ホーム > プログラム」
セミナーの概要
IT(情報技術)は社会的なインフラとして、またビジネスモデルを革新するツールとして重要性を高めている。最近は、受託開発型ビジネスの限界が指摘され、ITベンダーもビジネスモデルの革新を求められている。これらを支える高度な人材を育成するためには、人材像を明確にするとともに、高い能力を持った人材を適切に評価・処遇する必要がある。産業構造審議会情報経済分科会 人材育成WGは次世代高度IT人材像や情報セキュリティ人材に求められる能力を整理した。NTTデータはITスキル標準に準拠した社内資格制度を運営している。情報処理学会は、高度な情報系人材の能力を評価するための「物差し」として、ITスキル標準や国際的な通用性も考慮した高度IT資格制度「情報処理学会モデル」を提案した。また、政府のIT部門においても調達改革や情報系専門職人材の登用が進みつつある。本セミナーでは、今後必要とされる人材像やその評価に関する最近の取り組みを紹介し、個々のIT技術者やITベンダー、情報システムユーザーに求められる取り組みについて議論を深める。
コーディネータ:掛下 哲郎(情報処理学会 高度IT人材育成フォーラム代表/佐賀大学 工学系研究科 准教授)
【略歴】九州大学情報工学科卒業。同博士後期課程修了。工学博士。現在、佐賀大学知能情報システム学科准教授。2001年度より学科の教育システムの構築を推進し、2003年度にJABEE認定を受けた。2008年度より高度IT資格制度およびIT専門職大学院等を対象とする認証評価機関の構築に取り組んでいる。データベースおよびソフトウェア工学を専門とする。情報処理学会、電子情報通信学会等会員。
プログラム
オープニング 10:00-10:05
旭 寛治(情報処理学会ITプロフェッショナル委員会委員長/株式会社日立製作所 情報・通信システム社 経営戦略室)
セッション1 10:05-11:05
スマート社会を切り拓くIT融合人材の人材像、育成、評価
【講演概要】産構審で「スマート社会を切り拓くIT融合を生み出す人材の不足」が、課題とされ、「従来からの『高度IT人材』自体の位置付けを見直すこと」が要請された。同時に「我が国の情報系人材を含む理系人材の減少や実践的教育の不足により、質の高い若手人材の輩出環境が悪化している」ことも指摘された。情報セキュリティ上の脅威が高度化・多様化し、対応できる人材は極めて不足している。必要な人材、求められる知識や技能の体系、資格制度・処遇・キャリアパスの明確化、等の再検討が要請された。さらにグローバル時代を踏まえて、IT人材の国際化をどのように目指すかの検討も要請された。人材育成WGでは、諸指摘を踏まえ、次の視点から検討を進めた。
① 「次世代の高度IT人材」=高度IT利活用サイドの人材について、人材像の具現化、能力・スキルの設定、育成方針、新たな評価軸の創出。
② 情報セキュリティ人材への新たなスキル要請、類型化、育成指針の再検討。必要に応じて現行技術者試験制度の見直し。
③ 国境をまたぐ情報サービスの提供が可能な時代おいて、IT産業に必要とされるグローバル人材のあり方、各世代における人材育成のあり方への指針作成。
今講演においては、このような情勢を踏まえて、人材育成WGの検討経過、導出された結論を説明する。
講師:有賀 貞一(産業構造審議会・人材育成WG座長、AITコンサルティング代表取締役)
  【略歴】1970年一橋大学卒。野村電子計算センター(88年合併により野村総合研究所)入社。システム構築、ネットワーク事業、システム商品企画・販売、大型公共SIなど担当。94年常務取締役。97年CSK(現SCSK)転職、01年代表取締役副社長。金融システム事業及び生産性・品質向上関連担当。IPA・SEC設立支援、形式手法普及に尽力。2008年ミスミグループ本社代表取締役副社長。2011年AITコンサルティング代表取締役。長年情報処理技術者試験に関与。2008年人材育成貢献で経済産業大臣表彰。2007年より産構審人材育成WG主査。
セッション2 11:15-11:45
高度IT資格制度に関する世界の動向
