平成15年度研究開発奨励賞の表彰

原　隆浩　君（正会員）

「高度ネットワーク環境におけるデータベースシステム構築技術に関
する研究」

　1995年大阪大学工学部情報システム工学科卒業．1997年同大学院工学研究科博士前期課程修了．同年，同大学院工学研究科博士後期課程中退後，同大学院工学研究科情報システム工学専攻助手，2002年より同大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻助手となり，現在に至る．工学博士．1996年本学会山下記念研究賞，2000年電気通信普及財団テレコムシステム技術賞，2002年FITヤングリサーチャ賞各受賞．データベースシステム，分散処理の研究に従事．IEEE， 電子情報通信学会，日本データベース学会の各会員．

[推薦理由]
　原隆浩君は，ネットワーク環境における分散データベースシステムに関して積極的に研究開発を推進しており，国内外で高い評価を受けている．特に，近年急速に普及しつつあるギガビットオーダの広帯域ネットワークや，無線通信技術の発展に伴って普及しつつあるディジタル放送環境，モバイルネットワークなどの高度ネットワーク環境において，これらの環境に適したデータベーシステム構築技術の研究開発に従事している．その成果は，データベース分野における先駆的研究として世界的にも高く評価されており，今後一層の活躍が期待される．

菊池　浩明 君（正会員）

「プライバシー保護技術の研究開発」

　1988明治大学工学部電子通信工学科卒．1990同大学博士前期課程修了．
1990年(株)富士通研究所入社．1994年東海大学工学部電気工学科助手．
1995年同専任講師．1999同助教授．1997年カーネギーメロン大学計算機 科学学部客員. 2000年電子情報学部情報メディア学科助教授，現在に至る．
博士（工学）．

[推薦理由]
　 商取引，住民票管理，投票，入札など多くの社会的行動が電子化されつつある一方で，電子化された個人情報の漏洩や利用者に同意を得ることないデータ解析の危険性が深刻になってきている．菊池浩明君は，電子メールのプライバシー保護ソフトウェアの開発，インターネットでの認証局の構築，入札値を秘匿したまま落札者を公平に導出する電子入札システム，電子投票システムなどの実装に従事してきた．理論の提案だけではなく，システム試作に基づいたパフォーマンスの評価値は信頼性が高く有益であり，より現実的なプライバシー保護技術を目指す同分野への貢献が認められる．

松原　繁夫 君（正会員）

「電子商取引のためのメカニズム設計に関する研究」

　1990年京都大学工学部精密工学科卒業，1992年同大学院工学研究科精密工学専攻修士課程修了．同年日本電信電話（株）に入社．2002年より2003年まで， University of California, Berkeley客員研究員．現在，ＮＴＴコミュニケーション科学基礎研究所勤務．分散人工知能，マルチエージェントシステムの研究に従事．計算機科学と経済学の接点に興味をもつ．博士（情報学）．1999年度人工知能学会全国大会優秀論文賞受賞．2002年度人工知能学会論文賞受賞．
人工知能学会，日本ソフトウェア科学会会員．

[推薦理由]
　 松原繁夫君は，電子商取引で生じる広範な問題に対して，効率性と安全性を 両立するメカニズムを考案してきた．価格決定や商品の割当てから，商品と代 金の交換の過程に至るまで，様々な場面においてインターネット上で生じうる 詐欺行為に頑健な取引メカニズムを設計するという一連の研究は高い評価を受 けている．問題や解法への着眼は独創的で，ゲーム理論に基づいた解析により 性能に理論的な保証を与えており，エージェントが媒介する次世代の電子商取 引の実現に寄与するものである．これは，計算機科学と経済学の境界領域を拓 く試みの一つであり，今後一層の活躍が期待できる．