IoT(Internet of Things)は、センサ、スマートデバイス、通信の技術の進化に伴い、モノがつながるという意味を超えて、さまざまな産業に広がろうとしています。そうした中、つながる世界の先にあって創出される価値・サービスの実像は、プロトタイピングを進めながら、明らかにすることが望まれます。本セミナーでは、家庭、社会インフラ、生活コミュニティ、工場生産現場といった様々な分野において実際にIoTを展開されている専門家に、現在行われている国内外の取り組みをお話しいただくとともに、情報通信技術そのものだけでなく、制御、社会インフラ維持等、情報通信技術の外の視点から、IoTの持つ意義を確認しながら、IoTの将来の姿を議論します。
コーディネータ:戸辺 義人(青山学院大学 理工学部情報テクノロジー学科 教授) 【略歴】東京大学電気工学科卒業、同修士課程修了。1986年~1997年、株式会社東芝にてプロセス制御LANの研究開発に従事。2000年博士(政策・メディア)。慶應義塾大学、東京電機大学を経て、2012年から青山学院大学。センサ活用を中心に実フィールドにてセンサネットワーク、ヒューマンプローブの研究に取り組む。 |
IoT、CPSと情報世界と物理世界を結びつける技術が注目されている。制御工学はマイコンが普及した1980年代から電子制御に移行し、この両世界の融合を数十年に渡り模索してきている。特に21世紀になってからはモバイル化、ロボット化、ネットワーク化が進んでいる。その意味で、制御工学はIoTに不可欠なものである。この観点に立って、情報世界と物理世界の融合を論じる。具体的には、情報処理の前後を支え物理世界との接点となるセンサ、アクチュエータを切り口に、情報蓄積、情報通信との関係からCADや三次元地図の話題まで包含して制御とIoTの関係性を考えていく。
講師:新 誠一(電気通信大学 情報理工学研究科知能機械工学専攻 教授) 【略歴】1980年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。同年、同大学工学部計数工学科助手。1987年工学博士(東京大学)。同大学講師を経て、1988年筑波大学電子・情報工学系助教授。1992年東京大学工学部助教授。2001年同大学情報理工学系研究科助教授。2006年電気通信大学教授。計測自動制御学会論文賞竹田賞、技術賞、電気学会優秀技術活動賞技術報告賞、情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ文化賞など受賞。制御理論を中心に広く工学全体に興味を持つ。計測自動制御学会フェロー、元会長。(財)製造科学技術センター評議員。日本能率協会GOOD FACTORY賞審査委員長、共同研究組合制御系セキュリティセンター理事長。 |
街の状況を詳細に把握し、住民の生活品質向上を実現するためには、街そのものを包む空間、そこに住む人、またそこにあるモノの状況を細かくセンシングすることが重要である。藤沢市で進めている清掃車を使ったセンシングや、高齢者を対象とした笑顔SNS、ゴミビッグデータ分析等により、地域やコミュニティのエンハンスメントを目的とした取り組みを紹介し、実証実験を通じて得られた知見について述べる。
講師:中澤 仁(慶應義塾大学 環境情報学部 准教授) 【略歴】2003年慶應義塾大学政策・メディア研究科博士課程修了。博士(政策・メディア)。2013年4月より現職。システムソフトウエア、ミドルウエア、ディペンダブルコンピューティング、ユビキタスコンピューティング等の研究に従事するとともに、スマートシティや健康情報プラットフォーム等の応用研究を実証的に進めている。 |
KDDIとKDDI研究所は、経済産業省が実施する「大規模HEMS情報基盤整備事業」の一環として、2014年9月から2016年3月まで、HEMS(Home Energy Management System)の利活用に関するトライアル事業を実施した。同事業では、KDDIを含む4社を幹事企業とするコンソーシアムが連携して全国約1万4千世帯のモニターに対してHEMSを導入し、各家庭の電力データを一元的にクラウド管理する情報基盤システムを構築した。本講演では、電力データをはじめとするビッグデータを活用した取り組みと、プライバシー保護に関する技術を紹介する。
講師:杉山 敬三(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 適応コミュニケーション研究所 所長) 【略歴】1987年4月国際電信電話株式会社入社。2001年4月株式会社KDDI研究所出向。2011年2月株式会社KDDI研究所執行役員、2016年8月株式会社国際電気通信基礎技術研究所適応コミュニケーション研究所所長、現在に至る。入社以来、OSI(開放型システム間相互接続)プロトコル、EDI(電子データ交換)、ネットワーク管理、ITS(高度道路交通システム)、無線LAN、シームレス通信、ビッグデータ、M2Mの研究に従事。博士(情報学)。 |
我が国では120万キロに及ぶ道路ネットワークを整備し、15m以上の道路橋は約15万にのぼる。補修や詳細調査を適切な水準で実施できていない舗装や橋梁が少なからず存在し、潜在的なリスクとなっている。通行止めや事故に至る事例もある。更に、維持管理費用も大きい。事故・地震・台風等に備えるリスクマネジメントの観点とともに、効率的にインフラ資産を管理するアセットマネジメントの観点からも、確実に管理することが求められる。その鍵を握るのが、膨大なインフラの中から詳細調査や補修の対象、リスクの高いインフラを確実に絞り込むスクリーニング技術である。スマートフォンや無線センサネットワークにより、安価で簡易であり、かつ正確な振動計測を実現し、路面と橋梁の状態をスクリーニングする技術について紹介する。
講師:長山 智則(東京大学 大学院工学系研究科 准教授) 【略歴】2000年東大工(土木)卒。2002年同大学院工学系研究科・社会基盤工学専攻修士課程修了。2007年米国イリノイ大学アーバナシャンペーン校 Ph.D。2006年-2008年東大・工学系研究科・助教。2008年-2014年講師、現在、同大大学院・同研究科・准教授。無線センサネットワークや橋梁振動、路面評価等の研究に従事。2006年米国土木学会Raymond C. Reese Research賞ほか。 |
エンターティンメントではつなぐと何か見えるかもしれないでもよいと思うが、製造現場の改善においてはこうしたいからつなげるという現場からの問題意識が重要と考える。工場インフラであるユーティリティ設備の運転監視制御システムでは、過去、受変電、ボイラ等設備毎に異なるメーカの制御システムが導入されていた。全ての操作性を統一するため、TCP/IPネットワークを共有するマルチベンダー連携システムを開発し、工場ユーティリティ設備の統合監視を実現した。本発表では、それらの事例を通してシステム連携のポイントを明確にする。また、現在のインテリジェントシステム等の出力結果は、人が設備を運転・操作するために参照はしても制御にそのまま受け入れることは難しい。制御への応用面からその可能性と限界を取り上げる。最後に、システムI/F等の標準化活動に関して、製造現場のエンジニアが重要視すべきフレキシビリティについて考える。
講師:高野 正利(トヨタ自動車株式会社 プラント・環境生技部工場計画室 担当部長) 【略歴】現在、自動車生産工場のエネルギー等のユーティリティ制御システムの企画・開発・導入を担当。今までに、ICカードによるセキュリティシステムの開発・導入、工場生産設備のエネルギー低減活動に従事。生産現場の保全・改善などの実務経験を活かし、現場視点での改善に取り組んでいる。計測自動制御学会理事(2014~2015)、計測自動制御学会計測・制御ネットワーク部会主査(2004~2007)、自動車技術会会員。 |