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最終更新日:2007年10月24日

第5回「バイオメトリクスの現状と今後」

 

開催日時: 平成19年11月14日(水) 10:00-17:00
開催会場: 東京電機大学神田キャンパス7号館1F 丹羽ホール(東京都千代田区神田錦町2-2)

■セミナー概要
サイバーワールドは仮想空間であるが故に,「個人の識別」が非常に重要な意味を持つ.また,高度にグローバル化した現代社会においては,リアルワールドにおいても一期一会の機会が増加しており,相手の身元確認の必要性が増している.さらに,ITサービスの浸透により,いたるところ,かつ,あらゆる生活場面で本人認証が求められる世の中になってきた.究極の個人情報である生体情報は決定的な個人識別手段であり,上記のような特質を有する高度情報化社会におけるバイオメトリクスの必要性は非常に高い.しかし,生体情報は同時に高度な機微情報であり,その適切な使用と管理が不可欠となる.本セミナーでは,各分野の第一人者による講演を通じ,「バイオメトリクスの現状と今後」を技術,運用,法律などのあらゆる観点から深く掘り下げていく.

コーディネータ:西垣 正勝(静岡大学 創造科学技術大学院 准教授)
略歴 平成2年静岡大学工学部光電機械工学科卒業.平成4年同大学大学院修士課程修了.平成7年同博士課程修了.日本学術振興会特別研究員(PD)を経て,平成8年静岡大学情報学部助手.平成11年同講師,平成13年同助教授.平成18年より同大創造科学技術大学院助教授.平成19年より准教授.博士(工学).情報セキュリティ,ニューラルネットワーク,回路シュミレーション等に関する研究に従事.情報処理学会・コンピュータセキュリティ研究会運営委員,電子情報通信学会・ユビキタスネットワーク社会におけるバイオメトリクスセキュリティ時限研究専門委員会平成18年度幹事補佐,(財)日本規格協会・平成19年度バイオメトリクス認証装置の精度評価方法標準化調査研究委員会WG2主査.

■プログラム

セッション1

10:00-11:10
「バイオメトリクスの現状」

  三村 昌弘((株)日立製作所 システム開発研究所 UL主任研究員)

講演概要
現時点のバイオメトリクス技術はどこまで進展しているのか.どういう生体情報が使われているのか.本人認証率や安全性は,どのレベルまで達成されているのか.各種バイオメトリクス製品のそれぞれの長所と短所は何か.本講演では,既存のバイオメトリクス技術・製品に関して概観し,バイオメトリクスの現状について総括する.

略歴
平成9年東京工業大学大学院・工学専攻博士課程修了.同年(株)日立製作所に入社.システム開発研究所に所属.以来,指紋照合装置およびバイオメトリクス認証システムの研究開発に従事.UL主任研究員.博士(工学).情報処理学会,電子情報通信学会,各会員.
セッション2

11:10-12:20

「バイオメトリクスに関する標準化動向 -セキュリティからの観点を中心に-」

  宇根 正志(日本銀行 金融研究所情報技術研究センター 企画役)

講演概要
万人がバイオメトリクスを利用する世界を考えた場合,どういう要件を標準化しておく必要があるのであろうか.単に技術仕様を共通化するだけであれば実現できそうであるが,安全性の評価基準や攻撃モデルに関する標準化はどこまで可能なのか.本講演では,バイオメトリクスに関する種々の世界標準化動向をレポートするとともに,バイオメトリクスにおいては何をどのレベルまで標準化すべきであるのかという根本的な問題に対する考察をセキュリティからの観点を中心に行う.

略歴 平成6年筑波大・第三学群・社会工学類卒.同年日本銀行入行.金融研究所にて金融分野と関連が深い情報セキュリティ技術の調査に従事.平成15年横浜国大大学院・工学研究科・博士課程後期修了.博士(工学).平成19年7月より現職.情報処理学会・コンピュータセキュリティシンポジウム2005優秀論文賞受賞.電子情報通信学会・ユビキタスネットワーク社会におけるバイオメトリクスセキュリティ時限研究専門委員会専門委員,バイオメトリクスセキュリティコンソーシアム・安全ワーキンググループ平成18年度主査.
12:20-13:30
お昼休み
セッション3

13:30-14:40

「バイオメトリクス認証装置の開発事例」

  松下 雅仁(三菱電機(株)先端技術総合研究所 グループマネージャ)

講演概要
バイオメトリクスシステムを開発するにあたってのキーファクタとは何であろうか.本人拒否率,他人受入率といった認証精度のみが認証方式や認証装置の比較基準とされることが多いが,それだけで安全性と利便性を兼ね備えた生体認証システムの実現は可能なのか.本講演では,真皮指紋を用いた生体認証システムの開発事例をとりあげ,バイオメトリクスシステム開発の方向性に対する知見を示す.

略歴 1989芝浦工大・工・電子工学科卒.1991同大大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了.同年、三菱電機(株)産業システム研究所入社.現在,先端技術総合研究所にてバイオメトリクス認証システム他,物理セキュリティシステムの研究開発に従事.電子情報通信学会,映像メディア情報学会各会員.
セッション4

14:40-15:50

「バイオメトリクスをとりまく法的課題」

  新保 史生(筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科 准教授)


講演概要
バイオメトリクスの利用にあたって法的観点から検討すべき課題は多い.確実な本人確認手段として有効であるのと同時に,確実な監視手段としても用いることができるなど,バイオメトリクスの利用に係る利便性と弊害は表裏一体の関係にある.個人情報としてのバイオメトリック・データの漏えいや不正利用による問題が個人に及ぼす影響も計り知れない.個人の尊厳やプライバシー保護と社会の公益とはどちらが優先されるべきなのか.社内でバイオメトリクスシステムを採用するにあたって,どのようなリスクを想定しておくべきか.バイオメトリック・データの適正な取扱いと保護のために何をすべきか.本講演では,バイオメトリクスに関係する法的諸問題を全般的に概観するとともに,その課題について切り込む.


略歴 専門は,憲法,情報法.ネットワーク社会におけるプライバシーの権利や個人情報保護の問題を主たる研究領域としている.個人情報保護法に関する各府省ガイドラインや業界ガイドライン等の策定委員,プライバシーマーク制度の審査会委員,地方公共団体の個人情報保護に関する審議会委員などに従事.バイオメトリクスとの関係では,経済産業省「生体情報による個人識別技術を利用した社会基盤構築に関する標準化委員会」委員,外務省「IC旅券調査委員会」副委員長,内閣官房「e-passport連携実証実験小委員会」委員,ISO/IEC JTC1 SC37WG6委員,BSC・リーガルWG委員などを歴任.

セッション5

15
:50-17:00

「バイオメトリクスの脅威と新技術」

  西垣 正勝(静岡大学 創造科学技術大学院 准教授)
 

講演概要

私たちは普段から顔をさらして生活している.髪の毛一本を引き抜かれればDNAが知られてしまう.バイオメトリクスは実は非常に漏洩しやすい情報なのである.こんな情報を本人認証に使ってよいのか.漏洩しないような生体情報はないのか.本講演では,なりすましが困難であると言われているアンコンシャス認証や生体反射認証などを中心に,バイオメトリクスの最新技術について紹介する.

略歴はコーディネータ参照