メディアアート

第5回:メディアアート

 

日  時 :
2016年11月15日(火)
会  場 :
【本会場】化学会館7F(東京都千代田区)
【遠隔会場】大阪大学中之島センター7F 講義室702(大阪市北区)
受付時間 :
9:30~

 

オープニング[10:00~10:10]

科学技術の我々の社会・生活への影響は計り知れず、その対象は、物質的なものにとどまらず、精神的な範疇にまで及んでいます。その中でも「人の心に訴える、感動を想起する」ことをダイレクトに目指した『メディアアート』と呼ばれるITとアートの複合芸術領域が存在します。本連続セミナーでは、メディアアート創成以来からの変遷、今後の姿について、第一線の専門家を招いて、読み解いていきます。メディアアートにはいくつかの切り口がありますが、今回、それぞれの切り口で極めて多忙な日々を送られている講演者をお迎えいたします。それぞれの講演が魅力的であることはいうまでもありません。第一線で活躍されている方が一斉に集うことによって成立する『化学反応』をお楽しみいただきたいと思います。

片寄 晴弘様 コーディネータ:片寄 晴弘(関西学院大学 理工学部(人間システム工学科) 教授)
【略歴】1986年大阪大学基礎工学部卒業。1998年同大学院博士前期課程修了、1991年同博士後期課程修了。工学博士。オージス総研、イメージ情報科学研究所、和歌山大学を経て、2002年関西学院大学理工学部助教授、2003年より現職。2003年本会論文誌「音楽情報科学特集号」、2008年本会論文誌「エンタテインメントコンピューティング特集号」ゲストエディタ。2003年-2004年本会音楽情報科学研究会主査。2014年-2016年本会メディア知能情報(MI)領域担当理事。2005年-2010年JST CREST「CrestMuseプロジェクト」研究代表者。

セッション1[10:10~11:10]

メディアアートの変遷と展望-アイデアの外在化、ミュージアムにおける試み

視覚的にはピンホールカメラから複合現実感をともなう全天周映像まで、機能拡張される五感によって世界をとらえようとする試みは、果てしなく拡がっていくように見えます。特に20世紀の半ば以降、もともと「ars」という名のもとに一つであった科学技術と芸術とが、さまざまな局面において重層的に交錯し、広汎な流れを形づくるのを私たちは目にしてきました。かつて『メディアアート』と呼ばれる複合的な芸術領域を取り扱うミュージアムの創設に携わり、そこで展開された多様な展示・展示支援の試みを紹介しながら、この領域が日本においてどのように隆盛を迎え、活況を見せた末に「真に普及した」のか、アイデアの外在化・情報提示の手段としても有効なこの領域にこれから求められるものは何なのかを考えます。

森山 朋絵様 講師:森山 朋絵(公益財団法人 東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 企画係主任)
【略歴】メディアアートキュレーター、東京都現代美術館学芸員。1989年より学芸員として東京都写真美術館の創立に携わり、東京大学・早稲田大学、バウハウス大学、UCLA他で教鞭を執りつつ国内外で多数のメディアアート/現代美術展を企画、2007年より現職。Prix Ars Electronica審査員、SIGGRAPH Asia2008 Art Gallery/E-tech議長、NHK日本賞審査員などを歴任。J.P.ゲッティ研究所、ZKM、MITメディアラボ等の海外機関での研究や文化審議会専門部会委員などの活動を通して、メディア芸術拠点としての公立文化施設の成立と展開、テクノロジーと芸術の協働や展示支援をテーマに研究と実践を行う。

セッション2[11:20~12:20]

オープンカルチャーにおけるメディアアートの広がり

近年、3Dプリンタやレーザーカッターなどの個人用工作機械が広がり、ある程度その規格が標準化されつつあること、また3Dデータのデファクトスタンダードが整備されつつあること、そしてそれらの技術を市民が自由に使えるファブラボの登場などを背景に、インターネット上で自由に「ものの設計図」や「デザイン」を共有しようとする「オープンデザイン」や「オープンソースハードウェア」の潮流が表れている。ソフトウェアやコンテンツのみならず、物質的な「もの」もオープンに共有できるとはどういうことなのか、実際に開発中のシステムFabble(http://fabble.cc)、Fab3D(http://fab3d.cc)、Fabcam(http://fabcam.cc)などを事例に紹介する。

