A Study on Interactions for User-centered Web Search

(邦訳:ユーザ主導型Web検索のためのインタラクションに関する研究)

山本 岳洋

京都大学大学院 情報学研究科 特定研究員


[背景]多様化する検索エンジンとユーザの情報要求
[問題]情報探索促進のためのインタラクション技術
[貢献]ユーザ主導の情報検索を実現するインタラクション手法の提案

Web検索エンジンをはじめとし,eコマースサイトやホテル予約サービスと いった各種検索エンジンは人々の生活には欠かせないものとなっている.ウェブ 上のコンテンツの多様化につれて,そうした検索エンジンを利用するユーザの目 的も多様化してきている.たとえば,旅行の計画,新製品の購入,ダイエット方 法の調査といった,目的があまり明確でなかったり,あまり知らなかったりする ような事柄に関する情報の取得のために検索エンジンを利用することも珍しくな い.こうした検索タスクは探索的検索と呼ばれ,ユーザの興味が曖昧で,検索の 最中に興味が移り変わっていくことであるという特徴があることが報告されている.
 
しかし,これまでの古典的な情報検索では,ユーザが検索エンジンに投入したク エリと検索対象文書の関係のみが研究対象とされていた.今後は,ユーザの移り 変わる興味をどのように扱いながら,ユーザが検索エンジンとインタラクション していくべきかという視点から情報検索を考えていくことが不可欠であると考え ている.そこで,本論文では,ユーザが能動的に自らの移り変わる興味に従って 情報を探索するための,ユーザ主導のインタラクション技術に関する実現,検証 を行った.具体的には以下の3つの研究課題について取り組んだ.
 
1つ目の研究課題では,語ベースフィードバックに基づくWeb検索結果の動的 な再ランキングを可能とするインタラクションを実現した.提案システムでは, ユーザは上昇操作,下降操作の2種類の操作を用いて検索結果ページに対して直 接働きかけることで,自らの移り変わる興味に従ってウェブ検索結果を再ランキ ングすることができる.本研究ではシステムの有用性を評価するため,実際にプ ロトタイプシステム「Rerank」を実現し,図に示すように,Yahoo!Japanと共同 で実証実験を行うことで,多くの一般ユーザにシステムを利用してもらい,ユー ザが提案インタラクションをどのように利用するのかを分析した.
 
2つ目の研究課題では1つめの課題を発展させ,検索エンジンの種類に依らない再 ランキングシステム「RerankEverything」の提案,評価に取り組んだ.提案シス テムは動的な構造抽出手法とユーザのインタラクションを組み合わせることで, 検索エンジンの種類によらず任意の検索システムの検索結果を自由に再ランキン グ可能なシステムである.
 
そして,3つ目の課題としてユーザのWeb検索を支援するため,「有名な観光 地」や「美味しい和菓子」といった「修飾語付き観点」に着目し,そのような観 点をコミュニティ型のQ&Aコンテンツから抽出しランキングする手法を実現した.
 
本論文では,こうしたインタラクション技術を通して,ユーザがこれまで以上に 検索プロセスに密接に関与するような仕組みの実現に取り組んだ.
 
 
 (2012年8月31日受付)
 
取得年月日:2011年9月
学位種別 :博士(情報学)
大  学 :京都大学

推薦文:(情報基礎とアクセス技術研究会)


古典的情報検索が情報要求と文書との関係を扱うものであったのに対し,21世紀になりHuman Computer Information Retrievalの研究が盛んになってきた.本研究はこの新しい分野への貢献として,ユーザがどのように検索システムとインタラクションしながら情報を閲覧していくかという観点から,新しいインタラクション技術を提案しており興味深い.

著者からの一言


指導教官をはじめとして,数え切れない方々の支援のおかげで取り組むことができた研究でした.これからも,お世話になった方々に感謝しながら研究に邁進したいと思います.