デジタルプラクティス Vol.11 No.3(July 2020)

Glossary─グロッサリ─

リアルワールドデータ

近年,医療分野では電子カルテ,電子レセプト,DPC(診療群分類包括評価)データ,健診データなど現実の診療行為によって生じる医療電子ドキュメント(EMR : Electric Medical Record)が大量に蓄積され,データベース化が進んでいる.これらのデータを,「狭義の」医療ビッグデータと呼ぶ.このような現実の診療行為によって生じるデータのことをリアルワールドデータと呼ばれる(石井一夫)

マッチング

医療ビッグデータにおいては,抽出した集団は年齢,性別,喫煙歴など多種多様な背景や疾患のリスク因子を持つ患者の不均一な集合体である.このため,医薬品の薬効,副作用などを観察する場合には,その効果に影響が出てくる背景因子を一致させた集団を用いる,これをマッチングという(石井 一夫)

データの質

国食品衛生局FDAは,リアルワールドデータを用いた試験結果を薬事申請などに用いるための指針のドラフトを公表し,そのパブコメを実施した(2020年7月第1週まで).リアルワールドデータが医薬品の承認申請時の根拠情報として使用されるためには「データの質」,すなわち,データの「完全性」,「一貫性」,「正確性」の点を確保することが求められる.これを,一般にデータインテグリティと呼ぶこともある(石井一夫)

PropTech

Property(不動産)×Technologyの略.Technologyで業界課題や従来の商習慣を変えようとする取り組みを示す(橋本 武彦)

不動産価格推定

売却や購入の参考に現時点の適正な価格を推定する取り組み.従来からの積算評価法,収益還元法,取引事例法に加え,近年ではビッグデータ×機械学習を活用した価格推定の取り組みが注目されている(橋本 武彦)

改正個人情報保護法

個人情報の保護に関する法律は2003年5月に成立し一部施行,2005年4月から全面施行された.その後2005年9月に改正個人情報保護法が成立し,個人識別符号などを個人情報の定義に含めた.2020年3月にはさらに一部を改正する法律案が閣議決定され,電子情報の利用条件の厳格化や罰金刑最高額の引き上げとともに,仮名加工情報を定義し保護と利活用の両面から見直しが行われている(西田 純二)

GDPR

EUでは2018年5月からGDPR,General Data Protection Regulation:一般データ保護規則が施行された.GDPRは個人情報保護を目的とするものであるが,我が国の個人情報保護法に比べてより明確な個人データの定義が行われており,罰則規定も厳しい.GDPRはEU域内の事業者だけではなく,EU域外の事業者がEU域内居住者の個人データを収集または処理する場合にも適用される(西田 純二)

社会的受容性

新たな技術や施設,新たなビジネスなどが地域社会や市民・国民の理解を得て受け入れられること.たとえば商店街に設置されたカメラの映像が防犯目的に利用される場合は地域社会に受け入れられたとしても,同じ機器を用いて撮影された映像が来街者の購買動向などのマーケティング目的に利用される場合には受け入れられるとは限らない.社会心理学分野の研究によれば,社会受容性に影響を与える要因として「必要性・有益性」「安心感」「事業主体に対する信頼性」などが挙げられている(西田 純二)

スマート農業

ロボット技術,情報通信技術,人工知能などを活用することにより,農作業の省力化・精密化・軽労化,農業技術の継承,食料自給率の向上などを目指す新たな農業のことをいう.農機の自動運転,重労働を軽減するアシストスーツ,クラウドによる農産物の生産・流通・販売の管理支援,ビックデータ解析による予測と意思決定など,多岐にわたる(太田 能)

グラフクラスタリング

グラフ間クラスタリングとグラフ内クラスタリングに大別される.前者は,グラフ集合を,似た構造を持つグラフからなる部分集合に分割することをいう.後者は,節点がある属性を持ち,枝が節点間の関係を表すようなグラフ構造で表現されたデータを,共通の特徴を持つ節点からなる部分集合に分割することをいい,コミュニティ抽出とも呼ばれる.グラフクラスタリングは,社会学,生物学,コンピュータ科学などの分野で広く応用されている(太田 能)

LSTM(Long Short-Term Memory)

回帰型ニューラルネットワークのアーキテクチャの一種である.中間層ユニットとして,値を保持するセルとこのセルの値を変更したり読み出したりする複数のゲートからなるLSTMブロックを有する構造を持つ.内部状態を保持するセルを導入することにより,長期的な依存関係を学習することを可能にしている.LSTMは,音声認識,株価予想などに応用されている(太田 能)

先行技術調査

特許公報や特許公開公報,学術論文などの技術文献から特定の技術に関わるものを検索し, 類似点を抽出する調査.重複研究の回避や重複出願の防止などのために,製品開発時や特許出願前に実施する(三上 崇志)

無効資料調査

特定の特許を無効にするため,該当特許の出願より以前に同技術が確立されていたことを示せる資料を探す調査. 特許の権利者から権利侵害を訴えられた時にその特許を無効化する,あるいは発明品を製造・販売する際に障壁 となり得る特許を無効化する,などの場合に実施される(三上 崇志)

IPC

International Patent Classification.国際特許分類.特許文献を技術内容により分類するため,国際的に統一された 分類体系.日本独自の分類体系としてFIやFタームなどがあり,欧州特許庁(EPO)および米国特許商標庁(USPTO) が共同利用している分類体系としてCPC(Cooperative Patent Classification)がある(三上 崇志)

クレームチャート

注目する特許(またはアイディア)の請求項を構成要素(構成要件)に分解し,複数の類似文献に対して類似点を対比できるよう表形式で整理したもの.各類似文献から類似個所を抽出し,それぞれの構成要素と比較する(三上 崇志)

 

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