【講演概要】情報処理学会は、高度IT資格制度を設計するに当たり、国際的にも通用する資格制度にすることも目指している。このために、情報処理国際連合であるIFIP(International Federation for Information Processing)の下に組織化されたIP3(International Professional Practice Partnership)に参加した。IP3は、IT資格認証を国際的に普及させると共に、IP3が定めた基準に基づいて各国のIT資格認証機関を認定することにより、IT資格の国際同等性を確保しようとしている。情報処理学会は、このようなIP3の活動において日本の地位を確保するために、ボードメンバにもなっている。本講演では、IP3の活動の概要や認定基準、日本の事情の反映、ならびに、IP3の認定を受けたオーストラリアやカナダの状況について紹介する。
講師:芝田 晃 (三菱電機株式会社 インフォメーションシステム事業推進本部 技術企画部 主管技師長)
【略歴】1978年3月東大情報工学修士課程修了。 同年4月三菱電機(株)入社。汎用計算機のOS開発に従事。2001年より情報処理学会コンピュータ博物館実行小委員会委員。平成16年度学会活動貢献賞受賞。2001年よりCMMIを用いたプロセス改善に従事。2005年CMMIリード・ アプレイザ, CMMI入門インストラクタ資格取得。2008年度より情報処理学会高度IT人材資格検討WGメンバ、2009年度より同学会高度IT人材資格制度設計WG座長。
お昼休み 11:45-13:00
セッション3 13:00-14:00
キャリア・プランを描く高度ICT人材資格制度-(株)NTTデータの取り組み事例
【講演概要】株式会社NTTデータは、電電公社時代を含めると45年以上にわたりシステム構築・サービス提供事業を行ってきた。その間にICT技術は大きく進展し、技術が変化するだけでなく、その適用領域も飛躍的に拡大してきた。システムの構築やサービスの提供は、人が中心となって行うものなので、事業を遂行する上でもっとも重要な課題は人材の育成である。人材育成の内容は、当然に事業の内容や社会のニーズによって変化していくが、団塊の世代から若い世代へのノウハウ引継ぎに対応するためにも、社内での専門的な資格制度を2003年から試行し、2006年から全面的に導入した。制度導入により、本人のキャリア・プランが以前よりも描きやすくなり、会社の事業目的に沿った人材育成が可能となった。その社内資格制度について具体的な事例を報告する。
講師:重木 昭信(JBIS HD代表取締役社長 兼 日本電子計算株式会社代表取締役社長)
 【略歴】1973年に日本電信電話公社に入社。通信機器と端末装置の開発や通信プロトコルの検討に従事。1985年のNTT発足以降は、コンピュータシステムの開発を担当。1988年からは大規模オンラインシステムのプロジェクト・マネージャー。2007年にNTTデータ代表取締役副社長、2009年同社顧問。2012年(株)JBISホールディングス代表取締役社長。プロジェクト・マネージメント学会会員で、2011年に学会賞を受賞。2008年から日本経済団体連合会情報通信委員会高度情報通信人材育成部会長として、ICT人材育成や大学教育改革にも取り組んでいる。
セッション4 14:10-15:10
情報処理学会の高度IT資格制度・ビジョン編
【講演概要】
情報システムは現代社会の基本的なインフラとなっており、それを支えるIT人材の責務は大きい。わが国にはおよそ100万人のIT人材がいるが、ITを活用した社会の高度化を妨げる様々な課題に包括的に取り組むためには、プロの専門家集団としての情報系プロフェッショナルコミュニティを形成する必要がある。コミュニティの構成員が自律的に質の向上を図ることによってITに対する社会の期待に応え、コミュニティとしても、高品質な情報サービスの提供、情報サービス産業の国際的競争力の向上、IT人材の社会的地位の向上等に取り組むことができる。情報処理学会では、高度なIT人材の能力を証明するとともに、プロフェッショナルコミュニティをリードする高度IT人材の可視化にも役立つ資格制度の構築を目指している。本資格制度は,情報処理学会だけでなく、企業、政府、大学、既存のプロフェッショナルコミュニティ等が連携した大規模なエコシステムの中核をなすものである。本講演では、国内外の動向を踏まえた高度IT資格制度の意義と、我々のビジョンについて述べる。
旭 寛治(情報処理学会ITプロフェッショナル委員会委員長 / 株式会社日立製作所 情報・通信システム社 経営戦略室)
