9:30-10:50 |
セッション1 「産業モジュール化時代の競争戦略論」
根来 龍之(早稲田大学IT戦略研究所 所長 大学院商学研究科MBAコース教授) |
【講演概要】産業のモジュール化が進むと,事業形態が個別企業の競争力を大きく制約する.言い換えれば,産業のモジュール化が独自資源の役割を弱め,「モジュール化が進んだ産業では,事業形態のドミナント制約論」が成立する可能性が高まる.ここで,事業形態のドミナント制約論とは,「事業形態別のトップ企業同士の競争の勝敗は事業形態の違いが決める=事業形態が競争力を優先的に制約する」というものである.
以上の議論を資源ベース戦略論に立脚して展開する.資源ベース戦略論とは,以下の考え方を持つものである.「ある企業が優れた業績を上げるのは,他社にない優れた経営資源や能力を持っているからだ.」「他社に真似されない自社独自の能力(コンピタンス)や知識(ナレッジ)の蓄積が競争優位の源泉となる. |
【写真・略歴はコーディネータ参照】 |
11:00-12:00 |
セッション2 「事例:ぴあ(株)の電子チケットサービス」(予定)
※ビデオセッション 根来 龍之(早稲田大学IT戦略研究所 所長 大学院商学研究科MBAコース教授)
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【講演概要】チケット業界の移動障壁と独自障壁との関係で,ぴあ鰍フ電子チケットサービスの内容を,ビデオ取材を通じて詳細に吟味する. |
【写真・略歴はコーディネータ参照】 |
12:00-13:00 |
お昼休み |
13:00-14:00 |
セッション3 「競争戦略とIT戦略の関係」
根来 龍之(早稲田大学IT戦略研究所 所長 大学院商学研究科MBAコース教授) |
【講演概要】3つの投資:模倣障壁構築・強化への貢献
・参入障壁への投資
-その業界に参入するための投資、その業界で生き残るための投資
-業界共通の「変化や顧客ニーズ」に対応するための投資
・ 移動障壁の投資
-同じ戦略グループにとどまるための投資
-新しい戦略グループを形成する投資
・ 独自障壁への投資
-同じグループの他社と継続的格差をつくるための投資
(間接投資)
どの業界においても行われる業務効率化投資(例:給与システム、財務会計システム),
IT投資と模倣障壁との関係
・IT投資が移動障壁強化中心になっている例
東京三菱銀行のIT 投資,日本航空のIT 投資
・IT投資によって高い独自障壁構築に成功している例
紀伊国屋の3つの書店ビジネス |
【写真・略歴はコーディネータ参照】 |
14:10-15:10 |
セッション4 「事例:(株)スタッフサービス」(予定)
※ビデオセッション 根来 龍之(早稲田大学IT戦略研究所 所長 大学院商学研究科MBAコース教授) |
【講演概要】人材派遣業界における潟Xタッフサービスの独自な地位と,情報システムが果たしている役割を模倣困難性の概念を使って,ビデオ取材を通じて詳細に吟味する.参考文献:根来・山路「技術革新をきっかけとしないオーバーテーク戦略―潟Xタッフ・サービスの事例研究―」http://www.waseda.jp/prj-riim/ |
【写真・略歴はコーディネータ参照】 |
15:20-16:00 |
セッション5 「競争優位のアウトソーシング
」
根来 龍之(早稲田大学IT戦略研究所 所長 大学院商学研究科MBAコース教授) |
【講演概要】アウトソーシングの戦略的活用について議論する.具体的には,「コア業務への集中」という言葉に象徴される<「選択と集中」論によるアウトソーシングに3つのジレンマがあることを明らかにし,それを緩和するアウトソーシングの考え方として,「シナジスティック・アウトソーシング」のコンセプトを提案する.
アウトソーシングの3つのジレンマとは,
1.モジュール化が進んだ業務についてのアウトソーシングは差別化につながらない可能性がある
2.外部業者の「強さ」が自社の差別化に貢献するとは限らない
3.アウトソーシングは差別化源泉(数)の縮小につながる
というものである.しかし,アウトソーシング先の業務が自社の業務と「活動システム」として結びつくことによってシステムとしての模倣困難性を持ちえれば,アウトソーシングした活動も持続的競争優位の形成に貢献できる可能性がある.この自社と委託先の資源(能力)を結合した「活動のシステム性の意図的な追求」が,シナジスティック・アウトソーシング=「委託先の業務プロセスと自社内の業務プロセスを組み合わせることによって,模倣困難性が高い差別化を形成するアウトソーシング」である. |
【写真・略歴はコーディネータ参照】
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16:00-16:40 |
セッション6 「競争戦略に対応するコンタクトセンターアウトソーシング活用
」
森 一恵(もしもしホットライン(株)コンサルティング部長) |
【講演資料:事情によりweb上には掲載いたしません(当日配布資料に掲載致します)。】
【講演概要】コンタクトセンターが一般的に普及して約20年.現在,コンタクトセンターは企業と顧客を結ぶコンタクトチャネルとして数多く存在する.同時に情報技術の進歩は新たなコンタクトチャネルを誕生させ,このことは消費者行動を大きく変化させた.顧客の利用シーンに対応する利便性高いサービスへのニーズは高まり,企業はそのニーズに対応するために取組んでいる.つまり,現代のコンタクトセンターは,他チャネルと連携した総合サービスを提供することで最適な顧足サービスを提供することが求められているのである.このようにコンタクトセンターの構造的前提が変化し,コンタクトセンターに戦略的な期待が高まる現在,アウトソーシングサービスを活用しながらいかにしてサービス水準の維持と効率のバランスを保つかを考えていく. |
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【略歴】
1998年株式会社もしもしホットライン入社.流通系大規模受注センター構築を初め,様々なコールセンター構築に携わる.現在は,ビジネスソリューション部長としてコンタクトセンター戦略活用におけるコンサルティングサービスを提供する傍ら,早稲田大学IT戦略研究所プロジェクトメンバーとして在席.早稲田大学大学院商学研究科卒業. |
16:40-17:00 |
まとめ 「模倣困難性と情報システム」
根来 龍之(早稲田大学IT戦略研究所 所長 大学院商学研究科MBAコース教授) |
【講演概要】
■情報システム投資は,ハード・ソフト自身は,模倣困難性はそれほど高くない.しかし,活用の仕方(IT活用能力)は企業によって異なり模倣困難性がある.また,活用の必要性や重要性については,戦略グループや独自資源の内容によって異なる.ただし,資金負担の可否は,戦略グループ内では問題にならないことが多い.
■情報システム投資にも,中立投資以外に,参入障壁,移動障壁,独自障壁構築・強化に関係する投資がある.
■独自障壁になりえない「移動障壁としてのIT投資」も,戦略グループ(移動障壁)が収益性を大きく決める場合には,大きな意味があるし,必要不可欠で遅れてはならない投資である.
■ どのIT投資が自社にとって「今どの程度必要か」を判断するためには,自社が属する業界の収益格差の構造(その資源が収益格差をどの程度決めるか)をまず理解し,自社の危急の課題が移動障壁の強化・構築あるいは独自障壁の創造・強化のどちらに重みがかかっているかを判断する必要がある. |