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最終更新日:2003.12.15

招待講演(1)

 

「ダイオキシン・環境ホルモン問題から21世紀を考える」

 

ダイオキシンがごみ焼却炉から出るという事実は、大変象徴的である。 そもそもごみ焼却炉は環境安全対策の筈である。この環境保全対策が人類史上最強といわれる毒物を生むというのは皮肉としか言いようがない。それは膨大な種類と量の人工化学物質を生産、消費、廃棄してきたこれまでの社会経済システムの見直しを迫るものである。20世紀の延長線上に21世紀モデルを描くことは難しい。新しい社会経済システム、ライフスタイル、そしておそらくそれを支える価値観が問われている。約10万種といわれている人工化学物質は、人間生活の利便性、快適性、あるいは安全にも貢献してきた。一方で、人工化学物質が人の死を含む地球生態系の悲劇を生んできたことも事実である。人工化学物質の総体は人間社会を支える巨大技術であり、制度といってもよい。私どもは人工化学物質を否定することはできないし、また賢明なこととも思えない。要は人工化学物質をいかに安全に使いこなすか、その科学・技術であり社会や生活のあり方であろう。