平成11年度フォーラム候補
3.1 インターネット放送とホームネットワークの研究
【背景】
2000年にはISDBと呼ばれる統合デジタル放送サービスが始まり、視聴者により多様なサービスをフレキシブルに提供しようとしている。
一方、Webを中心としてインターネットは爆発的に普及し、次世代の超高速インターネット(NGI)では、これまでテレビなどによっていた動画配信も容易になる。両者はコストや利用対象などの違いからそれぞれ別々に発展してきているが、近い将来それぞれがシームレスに乗り入れる利用が考えられる。
ISDBの機能の一部として、ホームサーバ機能が検討されている。ホームサーバと受信機とはIEEE1394インターフェースで接続することが検討されているが、このインターフェースを含めいくつかの規格がホームネットワークの規格として検討されている。将来、家庭まで引き込まれたファイバーとホームネットワークとは接続されることが容易に想像され、一般家庭からNGIの利用が普通になることが予想される。また、放送とNGIとの“相互乗り入れ”もこうしたホームネットワーク機能から実現する可能性がある。
【施策】
インターネットでのリアルタイム配信に必要とされる技術的な要件や課金方法、さらに、双方向性を持つインターネットの特徴を生かしたサービスの検討と実現するために必要とされる諸条件を検討するフォーラムを本委員会のもとに設立する。
具体的には、
−従来からの放送とインターネット放送の役割分担
−1対多の映像音声データ伝送に関する技術要件
−双方向性を生かしたサービスやアプリケーション、課金の検討とそれらを実現する技術要件
などを検討する。
【実施計画】
メンバー員の発表・討論を通じて実現する。“マルチメディア通信と分散処理研究会”と領域は一部重複するが、適宜連携をとりつつ、インターネット放送の切り口から研究を行う。情報処理学会全国大会等の特別セッション、学会誌の特集等によりNGIと一般家庭の端末とを結び付けるホームネットワークに関して、学会員の啓蒙をする。
【Chairman候補】
未定。
3.2 インターネットと産業経済の研究
【背景と趣旨】
インターネット技術とその社会利用は日本および世界の産業、経済に大きな影響を与えつつある。しかしながら、従来の単体機器・システムの経済的効果を基本にしただけでは、インターネットの健全な発展に結びつけることはできない。特に通信インフラ部分はその傾向が強く、従来的施策、政策が日本の成長を阻害していると云っても過言ではない。
例えば、現在、利用者が支払うインターネット接続費用の大部分は通信インフラの利用料であり、低料金で使い放題の米国に比ぶべくもない。一方、全国的に敷設された光ファイバの一部は利用されない状況にある。
今後、WDM技術の進展につれて更に余剰感が強まると予想される。従って、適切な施策により、基幹網部分の利用料は大幅に低減することが期待される。しかし、利用者からAccess
Pointまでの所謂アクセスラインは、利用料低減の決定的な打開策が現時点では見当たらず、依然として問題であることには変わりない。
何れにせよ、これらの課題解決には発想の転換が必須であり、同時に弱者保護ないし通信の機会平等を如何に実現するかをも考慮しなければならない。
【施策】
社会的通信インフラに相応しいNGIを念頭においた制度および仕掛を検討する。
具体的には、
−諸外国における低利用料金提供のための仕組み
−現行インターネットのコスト構造
−インターネット利用料金低減のためのコストモデル
−それを踏まえた健全な政府支援の在り方
(投入費用の社会的回収方法と経常的費用負担の形態を含む)
−社会的平等の施策
を調査分析および検討し、それらを基に政策提言などを行う。
【実施計画】
上記課題に関心を持つ会員よりなるフォーラムを組織する。
参加メンバは、上記および関連事項について調査分析、施策提案を行う。研究は主にメンバ員の発表を通じて実行する。
【Chairman候補】
本田委員(NEC)。
3.3 VRコンテンツ・ネットワーキングの促進
【背景および趣旨】
次世代インターネットに見られる高速な情報流通基盤が整うと、今までコスト的には見合わなかったコンテンツの流通がとりわけ重要になる。 特に、情報化社会を豊かにしていく教育、文化の分野でのコンテンツ作成、蓄積、上映、再利用を可能にする仕組みが重要となる。
【施策】
VRやCGのコンテンツ作成、蓄積、上映、再利用を活発にするためのフォーラムを本委員会のもとに設置する。
具体的には、
−ユーザの教育、先端的な設備(NGI+スタジオ+シアター)の構築と提供に向けた産学官の仕組み作り −普及にあたっての講演会やシンポジュームなどの開催
−コンテンツを作成するクリエータの育成と支援のためのコンテスト(設備を提供)の開催 −作成されたコンテンツを蓄積し、シアターで上映したり、再利用できる仕組み
を検討する。
【実施計画】
講演会、シンポジューム(年に2回程度)、学会誌での特集の企画を他の研究会と共催する。具体的な実験システムの提案と遂行は、システムのプロトタイプを参加企業や大学に設置して、これを相互に接続する。具体的なコンテンツを作成してもらい評価を行うコンテンツ作成コンテストを開催し、表彰する。応募作品は基本的に、再利用可能なコンテンツとして蓄積し、教育や研究目的では自由に流通できる著作権の一部制限(フリーコンテンツ化)を行う。
【Chairman候補】
原田協力委員。
今後更に検討するテーマ
平成11年度のフォーラムは、上記提言の3テーマのほかに、下記のテーマについても候補とするかどうか、今後さらに検討を続行する。
4.1 QoS保証技術実証環境の構築と研究
【背景および趣旨】
