神山 剛 (株)NTTドコモ |
[背景]スマートフォンの電池持ち時間改善への要望
[問題]サービス開発時に想定できない実際の電池持ち時間
[貢献]実利用時の省電力化を実現するための方法論
[問題]サービス開発時に想定できない実際の電池持ち時間
[貢献]実利用時の省電力化を実現するための方法論
近年,スマートフォンはモバイル無線通信技術とともにハード・ソフト両面で進化・普及し,モバイルコンピューティングの中核的な役割を担うようになった.また,個人でもアプリを開発する環境が整備され,従来よりも多種多様な用途のアプリが利用可能になったことで,ユーザは生活のさまざまなシーンにおいて,各自の目的や趣味嗜好にあったサービスを幅広く選択できるようになった.
このようなスマートフォンおよびサービスの進化の一方で,端末の電池持ち時間の改善が強く要望されるようになり,ユーザにとって電池持ち時間は端末機種やサービスを選択する上で重要な判断材料の一つになっている.
しかし,実際の電池持ち時間は,端末のスペックだけでなく,ユーザが使用するアプリ,さらにはその使い方にも依存する.このため,真に効果のある改善を行うためには,実際のユーザの利用実態をも考慮し,問題の分析と改善を検討する必要があるが,端末やアプリなども含めた従来のサービス開発には以下の問題がある.
1)実測する以外に端末消費電力を定量的に分析する手段がない
2)開発時に想定できるユーザ利用シナリオは限定的である
そこで本研究では,実際のサービス利用における端末省電力化を実現するため,ハードウェアからユーザレベルまで統合的に分析可能な手法を実現することを目的とし,以下の課題解決に取り組んだ.
1)端末消費電力の推定技術とアプリ開発者にも利用可能な端末消費電力の評価ツールの提供
2)ユーザ実利用シナリオを考慮した評価に利用可能な根拠データの提供
本研究の成果は以下の通りである.
このようなスマートフォンおよびサービスの進化の一方で,端末の電池持ち時間の改善が強く要望されるようになり,ユーザにとって電池持ち時間は端末機種やサービスを選択する上で重要な判断材料の一つになっている.
しかし,実際の電池持ち時間は,端末のスペックだけでなく,ユーザが使用するアプリ,さらにはその使い方にも依存する.このため,真に効果のある改善を行うためには,実際のユーザの利用実態をも考慮し,問題の分析と改善を検討する必要があるが,端末やアプリなども含めた従来のサービス開発には以下の問題がある.
1)実測する以外に端末消費電力を定量的に分析する手段がない
2)開発時に想定できるユーザ利用シナリオは限定的である
そこで本研究では,実際のサービス利用における端末省電力化を実現するため,ハードウェアからユーザレベルまで統合的に分析可能な手法を実現することを目的とし,以下の課題解決に取り組んだ.
1)端末消費電力の推定技術とアプリ開発者にも利用可能な端末消費電力の評価ツールの提供
2)ユーザ実利用シナリオを考慮した評価に利用可能な根拠データの提供
本研究の成果は以下の通りである.
1. スマートフォンを構成する各ハードウェアコンポーネントの特性と消費電力の関係から生成した端末の消費電力モデルを用いることで,アプリ消費電力の推定する手法を提案した.また,近年の端末の消費電力を妥当な精度で推定できること,推定に必要なログ収集の負荷が低いことを要件とした評価手法を実現するため,マルチコア CPU やモバイル無線インタフェース とその特徴を考慮したモデル拡張を行った.さらに,本手法に基づいてアプリ消費電力分析ツールを実装し,一般的なアプリ利用のシナリオを対象に10%前後の誤差で電力推定できること,3.8%程度の低いオーバヘッドで電力推定に必要なログ収集が実現できることを確認し,実際のソフトウェア開発において実用的なツールであることを示した.
2. 実際のスマートフォンユーザ約700名に対するアンケート調査と約400名の端末ログ収集調査によるデータを用い,アプリ使用など実際のスマートフォン利用パターンを導出し,パターンごとにその特徴を示すことで,さまざまなサービス企画・研究開発に有益なスマートフォン利用モデルを提案した.クラスタリングによる利用パターン分析の結果,全体的に 6つの利用パターンの存在が確認された.本モデルは,1日単位のスマートフォン利用を,ユーザ属性やアプリ使用傾向などの特徴を定量的に示すものであり,たとえば何らかの実機を用いた効果検証において端末にインストールすべきアプリなど,実験環境のセットアップに活用できるデータであると考える.
2. 実際のスマートフォンユーザ約700名に対するアンケート調査と約400名の端末ログ収集調査によるデータを用い,アプリ使用など実際のスマートフォン利用パターンを導出し,パターンごとにその特徴を示すことで,さまざまなサービス企画・研究開発に有益なスマートフォン利用モデルを提案した.クラスタリングによる利用パターン分析の結果,全体的に 6つの利用パターンの存在が確認された.本モデルは,1日単位のスマートフォン利用を,ユーザ属性やアプリ使用傾向などの特徴を定量的に示すものであり,たとえば何らかの実機を用いた効果検証において端末にインストールすべきアプリなど,実験環境のセットアップに活用できるデータであると考える.

(2018年5月30日受付)