情報処理学会ホームに戻る
最終更新日:2006年7月10日

第2回「ビジネスにおけるシステム思考」

 

開催日時: 平成18年7月20日(木) 9:30-17:00
開催会場: 東京大学 本郷キャンパス理学部 1号館内 小柴ホール アクセス(東京都文京区本郷7-3-1)

【セミナー概要】
目的:システムの本質について掘り下げることによって,情報システムには他の人工物とは際立った違いがあることを認識する.
概要:システム的認識は,二つの骨格からなっている.一つは,ものごとの背後にある構造の同型性に注目するという構造主義的な考え方であり,他の一つは,要素間の相互作用による創発特性に注目する全体論的な考え方である.
このセミナーでは,はじめに,システムの構造を捉えるための枠組みについて,静的な構造と動的な構造の2つをとりあげて論ずる.これは,対象の中から,要の「もの」と要の「こと」を抽出するための指針を与えてくれるだろう.
次に,従来の人工物に対するアプローチであるハードシステム思考に対し,情報システムのような人間による活動をその要素として含むソフトシステムに対するアプローチについて論ずる.これにより,IT指向の情報システム論からビジネス指向の情報システム論へと,情報システムに対する視座の転換を促す.

コーディネータ:飯島 淳一(東京工業大学 大学院社会理工学研究科 経営工学専攻 教授,経営情報学会 会長)
【略歴】1982年東京工業大学・大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士課程修了(単位取得退学,1983年工学博士). この間,1980年9月から1982年2月まで,ポーランド,オーストリアへ留学.1982年4月より,同研究科助手.その後,同大学工学部助手,助教授を経て,1996年より,大学院社会理工学研究科経営工学専攻教授.平成18年4月より,経営情報学会会長.主な研究分野は,情報システム学(システム統合,ビジネスモデリングの他,推薦システムやネットオークションなどのEビジネスなどの研究),数理的システム理論(特に,入出力システムに対する様々な内部表現の研究).主な著作に,『成功に導くシステム統合の論点』(共著,2005),『入門 情報システム学』(2005),『ビジネスプロセスモデリング』(共著,2000)(いずれも,日科技連出版社)など,訳書に,『UMLによるビジネスモデリング』(分担,ソフトバンクパブリッシング,2002)などがある.経営ニーズとICT(情報通信技術)の接点において,ICT活用の立場から研究,教育,社会還元を行うことが,理工系大学における経営工学というビジネス系の専攻に所属するものの使命であると考えている.

【プログラム】

9:30-10:00
セッション1 「はじめに−ビジネスにおけるシステム思考」
飯島 淳一(東京工業大学 教授,経営情報学会会長)
【講演資料(PDFファイル)】
【講演概要】
システム的認識は,二つの骨格からなっている.一つは,ものごとの背後にある構造の同型性に注目するという構造主義的な考え方であり,他の一つは,要素間の相互作用による創発特性に注目する全体論的な考え方である.オリエンテーションでは,システム思考が生まれた背景と,このセミナーの狙いについて述べる.
略歴】1982年東京工業大学・大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士課程修了(単位取得退学,1983年工学博士). この間,1980年9月から1982年2月まで,ポーランド,オーストリアへ留学.1982年4月より,同研究科助手.その後,同大学工学部助手,助教授を経て,1996年より,大学院社会理工学研究科経営工学専攻教授.平成18年4月より,経営情報学会会長.主な研究分野は,情報システム学(システム統合,ビジネスモデリングの他,推薦システムやネットオークションなどのEビジネスなどの研究),数理的システム理論(特に,入出力システムに対する様々な内部表現の研究).主な著作に,『成功に導くシステム統合の論点』(共著,2005),『入門 情報システム学』(2005),『ビジネスプロセスモデリング』(共著,2000)(いずれも,日科技連出版社)など,訳書に,『UMLによるビジネスモデリング』(分担,ソフトバンクパブリッシング,2002)などがある.経営ニーズとICT(情報通信技術)の接点において,ICT活用の立場から研究,教育,社会還元を行うことが,理工系大学における経営工学というビジネス系の専攻に所属するものの使命であると考えている.
10:00-11:20

セッション2 「要のものを捉える:静的な構造の表現」
飯島 淳一(東京工業大学 教授,経営情報学会会長)