【略歴】1971年(株)日立製作所入社。同社基本ソフトウェア本部長、ストレージソリューション本部長、(株)日立テクニカルコミュニケーションズ代表取締役等を歴任。1999年本会理事、2005年副会長。ITプロフェッショナル委員長、高度IT人材資格検討WG座長、アクレディテーション委員会副委員長、歴史特別委員会委員、コンピュータ博物館実行小委員会主査。本会フェロー。 
情報処理学会の高度IT資格制度・制度設計編
【講演概要】
高度IT資格制度の対象となるITスキル標準レベル4相当以上の能力・実績を持つ 情報系高度人材は約27万人と推計されている。このような規模の資格認証を実施するためには、個別のIT人材を直接評価する方式と、大手ITベンダー等が実施している社内資格制度を組み合わせた方式を採用するのが合理的である。本講演では、これらを考慮した情報処理学会の制度設計案について解説する。前者の方式(直接方式)は情報処理技術者試験(高度試験)合格の他に、実務での総合的な能力発揮や責務遂行の実績、およびプロフェッショナル貢献の実績を踏まえて能力を評価する。また、後者の方式(間接方式)では、社内資格制度等を対象とし、情報処理学会による認定審査を行う。大手企業等が本モデルに従って認定を取得することにより、高度IT資格の認証業務の一部を実施することができ、個別の資格制度の相互同等性および国際的通用性を第三者認定によって保証できる。
掛下 哲郎(情報処理学会 高度IT人材育成フォーラム代表 / 佐賀大学 工学系研究科 准教授)
【略歴】九州大学情報工学科卒業。同博士後期課程修了。工学博士。現在、佐賀大学知能情報システム学科准教授。2001年度より学科の教育システムの構築を推進し、2003年度にJABEE認定を受けた。2008年度より高度IT資格制度およびIT専門職大学院等を対象とする認証評価機関の構築に取り組んでいる。データベースおよびソフトウェア工学を専門とする。情報処理学会、電子情報通信学会等会員。 
セッション5 15:20-16:20
電子政府と高度IT資格制度
【講演概要】中央、地方を問わず、政府の情報システム調達において、多くの試みがなされてきましたが、導入に失敗している事例は多く存在しています。原因の一つとして、業務と情報システムのそれぞれの橋渡しが上手くできていないことがあげられます。業務面では、様々な業務の改革や新しい国民ニーズへの対応があり、制度の改正も短期間で行われており、様々な手続き業務が一定ではなくなってきています。さらに、情報システムのアーキテクチャや標準の変化、新しい形態のサービスの登場など、情報システムを構成する要素も変わってきています。これらについて、厳しい財政事情の中で、情報システムを導入し、さらに運用してサービスを提供するには、従来とは知見を持った人材が必要です。このような発注者側の視点に立った際の、高度IT人材に対する期待についてお話をさせていただきたいと思います。
講師:高橋 邦明(総務省 技術顧問 / 一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構 専務理事 / GAPS 代表)
【略歴】陸上自衛隊において、部隊や各種教官を経験した後、情報システムを用いた後方支援業務改革を担当。自衛隊退職後は、商社等の民間企業の業務改革、情報システム導入などの支援を行う。その後、業務・システム最適化指針策定に携わるとともに、総務省の任期付職員(行政管理局課長補佐等)として府省共通システムの開発にも携わる。現在、コンサルタントとして、官公庁における業務・システムの最適化やシステム調達などに係る支援業務や講演活動を行う。
セッション6 16:30-17:30
[パネル討論]
司   会:芝田 晃 (三菱電機株式会社 インフォメーションシステム事業推進本部 技術企画部 主管技師長)
パネリスト:有賀 貞一(産業構造審議会・人材育成WG座長、AITコンサルティング代表取締役)
重木 昭信(JBIS HD代表取締役社長 兼 日本電子計算株式会社代表取締役社長)
高橋 邦明(総務省 技術顧問 / 一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構 専務理事 / GAPS 代表)
旭 寛治(情報処理学会ITプロフェッショナル委員会委員長 / 株式会社日立製作所 情報・通信システム社 経営戦略室)
掛下 哲郎(情報処理学会 高度IT人材育成フォーラム代表 / 佐賀大学 工学系研究科 准教授)

クロージング 17:30-17:35
旭 寛治(情報処理学会ITプロフェッショナル委員会委員長/株式会社日立製作所 情報・通信システム社 経営戦略室)