田中 浩也様 講師:田中 浩也(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
【略歴】1975年札幌市生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程(社会基盤工学)修了。2010年マサチューセッツ大学建築学部客員研究員。市民包摂型ものづくり施設「ファブラボ」の日本における発起人であり、2011年には「ファブラボ鎌倉」を設立。2012年慶應義塾大学SFC研究所「ソーシャルファブリケーションラボ」代表。経済産業省「フロンティアメイカーズ育成事業」プロジェクトマネージャ(2014)、総務省「ファブ社会の基盤設計に関する検討会」座長(2015)など。

セッション3[13:25~14:25]

歌声合成技術がもたらした音楽文化の変貌~VOCALOID登場とその後に起こったこと~

歌声合成技術VOCALOIDの登場により、コンシューマレベルでも歌声をいわゆる「打ち込み」で入力することができるようになり、アマチュアでも歌入りの楽曲を「打ち込み」だけで仕上げられるようになってきた。これにより、今までにはなかった新しい音楽表現・文化が生まれてきた。講演では、この流れを振り返り、その意義・意味について考えたい。

剣持秀紀様 講師:剣持 秀紀(ヤマハ株式会社 研究開発統括部新規事業開発部 部長)
【略歴】1993年京都大学大学院工学研究科修士課程修了。ヤマハ株式会社入社。1996年エル・アンド・エイチ・ジャパン株式会社出向。音声合成の技術開発に従事。1999年ヤマハ株式会社復職。以降VOCALOIDを含む歌声、音声信号処理に関する研究開発および事業化を行ってきた。現在は新規事業開発担当。

セッション4[14:35~15:35]

メディア装置の発明を芸術へと繋げて

インターネット社会は我々の共同幻想を個別の文脈に置き換えていき、我々が持っていた共同幻想や大きな文脈は映像装置に代表されるようなマスメディア文化の衰退とともに縮小している。現在、その意味ではメディアアートの定義や取り組みの例ですらも共通認識を得なくなってきた。その中で、私はメディア装置の発明による芸術の系譜をメディアアートの文脈に接続しようとしている。本講演では計算機と応用物理の組み合わせによる作品群を紹介するとともに上記に挙げたような社会変化、文化の再編についても述べる。我々の計算機文化は二次元イメージを共有することに象徴されるようなイメージ中心・人間中心主義のやり取りを超えて、物質中心・計算機自然主義へとどう変遷するのかを議論していきたい。

落合 陽一様 講師:落合 陽一(筑波大学 図書館情報メディア系 助教 デジタルネイチャー研究室主宰)
【略歴】1987年東京生まれ。メディアアーティスト、筑波大学助教、デジタルネイチャー研究室主宰、VRC理事。筑波大学でメディア芸術を学び東京大学で学際情報学の博士号を取得(学際情報学府初の早期修了者)。2015年より筑波大学に着任。コンピュータと人の新たなる関係性を実証するため実世界志向コンピュータグラフィクスやヒューマンコンピューテーション、アナログとデジタルテクノロジーを混在させたメディアアート表現などを用いて表現活動を行っている。World Technology NetworkよりWorld Technology Award 2015, 情報処理推進機構よりスーパークリエータ/天才プログラマー認定など、受賞歴多数。講演活動や研究のアウトリーチ活動に加え、企業・アーティストとのコラボレーション作品・展示を発表し国内外で注目を集めている。

パネル・ディスカッション[15:45~16:45]

