信大学 電気通信学部 教授)
略歴 1981年東京大学理学部情報科学科卒業.日立製作所を経て,2003年より電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科勤務.現在,同教授.情報セキュリティ,著作権保護の研究に従事.理学博士.情報処理学会,電子情報通信学会,システム制御情報学会,人工知能学会,IEEE各会員.平成12年日立製作所社長技術賞,平成2年情報処理学会学術奨励賞,平成16年度情報処理学会論文賞,平成17年システム制御情報学会産業技術賞受賞.

■プログラム

セッション1

9:30-9:55
「ビジネスと生活を結ぶセキュリティ - 課題と展望-」

 吉浦 裕(電気通信大学 電気通信学部 教授)

講演概要
セキュリティ技術の生活空間への適用について,ビジネス促進の観点から概観し,本日の各講演を紹介する.加えて,この分野の一つのトピックとして,コミュニケーションに関わるセキュリティ技術を紹介する. SNS (Social Networking Service),blogにおけるプライバシー漏洩や不適切発言,Webのなりすましやフィッシングを,インターネットコミュニケーションの特性に基づいて分析し,その対策となるセキュリティ技術を紹介する.
略歴はコーディネータ参照
セッション2

10:00-11:20

「ホームセキュリティと情報セキュリティ」
 
  藤川 真樹 (中央大学研究開発機構 客員研究員)

講演概要
はじめに,ホームセキュリティ・サービスを提供する警備業者(警備保障会社)について説明する.警備業者は全国に約9,300社あること,警備業者は警備業法という法律に従わなければならないこと,警備員は警察官の制服と似ている制服を着用しているが,警備員は民間人であって特別な権限(職務質問など)を与えられているわけではないことなど,意外と知られていない警備業者の実情を紹介する.つぎに,現状のホームセキュリティ・システムについて説明したあと,現状のシステムが抱えている問題点について述べる.その後,問題点を解決するための要件を明らかにするとともに,情報セキュリティ技術を応用することによって問題点が解決できることを述べる.そして,今後普及するであろうと考えられる,情報セキュリティ技術を応用した,次世代のホームセキュリティ・システムについて述べる.

略歴
1974年徳島県生まれ.1994年詫間電波工業高等専門学校卒業.同年徳島大学工学部3年次編入学.1996年同大学卒業.1998年徳島大学大学院工学研究科博士前期課程修了.同年綜合警備保障(株)入社.2004年中央大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).中央大学研究開発機構・客員研究員.これまでに,ECOM(旧:電子商取引実証推進協議会)タスクフォースメンバー,日本規格協会・バイオメトリクス標準化調査研究委員会委員を経験.現在,セキュリティ・システムの研究開発に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,日本セキュリティ・マネジメント学会所属.情報処理学会第62回全国大会・大会奨励賞受賞.
セッション3

11:30-12:50

「組み込みシステムのセキュリティ」

  鵜飼 裕司 ((株)フォティーンフォティ技術研究所 取締役副社長 最高技術責任者)

講演概要
近年,携帯電話や家庭用ゲーム機,情報家電といった組み込みシステムにおけるインターネット利用が活発化しており,PCなど既存のシステム同様,セキュリティ脆弱性に対する懸念が高まっている.また,組み込みシステムのセキュリティ脆弱性を狙った攻撃コードの公開件数は年々増加しており,攻撃者の関心を集めている.しかし,セキュリティ脆弱性脅威分析の研究は現在もPC用OSなど汎用システムに対するものが中心であり,組み込みシステムの分野では十分に議論されていないのが現状である.本講演では,組み込みシステムにおけるセキュリティ脆弱性とその脅威分析について解説する.家庭用ルーターやネットワークカメラ等のバッファオーバーフロー脆弱性の実例を紹介し,それらに対する攻略プロセスの詳細を解説する.また,組み込みシステムにおけるセキュリティ脆弱性対策技術,攻撃緩和技術,解析対策技術についても解説する.

略歴
1973年徳島県生まれ.2000年徳島大学大学院工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).Kodak研究開発センターにてデジタルイメージングデバイスの研究開発に従事した後,2003年米国eEye Digital Security社に入社.セキュリティ脆弱性分析や脆弱性診断技術,組み込みシステムのセキュリティ脅威分析等に関する研究開発に従事.2007年7 月,さまざまなセキュリティの要素技術に関する研究開発やコンサルティングサービスなどを主事業とする株式会社フォティーンフォティ技術研究所を設立.最高技術責任者に就任.
12:50-14:00
お昼休み
セッション4

14:00-15:20

「クライアント環境を指向したセキュアVM」

 加藤 和彦 (筑波大学 大学院システム情報工学研究科 教授)


講演概要
サーバシステムをターゲットとしたセキュリティ上の攻撃に対しては,これまでに長年に渡って多くの努力がなされてきた事に加え,台数が比較的に限られていること,専門家が集中的に管理可能であること等の性質のため,対処法の開発と普及はかなり進んだ状況にある.一方,クライアント環境におけるセキュリティ保全問題は,いくつかの理由が複合的に作用して,対処が容易でなく,社会問題としてマスコミにもしばしば取り上げられているのが現状である.当講演者を中心とする研究グループは,仮想計算機技術を駆使することによってクライアント環境のセキュリティ保全を行うシステムの開発を進めている.本講演では同システムのねらい,開発状況について概要をわかりやすく説明する.


略歴 1962年生まれ.1992年博士(理学)(東京大学).1989年東京大学理学部情報科学科助手,1993年筑波大学電子・情報工学系講師,1996年同助教授,2004年筑波 大学大学院システム情報工学研究科教授,現在に至る.2003〜2006年度情報処理学会システムソフトウェアとオペレーティングシステム研究会主査.2007年度よ り日本ソフトウェア科学会理事.

セッション5

15
:30-16:50

「通信放送連携とセキュリティ」

 岸上 順一 (NTTサイバーソリューション研究所 所長)
 

講演概要
世界一安価なブロードバンドの普及,高精細な薄型テレビ,さらにHDコンテンツへの移行の三拍子が揃っている日本において期待されているのがIPTVサービスだ.コーデック,メタデータ,アーキテクチャなど標準化が進む一方,ビジネスも香港,イタリア,フランスなどでは独立系の会社を中心にSD画質で ADSLを用いたものが展開されてきているが,本格的な展開はまだ暫くかかりそうである.最終的には今の地上波デジタルやBS,CS,ケーブルに加えて新たなメディアとして立ち上がることが期待される.デジタル技術を用いて双方向,メタデータ活用などのサービスが本格化されるにつれ,インターネットの世界で起こっているようなスパムとかDOS攻撃,あるいはプライバシーの侵害などを懸念する声が出てきている.本セッションではこれらの問題提起と解決に向けた取り組みを述べたい.

略歴 磁気記録の研究,主に薄膜ヘッドのデザインと記憶装置の設計,データベース,Video-on-Demandの研究,特に動画に対する多重アクセス装置を設計,その後研究所企画部を経た後1994年から5年間アメリカ西海岸でNTT America副社長,IP担当事業本部長.帰国後コンテンツIDの普及,グローバル展開などを行った後,持株でチーフプロデューサ,中期経営戦略室を兼務.RFIDならびにIPTVの事業化を行う.現在サイバーソリューション研究所所長.