情報処理学会ホームに戻る
最終更新日:2003.11.28

平成14年度功績賞受賞者の紹介

(会員番号順)

 

本会では情報処理学会創立25周年を記念し,わが国コンピュータ分野の草分けとして今日の情報処理の基礎を築いた先覚者7名を特別功績賞として表彰しました(昭和59年度の表彰としています).この賞の実施を機に,昭和60年度から功績賞が創設され,情報処理に関し特別の功労があり,その業績が顕著なものに対し授与されることとなりました.

本年度の受賞者は第484回理事会(平成15年3月)の承認を得て,下記の2君に決定されました.なお,本会表彰規程により,5月20日に開催された第45回通常総会において,受賞者に表彰状および賞牌が授与されました.



米田 英一

米田 英一 君(よねだ えいいち)

 

米田英一君の情報処理分野における功績は次の通りであります.すなわち同君は40余年の永きにわたり,計算機を利用した数値解析,システム・インテグレーションの方法論開発に関与し,また一方情報技術教育の分野においてはその重大性を訴え続け,学界,産業界において,当該分野の地位確立に献身的に努力してこられました.

さらに情報技術分野での企業倫理に関しては,健全な信念を常に主張し,その重要性を絶えず啓蒙し続けるなど,類い稀な多くの業績を積まれました.

同君は1959年(昭和34年),東京大学理学部数学科を卒業,直ちに東京芝浦電気(株)(現(株)東芝)に入社して以来,情報システム,電子計算機システム一筋の道を歩まれました.電算機OAシステム担当技師長を経て,1989年,システム・インテグレーション開発部長,1995年役員待遇という経歴を重ね,とりわけ,TSSとマルチプロセッサシステムを日本で初期に実現されました.大型計算機の利用方法におけるこれらの成果は,情報システムを構築する重要な技術としてあまねく利用され,日本の情報化社会発展のための欠かせない技術の1つとなっております.開発のみならず,東芝のシステム・インテグレーション部門の総責任者としても,そのなみなみならぬ能力と経験を発揮され,社会に必要な数々のシステムを世に出してこられました.

学会運営の面では,本学会の会誌編集委員,創立30周年記念事業運営委員,情報処理学会倫理綱領調査委員,理事,監事などの要職を歴任され,現在では著作権委員,アクレディテーション委員,フェローとして学会の発展に寄与されています.

倫理面での貢献は格段に顕著であり,1994年にIFIPの働きかけに呼応して情報処理学会の倫理綱領制定を提案し,「情報処理学会倫理綱領調査委員会」設立や,同委員会での倫理綱領とりまとめなどに主導的役割を果たし,綱領制定に大きな貢献をされました.さらに,情報技術教育への関心もことのほか高く,この分野における貢献も目覚ましく,JABEE(日本技術者教育認定機構)設立準備委員会委員として,透明性の高い運営組織実現に尽力されました.同機構発足以降,本学会を代表して運営委員会に参加し,認定基準の提案,意見陳述を数多く行いました.現在では,情報処理学会アクレディテーション委員会副委員長,JABEE運営委員会(情報処理学会代表)委員として活躍されております.また,通産省情報処理技術者試験専門委員会の主査を務めるなど,国の委員会委員なども多数歴任され,情報技術界の教育・企業倫理面で大きな貢献を果たしておられます.

上述の如く,米田英一君は我が国の情報処理,情報技術教育,企業倫理分野の発展に終始尽力され,その功績誠に顕著というべきであります.


村岡 洋一

村岡 洋一 君(むらおか よういち)

 

村岡洋一君は,永年にわたって,並列コンピューティングの研究開発に携わってこられ,数々の優れた業績をあげられました.すなわち,イリノイ大学でのIlliac-IVソフトウェア開発時におけるループ並列実行のための自動並列化アルゴリズムに関する先駆的研究,日本電信電話公社電気通信研究所でのデータ通信システムDIPSのソフトウェア(OS)および方式設計の研究および実用化,分散する複数のコンピュータをあたかも1つのコンピュータであるかのように利用するメタコンピュータ概念の提唱とそのための分散・並列化コンパイラの開発,世界初のWebページ分散収集型ロボットの開発,Grid上でオブジェクトの動的移動を可能とする世界初のアルゴリズムの考案・実装など,枚挙に事欠きません.

さらに,学界,官界と連係し,今日の情報化時代を支える並列コンピューティングとそのネットワーク・マルチメディアへの応用に関して日本の先進的技術を世界に示すとともに,日本の情報処理技術の向上に大きく貢献されました.また,早稲田大学における研究活動,並列コンピューティングに関する著作活動を通して,情報処理分野における多くの優れた人材の育成に多大な貢献をされました.

以上に加えて,本学会の副会長・理事として学会の発展に寄与するとともに,国の審議会・委員会委員を多数歴任し,多くの国際会議・国際論文誌の実行委員・編集委員を務めるなど,国内外において大きな成果をあげられました.

このように,我が国の情報処理分野の発展に尽くされた功績は誠に顕著であります.