Media Art after/for Singularity

ここ数年来、未来予測 Singularity(人工知能に代表されるテクノロジーの急速な進歩、それにより社会生活が後戻りできないほどに変容してしまうとする予測)が、大きな話題を集めてきた。今年3月、人工知能(AI)「Alpha Go」が世界最強の囲碁棋士を破り、また、AR系ゲーム「Pokemon Go」の世界配信も始まり、遠くない将来に、Singularity以降の社会に突入していくことが実感されはじめている。これまでの歴史を紐解けば、芸術ファッションは、その当時の社会思想・技術と密接な関係を持ち、お互いに影響を与えあって発展してきた状況をうかがい知ることができる。ここでは、SingularityがMedia Art がどのような影響を与えるのか、また、Media Artが、Singularity以降の社会にどのような影響を与えていくのかについて論じてみたい。

片寄 晴弘様 司会:片寄 晴弘(関西学院大学 理工学部(人間システム工学科) 教授)
【略歴】1986年大阪大学基礎工学部卒業。1998年同大学院博士前期課程修了、1991年同博士後期課程修了。工学博士。オージス総研、イメージ情報科学研究所、和歌山大学を経て、2002年関西学院大学理工学部助教授、2003年より現職。2003年本会論文誌「音楽情報科学特集号」、2008年本会論文誌「エンタテインメントコンピューティング特集号」ゲストエディタ。2003年-2004年本会音楽情報科学研究会主査。2014年-2016年本会メディア知能情報(MI)領域担当理事。2005年-2010年JST CREST「CrestMuseプロジェクト」研究代表者。
森山 朋絵様 パネリスト:森山 朋絵(公益財団法人 東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 企画係主任)
【略歴】メディアアートキュレーター、東京都現代美術館学芸員。1989年より学芸員として東京都写真美術館の創立に携わり、東京大学・早稲田大学、バウハウス大学、UCLA他で教鞭を執りつつ国内外で多数のメディアアート/現代美術展を企画、2007年より現職。Prix Ars Electronica審査員、SIGGRAPH Asia2008 Art Gallery/E-tech議長、NHK日本賞審査員などを歴任。J.P.ゲッティ研究所、ZKM、MITメディアラボ等の海外機関での研究や文化審議会専門部会委員などの活動を通して、メディア芸術拠点としての公立文化施設の成立と展開、テクノロジーと芸術の協働や展示支援をテーマに研究と実践を行う。
田中 浩也様 パネリスト:田中 浩也(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
【略歴】1975年札幌市生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程(社会基盤工学)修了。2010年マサチューセッツ大学建築学部客員研究員。市民包摂型ものづくり施設「ファブラボ」の日本における発起人であり、2011年には「ファブラボ鎌倉」を設立。2012年慶應義塾大学SFC研究所「ソーシャルファブリケーションラボ」代表。経済産業省「フロンティアメイカーズ育成事業」プロジェクトマネージャ(2014)、総務省「ファブ社会の基盤設計に関する検討会」座長(2015)など。
剣持秀紀様 パネリスト:剣持 秀紀(ヤマハ株式会社 研究開発統括部新規事業開発部 部長)
【略歴】1993年京都大学大学院工学研究科修士課程修了。ヤマハ株式会社入社。1996年エル・アンド・エイチ・ジャパン株式会社出向。音声合成の技術開発に従事。1999年ヤマハ株式会社復職。以降VOCALOIDを含む歌声、音声信号処理に関する研究開発および事業化を行ってきた。現在は新規事業開発担当。
落合 陽一様 パネリスト:落合 陽一(筑波大学 図書館情報メディア系 助教 デジタルネイチャー研究室主宰)
【略歴】1987年東京生まれ。メディアアーティスト、筑波大学助教、デジタルネイチャー研究室主宰、VRC理事。筑波大学でメディア芸術を学び東京大学で学際情報学の博士号を取得(学際情報学府初の早期修了者)。2015年より筑波大学に着任。コンピュータと人の新たなる関係性を実証するため実世界志向コンピュータグラフィクスやヒューマンコンピューテーション、アナログとデジタルテクノロジーを混在させたメディアアート表現などを用いて表現活動を行っている。World Technology NetworkよりWorld Technology Award 2015, 情報処理推進機構よりスーパークリエータ/天才プログラマー認定など、受賞歴多数。講演活動や研究のアウトリーチ活動に加え、企業・アーティストとのコラボレーション作品・展示を発表し国内外で注目を集めている。