安部 惠一 浜松職業能力開発短期大学校 電子情報技術科 准教授 |
[背景]人々のライフスタイルの変化と(に伴う)エネルギー消費の継続的な増加
[問題]Home Energy Management System(HEMS)技術の普及
[貢献]HEMSの導入コスト削減・訴求性向上とシステムの省電力化・小型化の実現
温室効果ガスの削減及び化石燃料の使用合理の観点から省エネルギー対策の強化が求められている.人々の生活が快適さや豊かさを求めるライフスタイルへと変化し,民生部門では電気などのエネルギー消費が継続的に増加傾向にある.このような背景から住宅の省エネルギー対策としてICT(Information and Communication Technology)技術を活用してエネルギーの使用状況を実時間で表示したり,室内状況に応じて家電機器などを自動制御したりするHEMS(Home Energy Management System)技術の普及が望まれているが,一般家庭にHEMSを普及させるには数多くの課題が存在する.過去のHEMSの先行研究報告からHEMS普及のための重点課題を整理すると,以下の4点が挙げられる.
(1)HEMS導入時の初期コスト
(2)省エネ情報の訴求力向上
(3)システム自体の省電力化
(4)システムの小型化
本研究ではこれらの4点の重点課題を解決することを目的にHEMS研究及び開発を進めた.
本研究では,重点課題(1)と重点課題(2)の両者を解決する手法として,まず省電力無線(ZigBee/ IEEE802.15.4規格)センサネットワークを用いたスマートタップ型表示系HEMSの開発を行った(図1).我々が開発したスマートタップを表示系HEMSに用いることで,従来の表示系HEMSよりも導入コスト(機器費用,工事費用を含む)の削減を実現できる.また従来の表示系HEMS研究では家庭内の電力消費情報のみの取得システムであったため,利用者側でムダな電気であるかを判断するには利用者にある程度の省エネ知識を有していなければならないという課題があった.そこで,本研究のHEMSでは電力消費情報と住環境情報を併用取得できるシステムを考案することで,利用者にある程度の省エネ知識を有していなくてもムダな電気を判断でき,かつ具体的な省エネ対策を発見できるシステムの開発を行った.本研究が提案するHEMSのプロトタイプを実際に開発し,実証実験により省エネ効果など各種評価したところ,従来の表示系HEMSよりも本提案手法のHEMSの方が有効的であることを示すことができた.

図1 スマートタップ型表示系HEMSの概要
次に重点課題(3)と重点課題(4)の両者を解決する手法としては,本研究が提案するスマートタップ型表示系HEMSで使用する無線センサノードの小型・低消費電力化を行うことで,最終的にHEMS全体の低消費電力に繋がる手法を考案した.本研究では無線センサノード自体の低消費電力手法として,無線センサノードの待機時消費電力の低減手法を考案し,実際にプロトタイプの開発,実装及び検証評価した.その結果,一台当たりの無線センサノードの平均消費電力は最大約25μW以下まで省電力化できることを確認した.
本研究成果により,HEMS普及の重点課題解決に繋がる要素技術を提示できたと云える.また提示した無線センサノードの低消費電力化手法を応用すればバッテリレス無線センサネットワークの実現する要素技術になりうるものと考えられる.
(2012年8月24日受付)