【講演資料(PDFファイル)】
【講演概要】
「構造」とはそもそも何だろう.様々な分野で構造という概念が用いられている.ここでは,構造概念を整理し,特に静的な構造に焦点を当てる.静的な構造のもっとも基本となるものは,MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)というコンサルテーションで用いられる考え方である.MECEは,実は,数学における同値関係(分割)によって,明確に表現することができる.ここでは,同値関係からはじめて,静的な構造を捉えるための枠組みとして,類似性,順序,階層などの表現の仕方について述べる.
略歴】1982年東京工業大学・大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士課程修了(単位取得退学,1983年工学博士). この間,1980年9月から1982年2月まで,ポーランド,オーストリアへ留学.1982年4月より,同研究科助手.その後,同大学工学部助手,助教授を経て,1996年より,大学院社会理工学研究科経営工学専攻教授.平成18年4月より,経営情報学会会長.主な研究分野は,情報システム学(システム統合,ビジネスモデリングの他,推薦システムやネットオークションなどのEビジネスなどの研究),数理的システム理論(特に,入出力システムに対する様々な内部表現の研究).主な著作に,『成功に導くシステム統合の論点』(共著,2005),『入門 情報システム学』(2005),『ビジネスプロセスモデリング』(共著,2000)(いずれも,日科技連出版社)など,訳書に,『UMLによるビジネスモデリング』(分担,ソフトバンクパブリッシング,2002)などがある.経営ニーズとICT(情報通信技術)の接点において,ICT活用の立場から研究,教育,社会還元を行うことが,理工系大学における経営工学というビジネス系の専攻に所属するものの使命であると考えている.
11:35-12:55
セッション3 「動的な構造の表現−ビジネスダイナミクス」
内野 明(専修大学 商学部 教授,経営情報学会会員)
講演資料(PDFファイル)
【講演概要】
社会システムにおける複雑な問題は,問題の原因とその結果を分析し,改善のための施策をすればよいわけではない.短期的には狙い通りの結果をもたしたとしても,改善のための何らかのアクションは,長期的には最初に想定した問題構造そのものに影響を与える可能性がある.いわゆるフィードバックがかかる問題を分析しようとしたのがシステムダイナミクス(SD)である.シミュレーション手法としてSDは古典的なものとされる.しかし,SDの開発ツールの普及は,一方で,非常に複雑で大きな問題に対して,集団意思決定支援,グループモデルビルディングの一連のツールとして有効に機能可能となった.もう一方で,限定された範囲の問題を的確モデルとして表現し,手際よく動くモデルを生み出すことを可能としてきた.本講においては,動的な構造の表現として,SDを利用したビジネスダイナミクスについて,何が可能であるのか,どのような可能性があるのか,特に企業情報システムとも関連づけながら事例を踏まえて解説する.
【略歴】1981年横浜国立大学大学院経営学研究科修了.横浜商科大学助手等を経て1990年専修大学へ.95年より現職.専門は経営科学と経営情報システム.院生の時代企業モデル作成のためSDに出会い以後長くかかわってきた.また,マネジメントのサイドから企業情報システムについても研究.経営情報学会理事.SD学会日本支部理事.共編著;『ビジネスチェンジ』(同文舘)共著;例解構造化COBOL(実教出版)他.
12:55-13:55
お昼休み
13:55-15:15
セッション4  「ソフトシステム方法論(SSM)」
吉田 武稔(北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科,経営情報学会会員)
 
【講演資料(PDFファイル)】
【講演概要】
組織変革のための行為をいかに導出するのか.そのような行為を導出するための方法論としてソフトシステム方法論がある.この方法論は1970年代にアクション・リサーチの考え方から生まれ,「行為からの学習」を基本形とし,決定された行為の実践を通して方法論自体も自省により変化させていく学習プロセスである.この一部として行為を決定するための7つの活動ステージを提示している.各々のステージの活動と成果物は規定されており,その成果物が次のステージの入力情報となり,最終目的である実践のための行為が決定される.この行為決定プロセスが7つのステージに分けられているために,方法論適用の形式的な手順は明確になっている.本講演では,より本質的な行為を創り出すために,7つのステージの連関を「暗黙的に知る(tacit knowing)」という観点から説明する.そして組織的知識創造プロセスにSSMを埋め込み,SSMが学習プロセスというだけではなく組織的知識創造プロセスであることを示す.
【略歴】1955年熊本県生,1979年工学院大学工学部機械工学科卒業,1981年同大学院機械工学専攻修士課程修了,1984年Case Western Reserve Univ. システム工学科博士課程修了(Ph.D.),1985年1月から1997年3月まで日本アイ・ビー・エム勤務.その間,基礎研究部門及び営業部門に所属.1997年4月北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科助教授,2003年4月より同教授.現在は医療情報システム及びシステム方法論に関する研究に従事.
15:30-16:50
セッション5 「概念データモデルとSSM」
杉野 周(明治大学 教授,経営情報学会会員) 
【講演資料:事情によりweb上には掲載いたしません(当日配布資料に掲載致します)。】
【講演概要】
SSMとデータ・モデリングというシステムズ・アプローチの手法であり,共にプロセス・コンサルテーションのツールとして使われるの2つの手法を,明治大学のビジネス・スクールであるグローバルビジネス研究科で実施している.SSMはアクション・ラーニングの演習としてブレークスルーの体験をさせるために行っている.データ・モデリングは,情報システムの演習として,ビジネスのモデルを把握させる為の実習として行っている.二つの手法の履修生はほぼ同じであるため,同一テーマについて2つの手法で実習を行いその結果を比較するという事も行った.新ビジネスの検討というテーマで2つの手法を使った結果,2つの手法共成果は出ているが,今回はその手法の特徴と適用領域および従来想定されていなかった領域への適用についてビジネススクールでの体験を踏まえて報告する.
【略歴】明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 教授.コスモエイティ(現セコム情報システム),セコム等を経て九州国際大学経済学部教授(経営システム工学担当).2004年から明治大学で新設されたグローバルビジネス研究科に移籍し,「ナレッジマネジメント」,「情報システム」を担当.
16:50-17:00 まとめ