IPネットワークの利用は劇的な拡大を続けているが、IPネットワーク上のQoS保証、セキュリティ保証、或いはサービス間連技術の開発が追いついていない状況にある。このような状況の中で、IETF、IEEE、ITU-T等の国際標準化団体がポリシーベースのQoS保証、セキュリティ保証、等に関する標準化を推進中であり、国内外の関連装置メーカはそれらの国際標準技術の開発及びそれらを用いた新製品を競って開発しつつある。これらの新技術や新製品の開発にあたっては、個別の技術や機器の開発は、個別企業で可能であるが、各種機器間の連携動作を確認するための実証実験は、一企業では困難である。
米国では、新技術、機器、サービスの実証実験に関しては、政府が音頭を取ってテストベッドを設置・運営している。国内でもこのようなテストベッドを運営し、最先端技術開発の検証が容易に可能な環境を提供することが必要である。
【施策】
関心を持つ参加企業、学術研究機関よりなるフォーラムを設置する。
具体的には、
−参加企業及び学術研究機関は、必要機器・ネットワークを提供し、実証実験環境を作る。
−研究場所は個別企業及び学術研究機関の研究開発機関をネットワークで接続し、実験する。
−適正な、効率の良い運用を図るために、運用委員会を設ける。
−ネットワーク構築運用の基盤資金には巨額の投資が必要なため、国家資金の継続的投入を期待する。
−時期を見て、米国及び欧州の同様な機関との連携を図り、世界的な共同開発・実証実験を可能にする。
【検討課題】
テストベッドによる実証実験を行うフォーラムを検討したが、WIDE、INTAP等他団体との関係、実用的なアプリケーションの想定、キャリアの動向など未検討事項がある。
【検討取り纏め委員】
中根委員(日立)
4.2 NGI促進施策検討
【背景および趣旨】
日本におけるネットワーク基盤の整備は、産学での研究開発に加えて、官庁の施策がとられはじめている。特に平成10年度は、一般予算に加えて補正予算として、通産省、郵政省、文部省などの省庁で各種プロジェクトが推進されている。ところが、横通しでの情報交換や推進は十分ではないのが現状のように思われる。
情報処理学会として、次世代インターネットに関連する講演会やシンポジュームなどを開催し、先進国である米国との情報交換、国内の産学官の横通しでの情報交換を行い、NGI促進施策を検討する。
【施策】
特別な研究会やフォーラムは設けず、NGI委員会が講演会、シンポジューム、学会誌での特集を企画する。
講演会/シンポジュームの費用は基本的には参加費とし、一部企業などの協賛費も募る。
【検討課題】
講演会、シンポジウムなどこれまでのような手段に加え、インターネットの利用を含め、新しいアイデアの創出を期待する。
【検討取り纏め委員】
西野委員(富士通)
4.3 NGIにおけるデジタルコンテンツ流通の検討
【背景および趣旨】
NGIではインターネットの大幅な高速化、大容量化が実現し、また低料金化による一般家庭への普及が一層進む事が考えられる。それに伴い、現在流通しているCD、
DVD、などのデジタルコンテンツを始め、写真、映像などのコンテンツがNGIネットワークによる流通に変わっていくことも想定される。
その時に流通を促進する為の条件、問題点等を探り、デジタルコンテンツのネットワーク流通につき、世界の潮流に遅れる事なく実現していくことが必要である。
【施策】
検討結果を報告書にまとめ、発表の場をとおし専門家との意見交換を行う。 その結果を加味し「国や民間が解決すべきデジタルコンテンツの流通に関する課題と施策」として提言へとつなげる。
報告書の項目
- マルチメディアとデジタルコンテンツの動向
- デジタルコンテンツビジネス種類と規模の現状と予測
- デジタルコンテンツビジネス流通の為のNGIネットワークインフラ条件
- デジタルコンテンツ流通モデルの課題と提言
【検討課題】
音楽などのデジタルコンテンツがすでに立ち上がろうとしている現在、この早い変化に追従し、リードができる検討形態が必要である。
【検討取り纏め委員】
小笠原委員(東芝)
4.4 超高速インターネットおよび次世代アプリケーションに関する研究
【背景および趣旨】
米国Internet2プロジェクトは米国のUCAIDという組織により運営されており、UCAIDは、
- 2.5Gbpsベースのインターネットバックボーンの構築・運用のとりまとめ
- インターネット上のビデオ転送などの各種アプリケーションのトライアルの取りまとめ
- QoS保証通信、ネットワーク管理ほかネットワーク技術トライアルの取りまとめ
を行っている。具体的な作業は、Internet2プロジェクトに参加する企業や大学の技術者、研究者が行っており、UCAIDがその取りまとめをすることにより、複数の企業や大学が共同トライアルに参加し、全米に広がった広帯域インターネットバックボーンを用いた実験評価を行うことが可能となっている。複数の研究者が共同で研究を行うことにより、さらに次のステップの研究テーマを発掘することが可能となると思わる。
このような活動を、日本でかつ情報処理学会を中心として行い、日本の広帯域インターネットおよびその上の次世代アプリケーションに関する共通の議論の場を提供する。
【施策】
超高速インターネットおよび次世代アプリケーションについて議論する研究会を設ける。
アプリケーションの技術者とネットワークの技術者が相互に意見交換ができる場を提供する。
同様なフィールドの研究者に、共同研究を行うことをすすめる。
2.5Gbpsや10Gbpsのインタフェースを持つルータを複数台組み合わせた擬似ネットワークを構築する。
【検討課題】
国の施策との関連の整理、具体的な方法の検討。
【検討取り纏め委員】
加藤委員(KDD研究所)